ーエシャルー
ディアドラを連れてきた俺は責任者であるレイミアさん、次いでヴォルツとベオウルフに紹介した。
「この娘はディアドラと言って、…俺の家族みたいな娘だ。ライブとか使えるから、役に立てると思う。戦闘に関しても弱くはない、手斧に限っては俺以上の精度だ。…めっちゃ可愛いからって、手を出すんじゃないぞ! ヴォルツんとこの男共に、きちんと言っとけよ! 特にベオウルフは近付く際、俺に許可を取れ!」
「なんで俺だけ許可が必要なんだよ!」
「俺の大切なディアドラが穢れるからだ!」
「エシャルとは、マジで話し合わないといけねぇな!」
俺とベオウルフは、至近距離でメンチを切る。一触即発の俺達を余所に、ディアドラは…、
「俺の大切なディアドラ…、えへへぇ~…♪」
両頬に手を添えて、クネクネ悶えていた。
まぁそんな一幕はあったものの、ディアドラは受け入れてもらえた。手合わせでディアドラの実力を見てもらったのだが、一番良かったのかもしれない。つーか、兄貴特性の手斧が凄いっす。それを自分の手足のように扱うディアドラに、俺を含めた傭兵の方々が脱帽。こんな短期間で磨いた強さに、俺っち嬉しいような悲しいような…。まぁ威力は無いのですが、手斧の牽制からの光魔法、流石の俺も捻りを加えた緊急回避をかましました。
…初見でこれをやられたら、聖戦士級じゃなければ大ダメージは必死。兄貴と組んで、とんでもない技を編み出したものだ。
それに、ペガサスには似合わない荒々しい飛行テク。ペガサスごと突進とかって、ドラゴンじゃないんだからとツッコミを入れたかった。この件については後日、教えたであろうマゴーネ団長に一言文句を言わねばなるまい。
みんなに認められて、共に戦うことになったディアドラ。しかしながら、経験少ない娘だからね。手合わせとはいえ、俺を相手に全力を出した為に疲労困憊。それに、暗くなってきたからな。今日はここまでにして、明日色々と決めるってことになった。海賊退治の会議ですな! 策を考えろと言われた俺、…俺の力を使った作戦は一応ある。トラキアん時のワープ戦法ではなく、別の戦法ね。とりあえず、明日の作戦会議で言ってみるか。
疲れ果てていたディアドラ、俺は彼女をおぶって部屋に来た。俺とディアドラ、二人で暫く泊まる部屋だ。男女同じ部屋ってーのは、駄目なのかもしれない。だが、初めて会った奴らと一緒は疲れるだろうし、心配だからな。ディアドラには悪いが、俺と一緒の部屋にした。
ディアドラは美少女だからな、注意したとしても…ねぇ? 万が一ということもある。俺は心配性だからね、絶対に守らなければならない。きちんと守らなければ、兄貴にめっちゃ怒られる。
それに何かあったら、俺は俺を許せないと思うから。ディアドラは大切、俺にとっても、兄貴達にとっても。彼女の意志で共にすることになったけど、出来る限りは守らないと。それが彼女の願いを受け入れた、俺の義務なのである。
おぶったディアドラをベッドに下ろし、
「…突然の手合わせ、ごめんな? 足手まといか否か、それを確認しなくちゃいけないからさ。アイツらは傭兵だからな、悪く思わないでくれ。」
一息吐いたディアドラは、
「分かっていますよ、エシャル様。…足手まといになりたくないから、ガンドルフ様達に稽古をつけてもらってました。それでも弱いから、足手まといになってしまうと思います。でも…頑張ります! 頑張って強くなります! だから…お暇な時に、稽古をつけてくれたら嬉しいです…。」
少しはにかみながら笑うディアドラ。そんな彼女の手を握り、
「出会った時はスベスベだったのに、今では小さな傷痕のある手…。たくさん努力して今に至ったディアドラは、とても綺麗になった。君が望むなら、俺は出来る限りのことはする。その輝きを消さぬ為、共に頑張ろうか。…だが、無理は駄目だからな? ディアドラ。……なんだかよく分からんことを言ったけど、稽古ぐらいいつでもつけよう。それ以外のことでも、頼ってくれて構わないからな?」
手を見れば、努力してきたことなど分かる。それに手合わせをして、弱くないのは確実。むしろ平均よりも上、やはり光魔法が強烈。努力し続ければ、かなりのものになるだろう。守るとは言ったものの、彼女自身も強くなればなおいい。彼女が望むのならば、俺は稽古でもなんでもするさ。それに健気…、保護欲も刺激される。ディアドラ! 俺に任せるんだ! 俺が立派なレディーにしてやるからな!
…と、ディアドラの手を握りながら考えていた俺。我にかえった俺は、ディアドラを見る。…お顔が真っ赤ですね! ずっと手を握っていたからね、そりゃあ恥ずかしいっすよね!
「いやぁ~、ごめんな? いつまでも手を握っちゃって。…まぁさっきも言ったがあれだ、なんかあったら遠慮するなよ? わははははは!」
俺も恥ずかしいっす! なんかアホなことを言ったような気がするし! ディアドラも綺麗だし! 慌てて手を離しましたよ! とりあえず笑ってごまかせ! わははははは!
ーディアドラー
「……あっ!」
エシャル様が私の手を握っていたけど、それに気付いたエシャル様は慌てて手を離した。ちょっと残念ではあるけれど、エシャル様も恥ずかしかったみたい。
離された自分の手を見てみると、傷だらけで少しゴツゴツしている。最初は、エシャル様の言ったようにスベスベの手だった。エシャル様に近付けるよう稽古に明け暮れて、ハティを乗りこなす為に手綱を握り続けて、いつの間にかこの手になった。女の子らしい手ではなくなった、戦う者の手になったのだ。
それにこの手で、人を殺してもいる。デマジオさん達の賊討伐に参加して、その時に…。守る為とはいえ、人を殺した。それは恐ろしくて、とても悲しかった。だけどそれが、私の望んだ道。私の進む道は、そういう世界だから…。
そんな色々な経験を積んだ手を、そんな私を、エシャル様は綺麗だと言った。里に帰れなくなり、沈んでいた気持ちが軽くなった。エシャル様と共にいられるようになったことも嬉しかった、それと合わせて本当に嬉しい。
それに…、エシャル様との距離が近くなったと思う。…私の努力を、認めてくれたのだと思う。私を見る目が、とても優しい。以前よりも、更に優しくなった。それは女として? それとも妹として? それは分からないけど、関係は前進したのだと思う。
どちらにせよ、私はエシャル様にとって大切な者らしい。これが重要、とても重要なのだ。……どのような関係になっても、これは変わらないと思う。…出来れば、エシャル様の恋人になりたいけど。…これは、私の頑張り次第だよね? とりあえず、今の私に出来ることは…、
「…えへへぇ~♪」
エシャル様にならって、笑うだけ。…だって嬉しいんだもん!
お互いに笑い合ってから、少しだけお話をして…とても疲れた。今日だけで色々あったから、当然だと思う。そんな私に気付いたエシャル様は、
「…おっと、無理は駄目だと俺が言ったのに、俺自身が無理をさせちゃあイカンでしょ。さぁディアドラ、もう休むといいよ。…俺も寝よ。」
私の頭を撫でてから、隣のベッドに潜り込んだ。頭を撫でられた私は、ドキドキしてなかなか寝付けなかったが、隣のエシャル様はもうお休みになったみたい。エシャル様、寝付きが良いみたいですね?
……明日から、本格的に傭兵? みたいな生活が始まる。それはとても不安ではあるけれど、楽しみでもある。見知らぬ世界が、見知らぬ体験が私を待っているのだから。これから始まる生活を、前向きに考える。頑張るのよディアドラ! 頑張れば頑張る程、私の未来はきっと……。
Zzz……。
ーエシャルー
気分爽快、良い朝ですな。隣のベッドを覗き、安らかで愛らしいディアドラの寝顔を見れば、今日という一日が素晴らしくなると思うのは必然。くそぅ…! ここにスマホがあれば、その寝顔を永久保存出来るというのに! ……はて、スマホとはなんぞや? まだ、俺っちは寝惚けているのかな? …まぁ、寝起きだからね! 井戸の前に行き、顔でも洗ってシャキ! っとしましょうか!
井戸で顔洗って、ガッツリ目が覚めました。…今日の予定は昨日に引き続き、作戦会議でしたかな? 俺にも考えておけと言われていましたが、昨日も言ったが考えてあるさ。
頭の悪い海賊なんざ、一発で終わりだね! とは言ったけど、一つ一つの集団を誘き出してですよ? 一気に片付けたいのはヤマヤマだけど、こちらの被害も大きくなるからねぃ! 各個撃破が望ましいのだ、多対一は戦闘の基本です! さて、会議まで時間がある。ここらを散策しておきますか、初めての場所だしね。
散策途中で、イケメンと再会しました。昨日ぶりですね?
「エシャル殿! 貴方のご高名は聞いております! 闘技場で貴方に敗北してから、俺は貴方のことばかり考えています! この想いの為に今、俺はこの場にいます! …俺は貴方に惚れました! 貴方の傍に、この俺を置いてください!」
……何言っちゃってんのこの野郎! 朝一の街中だけど、結構人がいるんだぜ!? 見ろや! 周りの人達がざわついたじゃねぇかよ! 俺に惚れたとか言うなし…!! はぁ~…、なんだかなぁ~…。
ホリンも仲間に!?
次回は、たぶん作戦会議。