因みに、主人公以外のカップリングもアンケートを取りますからね。
よろしく!!
ーヴォルツー
マディノから敵地オーガヒルへと上陸した俺達だが、海賊の影すら見えん。所謂、何もないってことだ。何の妨害も無く上陸出来たのは良いことなんだろうが、
「…ロマンの欠片もねぇ、海戦の一つでもあれば盛り上がったのによ…。」
実につまらん、妨害に遭いながらも仲間達と力を合わせて戦い、やっとの思いで上陸をするのがこの作戦の醍醐味じゃねぇか。…やる気、出ねぇよこんなんじゃよ。そんな感じで腐り始めれば、
「何事も無く上陸出来て良かった、とは言えねぇのかよ! それに罠かもしれねぇだろ? だらけんなよヴォルツ! 腐るのも駄目だかんな! お前は大将なんだからよ、ロマンも良いけどそれを忘れんなよ!」
信頼を置く副長ベオウルフが噛み付いてくる、…いつもの流れだな。周囲を見回せば、部下達にレイミアんとこの女達も笑っている。気張り過ぎてる奴は一人もいねぇ、良い感じでだらけているじゃねぇか。
「…それじゃあボチボチ行くとするか。一応、警戒はしとけよ。」
「「「「うぃ~っす。」」」」
とだらけた返事。…この作戦、俺達の勝率は高いな。
ーベオウルフー
…ったく、オーガヒルに上陸早々アホ抜かしやがって。まぁいつもの如く、良い感じに力が抜けている。それは俺や部下達、レイミア達にも言えること。戦う前から気張り過ぎんのは傭兵として失格、肝心な場面で集中力が切れちまうからな。ここぞ! ってな時に気張って戦える者こそが、戦場に出ても生き残る可能性が高いのさ。まぁ…だらけ過ぎんのも駄目なんだけどな、この匙加減が難しい。だらけ過ぎないような微妙な線を見切ってこそ、傭兵として成功するか否かが分かる。
その点で言えば、常時余裕のある俺達ヴォルツ傭兵旅団が、世界的有名になるのも当たり前だわな。毎日楽しく生きて、戦場では鬼神の如くってな。ヴォルツの口癖を真似るのはアレだが、世界広しといえ俺達を超える傭兵団はねぇだろうさ。ここ数年、旅団の人員は欠けたことが無い。…な? 最強だろ?
それに比べて、レイミア傭兵隊はまだまだってとこだな。俺達と比べたら当たり前だが弱小、引き際を間違ったりしているからな。そのせいで、海賊討伐の依頼中に数人死んじまっている。まぁそれでも伸び代はある、焦らずに依頼をこなしていけば一角の傭兵隊になるだろうさ。隊長のレイミアに副長のクー、二人の手腕に期待しようか!
…ってか、襲撃が無い! 無いから色々と考えちまったじゃねぇかよ! 主に傭兵の心構えと自分達の自慢、レイミア達への期待ってな感じでよ! 何故だ! …なんて考えていたけど、
「…敵戦力の殆んどがマディノ? エシャルさんの予測通り、首領に近い者達は捨て石ってことなんでしょうか?」
レイミアんとこのクーがそんなことを言った、…マディノか。本来ならばすぐにでも退却し、エシャル達と合流するのが普通なんだが、その必要は無いと考える。たぶんエシャルはこの状況を予測して、俺達をオーガヒルへと向かわせた。
…エシャルは何かしらの手を使い、この状況を作り出した。調査だと言って単独行動をしていたが、そん時に何かをしていたんだろう。交渉の余地ありか…、そう仕向けたのはエシャル。手練れの傭兵団と数少ない海賊、戦力差は明らかだ。籠城も愚策になるだろうからな、生き残るには交渉のみ。
交渉と言っても、降伏っていう道しかねぇと思うが。交渉する方向に決まったら、渡してくれっていう手紙をエシャルから預かっている。何が書かれているのやら…、まぁ悪い内容ではないだろうな。兎に角、なるようになるだろう。俺達はこのままオーガヒル城へ進軍、マディノはエシャルに任せればいい。
俺はこの状況を訝しむクー達に、
「気持ちのんびり行動素早く進軍するぞ、マディノはエシャルに任せればいい。マディノを気にする余裕があるなら、ちーとばかし周囲を警戒しとけ。海賊が潜んでいる可能性はあるんだからよ。とりあえずエシャル達を信じて、俺達は先へと急ごうぜ。」
と言った。訝しんでいたクー達は頷き、余裕を持って周囲を警戒し先へと進む。さて、オーガヒル城の周囲はどうなっているのかね?
ーブリギッドー
先程、物見の家族が戻ってきて、
「傭兵達がこの城に進軍してきやす! やはり、ギーグやらハイマン等の一味はいやせんでした! この城は丸裸、傭兵達は無傷で攻め入ってくるものかと!」
顔を青くして、自分の目で確認してきたことを報告する。…チクショー! アイツ等、欲に負けてマディノへ行きやがったね! ギーグ一味やハイマン一味達がいないとなると、アドン一味やペジオ一味もいないってことになる。…オーガヒルの要所、そこを守る奴等がいないってこと。物見の家族も言っていたが丸裸、アタイ等は窮地ってことさね。
「親父! 今からでも遅くねぇ、城の守りを固めやしょう!」
「そうですぜ親父! このまま殺られちゃあオーガヒル海賊の名が廃る、最後まで抗いやしょう!」
報告を聞いて沈黙したこの場を、ピサールとドバールが声を荒げてそれを破る。この戦いで勝つこと等…もはや不可能、このまま何もしなければすぐにでも討たれちまう。ピサールとドバールの言うように、最後まで抗い死んだ方がいい。アタイ等はオーガヒル海賊の首領、ヴァン一家なんだからね!
「ピサールとドバールの言う通りだよ! 戦おうよ親父! アタイ等は泣く子も黙るヴァン一家じゃないか!」
アタイも二人に同調し声を上げると、他の家族達も同調する。…親父、黙ってないでなんか言っとくれよ!
暫くして、黙っていた親父が口を開いた。
「…オーガヒル海賊の掟を破ったガザック一味は討たれちまった、同じように暴走した奴等も悉くなぁ。仇討ちも分かるがこれ以上戦っちまったら、アグストリア正規軍が本腰入れて攻めてくる。それが分からねぇ奴等は俺を見限り、その結果がこれよ…。なんかやるせねぇよなぁ…、こんなことになるなんてよぉ…。」
大きな傷のある顔を歪めて、そう溢した親父。その言葉に、騒いでいた家族も黙り込む。特にピサールとドバールは、バツが悪そうだ。二人は一時期、討たれた奴等に同調していたからね。…でも思い止まった、親父を裏切ることが出来なかったのさ。
「俺達ゃあ海を渡る奴等から、通行料としてお宝をいただいていた。その代わり、海の安全を守っていた筈なのになぁ…。いつの間にか奪い、殺し、犯す…。ガザック達を見限りゃあよかったのによぉ、それでも大切な子分達だからよぉ、いつかそんな暴走が終わると信じてよぉ、見限ることをしねぇでよ…。お前達家族に迷惑を掛けちまった、全滅の道を作っちまった、…すまねぇなぁ、息子達よぉ!!」
あの親父が頭を下げた。どんなことがあっても頭を下げず、アタイ等を導いてくれた親父が…。
「「「「「親父ぃ~…!!」」」」」
不覚にも泣いちまったよ、アタイ達は…。親父を知らぬ内に追い込んで、頭を下げさせるようにしちまったんだからさ。本当に情けないねぇ…。
皆が落ち着いてから、親父が再び口を開いた。
「…傭兵達がここに来るのは時間の問題だなぁ、もう殆んどありゃあしねぇだろうけどなぁ。」
そう言ってアタイ達の顔を見る親父、…そして、
「そう簡単にやられるわけにはいかねぇわな、俺にゃあお前達がいるしよぉ。…いっちょ抵抗の一つでもやってみるかぁ、…覚悟を決めてよぉ!」
その言葉と共に、親父は側にあった大斧を頭上に掲げ、
「よっしゃお前達! 生き残る為の戦いでもしようや! 何人生き残って逃げられるか分からねぇけどよ、それでも戦おう! ピサールとドバールは何人かまとめて待機しとけ! ブリギッドは弓ぃ使える奴と高所に陣取っとけや! 相手の出方にもよるがよぉ、ブリギッド達の援護を受けながら突撃になるぜぇ!」
何人生き残るか分からない戦い、それでも希望を捨てずに戦うんだ! 手負いの獣は強いよ、覚悟しとくんだね!
ーベオウルフー
…何の妨害、抵抗の一つも無いまま、オーガヒル城へと辿り着いちまったよ。マジで海賊の大半というか、ほぼ全戦力がマディノへ行ったんか? …流石のエシャルも厳しいんじゃねぇか? と思った矢先、
「よく来たなぁ、傭兵共! オーガヒルの海賊は、そう簡単にゃあやられねぇ! 俺達ヴァン一家を舐めんじゃねぇぞ!」
此方の準備が整う前に、海賊達が姿を現した。…城門の上には傷のある大男、その隣には気の強そうな女。そして弓を構える海賊達が左右に並んでいる。…うーん、やはり待ち構えていたのか。…まぁ、分かっていたけどな!
…あの大男が海賊の首領だな、…向こうから姿を見せてくれたのは好都合。とりあえずは交渉か? 俺は奴等に気付かれぬよう、部下達に小さく手で合図を送る。そして一歩前へ進み、大男を見上げて言った。
「なぁ、とりあえず話をしないか! 俺はヴォルツ傭兵旅団副長のベオウルフだ! あんたがオーガヒルの首領でいいんだよな!」
聞く耳を持っていてくれりゃあいいんだが…、どうだ?
大男が俺の言葉を聞き、口を開こうとしたのだが、
「その隙を突いて親父を殺る気だね! 隠れて合図なんかしやがって! …そうはさせないよ!」
・・・いっ!? 俺の合図に気付いたのかよ! どんな目をしているんだ? あの女!
「ちょ…待てよ! ちげーよ、そんな意味じゃねぇって! 落ち着け…って、駄目か!」
勘違いした女は激昂し、俺目掛けて矢を射る。スゲー矢だ! 角度から見て、俺の眉間を的確に狙っていやがる。速さからしても威力は抜群、普通ならば一瞬であの世だわ!…だが、
ギィンッ!!
俺の前に大剣が差し出され、必殺の矢を剣身で弾く。頼れる相棒、最強の傭兵、我らが大将ヴォルツが俺を守る。俺は安堵と共に、
「隠れて合図を出したのは悪かった! 部下達に相手を刺激すんなよって指示を出したんだが、俺が刺激しちゃあザマァねぇわ! 俺達はマジで話してぇのよ、そこは信じてくれ! …じゃねぇとよ。」
俺は大男と女の背後、正確には空へ視線を向ける。すると空が一瞬光り、それと同時に、
ゴォォォォォッ!
大男と女のすぐ近くに、炎の柱が突如現れる。大男も女も、弓を構えていた海賊達も、突然のことで慌て始める。そんな奴等に俺は、
「お前達を本気で皆殺しにしなくてはならない、依頼遂行の為にな! 空に天馬騎士が待機している、合図と共に空からさっきの炎がぶち撒かれるぜ? …な? まずは話そうぜ! 言いたかねぇけど、そっちの選択肢は一つしかねぇ! …分かるよな! …因みにさっきの不意打ちは、お返しな!」
こんなこともあろうかと、脅しの一撃を仕込んでおいた。…使う気は無かったんだが、俺の失敗で使うハメになった。それはいいとして…俺達だけじゃなく、天馬騎士も絡んでいる。…賢しい首領は分かるだろ、まずは此方の提案通り話すしかねぇと。交渉の余地、生き残る道がまだあると。さて…どうする? このまま一戦して、全滅の道を選ぶのか?
暫くして…、
「分かった、話をしよう…。今から城門を開いて、俺が一人でそちらへ行く。…それでいいか?」
…やはり大男が首領か。
「分かってくれて嬉しいぜ! 俺達からは何もしねぇと約束しよう、待ってるぜ!」
これで第一段階? …は成功か。後はエシャルの手紙か、…これでどうなるかが決まる。
…パメラとアイーダに出会えたこともありがたかった。快く手伝ってくれたしな、うん。だが彼女達にも目的はある、その為に助力を引き受けてくれたのかね? …大体予想は付くな、たぶんエシャルだわ。…っと今は、海賊との話し合いだな。話し合いっつっても、手紙を渡すだけだが…。
・・・ブリギッドが出ましたねぇ。
次回は、後編です。