デジモンアドベンチャー0   作:守谷

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066 救済の条件

 何か打開策を企んでると誰もが――ヴェノムヴァンデモンすらそう考えていた守谷天城が幻覚の世界から帰還出来ていないという事実にヴェノムヴァンデモンは笑いを抑えきれなかった。

 

 

「こいつは傑作だ!! 散々偉そうなことを言っていた張本人がまさかマインドイリュージョンの世界に囚われたままとは!」

 

「……まさか守谷君が帰って来ていないとは」

 

 

 未だ響き続けるヴェノムヴァンデモンの笑い声の背に選ばれし子供達は信じられないといった表情を浮かべる。

 

 ヴェノムヴァンデモンにとってそうだったように選ばれし子供達にとっても守谷天城という人物は常に自分達の一つ先の事を見通し、選ばれし子供としてきっと最善の行動を取り続けていた存在だった。

 

――――だが最後の最後。最終局面といえるこの戦いで

彼は多くの選ばれし子供達が乗り越える事が出来た理想の夢世界から抜け出せなかった。

 

 

「クックックックック……最後の最後でオレを笑わせてくれた礼だ。

――――帰ってこれなかった3名には安らかなる死を与えよう。

 

 

ヴェノムヴァンデモンが指を鳴らした瞬間、

突如、偽りの世界に囚われた3名の体の下部が黒く染まった。

 

 

「なっ……!?」

 

 

ホークモンが京へ駆け寄り、纏わり付く闇を必死に振り払う。

だが――闇の奥にある筈の足先は、既に消えていた。

 

 

「ど、どうして……」

 

 

ホークモンの声が震え、闇を振り払う手が止まる。

するとその隙を逃さぬように、闇が再び京の身体を覆っていく。

 

 

「体が闇に……飲まれているのか?」

 

「……この感じ、どこかで……」

 

 

 ホークモンと同様にヤマトは守谷とチビモンの闇を振り払おうとしたが同様の現象が発生し、手を止める他なかった。

 

 

「ヴァンデモン! 京ちゃん達に何をした!?」

 

 

 現象を起こした張本人であるヴェノムヴァンデモンにヤマトは怒号を上げる。

ようやく笑いが収まってきたヴェノムヴァンデモンは勿体ぶることもなく答えた。

 

「――あの海の力を少し混ぜてやっただけだ」

 

ヴェノムヴァンデモンが愉快そうに口元を歪める。

 

「その闇に呑まれれば、二度と目は覚めん。

文字通り永遠の眠りにつくという訳さ」

 

「なっ……!?」

 

「心配するな。苦しみは一切ない。

選ばれし子供達は全員この手で惨たらしく苦しませながら殺すつもりだったがコイツらだけは楽に死なせてやろう!」

 

「ーーーーふざけるな!」

 

「そして抜け殻になった肉体は、あの海への贄に使わせてもらう」

 

ヴェノムヴァンデモンが嗤う。

 

「……多少は借りを返さねば後が面倒だからな。

人間の男と女の体だ。ダークタワーの件と引き換えとしても充分お釣りは来るだろう」

 

「……あの海っていうのは暗黒の海の事?」

 

「ほう。知っていたのか。

いや、招かれた事があるという訳か。

お前の光の力は奴等に取っては喉から手が出る程欲しいだろうからな。

ーーだが心配するな。お前があの海に行く事は永遠に無い。

 

ヴェノムヴァンデモンの口元が吊り上がる。

 

 

「お前達はここで確実に殺す」

 

 

和らいでいた殺意が再び選ばれし子供達に降り注ぐ。

先程までなら立っている事すら出来なかった憎しみの圧力。

ーーだが覚悟を固めた太一達はもう膝をつく事は無かった。

 

……だが、幻覚に囚われているとはいえ、身体に強烈な死の恐怖を叩き込まれた事で京を包む闇が膝の辺りまで侵食した。

 

 

「京さん!!」

 

「このままでは2人とチビモンは……

何とか、何とか助ける方法はーー

 

「ーーあるさ」

 

 

空の悲痛な叫びに答えたのはまさかのヴェノムヴァンデモンだった。

ヴェノムヴァンデモンはクックと笑いながら指を2つ立てて語る。

 

 

「1つは術者のオレを殺す事。

オレさえ殺せばそいつらも戻って来れてハッピーエンドさ!

簡単だろう?」

 

「…………2つ目は?」

 

 

ヴェノムヴァンデモンの口元が吊り上がる。

 

「助けに行けばいい」

 

「……何?」

 

「自力で戻れんのなら、誰かが連れ戻せばいいだけの話さ」

 

 

空達の表情が変わる。

 

 

「マインドイリュージョンを経験したお前達なら、入り込む事くらいは出来るだろう」

 

「だったら今すぐ――」

 

「駄目です!」

 

 

光子郎の叫びが空気を裂いた。

 

 

「今僕達が持ち堪えられているのは、全員で戦っているからです!

ここで戦力を割けば――」

 

言葉が止まる。

誰もが、その先を理解してしまった。

 

 

「そういうことさ。

オマエ達に出来るのは目の前で闇に飲まれる仲間をじっくりと見届ける事か、助けに向かい、戻ってきた仲間と戦えなくなったパートナーと共に地獄の拷問ショーを受けるかの2つだけだ。

ーーさぁ、好きな方を選ぶといい!」

 

 

助けに行きたい。

今すぐにでも。

 

だが、その一歩が全滅に繋がる事を、

ここにいる全員が理解してしまっていた。








よーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーやくここまで書き切る事が出来ました。
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