忘れぬうちにってヤツです。
因みに『なろう』は、1,000文字ぐらいしか思い付いていません。
ーエルトシャンー
あの男前がエシャルか、流石は俺の甥。俺とアルヴィスの良いとこ取りじゃないか、…負けたよエシャル。お前こそが大陸一の色男だ、俺は甘んじて二番目の男になろう。エシャルの男前っぷりを称賛した為か、高ぶる気持ちを抑えることが出来ない。俺はエシャル、…エシャル将軍の下へ向かう。そう、俺とエシャルの再会だ。死んだとされるエシャルとの感動の再会、俺の望んだ瞬間…!
「生きて…、生きていてくれたんだなエシャル!」
俺はそう言いながら、エシャル将軍に近付く。俺の声を聞き、此方を見るエシャル将軍の顔が驚きに染まった。
「…エルト、…エルト兄様なのか!? まさかそんな…、いや…この地はアグストリア。……!? 私に会う為にわざわざマディノまで? ……エルト…兄様!!」
エシャル将軍が、エシャルが此方に駆け寄ってくる。やはり将軍はエシャル、俺の甥!
「エシャル…! 会いたかった…!!」
「エルト兄様…!!」
俺もエシャルの下へ駆け寄り、そして俺達は…。
ーイーヴー
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
私ことイーヴは、朝一でエルトシャン様に抱き締め…さば折りをされています。何故、私ばかりがこんな目に…。私はただ、エルトシャン様を起こそうとしただけなのに。
…アグストリア諸公連合の北方にあるマディノへ、噂高いトラキアのエシャル将軍が訪れる。そのような一報を受け、エルトシャン様の迷い無い選択。エシャル将軍に会うとのことで、2週間近くは馬にて駆け抜けてきました。無論ずっと駆け抜けていたわけではなく、乗り手であるエルトシャン様や私、馬を休ませる為に途中の村や街にて宿泊しつつというわけですが。勿論身分は偽っています、偽らなければ騒ぎになるのが必然ですので。
明日にはマディノというわけでして早目に宿を取り、鋭気を養うことにしたのですが、
「…なんという馬鹿力、…うぐぐっ!」
早目に休んだお陰で気分爽快、エルトシャン様を起こしましょうかと近付いた結果が今です。
「…エシャルゥ~、…俺は、…俺はぁ~…ぐぅ~…。」
今日中にはエシャル将軍に会える、そのせいでしょう…エシャル様の夢を見ているようです。まだエシャル様だとは分からぬのに、困った方だ…。まぁ私自身も、件の将軍がエシャル様であると思っていますがね。
「…軋んでいます悲鳴を上げています、…私の身体!」
…っとそんなことより、今この状態から脱出をせねば不名誉の死が訪れてしまいます!
…エルトシャン様、申し訳ありません! 主君に手を上げること等許されないことですが、こんな所で終わるわけにはいかないのです! 拘束されて動けない私は、エルトシャン様に頭突きをしました。
「…ぐぁっ!」
今の悲鳴は私ですね、…なんという石頭。流石はエルトシャン様、頭の頑丈さも一流です。一方的に傷を負っていく私ですが、拘束の緩んだ一瞬を逃しません。緩んだ隙に、エルトシャン様を背負い投げにて床に叩きつけました。今までのお返し…というわけではありませんよ?こうでもしないと起きない、…そう思ったのです。
………あれ程の衝撃を受けても起きないエルトシャン様、無自覚に疲労が溜まっていたのですね。暫くそっとしておきましょう、時間にはまだ余裕がありますし、私自身も回復しなくてはいけませんから。…床に放置で構わないでしょう、また捕まったら嫌ですし。
…2時間後、
「…何故か床にて寝ていた俺、…何故か身体中に鈍痛が、…解せぬ。」
床で目覚めたエルトシャン様は、頻りに身体の不調を訴える。それに対して私は…、
「後先を考えずに馬で駆け抜けた結果です、休みを挟んだとしても疲労が蓄積されていたのでしょう。エシャル様に今日会えると、…その為に気が緩んだのでしょうね。起こそうにも起きてくれず、最終的にベッドから転げ落ち…今に至ったわけです。」
よくもまぁ…嘘が言えますねぇ、私は。エルトシャン様もお怪我が無いようですし、大丈夫でしょう。
「…疲労か、…それならば仕方無い。だが、多少の疲労等…気にする必要もない。支度だ、支度を急げ!」
何だか腑に落ちないって顔をしておられるが、エシャル様を優先されるみたいで安心しました。
安心した所で、報告をしなくてはいけません。エルトシャン様が寝こけている間、マディノの近況を怪しまれないよう注意して収集していたのです。
「現在マディノでは傭兵達の尽力により、海賊被害が激減しているようです。多くの海賊達が討ち取られており、今日にでも海賊達の本拠地と言われているオーガヒル城に攻めいるようですね。天馬騎士を隊長とする一部隊が港街の守備を担当するようでして、その隊長こそがエシャル様であろう、トラキアの将軍です。」
この2時間の間にて、よくもまぁ集められたものです。私自身を褒めてやりたい、クロスナイツの諜報部隊でも設立してみましょうか? …して、エルトシャン様は、
「港街の守備か、一見安全そうには見えるがしかし! オーガヒルの海賊達は小賢しいと聞く。港街が攻められる可能性を否定出来ぬが故、港街の守備に対して助力をせねばなるまい。…マディノ城へと赴き、兵を借りて戦場を駆けようではないか! これはあくまで助力、傭兵達に横槍を入れるわけではない! 単純に格好いい俺をエシャルに見せたい、流石はエルト兄様だと思わせるのが要となる。故に、アグストリアの…、マディノの民達を傷付けさせるわけにはいかぬ! イーヴよ、のんびりしている暇はない! 急ぎマディノへと向かうぞ!」
素晴らしいことを言っておられたようだが、途中に余計なことも…。それはさておき、素早く準備を。私達が参戦すれば、被害を抑えることが出来ます。まだ襲撃に遭うかは分かりませんが、エルトシャン様の嗅覚は馬鹿に出来ませんからね。急ぎ準備をせねば、襲撃されてしまった際に遅れを取ることに繋がりかねません。それだけは避けねばなりませんよ!
ーエルトシャンー
なんやかんやでここまで来た。本来ならばもっと早くに到着出来たのだが、イーヴが『無理はいけません!』と言ってきたからな。身分を偽りつつ、休みながらここまで駆け抜けてきた。偽りつつここまで来たのだが、俺の溢れ出る男前波が色々と問題を引き寄せてきた。その度にイーヴが間に入り、解決しながら駆けてきた。うむ、イーヴを連れてきて正解だったな。アルヴァとエヴァだったら、こうはいかぬからな。…まぁそんなわけで、色々あった中でマディノへと来たのだ。
マディノへ到着した俺は、すぐさま城主に面会。城主は突然現れた俺に面食らっていたが、イーヴが俺の代わりに、
「度々オーガヒルの悪名が我らノディオンにも届いてまして、その所業許しがたいとエルトシャン様が討伐を決意したのです。本来ならばクロスナイツを率いてくるのですが、クロスナイツは大陸最強を自負しており、率いてくるとなれば諸公に要らぬ憶測を抱かせるとのことで、エルトシャン様は単身にてマディノへと駆けてきました。」
「エルトシャン様が単身でマディノへ!?」
城主は驚いている。
「…で提案があるのですが、このマディノの兵を少数お借り願えないでしょうか? 傭兵達が海賊討伐に動いているのは承知しています。承知しているからこそ、ここでマディノ軍として助力するのです。軍が民の為に駆けつけた、この事実が大切なのです。この事実が、城主様の名声に繋がりましょう。…あくまで助力、そしてエルトシャン様が指揮を致しますので兵の消耗も最小限。傭兵達の不興を招くことがないよう上手く率います、…如何でしょうか?」
…よくもまぁ口をついて出るものだ、…とりあえずイーヴに任せるとしよう。俺は苦手だからな、こういう交渉事は。イーヴならなんとかするだろうさ。
イーヴが交渉をまとめ、マディノから兵を借りることが出来た。まさかの騎兵300人、…50人ぐらいかな? と思っていたのだが6倍だよ。どんな交渉をしたのか気になる所が、結果が全てってことで気にしないことにした。まぁイーヴから、
「獅子王の異名に恥じぬ采配をお願いします、主役は傭兵達で我らは脇役ですからね。そこを間違えぬよう率いてください、エルトシャン様。無論、最小限の被害に止めるように。港街も騎兵も…、よろしいですね?」
調子に乗っての突撃は厳禁、あくまで補助に徹するというわけか。…クロスナイツの精鋭とは違い、まだまだ青い騎兵を率いることになる。そこの所をふまえて、海賊討伐もとい港街防衛の采配を振るわなくてはいけない。海賊がどの程度か分からぬが故、此方はゆるりと進軍。臨機応変に兵を動かすことが重要だな、…久々にたぎるな! やりようによっては、海賊達を蹂躙…、
「…エルトシャン様?」
…冷静に冷静に。主役は傭兵、即ちエシャル! 安心して戦うといいぞ、エシャルよ!
そんなわけで、俺を先頭にマディノ軍が出撃。…戦場にてエシャルと再会、…なんかいいな! なんとも獅子王らしいじゃないか! フフフ…エシャルよ、その目にエルト兄様の勇姿を焼き付けるといい!
「……もう一度、言いますか?」
…エシャルよ、俺の勇姿は次の機会まで待つといい!
ノディオン勢が馬鹿っぽい。
何故だろう。
次は本編ですかね。