ファイアーエムブレム~俺の系譜~   作:ユキユキさん

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エシャルの名が広がった時の反応、みたいな感じですかね?

アイーダ視点と同じぐらいの時期です。たぶん・・・。


閑話 ~グランベル王国《王家・各公爵家》

《バーハラ王家》ークルトー

 

「父上、お加減は如何ですか? 何かありましたら、遠慮なく申してくださいね?」

 

老いた為に政から離れ、隠居状態の父王アズムールに声を掛ける。

 

「おぉ…クルトか。お主や世話係のお陰もあって、このところは快調だよ。」

 

深く皺の刻まれた顔を綻ばせ、私に快調を見せつけてくる。その姿を見た私は安心する。多忙な日々の、私なりの癒しの一時。近くに待機する使用人に声を掛け、父上の対面に腰を下ろす。時間を見付けては、父上と共にお茶を嗜む。癒しと共に勉学の時でもある故、この時間は大切な時間でもあるのだ。父上に代わり政をしてはいるが、まだまだ未熟であるからね。

 

グランベル王国のこと、各国の情勢にまで話が及び、有意義な時間が過ぎていく。ただ一つ、この名が出てくると、父上の顔は途端に曇り出す。

 

「…またエシャルか。ここ最近、よく耳にする名よな。」

 

「特に、『トラキアの黒刃』との異名を持つエシャルは、彼の者を思い出します。」

 

ヴェルトマー家に生まれ、才気に恵まれた一人の男児。彼は幼いながらも、類い稀なる剣の才能を持っていた。一撃一撃が、急所を鋭く切り裂く必殺剣。黒騎士ヘズルの血がそうさせているのか、イザークの剣士に負けぬ程の腕を持っていた。黒き刃の剣、キルソードを愛用していた者。今は亡き、悲劇の子…。

 

「生きていれば、黒刃と呼ばれていたかもしれませんね…。」

 

私がそう呟くと、父上は悲しそうな顔で頷き、

 

「アルヴィス卿は今も、そのことを引き摺っているのだろう? …仲が良すぎた故、時すらもその心を癒せぬか…。」

 

父上の言葉を最後に、長らく沈黙する。

 

そして…、

 

「アルヴィス卿の今日までの献身に対し、報いてやらねばなるまいて…。」

 

その言葉に私は、

 

「王国近衛軍の総指揮を任せてみるのは如何でしょうか? アルヴィス卿であれば、万が一も無いかと…。」

 

そう進言した。父上は目を閉じ、数秒の後に頷いた。

 

この日から数日後、アルヴィスは王国近衛軍の総指揮に任命されることとなった。

 

 

 

 

 

《シアルフィ公爵家》ーシグルドー

 

『トラキアの黒刃』エシャル将軍、この者を私の親友であるキュアンは気にしている。コノート・マンスター連合軍を撃破し、トラキア王国を強国に押し上げた優秀な武人。

 

コノート王国かマンスター王国へ、報復の侵攻をしてくるのかと警戒していたが…そんなことは無く、トラキア王国国内の改革に勤しんでいたらしい。侵攻してきたなら北トラキア四小王国の盟主としての立場から、レンスター王国も参戦は免れないと思っていた為、このことに『正直助かった。』と苦笑いをしていた。…それほどの勇名を響かせているのが、エシャル将軍という者なのだ。

 

私としてはその勇名よりも、その正体が気になる。黒刃でエシャル、それで連想されるのはヴェルトマー家のエシャルだろう。彼は生前、キルソードを愛用していた。彼とは数度、手合わせをしたことがある。親友のエルトシャンに勧められてというか、『エシャルの糧となれ!』って言われたような気がする。

 

まぁとにかく手合わせをしたわけだが、危なかった…とだけ言っておこう。…うん、強かったな。後々聞いたら、エルトシャンの甥とのことで血筋もヘズルだと言う。才能は素晴らしく、将来は俺を超えるみたいなことを言って自慢してきた。

 

あの時の得意気な顔を思い出すと、腹が立ってくるな。今度会ったら、何か奢らせよう。…因みにエシャルは良い子だったぞ、エルトシャンとは違って。エシャルを通じて、アルヴィス卿ともそれなりの付き合いをした。…エシャルと聞くと、…思い出すな。

 

「あれから6年…、生きていれば18歳ぐらいか…。」

 

エルトシャンとアルヴィス卿を足したような顔、人懐っこい笑顔を思い出す。昔を懐かしんでいると、

 

「シグルドお兄様~! 何処ですか~!」

 

喧しい声が、私を昔の思い出から呼び覚ます。…我が妹のエスリンが、私を探しているようだ。お転婆が過ぎて鬱陶しい我が妹、おちおち思い出に浸ることも出来ない。…もう暫くの辛抱だ、エスリンはキュアンに貰われていく。…嫁に行ったら、少しは淑女になるだろうか?

 

 

 

 

 

《ユングヴィ公爵家》ーアンドレイー

 

エシャルという名を、今や聞かぬ日はそう無いだろう。ヴェルダン王国、トラキア王国、シレジア王国、3ヶ国にその名を残す。ヴェルダン王国の方は、そう気にするべきことでは無いだろう。

 

…が、トラキア王国とシレジア王国でのエシャルは気にするべき者。前者は個人の武があるだけの者、後者は兵を率いる才を持つ者。そう考えれば、脅威の程が分かるだろう。後者は戦人なのだ、それも他国の。

 

今は平穏であるのだが、仮想敵国のこと故に警戒する必要はある。いつ、如何なる時に、戦争へと発展するのか分からないからな。敵としてぶつかる可能性がある以上、情報を仕入れるのは当たり前のことだ。

 

しかし、本当はどうでもよいことなのだ。個人の能力がどうだとか、戦争になるか否かとかは…。単純に気に入らない、その一言に尽きる。エシャルという名は駄目だ、その名だけは! 今は亡き友の名と同じなのが気に入らない!

 

…他領のこととはいえ、賊にしてやられた。これには疑問がある、…誰かの陰謀・暗殺によるものなのではないか? エシャルの死により、父上が行方不明の姉を思い出し嘆く姿、鬱陶しい…!

 

最愛の弟を亡くしたアルヴィス卿を誹謗中傷する腐った貴族達。他にも色々と、疑念や怒りが湧いてくる。自分自身にも負の感情をぶつけたくなる。数年前のことも今のように思い出し、何も出来なかった自分に、才を引き継げなかった自分に苛立つ。

 

……ぬぅ~…。

 

わけが分からなくなってきた、頭の中がグチャグチャだ。徐々に立っていられなくなり、俺は地に方膝をつく。何だというのだ…、俺は何を…。頭を押さえて呻く俺に…、

 

「アンドレイ! どうしたのですか!?」

 

聞き覚えのある声が…、この声は姉上か…? そう思った瞬間、俺は意識を失った。

 

 

 

 

 

《ドズル公爵家》ーランゴバルトー

 

ワシは執務室で書類を見ながら、髭を撫でつつ思案する。北の蚊トンボに南のトカゲ乗り、元気の良いことだ。同じ名の者がそこそこ活躍しているみたいだが、その程度のこと。何ら脅威を感じることが無い、弱小国が囀ずっているだけなんだからな。何ともくだらんことだ、いちいち報告せずとも問題ないというのにな。…文官は真面目であるな、…刺激的な情報は無いのか?

 

書類と格闘することに飽きたワシは、調練場で鍛練でもしようかと思ったのだが、

 

「親父、入るぞ!」

 

執務室に入ってきてからそんなことを言う馬鹿息子、ダナンの登場に再び腰を椅子へ戻すことになった。

 

「…騒々しいな、どうしたというのだ。」

 

鍛練の邪魔をしたダナンに苛立つが、とりあえずは話を聞こう。

 

「あん? なんだ親父、機嫌が悪いな。…まぁいいか、とりあえず聞いてくれ!」

 

機嫌が悪いのは、馬鹿息子のせいなんだがな。

 

ダナンの話を聞いたワシは、

 

「ほぅ…、アルヴィスが総指揮に…。思い切ったことをするもんだな、アズムール陛下は…。」

 

才はあるだろうが、まだまだ若造であるアルヴィスに総指揮を。…ふむ、ここらでヴェルトマー家に恩を売るのも良いかもしれぬな。総指揮となれば、少なくとも各方面から色々と言われることになるだろう。その間に入って、アルヴィスの後ろ盾と思われるのも面白い。何より、バイロンとリングにこれ以上、デカイ顔をされぬようにしたいという思いもあるがな。

 

「…良い情報だぞ、ダナン。褒美として、ワシが直々にしごいてやる。」

 

「褒美じゃねぇよ! それは拷問だぜ、親父!! …レックス、レックスはいるか!!」

 

ぬははははは! 弟を巻き込む気満々だな、ダナン! 二人纏めてしごいてくれるわ!

 

 

 

 

 

《フリージ公爵家》ーレプトールー

 

私は報告書を読み、人知れず喜びを感じていた。我がフリージの優秀な諜報員、その力によってもたらされた調査の内容に満足する。数年前から名を響かせる者、彼は私の知る男であるという事実にだ。

 

彼の死に疑問を持っていた、幼いながらに力を持つ彼。そう簡単に死ぬ筈がない、そう思っていた。故に彼の死が発表される前から、彼の行方を探し続けていた。そして見付けた、自ら世に出てきた彼。全ては同一人物、…我が弟子。

 

「…エシャル、生きていたか。…久々に嬉しい情報よな、…良かった!」

 

目を瞑り、彼の無事を、彼の活躍を…静かに喜んだ。

 

一頻り静かに喜んだ後、部下を一人呼んだ。

 

「レプトール様、お呼びでしょうか?」

 

「来たか、レクスヴァ。」

 

私の信頼する部下のレクスヴァ、実力もあるが諜報にも長けている。それに…、

 

「了解しました、身分を明かさずエシャル様に接触致します。フリージ家の為、お嬢様の為に。」

 

私の目を見ただけで、指示したいことを読み取り理解するのだ。

 

「あの影響で記憶を失っているか、封じているか分からん。強引なことはするな。」

 

「はい、お任せを…。」

 

こちらに一礼してから、レクスヴァは退室する。今日中に、フリージから旅立つだろう。

 

レクスヴァが退室した後、私は一枚の絵を見る。エシャルと二人の娘、ティルテュとエスニャ。幼い3人が、一つの絵に納められている。エシャルは一時期、我がフリージで預かっていた。その時に色々と教え、吸収していった。ティルテュとエスニャもよくなついていた、…ブルームは嫌っていたみたいだが。

 

この絵はエシャル12歳、ティルテュ7歳、エスニャ6歳の時に描かせたもの。この絵が出来上がり、僅か1ヶ月…。あの事件が起き、エシャルの死が知らされた。私も悲しかったが、ティルテュとエスニャは長い間…泣き暮らした。だが、彼の者がエシャルと分かった以上、真のエシャルと分かった時は、二人の娘にも教えてやろう。今から、その時が楽しみで仕方がない…。

 

 

 

 

 

《エッダ公爵家》ークロードー

 

大きな揺らぎを感じたあの事件、あの日から平穏と呼ぶに相応しい日々が続いていましたが、再び聞くことになったエシャル君の名。その名を耳にした途端、ザワリと何かが心を触った。妙な胸騒ぎ、ザワリザワリと這い寄る影…。

 

あの時と同等の、大きな揺らぎを感じますね。流れは違えど、微かに同じエーギルの波も感じます。運命という名の激動が始まるというのですか?

 

グランベルで輝くは二つの光、西より大きな輝きが一つ、自由なる軌跡を描く一際輝く光が一つ、そして…、

 

「その輝く光を中心に、世界は動き出す…。ブラギ神よ、これは…。」

 

大きな闇が這い寄るこの流れは…、

 

「再び…、再び聖戦が起きる…。今は水面下での…、いずれ表に…。」

 

私の内なる世界に、全てを包み隠す靄が…。塔へ…、この後に来るであろう大きな揺らぎを感じた時…、

 

「ブラギ神よ…。その時が近々…、私を導くのですね? ブラギの塔へ…。」

 

開きかけていた扉が、エーギルのうねりが、この大陸に…。

 

「時を待ちましょう、…その時を。」




アルヴィス、総指揮に任命。バーハラの方は、アルヴィスを心配しています。


シグルド、エルトシャンの手によりエシャルの経験値に。シグルドは昔から、巻き込まれる男なのです。


アンドレイは2歳ぐらい年上の友人。不穏な気配を感じますな。


ドズルの方々は、特にエシャルを気にすることはない。アルヴィスの方に気を向けている。


フリージはエシャルに関係深い公爵家。生きていたのは、レプトールに師事していたお陰なのです。ティルテュとエスニャの姉妹は、エシャルの嫁候補・・・ですかね。


エッダは、ロプト関係の気配を感知する立場っすかね?


因みに、ヴェルダン軍とシレジア軍のBGMが大好きです。
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