ーエシャルー
シレジアを発ってから気付く。
「……パメラさんかマーニャさんの力を借りれば良かったんじゃね? そうすりゃ一発じゃん。」
あの二人、アグストリアのマディノ城…知ってそうだし。力を借りて、ワープすれば楽だった…。今更戻るのもカッコ悪いからなぁ~…、スコルには頑張ってもらわないとダメだね。つーか、とりあえず飛んでいるけどさ。…アグストリアって、この方角で間違いないよね? 正確な位置を把握せずに飛び出した俺って、…馬鹿だよね?
風を切って飛ぶスコル、やっとこ雪国を抜けましたよ! 優秀じゃないかスコルちゃんや、俺はスコルを優しく撫でまくる。スコルも嬉しそうに鳴き、一段とスピードを上げる。褒めると伸びる子やね! …というか、シレジアを抜けて安心したよ。
たぶん、アグストリアに入ったと思われる。なんていうか、空気が懐かしいんだよね。馴染むというか、俺に合う空気ってーの? よく分からんのだけど。これってアレかね? ヘズルの血が濃いからなのか? 帰巣性ってヤツ?俺の血筋的に、故郷だし。まぁ…とりあえず、
「アグストリアよ…! 私は帰ってきた!!」
叫ばずにはいられません。帰ってきたと言っても、この地に来たという記憶はございませんが…。しかしながら、俺の血が騒ぐわけで。モヤモヤするぜ、…ちょっと気持ち悪いのは内緒だ。
「海よぉ~…俺の海よぉ~…!」
海岸沿いを飛ぶ俺は、誰の歌か忘れてしまったが…歌を歌う。歌わずにはいられなかった、まともに海を見たのはたぶん初めて。テンションが上がるのは、仕方のないことなのだ。…海かぁ~、パメラさんとかディアドラとか、みんなと一緒に海水浴したいなぁ~。この世界ではあるんかね? 海水浴、…水着あるのかな? 女性陣の水着姿を想像してニヤつく俺、男ならば仕方なし!
華やかな妄想に耽る俺、…そんな小さな幸せをぶち壊す愚か者が現れたのだった。空を切り裂く音に反応し、スコルを急上昇させる。俺の手綱捌きに直ぐ様反応するスコル、…良いペガサスだね! さっきまで俺がいた空間に、数本の矢が通過していく。気付かなかったら、突き刺さっていましたな。何奴か? と思ったが、まぁ…賊だろうね。相手がなんであろうとも、俺に攻撃してきたんだ。
「報いは受けて貰わないと…。良い気分が台無しだよ、弓ごときに殺られる俺とスコルではない!」
俺はスコルと共に急降下、弓を恐れぬ天馬騎士の実力をその目に焼き付けるといいわ!
ーガザックー
俺達ゃ海のならず者♪ 殺して奪うぜ俺達は♪ 荒らすことが止められねぇ♪ 宝も女も奪い尽くすぜ♪ そうさ俺らは海賊さぁ~♪
…っとくりゃあ! 俺達ちゃこのガザック様が頭のガザック海賊団だぜ! ここマディノ周辺を荒らす、オーガヒルの海賊よ! 宝の情報を聞きゃあ、殺して奪うぜ! 女がいれば、飽きるまで犯しまくって売っ払うぜ! 好き放題やるのが、オーガヒルの海賊ってわけよ!
俺達に恐れを抱いた家畜なゴミ共が、傭兵を雇ったみたいだがそんなの恐かねぇ! 海は俺達の庭だぜ? 傭兵如きに殺られるガザック様達ゃねぇぜ! それによぉ…、その傭兵達は女しかいねぇみたいだからな! 犯しまくってから、ぶっ殺してやるぜ! がははははは!!
……なんて思っていたけどよぉ、あのクソ女共めが! 犯れるどころか、殺られているぜ俺達! 犯るヒマがねぇからよ、何人かの女は殺したんだが。…クソ! それに傭兵が増えやがったし、助っ人を呼びやがったなチクショー! これじゃあ…全滅しちまうぜ!
……助っ人? …そうか助っ人か!! 他の奴等に助っ人を頼めばいいじゃねぇか! 俺達と同じように、ジワジワやられていると思うしな。オーガヒルの海賊は多いぜ、反撃開始といこうじゃねぇか!
なんとかどっこいどっこいに持っていくことが出来たが、なんつーか面白くねぇよ! お宝を奪いまくって、クソ共をぶっ殺して、女を犯しまくりてぇ~のによ! なんなんだよあの傭兵共はよ! 今までの奴等よりつえーじゃねぇかよ! クソがクソがクソがクソがクソがぁっ!!
「お頭ぁ~! 向こうからペガサスが一騎、飛んできやすぜ! シレジアの天馬騎士じゃねぇですかい? えれぇ~べっぴんですぜ、きっと!!」
苛立っていると、子分の一人がニヤつきながら報告してきた。……天馬騎士か、…いいねぇ!
「いいカモが来たんじゃねぇ~の! お前ら! アイツを落とすぞ!! 殺すんじゃねぇぞ! 楽しまなきゃ損だからなぁ~!」
「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」」
子分達も気合いが入っているなぁ~! 久々の女にありつけるんだから仕方ねぇけどよ! がははははは!!
………浮わついていた自分達をぶん殴りてぇ! 悪魔だ…、悪魔が現れやがった! こっちの矢が当たらねぇし、一瞬にして子分を3人も消し炭にしやがった! 流れるように黒い刃を振り、首を飛ばしていく。血塗られた天馬騎士、…しかも男のだ! …悪夢を見ているのか? 俺は…!
「貴様が大将か? 見たところ、散々悪事に手を染めてきたようだが…、感謝するといい。俺は慈悲深い、苦しまずに逝かせてやるよ!!」
気づけば俺一人、奴はゴミを見る目で俺を見ている…! 化け物だ、奴は化け物だ…!!
「うぉあああああああああっ!!」
俺は斧を振りかぶって突撃し、首の無い自分を見ることになって、暗転した………。
ーエシャルー
………おぉ…! 心の臓がバクバクいってますぞ。無傷っぽく振る舞ってはいますが、細かい傷で身体中が痛いっす。スコルにも無理をさせちまったい! …スコル、今…リライブをかけてやるからな!
頑張ってくれたスコルに抱きつき、撫でながらリライブをかける。細かな傷があったスコルは、リライブによって綺麗に治癒された。綺麗とは言ったものの、血で汚れているんだけどね。後で一緒に、水浴びかなんかして綺麗になろうな! ……っと、自分にもリライブかけねぇと。出血死とかって洒落にならないからな。
満タン回復、血塗れリフレッシュ! そんなわけで、マディノへの旅路を再開しますかね。スコルさんや、もう少しだけ頑張ってくれよ。たぶん、後少しで目的地だと思うからさ。スコルに跨がり、さぁ出発だ! とは思ったものの、
「コイツらの首を持っていった方が良いかな? もしかしたら、ヴォルツ達のターゲットかもしれんし。」
と思い直し、賊の首を幾つか持つ。バッチィけど我慢我慢、ごめんなスコル。賊の首を細みの槍にくくりつけて、いざ行かん…マディノへ!
………たぶん、あっち!!
ーベオウルフー
トラキア王国に打診はしたんだが、…エシャルは来るよな? 1週間近く経ったんだが、おと沙汰が無いと少々気になるぜ。件の海賊達は、幾つかの集団と団結したからな。ちぃ~とばかし、厄介だ。こっちの被害も大きくなりつつあるからな、疲れってーのは厄介だぜ。奴等は数が多いからな、均衡を保つのがやっとだ。このままじゃじり貧、…決め手が欲しい。だから、エシャルに応援を頼んだんだが…、
「エシャルの奴…、まだ来ないのかよ。ワープで一瞬じゃねぇか。」
と愚痴りたくもなるだろ。
やきもきしていると、
「ベオ! 本当に助っ人は来るのかい? 『トラキアの黒刃』様なんだろ、トラキアの重鎮がこんな所に来るとは思えないんだけどねぇ~。」
気の強さが滲み出る、美人傭兵のレイミアが声をかけてきた。助っ人が来るってことを疑っている、まぁ…ここまで待たされているからな。俺も2、3日ぐらいって言っちまったしよ。
「来る筈なんだけどな、アイツ…義理堅いし。何か問題が…あ! ……エシャル、この場所知ってんのか?」
白い目で見んなよレイミア! 俺も悪いが、トラバント王も悪いと思うぜ? マディノの位置を教えていないんだからよ! エシャルのことだから、アグストリアの何処かってことしか知らなそうだ。…マジかー。
…レイミアとその仲間の面々から、白い目で見られ続けている俺。…正直、肩身が狭い。肩身が狭いが、海賊撃退の策も考えなきゃならない。マジで厳しいからな、このままじゃあ…、
「副長! 天馬騎士が単騎で接近してきます! …エシャルの旦那じゃねぇですかね?」
…よっしゃあ! やっと来てくれたかエシャル! これで、この依頼は達成したようなもんだな!
「少し遅いみたいだが、本当に黒刃様が来たみたいだねぇ~。どんな面構えか、見せてもらうよ。」
レイミアはエシャルを見極めようと考えているみたいだが、アイツを見極めることなんて出来ねぇよ。そんな風に考えていると、エシャルと思われる天馬騎士が…って、血塗れじゃねぇかよ!
「お、ベオウルフ発見! ここがマディノか、…ほい! コイツはお土産だ!」
血塗れ天馬騎士はエシャルだった、…んで土産ってコイツは…。俺達の方に投げ込まれた物は、…………幾つかの生首だった。
「「「「「ぎゃああああああああああっ!!」」」」」
いきなり首を投げつけんなや! 何考えているの?コイツ…。レイミアも流石に固まっているぜ…。
まだ、エルトシャンは出てこないですよ!