ぶっちゃけ優先するのはもう片方の作品なので不定期になると思います。
「おーい、そろそろ行ってくるなー」
俺は玄関に向かいながら声を掛けた。すると、
「あれ? まだ早くないかい?」
「いや、少し早めに出たほうが良い。何かトラブルに巻き込まれるかも知れないし」
そんな事を話しながら出てきた2人。全く同じ顔をしてる、俺の兄たる双子だ。
「月兄の言う通りだ。日本だと、主な交通手段は多少送れるのが当たり前みたいだ」
「成る程。だけど、早く着いて時間を潰さなくなるのは、オマエ嫌いじゃなかったか?」
「まぁ、それは仕方ないよ」
夜兄の言う通り、俺は5分くらいなら兎も角、15分も30分も待つのは大嫌いだ。
だが、今回は我慢しよう。俺の個人の目的の為にも、俺達兄弟の目的の為に。
「と、言う訳で行って来ます。戻ってくるのは夕方より少し前になると思う。だから、買って帰るお土産の選別ぐらいはしててね」
「あぁ、解ってる。幾つかの候補は決まってるからそんなに苦労しないし」
「しかし、明日帰る前に買っていくのって、何かゆとりが無いな」
「仕方ないって。2人共仕事が忙しいんだから」
今回の為にアメリカから日本に昨日到着。そのままホテルに泊まって、今日試験を受けて明日には帰国。
俺だけなら多少はゆっくり出来たかもしれないけど、1人じゃ危ないからって忙しい2人が保護者代わりで付き添いだ。
まぁ、正直助かった。2人じゃなく俺達兄弟の保護責任者が来てたら大騒ぎだ。当人も案の定一緒に行くって駄々捏ねてウザかったし。
「お土産を買わなければ、もう少し楽だったかもしれないけど…」
「なに馬鹿な事言ってるんだオマエは」
「そうだね。もし買わずに帰ったら–––」
俺達3人共、視線を上に向ける想像する。お土産が無いことを知ったアレがどんな行動をとるのかと––––––、
「「「……はぁ」」」
間違いなく一週間は部屋に引き篭もって出てこないな。マジウザい。
「と、兎に角、もう行くな」
「あ、あぁ、行ってらっしゃい」
「他の奴らに目に物見せてこい」
言われるまでもない。この俺、天馬 日行にはやらなくちゃいけない事があるんだから。
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某県内に於ける会場施設。其処には、現在多くの人々がデュエルをしていた。
デュエルアカデミア。海馬コーポレーションが運営している強いデュエリストの育成を目的とした学校だ。
本日はそのアカデミア高等部の外部からの入学試験日であり、その為会場内では幾つかのエリアに別れて闘っている。
そんな中、試験官の統括をしているクロノス・デ・メディチは手元の資料を見て困惑していた。
「ムムム、これはどうしたらいいノーネ」
手元の資料は、ある受験生の資料だ。だが、ほかとは明らかにおかしな点があった。
受験番号999番。
本来この受験番号は、既に済ませてある筆記試験の成績順に振られており、今回は100数十番までのはず。
ところが、この受験生は昨日になって急に上から通達が来たのだ。
どう考えても、一般の受験生では無いだろう。
「急な予定変更は困るノーネ。鮫島校長なら、知ってるかも知れないーノ」
資料を見てても進まないと考え、クロノスは近くにいた試験官に指示を出した。
この受験番号をそのまま呼ぶと、他の受験生に余計な事を知られてしまう可能性があるので、適当な時に直接呼び出して試験するようにと。
そう、受験番号999番……、天馬 日行を。
⚫︎
「君が天馬 日行で間違いないね」
「ハイ、そうです」
デュエル場に1人の少年が、試験官に対峙している。
クロノスの指示を受けたこの試験官は、資料を確認するとデュエルディスクを構えた。
「では、これから私とデュエルをしてもらう。先攻は君だ。そしてこのデュエルの結果によって、後日合否を通達する。そして勝敗はあまり関係無く、どういうデュエルをするのかを見せて欲しい。まぁ、勝ったほうが評価は高いがね」
そんな事を笑いながら言ってくる。自分が負けるとは思ってないようだ。
「……分かりました。では行きます」
そう言うと、受験生・天馬 日行はデュエルディスクを構え、
「「デュエル!」」
試験を開始した。
「俺のターン、ドロー。…今引いた強欲な壺を発動。デッキから2枚ドローする」
デッキから更に2枚引く。
「…うーん」
ドローして7枚になった手札を見て、日行は悩む。
「…あのー、質問してもいいですか?」
「そういう事は、デュエルを始める前に聞いておきたまえ。それで何かな?」
「えっと、試験官を瞬殺したら、評価はどうなります?」
普通なら相対する試験官に聞くような内容ではなかったが、日行がそんな発言をすると、やりとりが聞こえた辺りは一斉に静まりかえった。
「–––何故、そんな事を聞く?」
「普通のデュエルなら気にしないんですけど、これって試験じゃないですか。ある程度の攻防を繰り返さないと、評価し辛いかと思いまして」
「–––つまり、私に楽勝出来ると?」
「この手札だと、そうですね」
静まりかえった会場内に、二人のやりとりが響く。会話自体は穏やかそうだが、試験官の額には青筋が浮かんでいる。
当然だろう。幾らこれが試験だから試験官は本気で闘わないと言っても、お前には簡単に勝てる。お前は弱いと言ってるようなものだから。
–––オイ、アイツあんな事言って大丈夫か?
–––フンッ、どうせ口だけだろうよ。
–––スゲーなアイツ、どんなデュエルするんだ!?
–––…ふふっ、面白そうね彼。
会場内に居る他の人達の意識が集中する。
「–––随分と自信があるようだが、気にせずに来たまえ。そして、本当に瞬殺出来るなら、見せてもらおうじゃないか」
「では、お言葉に甘えまして…。–––手札から魔法カード、おろかな埋葬を発動。デッキからモンスター1体、サンダーシーホースを墓地に送る」
電気を纏ったたつのおとしごが墓地に行く。
「更に手札から魔法カード死者転生を発動。手札を1枚墓地に送り墓地からサンダーシーホースを手札に加える。そして、俺は手札に加えたサンダー・シーホースのモンスター効果を発動!」
手札のモンスターを相手に向け、動き始める。
「このカードを手札から捨てる事によって、デッキから攻撃力1600以下、雷族、光属性、レベル4の同名モンスター2体を手札に加える。加えるのはコイツ、ONeサンダー!」
◇◇◇
ONeサンダー
ATK:900 DEF400
◇◇◇
「たった攻撃力900のモンスターなんかをサーチして、どうする気なのかな?」
「そんな事決まってるでしょう。あ、因みにサンダー・シーホースの効果を発動したら、そのターンは特殊召喚出来なくなります。そして手札に加えたONeサンダーを攻撃表示で召喚!」
フィールドに現れたのは、頭と手が電気に包まれている小柄な少女だった。
–––オイオイ、あんな雑魚を攻撃表示って、馬鹿かアイツ?
–––だから言ったろ。所詮口だけだとな!
–––あのモンスター、結構可愛くないか?
–––可愛い以前に、あんなモンスター知らないぞ?
「ONeサンダーの効果発動! このカードの召喚に成功した時、ONeサンダー以外の自分の墓地にある攻撃力1600以下、雷族、光属性、レベル4のモンスターを1体除外出来る。俺はサンダー・シーホースを除外! そして除外されたカードは、このターンのエンドフェイズ時に手札に加える!」
「デッキサーチに手札増強、更に、次回もデッキサーチを可能とするコンボか…」
「フィールドに1枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ、さっき除外したサンダー・シーホースを手札に加えて終了。どうぞ、其方のターンです」
「ふむ…、大言壮語なだけではなさそうだ。私のターン、ドロー」
ドローしたカードを確認すると、日行に視線を向ける。
「攻撃力900のモンスターを守備表示ではなく攻撃表示にしたのは、その伏せカードの為の囮なのだろう? 恐らくミラーフォース等の攻撃反応型。それなりに考えてるようだが、まだ甘い。私は今ドローしたサイクロンを発動! その伏せカードを破壊する!」
デュエルディスクに魔法カードが差し込まれると、竜巻が日行の伏せカードに襲い掛かる。
「サイクロンにチェーンしてリバースカードオープン! 強欲な瓶!」
「何!?」
「俺はデッキから1枚ドロー。そしてサイクロンは対象を失い不発と」
残念でした。日行の顔がそう言うように笑っている。薀蓄語って外したのだから、当然と言えば当然だろう。
これが例えば和睦の使者のようなモンスターの戦闘破壊を無効にし、ダメージも0にするような戦闘に関するものなら兎も角、サイクロンなどを不発させるように見えた今回は、試験官からすれば面白くない。
「なら私は手札からジェネティック・ワーウルフを攻撃表示で召喚!」
◇◇◇
ジェネティック・ワーウルフ
ATK2000 DEF100
◇◇◇
フィールドに現れたのは4本腕で白い毛の獣人だ。更に試験官は、
「手札から装備魔法デーモンの斧を発動し、ジェネティック・ワーウルフに装備! 攻撃力を1000アップさせる!」
–––攻撃力3000になったぞ!
–––あの試験官、本気でやってないか?
–––それより、あれじゃあライフが一気に半分も削られるな。
「バトル! ジェネティック・ワーウルフでONeサンダーを攻撃!」
ジェネティック・ワーウルフが、その手に持つ斧でONeサンダーに襲い掛かる!
「甘い! 墓地からモンスター効果を発動! 発動したモンスターはコイツ、出ろタスケルトン!」
日行の墓地からフィールドに小さな豚が現れ、更に豚から全身の骨だけがジェネティック・ワーウルフにぶつかった。
「タスケルトンは墓地にいる時、相手モンスターの攻撃宣言時に発動出来る。コイツを除外して相手モンスターの攻撃を無効にする」
「っく!? 死者転生を発動したときに墓地に送ったカードか。なら、私は1枚伏せてターンエンド」
◆◆◆◆◆
天馬 日行:LP4000
手札:6枚
モンスターゾーン 1体
ONeサンダー(ATK900)
魔法・罠ゾーン 0枚
試験官:LP4000
手札:2枚
モンスターゾーン 1体
ジェネティック・ワーウルフ(ATK3000)
魔法・罠ゾーン 2枚
デーモンの斧 伏せ1枚
◆◆◆◆◆
お互いに最初のターンは終了した。フィールドを見る限り、試験官が有利に見えるが、日行の手札枚数を考えると優劣に差はないと思えた。
それは日光のデュエルを見ている人間だけで、当人達は違った。試験官はこのまま押し込めると考え、日行は––––
「俺のターン、ドロー! –––さてと」
ドローしたカードをそのまま手札に加えると、日行は笑みを浮かべた。もっともそれは、爽やかなものではなく、獰猛なものだ。だから、
「頑張って防いで下さいね。俺は手札からサイクロンを発動! 対象はその伏せカードだ!」
先程と同じ光景が繰り返される。但し、竜巻が向かう方向は逆になり、その対象に起きる結果も…、
「くそっ、炸裂装甲が!?」
「安直ですね。次に手札のサンダー・シーホースの効果を発動! 墓地に送ってデッキからヴァイロン・プリズムを2体手札に加える!」
◇◇◇
ヴァイロン・プリズム
ATK1500 DEF1500
◇◇◇
「俺は手札からOKaサンダーを攻撃表示で召喚!」
◇◇◇
OKaサンダー
ATK1400 DEF700
◇◇◇
フィールドに現れたのはONeサンダーと同じような頭と腕が電気に包まれたモンスターだ。ただ、こちらは成長した女性だったが。
「ん? サーチしたヴァイロン・プリズムとやらじゃないのか?」
「そう焦らないでくださいよ。OKaサンダーの効果を発動! 1ターンに1度、手札からOKaサンダー以外の雷族、光属性、レベル4のモンスターを1体召喚する。 次はコイツだ、OToサンダーを攻撃表示で召喚!」
◇◇◇
OToサンダー
ATK1300 DEF600
◇◇◇
今度フィールドに現れたのは緑の服装の男性型モンスターだ。これもOKaサンダーなどに似ている。
「OToサンダーの効果を発動! 1ターンに1度、手札からOToサンダー以外の雷族、光属性、レベル4のモンスターを1体召喚する。 今度はヴァイロン・プリズムを攻撃表示で召喚! 最後に永続魔法、一族の結束を発動!」
三角柱に腕と羽が生えたヴァイロン・プリズムがフィールドに召喚され、永続魔法が発動されると、日行のモンスター達が光に包まれる。
「一族の結束は、自分の墓地の全てのモンスターの種族が同じ場合、自分フィールドのその種族のモンスターは攻撃力を800アップする!」
日行の墓地にいるモンスターはサンダー・シーホースのみ。そして種族は雷族だ。
「……成る程、確かにフィールドには一気にモンスターが4体。強化もされた。これだけの腕があるなら、強気にもなる」
試験官は褒め言葉を口にするが、表情は失笑していた。
足りない。確かに打点は上がったが、ワーウルフにはまだ届かない。多少は此方の意図を外したが、それで終わり。誰かが言っていたが、口だけの人間のようだ。そう考えた。だが––––––、
「–––バトル」
「な、何!?」
一族の結束の効果で攻撃力は上ってるが、どのモンスターもジェネティック・ワーウルフの3000には届いていない。なのに何故!?
「ヴァイロン・プリズムで、ジェネティック・ワーウルフを攻撃!」
「自爆特攻だと!?」
白い胴体のプリズムがワーウルフに向かうが、プリズムの攻撃力は上っても2300。当然、返り討ちにあう。
◎天馬・日行:LP4000→3300
–––オイ、自滅したぞ。
–––何やってんだ?
–––フィールドにモンスターを並べて、満足したんじゃないのか。
「–––破壊されたヴァイロン・プリズムの効果発動!」
「……何?」
「モンスターゾーンから墓地に送られた場合、ライフを500払って自分フィールド上のモンスターに装備カードとして装備する!そして対象はOToサンダーだ!」
◎天馬・日行:LP3300→2800
日行のライフが減ると、墓地からヴァイロン・プリズムが現れる。更に分解され、OToサンダーの武具となった。
「OToサンダーでジェネティック・ワーウルフを攻撃!」
今度はOToサンダーがワーウルフに殴りかかる。今の攻撃力は2100。これも届かない。––––––今のままなら。
「装備カードとなったヴァイロン・プリズムの効果発動! 装備モンスターが戦闘を行うダメージステップの間、攻撃力を1000上げる!」
「な、何!? では、そのモンスターの攻撃力は!?」
3100。ワーウルフを上回る。OToサンダーの振り上げた拳が、ワーウルフに突き刺さる。
◎試験官:LP4000→3900
「ジェネティック・ワーウルフ撃破!」
これでフィールドに居るモンスターは日行側だけだ。そして3体居る内の2体はまだ攻撃権が残っており、
「さてと。フィールドのOKaサンダーとONeサンダーの攻撃力はそれぞれ2200と1700になってますが…」
合計3900。残りライフジャストだ。
「クリボーとかの防御カードが、有ればいいんですけど––」
「…くっ、私がこんなにアッサリと…」
「–––無さそうですね。では、2体でダイレクトアタック‼︎」
「う、うわぁぁぁぁっ!?」
試験官:LP3900→1700→0
「よしっ、有難う御座いました!」
◎勝者、天馬 日行
日行は試験官に頭を下げると、そのまま会場を後にする。結果発表が後日なら、さっさと帰るに限るからだ。そして、試験官はその後ろ姿を情けない顔で見ていた。
–––ワ、ワンターンキル、だと…。
–––し、しかも、ライフジャスト…。
–––ふんっ、あんなのマグレに決まってる!
–––オー、強いなアイツ。俺とデュエルしてくれないかな!?
–––殆ど見た事の無いカードだったわね。何処て手に入れたのかしら?
その後も試験は続いていく。
最後は統括試験官が逆転されるという出来事が目立ったが、この会場に来ていた人間の脳裏には残っていた。
強力なモンスターを出した訳でもなく、派手な闘いをした訳でもないデュエルをしていた天馬日行と言うデュエリストを…。