デジモンアドベンチャー0   作:守谷

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065 想定外

 ――――選ばれし子供達の絶望に立ち向かうという『覚悟』――その想いはこの異世界の謎の力によって本来のモノよりも遥かに高められ、パートナーデジモン達の力を限界以上に引き出した。

 

 

「さっきまでのようにはいかないぞヴァンデモン!!」

 

 

 太一の強い覚悟を受け力を増したウォーグレイモンは地面を力強く蹴り上げヴェノムヴァンデモンの方へと飛び上がる。

跳躍の勢いのまま鋼鉄の翼を広げ、さらに加速する。

ヴェノムヴァンデモンは僅かに目を見開きながらも冷静に片腕を振り下ろす。

 

振り下ろされた腕が大気を裂く。

直撃すれば完全体ですら消し飛ぶ一撃。

だが――

 

 

『シャドーウイング!!』

 

 

ガルダモンの灼熱の羽ばたきが僅かに腕を押し上げ、

 

 

『ハンマースパーク!!』

 

 

続くズドモンの雷撃がその軌道をさらに逸らした。

 

生まれた隙は、ほんの一瞬。

だがウォーグレイモンには十分だった。

 

ウォーグレイモンのドラモンキラーが、上部の顔に浅い裂傷を刻む。

 

――だが

 

「……鬱陶しい」

 

 

低く漏れた声。

 

次の瞬間、ヴェノムヴァンデモンの視線がウォーグレイモンを射抜く。

 

――殺気。

 

全身の本能が警鐘を鳴らした。

 

刹那。

 

先程までいた空間を、ヴェノムヴァンデモンの両腕が轟音と共に叩き潰した。

 

 

「ッッッック!」

 

 

避けられたのは、ほとんど偶然だった。

だがウォーグレイモンに安堵はない。

 

まだだ。

ヴェノムヴァンデモンの視線は、まだウォーグレイモンから外れていない。

 

だが――――それこそがウォーグレイモン達の狙いだった。

 

 

『ガルルトマホーク!!』

 

『ホーンバスター!!』

 

 

 ヴェノムヴァンデモンの意識が自分達から離れた――その瞬間。メタルガルルモンとズドモンは渾身の必殺技をヴェノムヴァンデモンの本体である下腹部の顔へ放つ。

次の瞬間。

 

ヴェノムヴァンデモンの下腹部が爆炎に包まれた。

巨体が、ほんの僅かに揺らぐ。

 

 

「チャンスだぎゃ!」

 

 

その瞬間。

ヴェノムヴァンデモンにも匹敵する巨体へと変貌したブラキモンが、大地を砕きながら突進した。

凄まじい衝突音。

ヴェノムヴァンデモンの巨体が、大きく吹き飛ばされる。

 

 

「ナイスだブラキモン!」

 

「どうやら伊織君とブラキモンは僕達と違い、

この世界の力で紋章や光の矢を作っていない分強化幅が高いようですね」

 

 

 しかし。と光子郎はパソコンのタイピングを止める。

 

 

「ダメージ自体は通っています。……ですが、再生速度がそれを上回っている」

 

 

 光子郎は額に汗を浮かびながら言葉を漏らす。

ウォーグレイモンが決死の覚悟で与えた裂傷は既に跡形もなく消えていた。

 

 

「……このままじゃ、勝てないって事ですか?」

 

「……ヴァンデモンの回復が張りぼて、もしくは限界があるのなら勝機はあります。

ですが、奴の余裕な表情を見る限りおそらく限界にはまだ程遠い。

……全員で全力攻撃を仕掛けても……撃破できる可能性は低いでしょう」

 

 

 光子郎はヴェノムヴァンデモンとパソコンに交互に視線を向けながら勝機を見出す為に思考を回す。

 

 

(確実に押している。

……ここまで押し返されるとは、ヴァンデモンも想定していなかった筈。

だけど――焦りがない。

 

追い詰めているのに、まだ余裕がある。

……それに奴の力の源は僕達選ばれし子供達に対しての怒り。

仮に追い詰められたとしてもそれに対しての怒りで今より最低でも一段階は強くなる可能性すらある。

……やはり奴に勝つにはジリ貧では駄目だ)

 

 

「クックック……」

 

 

瓦礫を踏み砕きながら、ヴェノムヴァンデモンがゆっくりと立ち上がる。

 

 

「なるほど。多少は足掻けるらしい」

 

 

その視線が、ウォーグレイモン達ではなく選ばれし子供達へ向けられる。

 

 

「だが、妙だな

――――まだ一人戻ってきていないじゃないか?」

 

 

 選ばれし子供達の視線が未だ硬直したままの選ばれし子供――京に向けられる。

 

 

「クックック……結局、一人だけ戻れなかったか。

当然だな。覚悟も足りん。力も足りん。

その程度で選ばれし子供を名乗っていたんだ」

 

「……ミヤコさんを馬鹿にしないで頂きたい!

 ミヤコさんは必ず幻覚を打ち破って戻ってきます!」

 

「馬鹿になどしていない。オレは事実を口にしているだけだ」

 

 

ヴェノムヴァンデモンの嗤いが響く。

 

京の瞳は、未だ虚空を見つめたままだった。

 

誰も言葉を発せない。

 

その時だった。

 

 

「……っ!?」

 

 

光子郎の表情が凍りつく。

 

 

「どうした光子郎!?」

 

「まさか……」

 

 

パソコンへ視線を落とした光子郎の額から汗が流れ落ちる。

 

 

「守谷君とチビモンも……まだ戻って来てません」

 

 

空気が、凍った。

数秒の沈黙。

 

――次の瞬間だった。

 

『――カァッ、ハハハハハハハハハハハ!!!』

 

 

ヴェノムヴァンデモンが腹を抱えるようにして嗤った。

顔が歪む。口元が裂ける。

愉悦に耐え切れないように、巨体を震わせながら笑い続けた。

 

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