転生したから美佐枝さんと結婚したい   作:あいうえお

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第12話

『一昨日は兎を見たの。昨日は鹿、今日はあなた。』

 

そう言い、少女が俺に微笑みかける。

 

 

 

炎に包まれ少女が泣いている……

 

『ごめんなさい……良い子になるから……だから……!』

 

 

俺が少女に何事かを囁いている……少女が笑ってくれた……俺はそれだけで幸せだった。

 

 

 

 

 

 

「うーん……何だったんだ今日の夢は……」

 

顔を洗う時に気付いたが、涙が流れていたようだ。そんな歳じゃないんだが。

 

「一昨日は兎、昨日は鹿、今日はあなた。ねぇ、なぞかけなのか?生憎と俺は一休さんじゃないんだけどな。」

 

元の世界で見たことがない少女だった。まぁ、幼少期の記憶までは分からないのだから断定は出来ないけど。でも、あの女の子どっかで見たことあるんだよなぁ……

 

 

 

 

 

 

「ホームランだー!」

 

朝から元気だなコイツは……また智代ちゃんにやられるんだろう。つーかよくコイツも飽きないよなぁ。

 

「いきなり何だ?」

 

ほら智代ちゃんも狼狽えてるよ。

 

「今日は違うんだよ。お前の見方が変わったんだって。」

 

「まず、身に付けているものを褒めろ。」

 

おっ、朋也がアドバイスしてる……なるほど、これは面白そうだ。

 

「いや~その頭に着けてるの似合ってるよな~」

 

「ん、そうかありがとう。」

 

満更でもなさそうだな……そうだ

 

「春原、屈伸しながら『智代ってこんなに美人で優しいからモテるんだろうな~』って言え。」

 

「りょーかい綱汰!」

 

 

うっわアイツ本気でやってるよ……朋也と顔を見合わせる。まだまだ楽しくなりそうだ。

 

「ちょ、引かれてない?」

 

「大丈夫だ、安心しろ」

 

「次はヒンズースクワットしながら『あぁ~僕無性に彼女募集中ッス』って言え。」

 

 

 

「って、僕無茶苦茶怪しくない?」

 

「大丈夫だ。」

 

「次はボーリングの投球フォームで『智代さん、毎朝僕の朝食を作ってください』って言え。これで智代ちゃんはイチコロだ!」

 

「マジッスか!」

 

 

「ってこのポーズに意味あんのかよッ!」

 

「別に、なぁ?」

 

「あぁ、特にこれと言って意味はないな。」

 

「じゃあやらせるなぁ!こうなったら……」

 

あっ、殴られに行った……おっ、智代ちゃんと朋也のコンボかあれはエグいな。

 

「涼しい顔してっけどトドメ刺したのお前だからな?」

 

朋也が変なこと言ってる──ちょうど足下に来た金色の物体を踏んだだけなのに。

 

 

 

その後、朋也が智代ちゃんを演劇部に勧誘したが生徒会長になりたいらしく断られていた。

 

ことみならやってくれそうだな……

 

「朋也、知り合いに演劇部入ってくれるかもしれない奴居るから声かけてみようか?」

 

「おっ、マジか?それじゃあ頼むわ」

 

 

 

 

「よ、ことみ昼寝に来たぞ」

 

「綱汰くん、こんにちは。」

 

「昨日のアップルパイ美味かったぞ。また時間があったら焼いてくれるか?」

 

「うん……綱汰くんに喜んでもらえて良かったの。」

 

その微笑みは夢で見た少女に似ていて──少しの間呆然としてしまった。

 

 

「えっとな、ことみお願いって言うか頼みがあるんだけど」

 

「お願い?」

 

「ああ、友達が演劇部を作ったんだけど部員が足りないらしくてな、それで出来れば演劇部に入って欲しいんだけど。」

 

「演劇部……綱汰くんも入ってるの?」

 

「んー、入ってない、かな?」

 

俺の答えを聞いたことみは少し寂しそうに見えた。そして俺は自分が入ってない癖に他人には入部するように頼むなんて都合が良いことをしようとしていることに気付いた。

 

「ことみ、ごめん今の話、無しにしてくれ。」

 

「?うん、分かったの。」

 

その後はいつものように昼寝をして放課後まで過ごした。

 

 

 

 

 

放課後、学生寮に向かうと春原が美佐枝さんに関節技をキメられていた……何やってんだアイツは。

 

 

「うぅっ……腕が痛い……これじゃ生徒会の連中をシメてやることも出来ない……」

 

「泣くな、ウザったい。」

 

「演劇部のことなら、しばらくは活動延期だ。他にやることが出来たんだ。」

 

「ん?何すんだ?」

 

「僕は無視ッスか……」

 

「幽霊少女のお守りだ。と言っても俺は信じちゃいないがな。」

 

「「は?幽霊?」」

 

春原とハモった……死ぬしかないな。

 

「風子も気になるけど、古河のことも心配だ。当分は手伝いながら様子見だ。ってことでお茶」

 

「話が見えません!」

 

どういうことだ?風子とかいう子と渚ちゃんの関係ってどうなってんだ?

 

 

 

 

家に帰ってから演劇部の勧誘に失敗したことを伝えてなかったのに気付いた。ま、いっか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝学校に行くと、いつか見た少女が木彫りの星を配っていた。あれ?朋也と渚ちゃんも居るな……つーかあれで付き合ってないってどう言うことなの。

 

 

「これ、どうぞ!」

 

「これ何?星?」

 

「星じゃありません!これはヒトデです!」

 

「マジ?……朋也、これヒトデなの?」

 

「あぁ、ヒトデらしいぞ。とっても可愛いらしい。」

 

「ふーん、そうなのか。さんきゅな、じゃ俺はこれで。」

 

「待って下さい!」

 

少女が俺の背中を掴んだ……

 

「風子のお姉ちゃんの結婚式に出て欲しいんです!」

 

「りょーかいりょーかい。じゃあまたな。」

 

風子のお姉ちゃん、ねぇ。つーか結婚式どこでやるんだ?

 

 

──でも何だろうな、これ見覚えあんだよな……ヒトデ……祭り?

 

図書室で考えるか。

 

 

 

「ことみ、ヒトデって覚えないか?」

 

「ヒトデ?ヒトデっていうと、学名はAsterias amurensis。無脊椎動物、棘皮動物門。英語ではStar fishとかSea starとか呼ばれる、肉食の海星生物の、あのヒトデ?」

 

「そのヒトデなんだけどな……なんか引っかかるんだよなぁ。」

 

 

ヒトデ……伊吹風子……姉が結婚する……分からん。あぁ!モヤモヤする!

 

 

「まぁ深く考えすぎるのもダメか──俺、寝るわ。」

 

「うん、おやすみなさいなの。」

 

 

 

 

 

夜、朋也から電話が掛かってきた。明日風子ちゃんと一緒に授業しないか、と。まぁ特に断る理由も無かったし、面白そうだったからOKしておいた。

 

 

 

次の日の学校は創立者祭の準備のため、休日だというのに活気があった。

 

藤林姉妹と春原と共に教室に居ると、朋也と渚ちゃんが連れ立って入ってきた。だからお前ら付き合ってるだろ……

 

風子ちゃんは教室の前で立ち止まっていた。

 

「風子ちゃん、どうしたんですか?」

 

「風ちゃん、来て下さい。もうすぐ授業が始まりますよ。」

 

「こっちこっち~」

 

「ほら、早く来いよ。」

 

藤林姉妹と渚ちゃん、朋也が呼びかけると風子ちゃんは教室に入ってきた。

 

さて、問題は教師役だな……

 

「綱汰、アンタこの中で何故か一番成績良いんだからアンタがやりなさいよ。」

 

「あぁ?教卓で寝ても良いならやるけど。」

 

「アンタに任せようとした私が馬鹿だったわ。」

 

いや、そんな呆れられても困るんですけど……

 

 

「はーい、授業を始めますよ~」

 

あれ?この声……

 

「早苗さん?どうして早苗さんが……」

 

朋也の疑問は正しい。つーかよく入ってこれたな……

 

「渚から話を聞いたんです。私でよければ、先生役をさせてください。」

 

「ちょっと朋也、誰あの人?渚の姉さん?」

 

杏よ、あの人は渚の母ちゃんだぞ。

 

「ん、ああまぁそんなところだ。」

 

「マブいぜ!ヒューッ!これは楽しい授業になりそうだぜッ!」

 

「一人だけ昔の学園ドラマのノリだな。」

 

「なぁ、朋也知ってるか腐ったみかんは他のみかんを腐らせるんだぜ。」

 

「マジか、じゃあアイツ外に出さねぇと。」

 

「アンタらも大概だと思うんスけどね……」

 

 

「はーい、皆さーん席についてくださーい。それじゃあ皆さん自己紹介をしてください。」

 

 

「はーい!僕春原陽平ッス。春原は春の原っぱって書くッス」

 

「まぁ、綺麗なお名前ですね。」

 

あ、杏が手挙げた。まぁここで春原にダメージ与えるのがアイツだよな。

 

「先生、春原くんはアホです。」

 

「余計なこと言うなーッ!」

 

「どーせすぐバレるだろ。」

 

春原、よく考えろ俺より朋也の方が酷いと思うぞ。

 

「春原くん、元気でカバーです!」

 

早苗さん、それフォローになってないから……

 

 

「三浦綱汰です。学校では寝るか飯食ってます。よろしくー。」

 

「はい、寝る子は育つ。ですね♪」

 

この人ホント楽しそうだよなぁ。

 

 

 

そして自己紹介は進んでいって、授業が始まったらしい。らしい、と言うのは気付いたら夢の中に入っていたせいで記憶が無いからだ。

 

 

 

 

 

 

 

「美佐枝さんってさ、創立者祭来る?」

 

「んー、そうねぇ仕事もあるし、行くとしたら少しの間になるわね。」

 

そう答えながら、お茶の給仕をしてくれている。

 

「そっか、じゃあ来る時間とかも分かんないか。」

 

「ニャ~」

 

「お前は来る気満々か?」

 

「ニャー」

 

「止めてよ、ソイツ誘うの……探すの大変なんだから。」

 

「分かってるよ。ほれ、さっき買ってきたチーカマやるぞ~」

 

「ニャッ!」

 

「もう……」

 

 

その日は美佐枝さんのとこの猫と戯れてから家に帰った。

 

 

 

 

 

この日の夜になっても、伊吹風子という少女について思い出せることがなかったのは俺の記憶力が貧弱なせいなのだろうか。

 

 




ことみを入部させといて自分は入らない→おかしいよなぁ?

朋也の方が春原の扱いが酷い?気のせいじゃね?

風子のこと思い出せない→きっと世界の修正力って奴のせいなんだ!
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