真剣で俺たちで野球をしよう。チーム名はリトルバスターズだ! 作:あるく天然記念物
あと、みんなリトルバスターズやマジ恋大好きだね!!
「さぁて、お前ら、今日も張り切って、ミッションスタートだ!!」
「「「「「「「『おー!!』」」」」」」」
恭介の掛け声と共に、僕たちはグラウンドに広がった。
野球の試合まで一週間を切った土曜の昼。
僕たちリトルバスターズは英雄コーチ指導のもと、練習に精を出していた。
「では、真人と謙吾はグラウンドの外周ランニング。他の者は準備運動の後、キャッチボールを始めよ。くれぐれも、怪我をしないよーにっ!!」
「よっしゃー!! 行こうぜ、謙吾。あ、それ筋肉! 筋肉! 筋肉! 筋肉!」
「おっ、真人、今日も元気一杯だな。俺も、筋肉! 筋肉! 筋肉! 筋肉!」
「「筋肉! 筋肉! 筋肉! 筋肉っ!!」」
珍しいことに、真人だけではなく、謙吾もバカになって練習に取り組んでいます。
何故そうなったのか。
理由は、謙吾の所属する剣道部は先週、無事に新人戦が終わたからだ。
謙吾は実直な人間で、オンオフをキチンと切り替える。
なので、リトルバスターズの野球の試合まで、謙吾を縛る剣道部の練習が無いため、それまでの間は全力で遊ぶようになりました。
いつの間に作っていたのか、剣道の胴着の上から自作のリトルバスターズマークを入れたジャンパーを羽織る徹底ぶり。
ちなみに僕はお願いして一枚貰いました。普通にデザインが良いため、お気に入りかつ、僕の大事な宝物です。
「よーし、小雪。俺とキャッチボールしようぜ」
「いいよー」
準備運動を終え、恭介の誘いを受けて一緒にキャッチボールを始める。
「おっ、最初の頃と比べると、だいぶ様になってきたな」
「えへへー、まぁねー」
一週間前まではぎこちなかった動きも、今ではスムーズにできるようになった。
始めた当初など、よく真人の顔面にぶつけたものだ。
何事も継続が大事だね。
そうして恭介とキャッチボールを十分ほど行った頃、私たちより念入りな(九鬼オススメ)武術関係者用準備運動を終えた京とまゆっちがやって来た。
「恭介ー、私も混ぜて混ぜてー。そして挙式もお願い」
「恭介さん、私もお願いできますか?」
「なんだ、結婚はしないが、お前らも俺としたいのか」
「そんなしたいだなんて……ポッ」
「(無視しながら)よし、まゆっち、俺と一緒にしようぜ」
「ほほ、本当ですか! でしたら、よろしくお願いします」
『よかったな、まゆっちー』
「松風も、後で遊ぼうな」
『おう、楽しみにしとくぜー』
恭介は仲良く、まゆっちと松風と共にキャッチボールを始めた。
「…………」
その様子を、京は寂しそうな表情で見つめることしかできなかった。
いや、後悔するならはじめからしなければ良いのに、と思ったのは内緒だ。
しょうがないので、僕は京を誘う。
「京ー、僕と一緒にしようぜー」
「小雪…………ありがとう」
「いえいえー」
京とキャッチボールをして十数分。
今度は、ランニングを終えた筋肉コンビがやって来た。
「小雪ー!! 筋肉さんとも一緒にキャッチボールしようぜっ!!」
「待て真人、お前はこの前も一緒にしていただろう。今回は俺が小雪と遊ぶ番だ!!」
「えー………たく、しょうがねぇな。んじゃ、京。俺としてくれや」
真人が謙吾に譲り、京を誘う。
京も頷き真人へと返した。
「オッケー。じゃ、小雪、また後でね」
「はいよー。さてさて、謙吾、遊ぼー」
「おう!!」
それから謙吾と一緒にキャッチボールを始める。
遊び人状態の謙吾は、それはもう楽しさ全開だ。
「アハハハハッ、楽しいな、小雪!!」
「うん、そうだねー」
僕がボールを投げる度に「上手くなったな!!」や、「凄いぞ!!」とか、「プロ顔負けだな!!」なんて言って褒めてくる。
しかも目を輝かせながら本心で言ってくるため、背中が痒くて仕方がない。
まあ、嫌ではないし、嬉しいんだけどね。
「よーし、皆のもの、集合!!」
謙吾とのキャッチボールでようやく肩が温まった頃、英雄から召集がかかる。
グラウンド中に広がっていた僕たちは英雄のいるホームベースへと集まった。
「さて、これから試合まで一週間を切った。よって、これよりポジションを決めての練習を開始する。あずみ、例のものを」
「はい、英雄様!!」
英雄が声をかけると、あずみはいつの間に準備していたのか、グラウンドにホワイトボードを持ってきた。
というか、先程まで影も形もなかった筈だ。
英雄は付属されたマーカーを使い、色々と名前や線を書き込んでいく。
「先ず、貴様らのポジションを、我が適正を鑑みて決めさせてもらった」
「おっ、遂にポジション決定か。いいねぇ、野球らしくなってきたぜっ」
真人の言葉に、みんなが頷く。
本当に、みんなでする野球が始まった気がした。
「折角だ。先ずは真人、貴様のポジションはファーストだ」
「おっしゃ!! …………って、英雄、ファーストって右と左どっちだ?」
「………………」
真人の発言に、普段は常に余裕な表情を浮かべる英雄が悲しそうに頭を抱えた。
ごめんね、英雄。真人に悪気は無いんだ。
ただ英語が本当にダメなだけなのだ。
数秒後、英雄はどうにか飲み込めたのか、頭を抱えた手を腰に当て説明を続けた。
「真人、貴様に分かりやすく説明すれば、ホームベースから見てお箸を持つ方の手が一塁で、貴様のポジションだ」
「となれば………右だな。わかった!!」
流石は英雄だ。
頭が筋肉でできている真人に一発で説明を済ませるなんて並みの手腕ではない。
「さて、改めてポジションを伝えていくぞ」
残りのメンバーは真人みたいな説明は不要なため、パパっと、説明をしていく。
「続いてセカンドは謙吾、貴様に頼みたい」
「真人の隣か。任せておけ」
「サードは棗先輩、貴方にお願いしたい」
「オーケー。任せとけよ」
「ショートは、この我が引き受けよう」
瞬間、グラウンドの空気が固まった。
英雄とあずみ、そしてなぜか謙吾だけが涼しい顔をしている。
そんな空気の中、固まったメンバーを代表し、恭介が声をあげた。
「それは頼もしいが、大丈夫か?」
実際、英雄の利き手の怪我はひどい状態だ。彼は涼しい顔をしているが、日常的に鈍痛が襲っている。武道や全力投球なんてした日にはとてつもない痛みが襲い、場合によっては手術にもなりかねない程だ。
だが、心配された英雄はいつもの様子で、恭介へと返答する。
「無論だ。棗先輩の心配はかたじけないが、我1人だけベンチは嫌だからなっ」
「嫌って言っても…なぁ」
「安心せよ。我とて無策ではない。既に片手送球のやり方については経験のある謙吾に聞いている。万事抜かりはない!!」
英雄に同意するように、謙吾が頷く。
その謙吾を見て、僕は思い出した。
「そういえば、謙吾が骨折した時、どうしても僕たちと遊びたくて編み出したんだっけー」
「よく覚えているな、小雪。その通りだ」
中学生の頃、謙吾は真人との衝突で利き手を骨折したことがあった。
その時は大騒ぎにもなったが、当の謙吾本人が「治るまでリトルバスターズで遊び放題だ。やったー!!!!」と喜ぶ始末で呆れたっけ。
しかし、当然ながら怪我をしている謙吾は激しい遊びなんて出来ない。キャッチボールや野球でのけ者になったとき、謙吾は参加したいと駄々をこね、遂に片手送球と打法を編み出すまでに至ったのだ。
そんな謙吾の編み出した片手技を全国レベルの英雄が扱えるのであれば、特に問題は無いだろう。
「そう言うわけだ、恭介。既に英雄は俺の片手送球と打法はマスターしている。問題は無い」
「謙吾の言うように、我については心配無用だ」
二人からの説明に、恭介は苦笑いを浮かべるしかなかった。
「わかったわかった。ただし、怪我しそうになったらリーダーとして、お前を止めるからな」
「それについて、我に異論はない。リーダーに従おう。さて、説明の続きだな。あずみ」
「はい、英雄!!」
あずみからペンを受け取り、再び英雄含め、全員の視線がホワイトボードへと移る。
「続くライトは小雪だ」
「りょうかーい」
僕のポジションはライトか。頑張らないとね。
「レフトは由紀江だ。人数が8人ゆえに、センターは松風と言うことになる。大変だが、二人とも頼んだぞ」
「わわ、分かりました」
『了解!! 俺の分まで、まゆっち、頼んだゼ』
「松風の分までがんばります!!」
体力面と速力から僕とまゆっちならセンターも余裕でカバーできるだろう。
やっぱり、英雄の采配は上手いと、改めて感じた。
「よし。そしてピッチャーだが、京に頼む」
「私? 別に構わないけど、いいの?」
「むしろ他のメンバーよりも弓術で磨かれ、コントロールがスバ抜けている貴様にしか頼めん。これから一週間で、キャッチャーとなるあずみ主導のもと、各種変化球を覚えてもらうぞ」
「そう言うことですので、今日からビシバシ行きますよ」
「京だけにっ……てか?」
「「「「「『………………』」」」」」
空気が、完全に凍った。
真人、今のはさすがに無いよ。
「あれ?」
「…………シッ!!」
「ギィヤアアアアアア──────ッ!!」
唐突に話を遮られた上に、寒いギャグまで言われたあずみは、英雄の前だと言うのに容赦なくハイキックを真人の顔面へと叩き込んだ。
数メートル吹っ飛ぶ真人。その姿に、誰もが思った。
自業自得、と。
常人なら病院送りの一撃であるが、そこは流石真人。首を数回さするだけで、大きな怪我はなかった。
「くっそー、ただ場を和ませようとしただけじゃねえかっ」
「今のは真人、お前が完全に悪い」
「でもよぉ、恭介ー」
「さすがに僕も擁護できないねー」
「小雪まで?!」
「真人、ボケるのは時と場合を考えてな」
「謙吾?!」
「真人、少しは反省して」
「真人さん、その………今のは流石に私でもアウトと思います」
『男としてあり得ねぇな』
「松風!!」
「京にまゆっちもかよ?! 総スカンじゃねぇか!! あーもう、ごめんなさいでしたー!!」
流石に全員からダメ出しされたことで、真人は素直に謝罪をした。
それを見届けた英雄は、再び説明を始めた。
「さて、一部トラブルがあったが、ポジション発表は以上だ。これから各々のポジションで守備練習を行う。送球の弾道は以下の通りだ」
英雄がホワイトボードにこれからの守備練習の弾道を線で分かりやすく書き記す。
しかし、それはあくまでも経験者が見て分かりやすいだけだ。
初心者には少し、
「何だが、難しそうだねぇ……」
僕の言葉に、真人が頷いた。
「確かにな。今まで英雄の指導があったにしろ、好き勝手バラバラやってきたのに、いきなりそんなんできんのかよ……」
真人の心配はもっともだった。何しろ、遊びではない、本格的な練習なんて僕らにとって始めての経験。不安になるのも当然だ。
だが、ここで待ったをかけた人物が現れた。
僕らのリーダー、恭介だ。
「心配いらないさ。すでにこの短期間で、みんなの心はひとつになっている筈だ」
恭介は英雄達を含め、全員を見渡して問いかけた。
「例えば……お前たち、目玉焼きには何を掛ける?」
それぞれが答えていく。
先陣は僕だ。
「僕、ケチャップー」
続いて京。
「特性ハバネロ濃縮還元デスソース」
次にまゆっち。
「しょうゆ、ですね」
そのつぎ謙吾。
「俺は塩コショウだな」
それから英雄。
「我はこしょうとしょうゆ、だな」
最後にあずみ。
「私は英雄様には申し訳ありませんが、ソースです」
全員の回答を聞いた恭介が、僕と真人への方を向く。
「どうだ」
「見事にバラバラだねー」
「あぁ、正直俺もビビったぜ……」
どうやら恭介にとっても予想外の出来事だったようだ。
しかし、ただでは起きないのが恭介だ。
「だが、誰1人として被らないと言うことは、ある意味『全員が違う』という事で統一されている、ということでもある」
「少し強引すぎない?」
恭助には悪いけど、ちょっと同意しにくかった。
「しかし、ケチャップとソースなんてありえるのか? 初耳だぞ」
謙吾の純粋な問いかけに、あずみは意外そうな表情を浮かべた。
「そうですか? 美味しいですよ」
「そうなのか。いや、俺も色眼鏡で見るのはダメだな。今度試してみるか」
「是非そうしてください」
謙吾とあずみの会話を聴きながら、僕は1人だけ聞き忘れた人物に気づいた。
いの一番に答えそうな彼が、まだ答えていない。
「ちなみに真人はー?」
「あ? 俺は、生」
瞬間、再び空気が凍った。
最初に口を開いたのは京だった。
「ありえない!!!!」
「真人さん、ありえないと思いますっ!!」
『流石にないなー』
「井ノ原さん、最悪ですね」
「我も思う、ない、となっ!!」
「真人、俺も何かをかけた方が旨いと思うぞ」
本日二度目の総スカンだった。
「何でだよっ!! 素材の味が生きてるんだよっ!! つか、劇物をぶっかける京にだけは言われたかぁねぇっ!!」
「なっ、それは流石に聞き捨てならないよ、真人!!」
「「「「「『確かに!!』」」」」」
「………嘘でしょ?!」
結局そのまま卵談義へと会議の内容は移り変わり、練習の時間が短くなるのだった。
勿論、短くなっても練習は真面目にした。
……………。
………。
練習が終われば、僕たち学園生は平日を迎える。
午前の授業を終え、学食に英雄とあずみを除いたリトルバスターズメンバーが集まることとなった。
別に二人をハブいてはいない。英雄はいつもあずみのお弁当を食べるため、学食に行く必要はないのだ。それに、僕とは違い、彼はクラスの人気者だ。リトルバスターズ以外の付き合いが多いため、今回は欠席となってしまった。
ちなみに事前に恭助から「面白いものを用意しておく」との伝言があり、僕ら全員、もれなく手ぶらだ。
「おっ、お前らやっときたな」
「お待たせ、恭介。お昼ごはんの前に、私はいかが?」
「物理的に腹が膨れないから、また今度な。ほら、お前たちも座れよ」
華麗に京を無視した恭介の座る席にはなにも置かれていなかった。
僕は真人と顔を見合わせた。
「帰る?」
「それもいい手だな、小雪」
「えっと、私はどうしたら………」
何かを感じた僕は真人をつれて離れようとした。
「ちょっと、待て。お前ら、どこに行く気だ?」
しかし、恭助から待ったをかけられしまった。
こうなっては逃げれそうにない。
「まあ、聞け」
結局、僕たち三人も恭介の居る、何もないテーブルについてしまった。
これから何を始めるつもりだろうか。
「今日は、このようなものがある」
恭介は僕たちの前に、何かを差し出した。
それは何か書かれた券だった。
「これってなにー?」
僕はそれを受け取りつつ、内容を確認する。
券には『パン購入1,500円分』と記載されていた。
「これって、どうしたの?」
「購買部のパン購入券を貰ったんだ」
僕の問いかけに答えたのは、券を取り出した恭介ではなく、謙吾だった。
「へぇ、食券と並ぶ学園内の金券じゃーん。貰ったの?」
ここ川神学園において、学生や先生の依頼を受けることができる。
しかし、その際には現金を使用出来ず、代わりに食事に利用できる食券や購買部の発行する券を使用するのだ。
どうやら、謙吾がなにやら頑張ったみたいだ。
「購買部のワゴンを三年が二年を押し退けていてな。しかもその先頭にいたのが、あの川神先輩《川神最強の微女》だったのだ」
どうやら、僕の思っていた以上の重労働だったみたいだ。
大抵川神先輩《川神最強の微女》は他の女子生とにたかっ…………おごって貰うことが多い。
だが、カッコいいお姉さまという外聞を守るため、たまに購買部の安売りパンを狙うことがあるのだ。
その際、我先にと獲物を狙うため怪我人が後をたたない。そこに偶然、謙吾が居合わせてしまったようだ。
謙吾であっても川神先輩《川神最強の微女》を倒すことはできないが、いなすことはできる。
そうして購買部のワゴンを守ったのだろう。
「ソイツらをひっぺがしたり、川神先輩《川神最強の微女》をいなすことが数回あってな」
謙吾のことだ。多分お礼を言われる前に立ち去ったのだろう。
こういうところが、謙吾が学園内で慕われている背景に繋がっているのだろう。
どこかのモテたい筋肉バカに見習わせたいものだ。
「ん? 誰か俺様の噂をしたか?」
「えー、気のせいじゃない?」
「そうか? 誰か俺様ことを言った気がしたんだが………」
「今朝ついに、押し付けるように購買部のおばさんに貰ったのだ」
「なるほどねぇ。謙吾らしいや」
「それで、1人でパンを食べるのも、寂しくてな。恭介に相談したんだ」
「1人2個選べば、大体1,500円ぐらいだろ? 今日の昼飯のお供に2品追加してくれ、という謙吾っちからの粋な計らいだ」
なるほど。謙吾らしい優しさだ。
だが、あえて問題をあげるとすれば、だ。
僕の気持ちを真人が代弁してくれた。
「だが、その購買部のワゴンは、すでに人だかりでうまっている。人が割って入れる余地はないんだが」
「俺たち、野郎はな。けど、ここには女性が三人も居る」
「「「…………なるほど」」」
僕たちの女性陣が、恭介の意図に気がついた。
「そう言うわけだ。三人とも、これをつけてくれ」
恭助から差し出されたのは耳に付けるタイプの無線機だった。
「この無線機から、それぞれのメンバーに指示を出す。取りに行く女性陣は好きなものを。俺たち野郎組はタイミングを伝えてランダムに取って貰ったものを手にする。面白そうだろ?」
確かに、それは面白そうだ。
「振り分けはどうするの?」
「そうだな。ここは公平にじゃんけんで被った者同士で組むか」
こうして、チーム分けじゃんけんが開催された。
「「「「「じゃんけーん、ぽん」」」」」
結果、
「よろしくな、まゆっち」
「まま、任せてください、恭助さん」
「よろしく頼むぞ、京。くれぐれも、怪我だけはしないようにな」
「おっけー。任せといて」
「よっしゃー!! 小雪と一緒ー!!」
「イェーイ!!」
まゆっち&恭助
謙吾&京
真人&僕
以上の振り分けとなった。
「じゃ……ミッションスタート!!」
《ミッションスタート!!》
僕たち三人は小柄な伸長を生かし、ワゴンの人混みの中へと入っていく。
「こちら小雪、潜入成功」
『同じく京、潜入成功』
『ここっ、こちら由紀江、潜入成功です』
「ワゴンの辺りまで来たよー。んで、誰から行く?」
『んじゃ、小雪。俺から行くぜ』
トップバッターは僕の相方、真人からだ。
タイミングを見計らい、指示を待つ。
『っ、小雪、今だ!』
指示のタイミングで、僕はワゴンから獲物を二つ掴みとる。
「手に入れたよー」
小雪は《食パン一斤》と《フランスパン一本》を手に入れた!
『ちょっと待て! どっちも加工前じゃねぇかっ。んなも売るなよ!!』
『食えよ』
『いや、食うけどさぁ、恭介………食パン一斤とフランスパン一本って、もはやメイン通り越して晩飯分もあるぞ……』
本当だね、僕もそう思う。
とりあえず僕は美味しそうな《カツサンド》と、なんで売ってるのか分からない《特選海鮮丼》にしよーっと。
てか、なんでパンの購入券で丼が買えるの? まいっか。
小雪は《カツサンド》と《特選海鮮丼》を手に入れた!
「で、次は誰が行くの?」
『よし、次は俺が行こう』
二番手は恭介みたいだ。
タイミングを計り、恭介がまゆっちへと指示を出す。
『そこだ……』
『あっ、何か手に入れました』
まゆっちは《伊勢海老》と《松阪牛》を手に入れた!
『そんなものまで売っていたのか』
『スッゲー! 大当たりじゃねぇか!』
『流石は恭介と言ってやりたいが、なんで購買が生物を扱っているのだ?』
……というか、今まゆっちはどんな格好でその二つを握っているのだろう。
全く想像が出来ない。
『いいなー、恭介。昼から肉と伊勢海老かよぉ。贅沢三昧じゃねぇか』
『そうは言うが真人、生ハムとかと違って、どっちも昼に無加工で食える代物じゃねぇぞ……』
『あっ、確かに。いや、でもそれを差し引きしてもいいなー』
恭介の幸運は凄いが、凄すぎて明後日の方向に突き抜けてしまったようだ。
それか、まゆっちのポテンシャルが凄すぎたのか、どっちだろう。
あるいは、その両方かも。
「じゃっ、最後は謙吾だね」
『よし、任せろ。頼んだぞ、京』
『分かった』
タイミングを計り、謙吾が京へと指示を出す。
『見えた! 今だ!』
『何か手に入れたよ』
京は《紋白蝶》と《他人の財布》を手に入れた。
僕は急いで京へと指示を飛ばした。
「京、戻して、戻して!!」
『そっ、そうね!!』
京は《紋白蝶》と《他人の財布》を手放した!
『お前、花畑となにが見えたんだよ……』
『…………………何も言うな』
《ミッションクリアー!!》(一部を除いて)
こうして僕たち三人は戦利品を手に、恭介たちの元へと戻った。
「小雪、お前はしれっと旨そうなの手に入れてんな」
「いいでしょー」
「なぁ………その海鮮丼と俺のフランスパンと交換しねぇか?」
「ヤダッ」
「………ですよねー」
「まゆっちはコロッケパンにサンドイッチか。王道だな」
「はい。ところで、恭介さんはその二つをどうするのですか?」
「そうだな………学食のおばちゃんと交換でもしてくるか」
「京………本当に申し訳なかった」
「別にいいよ。私も悪かったし。ほら、これでも食べて」
「京、ありがとうな。いただきます───ッ??!! ───からーーーーーー!!?? ひゃんひゃこひぇは(何だこれは)?!」
「なにって、特性ハバネロサンド(デスソースましまし)よ」
一部のメンバーは満足に食べられなかったが、楽しいお昼となった。
次回「さぁ、お前ら。試合開始だ!!」