真剣で俺たちで野球をしよう。チーム名はリトルバスターズだ!   作:あるく天然記念物

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苦節8年。
ようやく原作を購入したので更新です。


バイト勝負! (後編)

 小雪&大和 ヤドカリさんにマシュマロを与えてはいけませんチーム。

 

「いらしゃいませー」

「ませー」

 自動ドアの開閉音と共に、二人は決められたフレーズを口にする。

 二人が勤めているのは学園近くのコンビニエンスストア。なんの変哲もなければ、ごくあり触れた店舗だ。

「はい、合計で1,058円となります。袋はいりますか?」

「はーい、今ならオマケでマシュマロつけるね~」

 暇すぎず、忙しすぎない。適度な来客頻度により、二人は過不足無く働くことができた。

 意外にも、大和はマニュアル通りの仕事に適正があったようで、大きなミスもなく来客対応をこなしている。

 前2チームの失態とら比べるまでもない程に順調だ。

 いや、前の2チームが『意味不明☆』過ぎたのだ。

「ふぅ、一先ずピークは過ぎたかな」

「お疲れー。大和、マシュマロ食べる?」

「ありがとう、榊原さん。いただくよ」

 お昼のピークタイムを過ぎ、小雪の差し出すマシュマロを受け取り口に含む大和。

 程よい甘さが口一杯に広がり、疲れた身体にちょうどいい。

 これで午後も頑張れそうだ。

「さてと、俺は品出しに行くから、榊原さんはこのままレジをお願いね」

「任されたよー。あっ、マシュマロは多めに出してね」

「いいよー………って、榊原さんが食べたいだけじゃん!」

「アハハハ、大和も好きなお菓子を多めに出したら? ほら、このヤドカリ印のポテトチップとか面白そうだよ?」

「…………詳しく商品を見ようじゃないか」

「わー、スゴい食い付き」

 冗談で誘ったら思いがけない大物が釣れてしまった。

 それから二人は悪のりした。

 具体的には店舗の在庫をあさり、あるだけの『マシュマロ』と『ヤドカリ印のポテトチップ』を販売。レジ横に置くどころか、勝手に外で販売フェアを開催する事態にまで発展。

 これはやらかした、と。夕方の頃に冷静さを取り戻した大和は冷や汗をかいた。

 店舗の外と内で大々的にピックアップされたヤドカリ印のポテトチップとマシュマロ。これは直ぐに片付けられるものではない。

「直江くん、榊原ちゃん。これは一体」

「てっ、店長」

「おー、お疲れ店長ー」

 なんでだろうか、不幸は重なる。

 どうしようと悩む二人の前へ、店長が姿を表したのだ。

 店長は店舗の様子を一瞥すると、直ぐ様視線を二人へと向けた。

「なるほどね………直江くん、榊原ちゃん」

 ゆっくりと二人に近づく店長。その顔は酷い笑顔だった。

 元来、笑顔というのは威嚇を目的としたものであると、この瞬間に二人は理解した。

 ((こっ、殺される!?))

 ほぼ一般人の大和だけでなく、武人に両足突っ込んでいる小雪もビビった。

「二人とも…………」

 二人の肩に、店長の手が置かれる。

「……………すっ、すみま」

「ごめんな───」

 反射的に二人は謝ろうとした。

 が、それは不要だった。

「よくやった!!!!」

「「…………え?」」

 ポカンと、呆気に取られる二人が目に入っていないのか、テンションを上げて店長は語りかける。

「いやー、今月新商品の『ヤドカリ印のポテトチップ』をどう売り込もうか試案してたんだけど、まさか君たち二人でしてくれるなんて」

「えっと…………」

「これはもしや、怒ってない?」

 小雪の問いかけに、こんどは店長がポカンとした表情を浮かべた。

「怒る? とんでもない、君たちはこのコンビニの救世主だよ!! いやー、本当に助かった!!」

「えっと………結果」

「おーらい?」

 

 その後、店長はこの日を境に『ヤドカリ印のポテトチップ』を全面にプッシュし、川神市一の売上を記録することとなる。

 

 本日の給料 一人20,000円(臨時ボーナス含め)

 

「あっ、榊原さん。折角だからメアド交換しない? 今後もリトルバスターズとは懇意にしたいから」

「恭介も教えたんでしょ、いいよー」

 

 ついでに大和は小雪のメールアドレスを手に入れた。

 

……………。

 

………。

 

 川神姉《川神最強の微女》&モロ&宮&由紀江 微女と日陰の勇者たちチーム。

 

 場所はとある工事現場。

 ここに、四人の労働者が集結していた。

 

「よーし、普段から働いているここは私のホームグラウンド。オマケに私好みの女の子二人と一緒。棗には悪いが、今回は私の勝ちだな」

 

 鳶職の服を着込み、不適な笑みを浮かべる川神姉《川神最強の微女》は元気よく現場へと駆け出す。

 その様子を菌糸類二名と、なんちゃって腹話術師が呆れた目で見つめていた。

「モモ先輩、普段から僕たちに借金しては土方で働いてるから、本当に作業着が似合ってるなぁ。インドアな僕は、少しキツイや」

「借金を普段から作るのはどうかと思うけど、言うだけあって、手際がいい。これは私もうかうかしてられない」

「そ、そうですね、京さん。勝負に勝つためにも、頑張りましょう」

『そうだぜー、まゆっち。勝ったご褒美に恭介から褒め手もらうんだぜー!!』

「なるほど、そういう狙いね、まゆっち。油断してた。これからは二人とも私の敵ね」

「みみ、京さん?! こここ、これは松風が勝手に──」

「さて、早速働くとしますか」

「聞いて下さい~!!」

「うーん。僕だけじゃ、ツッコミが足りないや。ついでに体力も足りなくなりそう」

「おめぇら、そろそろ作業始めるぞー!」

「「「はーい」」」

 現場監督から声をかけられ、三人は集合する。

 簡単な準備体操を全員で行い、作業内容についてのミーティングを行う。

 それから始まる作業の数時間、現場は川神姉《川神最強の微女》の独壇場だった。

「おーい、こっちにボルト持ってきてくれ!!」

「任せろ、直ぐに持っていく!」

「すまねぇ、補強用のワイヤーを補充してくれ!」

「分かった。数分で勝ってきてやろう」

「おーい、誰か港に手配した鉄筋を取りに行って──「これでいいか?」──早ぇな、おい」

 まさに電光石火の早業。

 元からなれていた事もあり、川神姉《川神最強の微女》の活躍は凄まじいものだ。

 その光景に、美少女(本物)二人の心は折れそうであった。

「ねぇ、まゆっち。私たちあれに勝てそう?」

「………少し、難しいかと」

『あれに勝つには事故とか、不足の事態が起きないと無理じゃね?』

 黙々と作業しながら、二人は少しだけため息を着いた。

 別に二人が活躍していない訳ではない。寧ろ、一般的な作業員の数倍は動いている。

 だが、そこは《川神最強の微女》。二人の数十倍の勢いで仕事を完璧にこなしていた。

 さらに今回の現場作業は出来高払い。活躍=給金という状況に、二人は川神姉《川神最強の微女》に勝つイメージがついぞ浮かんでこなかった。

 武人二人が落ち込む最中、モロは別口で勝負を仕掛けていた。

 というより、モロは現場に出ていない。では何処にいるのかと問われたら、

「…………よし、これでメンバーの名前と希望休のデータを入力すれば、後は自動的にシフトを組んでくれます」

「おぉ、本当かね? では早速…………本当だ! ちゃんとシフトができてる、スゲー!!」

「さらに突発的な休みが発生した場合には、追加で勤務につけそうな人を検索できるオプションをつけておきました」

「いやー、至れり尽くせりで申し訳ないね、師岡君。バイト代は本社に掛け合って弾むようにするよ」

「えっ、本当ですか。ありがとうございます! なんか、現場作業していないのに、申し訳ありません」

「いいっていいって。寧ろ人手より事務関係ができる人の方が川神市だと貴重なんだから。君は自信をもっていい」

 現場監督から少し強めに肩を叩かれるモロ。

 インドアな彼にはダメージが大きいが、正面から褒められてる事もあり、かなり嬉しそうだ。

 モロは現在、現場監督が作業するプレハブ小屋で仕事をしていた。

 なぜそうなったのか。それは大和ほどではないが、モロも頭がいいからだ。

 モロは作業開始と同時に自分では現場作業についていけないことを瞬時に悟り、現場監督に事務作業の手伝いを打診したのだ。

 元からパソコン関係においてソフトウェア方面でも強かったモロは直ぐ様現場監督に気に入られ、事務処理関係の仕事を受けた。

 熱気の籠りやすいプレハブ故にエアコンは完備。お日様に照らされながら仕事をするよりも、遥かに快適な仕事環境にモロのやる気は高い状態を維持できた。

 そこからはトントン拍子に仕事を片付け、片手間に便利なACCESSデータを作成するのに至ったのだ。

 これには現場監督もニッコリである。

「それじゃあ師岡君は先に昼してて。ほら、このジュースはオジサンからのサービスだ。他の人には内緒だぞ?」

「あはは、何から何までありがとうございます」

「なーに、他の人たちも、もう少ししたら昼休憩にも入る。そこまで気負う必要はねぇよ。んじゃ、午後からもよろしくな」

「はい!」

 川神姉《川神最強の微女》が現場で、モロが裏方で大活躍し、その日陰でリトルバスターズ二名が細々と仕事をこなす。

 トラブルなどは一切無かった。無かったのだが、約二名の心には小さくないダメージが残る結果となった。

「本日の作業終了!!」

「「「「お疲れさまでした!!」」」」

 

 本日の給料 100,000円(川神最強の微女)

       一人30,000円(リトルバスターズ二名)

       200,000円(モロ)

 

 本日のMVP システム開発のモロ。

 封筒の額面を見た三人が、モロの前にひれ伏した。

「………ハハッ。私は圧倒的アドバンテージがあっても、インドアなモロにすら勝てないのか」

「もっ、モモ先輩。たまたまですって!」

「まゆっち、私たち頑張ったよね?」

「そうですね。川神先輩と師岡さんと比べたらミジンコですけど、ね」

『まゆっち………すまねぇ、こういうときはそっとしかできねぇ』

「あぁもう!! 誰かツッコミの手を貸してー!!」

 

 現場の中心で、モロは叫ぶ。

 負けるなモロ。君は今日のMVPなのだから。

 

……………。

 

………。

 

 風間&恭介 冒険王に俺はなるチーム。

 

 遂にアルバイト勝負大トリの出番。

 互いにチームのリーダーにして、少年の心を胸に抱く二人。

 冒険家を目指す風間。

 集◯社の入社が決まった恭介。

 今宵、真のリーダーが決まる!!

 しかし、流石は風間ファミリー、リトルバスターズのリーダーと言うべきだ。

 なにせ彼らの勝負は、普通の枠になど収まらないのだから。

 場所は川神市の中心街。

 ここに、二人の少年が解き放たれた。

「棗先輩、バイト先はどうしますか?」

「そうだな。普通に宅配や店員、現場作業員なんかはありきたりだしな。なにより」

「あぁ」

「「面白さが足りない!!」」

「だよなっ。棗先輩もそう思うよな!」

「勿論だ。となれば、普通じゃないバイトをしよう」

「おお!! …………って、普通じゃないバイト?」

「あぁ。────これを使った交通調査だ!!」

 恭介はポケットに手をいれ、あるものを2本取り出す。

 それは淡い黄色色をした物体。通称、藁と呼ばれるものだった。

 その藁の内1本を風間へと差し出した。

「時に風間、藁しべ長者を知っているか?」

「そりゃ知ってるが。それと交通調査のバイトがどう関係するんだよ、棗先輩」

 差し出された藁を受け取りつつ、訝しげな表情を浮かべる風間。

 どうやら意図に気づけない様子のため、恭介は説明を続ける。

「交通調査の傍ら、気になることを調査しようと思ってな」

「気になること?」

「あぁ、交通調査は沢山の人とすれ違う。そこで藁しべ交換したら………最終的に何になるか気にならないか?」

「そんなの───めっちゃ気になるじゃねぇかっ!! 流石は棗先輩。早速とりかかろうぜ!」

「そう来なくっちゃな! それじゃ、本作戦を『藁しべ大作戦』と命名する。オペレーションスタート!!」

「おう!!」

 

 かくしてオペレーション『藁しべ大作戦』が実行された。

 恭介と風間は市街地の東西に別れ、交通調査の傍らで道行く人へ声をかけるのだった。

 おい、勝負は何処に行ったよ。

 

 本日の給料 一人10,000円(藁しべの結果:?)

 

……………。

 

………。

 

 翌日。

 激闘の1日(約8年ぐらい働いた気がする)を乗り越えたリトルバスターズと風間ファミリーの面々は成果発表のため、川神学園のグラウンドに集合した。

 しかし、ここで思わぬアクシデントが起きた。

 なんと、謙吾と川神妹、そしてフリードリヒの三名がいきなり土下座を披露してきたのだ。

 流石の出来事に、俺でもビックリだ。

 川神妹とフリードリヒについては風間ファミリーが対応するとして、俺たちは謙吾に事情を聞く。

「謙吾。お前、何があったんだ?」

「恭介。何も聞かずに俺の給料を受け取ってくれ」

「いや、受け取れって言われてもその態度で………」

「はーい、僕が受け取るねー」

 差し出された給料袋。

 厚みは一切無く、じゃらじゃらと音がした。

 俺が受け取る前に、掠めとるような形で小雪が受け取る。

 そして袋を逆さにし、出てきたのは───380円だけだった。

「おぉー、小銭だけだ」

「謙吾、お前どうしちまったんだよ?」

「真人…………俺を笑ってくれ」

「いや、笑えねぇよ」

 1日働いてお小遣いしか稼げないなど、真面目な謙吾では考えられない事態だ。

 あまりの状況に、真人ですら謙吾の心配をする始末。

「まあ、あれだ。風邪とか引いてたんだろ? ほら、俺も2,000円しか稼げなかったけど、これでラーメンでも食べに行こうぜ。俺、おごるからよぉ。元気出せって、謙吾」

「…………頼む!! 俺を思い切りバカにして、そして笑ってくれ!!」

「だから笑えねぇんだよ、この状況と金額ッ!!」

「そこをなんとか!! お前が真面目に稼いでいるのに、俺がこの始末など、穴があったら入りたいのだ!!」

「落ち着けって、謙吾。バカ真面目なお前の事だから、何か事情があるんだろ? だから気にすんなって、なぁ小雪?」

「そうそうー。僕はしっかり20,000円稼いだけど、謙吾は何か事情があったんだよねー。ねぇ、まゆっち?」

「そっ、そうですよ、謙吾さん。私は30,000円稼いできましたので、トータルに関しては気にする必要は無いですよ。ねぇ、京さん?」

「そうそう。私も30,00円稼いだから、小銭しか稼げなかった謙吾は安心して」

「………………もう、いっそのこと◯してくれ」

 お前ら、トドメをさしてどうするんだよ。

 俺を除き、全員の稼いだ金額を聞いた謙吾は真っ白な灰となり、地べたに座り込んでしまった。

「全く、お前ら。謙吾の気持ちを考えて自慢しろよ」

「そういう恭介はいくら稼いだのー?」

「俺か? 俺は10,000円だが、ちょっとしたサプライズがあるぜ」

「サプライズ? 筋肉増強マシーンでも見つけたか?」

「流石に筋肉増強マシーンは見つからなかったが、おいおいな。そろそろ風間ファミリーも落ち着いた頃だろ」

 風間ファミリーの方を見れば、謙吾と同じように川神妹とフリードリヒが真っ白な灰となり、地面に倒れていた。

 どうやら、二人とも謙吾と似たり寄ったりの金額しか稼げなかったようだな。

 一先ず謙吾を含め三人を木陰に移動させ、改めて金額発表へと移る。

「さて、お楽しみの金額発表だ。先ずは風間ファミリーからしてくれるか?」

「おう!! これが俺たちの稼いだ合計金額だ!!」

 風間が電卓の画面を俺たちへと向ける。

 そこに表示された金額は────332,760円。

 かなりの大金だ。

 内訳も見させてもらったが、川神姉《川神最強の微女》だけでなく、まさか師岡が半分以上稼いでいるとは。これは良い意味で予想外だ。

「さーて、次は棗先輩たちの番だぜ」

「おう。俺たちが頑張った結果を見よ!!」

 俺は全員の給与を計算した電卓を風間ファミリーへと見せた。

 その金額は────92,380円

 風間ファミリーの三分の一金額だ。

「ふ………ふふ………あーハッハッハッハッハッ!! 棗、今回こそ、私の勝ちだな!! しかも、私一人で、リトルバスターズの合計金額すら上回っている。まさに完全勝利だ!!」

 金額を見るや否や、川神姉が高らかに笑う。

 すっげぇ嬉しそうだ。いや、事実嬉しいんだろうな。

「確かに、給与の合計は風間ファミリーが上だな」

「棗、負け惜しみか?」

「いやいや、勝負は最後まで分からないから、燃えるんじゃないか」

「はぁ? 燃えるも何も、金額からお前達の敗けだろ」

「額面はな。風間、最後のサプライズ勝負といこうぜ」

「待ってました!!」

 川神姉を横にズラし、改めて風間と向き合う。

 そう、これから行うのは『藁しべ大作戦』の結果報告だ!!

「風間、良いものと交換できたか?」

「勿論だぜ、棗先輩。これを含めて、俺たちの完全勝利とさせてもらうぜ」

「そう簡単には譲れないな。では─────」

「「勝負!!」」

 俺と風間は互いに藁しべの結果を見せ合う。

 風間が手にしていたのは何かの鍵。

 対する俺が手にしていたのはペラペラの紙一枚。

「「……………」」

 数秒間、無言で見つめ合う俺たち。

「………ふっ」

 そして決着の時が訪れた。

 一人がガクッ、と。片ひざをつく。

「流石だ────棗先輩。俺の完敗だ」

「いや、たまたまさ。たまたま運が俺に味方してくれただけだぜ、風間。ナイスファイト」

 俺は右手を風間へと差し出し、その手を風間はしっかりと握り返す。

 俺たちの間には、少年誌特有の友情が芽生えていた。

「なぁ、小雪。あれってなにやってるんだ?」

「ごめんね、真人。恭介とは長い付き合いだけど、未だに意☆味☆不☆明☆って、なることが多いから分かんない」

「小雪さんでも分からないとなると、私たちでは分かりっこないですね」

「そうね。でも、勝負相手にも手を貸す恭介は素敵。結婚しよ?」

「おっと、オペレーション『藁しべ大作戦』は俺と風間しか知らないことを忘れてたわ。ついでに京、結婚についてはまた今度な」

「………ぐすん」

 見渡せば川神姉を除いて全員がポカンとしてやがる。

 改めて、俺は風間とバイトとは別に行った『藁しべ大作戦』について説明し、互いが最終的に手に入れたものを発表した。

「負けた俺からいかせてもらうぜ、棗先輩。俺が最終的に手に入れたのは《クルーザー》だ!!」

「「「「クルーザーッ?!」」」」

「流石は風間だな。良いものと交換している。対して俺が手に入れたのは《川神市一等地の土地》だ!!」

「「「「『一等地の土地?!』」」」」

「ちょっ、キャップ、クルーザー手に入れてたの?!」

「いやいや待てヤマト。キャップもそうだが、俺様の耳には棗先輩が土地を手に入れたって聞こえたぞ?!」

「僕もそう聞こえた。何をやったら藁から土地が錬成できるのさ」

「…………弟よ、私は先に帰る。なんか、10万円で勝った気でいたのが恥ずかしくなった」

「ちょ、姉さん?!」

 阿鼻叫喚となる風間ファミリー。

 だが、騒いでいるのは彼らだけではなかった。

 俺たちのリトルバスターズだって、

「スッゲー!! 土地だってよ、小雪。早速筋トレジムとか建てようぜ」

「ちょっと真人、それはダメ」

「なんだ京、筋トレジムに不満あるってのか?」

「大有り。せっかく恭介が手に入れたのだから、ここは私との新居を建てないと」

「み、京さん。まだ恭介さんが京さんと結婚するって訳ではないのですから」

『そうだぜー。もしかしたらまゆっちとの愛の巣が建設されるかもしれないんだから』

「こっ、こら松風!!」

「わー、みんな大盛り上がりだね、恭介」

「だな。つーか、なんで皆建物を建てる気でいるんだ? あくまでも土地が手に入っただけで、建物を建てる金なんざミジンコもねぇぞ?」

「だよねー。本当に不思議ー」

 ワイワイ、ガヤガヤ、と。風間ファミリーに負けず劣らずの勢いで楽しそうに騒いでいる。

 なんか勝負のことなど虚空の彼方に消えてしまいそうな勢いだが、勝敗はキチッと決めるとしよう。

「さて、時価総額で計算するとクルーザーが大体2億ぐらいで、土地は坪単価から3億か」

「多分そのぐらいだと思うぜ。クルーザーについては新品じゃないから、少し値は落ちそうだけど」

「まっ、厳密な計算は不要だろう。俺も古物商の資格がある訳じゃないし。ということで、《藁しべ大作戦》を加味すれば、勝負の結果は以下の通りだな」

 

 最終結果

 風間ファミリー 2億と332,760円

 リトルバスターズ 3億と92,380円

 結果 リトルバスターズの勝利!!

 

「やったー。僕たちの勝利だー。真人、イェーイ!!」

「イェーイ!! やったな、小雪!! 俺の筋肉も喜んでるぜ!!」

「私は恭介がいるから、負けることは心配してなかった」

「そ、そうですね。でも恭介さん、本当に凄いです」

『というか、どうやったら1日に3億も稼げるんだ?』

 結果報告に喜ぶリトルバスターズの面々。

 対する風間ファミリーと言えば、

「いやー、負けちまったなヤマト。俺ももう少し時間があれば飛行機とかと交換できたんだけどなぁ、すまねぇ」

「いやいや、キャップ。負けたとしても2億なんて大金稼げた時点で凄いから」

「だな。二千円の俺が言うのもあれだが、寧ろ野球道具買っても余裕で余るだろ」

「言えてる。まあ僕も社会の役に立てたし、欲しいパーツも買えそうだから言うことは無いね」

「お前ら………ありがとよ!! ところでヤマト、モモ先輩やワンコはどうした?」

「あぁ、姉さんはキャップと棗先輩の稼いだ金額に気落ちして先に帰っちゃった。ワンコとクリスは向こうの宮沢さんと同じように小銭しか稼げなかったことにひどく落ち込んでるみたい」

「ワンコはともかく、クリスも小銭組かよ。………よしっ、ここは一番稼いだ俺が一肌脱ぐか。お前ら、寿司でも食いにいこうぜ!!」

 こちらもこちらで丸く収まったみたいだな。

 勝敗の結果に限らず、皆楽しそうでよかったぜ。

「んじゃ、俺たちも祝勝会といくか」

「「「「『賛成!!』」」」」

 

……………。

 

………。

 

 風間ファミリーには後日、野球道具を買って貰うことを約束し、俺たちは真人の提案でラーメンを食いに行くことになった。

 ラーメン屋へと行く道中、俺は小雪に問いかけた。

「小雪、今日は楽しかったか?」

「うん!!」

 笑顔で返事をする小雪。

 この笑顔だけでも、バイト勝負をしたかいがあった。

 しかも聞けば、直江とメールアドレスを交換するぐらいには仲良くなれたとのこと。

 着実にリトルバスターズだけではない友人が増えていることに、俺は喜びを感じる。

 彼と同じように成長しているんだな、小雪。

「そうか。新しい出会いは大切にな、小雪」

「むふー。当然なのだー」

 優しく頭を撫でれば、小雪は笑顔で胸を張る。

 もう少し時間は掛かるだろうが、彼と同じ一人前になるまでは俺がしっかりと面倒を見なければな。

「おーい、恭介、小雪!! 置いていくぞー」

「恭介、小雪。早く早く」

「お二人とも、大丈夫ですか?」

「小雪、恭介。そろそろ真人が暴れそうだから早くこい」

 おっと、他のメンバーを放って置きすぎたか。

 見れば真人がピョンピョン跳ねており、それを呆れ顔で謙吾が頭を抱えている。

 このままだとラーメン屋行く前に決闘になっちまうな。

「っと、みんながお待ちかねだ。行こうぜ、小雪」

「おー!」

 新たな決意を胸に、俺たちはみんなの元へと向かうのだった。

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