ミルディンさん、アンケートありがとう!
ーベオウルフー
オーガヒルの首領と話をする段取り、…というか手紙を渡す段取りを付けた俺は思い返す。この段取りを付ける為の仕込み、脅しの一撃を担当した二人との出会いを…。
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俺達ヴォルツ傭兵旅団とレイミア傭兵隊はオーガヒルに上陸、海賊の妨害も無く拍子抜けの進軍、それでも一応は警戒し進んでいる途中にて、
「大将、副長! 此方に天馬騎士が一騎、接近してきます! …エシャルの旦那ではないようです!」
「あれは…、シレジア天馬騎士隊の隊長格じゃないか! 隊長格に知り合いがいたのかい!?」
レイミアが驚いている、…まぁ当然か。ただの傭兵が、隊長格と知り合いだなんて普通はねぇもんな。ぶっちゃけ、俺とヴォルツもビックリだぜ? 知り合えるなんてよ。その仲介に、『トラキアの黒刃』エシャル様がいるんだけどな! その黒刃様と知り合いってーのも、ビックリものだったしな!
さて、誰が来たんかね? 何の連絡も情報も無い来客、マーニャか? それともパメラ? はたまたハナタレ…は、そこまでの騎士にはなってないか。うーん、誰だろう。
そんな件の天馬騎士が、俺達の下へと舞い降りた。誰だろうか? という気持ちもあるが、一体何用か? という気持ちの方が大きい。
「お? パメラの方だな。」
ぼそりとヴォルツが呟き、天馬騎士へと視線を向ける。…お、本当にパメラだ。…と、誰だ?
「久しいな、ヴォルツ殿、ベオウルフ殿、傭兵の方々。…初見の方々もいるようだな、私はシレジア天馬騎士団副団長のパメラ。以後、見知り置きを…。それと…。」
天馬から降りたパメラに続いて降りた人物、赤紫の髪をした美女…だな。その美女は優雅に一礼し、
「皆様方、初めまして。ヴェルトマー公爵家に仕えておりますアイーダ、と申します。お歴戦の方々にこの顔を見知って頂けたら、私自身の誉れとなりましょう。どうぞ、よろしくお願い致します。」
と言葉を繋いだ。…ヴェルトマーのアイーダ、だと? 今、そう言ったよな? ヴェルトマーのアイーダ、…ヴェルトマーの魔女じゃね!? グランベルの大物がなんでここに? そしてなんでパメラと一緒に俺達んとこ来るの!? 天馬騎士隊から天馬騎士団に、そしてパメラが副団長ってーのも驚いたがそれ以上の衝撃だよ! 何故だ!! と深く考えればすぐに分かった、…エシャルだわ。たぶん、いや…きっと。
…で一時的に進軍を止め、話を聞こうとしてみれば、
「私というかアイーダ殿がエシャル殿に用があってな、内容は明かせぬのだが…。して、エシャル殿はどちらにおられるのだろうか?」
…ほら、やっぱりエシャルだろ? あの無駄に色男な奴は、何処でヴェルトマーの魔女と知り合ったんだか。『トラキアの黒刃』というのが影響しているのか? それとも…、俺達では調べることの出来ない領域が絡んでいるのか? 国家間でのことならば、話せないし知ってはならない領域だ。…うーん、下手な勘繰りはしない方がいいだろうな。…とりあえず、エシャル個人の問題ではないよな? 俺がブツブツと考えていると、
「エシャルの奴はマディノだな、…マディノの防衛をしている。俺達とエシャルは…。」
ヴォルツが俺達とエシャルの現状について、パメラとアイーダに説明をする。そのやり取りを聞きながら、考えることを止められない俺がいた。
「オーガヒルの海賊、その大半をエシャル殿達だけで撃破しなければならない。…大半といってもどれ程の規模かは分からない、…エシャル殿は大丈夫だろうか?」
ヴォルツの話を聞き終えたパメラは、マディノの方角へ視線を向けてソワソワしている。それに比べアイーダは、
「実力の程は見たこともありませんので存じませんが、噂や情報等を統合して考えれば…、心配する必要は無いかと。…逆に海賊達の方が、思惑外れて全滅しているのでは?」
と、エシャル達の勝利を予想…、顔を見るに確信しているな。…アイーダを見る度、エシャルとの関係が気になっちまう。気にはなっちまうがそれよりも、
「まぁそんなわけで、俺達はこれから城攻めだ。…つっても、戦わずに治めたいとは思うんだが無理だよなぁ。数が少ないとしても、一戦は免れないだろうさ。エシャルから海賊宛に手紙を預かっているんだが、一戦挟んで渡すしかないな。そういうことだから、俺達はそろそろ先へ進むぜ? マディノは戦場だが、お前ら二人なら問題無く……ぬぉっ!!」
俺達は進軍の途中であるのだから、先へ進まなければならない。二人と別れて進軍しようとしたんだが…、
「エシャル殿の手紙に何かあったら大変だ、私とアイーダ殿がその手伝いをしよう。よろしいな? アイーダ殿。」
「勿論です、パメラ殿。…理由があれば、会いやすいと思うしな。」
そんなことを言って二人が…、いや…パメラの方が絡んできた。アイーダの方は最後の言葉が聞こえなかったが、パメラの提案に快諾してるし。…パメラの奴、少しでも好印象を…とか考えているな?
かぁ~っ! モテる男はツラいなエシャル! 爆ぜろってんだバカヤロー!
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…とまぁこんな感じだった、向こうからがっついてきたなぁ…。なんて思っていると、沈黙していたオーガヒル城の門が開き、海賊の首領らしき先程の大男が一人で出てきた。
「…待たせたな、子分…家族と軽く揉めちまってな。」
子分…部下を家族ね、この男…信用出来る男みたいだ。味方に出来たのなら、背中を預けるに相応しい男。敵対したのなら、なかなかに手強い相手となるだろう。…脅しの一撃が成功して良かったぜ、あのまま一戦交えていたら被害が出てたな。レイミア達が主に、俺達も数人…ってとこか? 勝ちはするけど…って感じだな、うん。
「この程度、待つに入りゃあしないぜ? まぁ兎に角、改めて名乗るぞ。俺はヴォルツ傭兵旅団副長のベオウルフ、隣のデカイのが団長のヴォルツ。そこにいる黒髪美人がレイミア傭兵隊隊長のレイミア、髪を一本に束ねているのが副長のクーだ。この4人がオーガヒル攻めの主要人物、幹部ってーのかな? 主要人物ではねぇけど、天馬騎士もいるからな?」
いつも通りの軽い調子で名乗る、俺達の軽い雰囲気に面食らいながらも、
「…俺はオーガヒルの海賊を纏めていたヴァンだ。…なんというか、普段の俺等と変わらない雰囲気なんだな。多少…気が解れた、…いつも通りで良いわけだな。」
面食らっていたが、最終的に堂々とする首領のヴァン。これから言葉を交わすのに、警戒されちゃあたまらねぇからな。話し合いといっても手紙を渡すだけだし、気だるい雰囲気でも良いだろう。…まぁ手紙の内容次第で、この先どうなるか分からんけど。
多少は緩んだとしても、未だに強ばった顔をするヴァン。そんなヴァンに俺は、
「ほい手紙、…ここに呼んだのはこれを手渡す為だ。俺にも内容は分からない、お前に渡せとしか言われていないからな。この手紙を読んだ後に、どうするか決めてくれ。それしか言いようが無いんだわ、…因みに『トラキアの黒刃』様からの手紙だからな。」
はい、俺の役目終了! これで良いのかと思われるかもしれないが、エシャルに頼まれたことはこれだけだからな。後は相手の出方次第で武力行使、手強い相手になるがそん時は仕方がない。エシャルの手紙がどんなモノか分からんが、まぁ指示通りやればなんとかなる。
俺達の依頼でエシャルは助っ人なんだが、ここまでの戦いはエシャルの作戦できた、最後までエシャルを信じて動けばいいさ。実際、被害が少なくここまできたことだし、…情けない話だけどな。それほどエシャルは凄い奴ってことさ、友人として鼻が高いぜ!
「…手紙? …しかも『黒刃』!? …相手に『黒刃』がいたとなりゃあ、…この様も頷ける。…相手が悪すぎる。」
やや仰け反りながら、手紙を受け取るヴァン。…エシャルの噂は海賊達も知っていたか、どんだけ名を売ってんだよ。海賊達と長く戦い続けていたが、エシャルがいるってーのは伝わっていなかったようだな。まぁ皆殺しだからな、伝わらないのも当たり前だよな…。
若干顔を青くしているが、手紙の封を開け、読み始める。様子を窺っていると、
「…本気…で言っているのか? …だが本気だとしたら、…まだ望みはある。」
困惑はしているが、顔に生気が戻ってきている。内容的には明るいのか?
「…俺達の生き様は変わっちまうが、…生き残れるのなら俺は…。」
…難しい顔をしながら空を見上げているな? …考えているのかね?
…暫くして、
「……なぁ、ベオウルフさんにヴォルツさんよぉ…。『黒刃』様は信用出来るお人かぁ…?」
空から視線を戻し、俺とヴォルツに問い掛けてくる。エシャルが信用出来るかって? …そんなの、
「当然信用は出来る、信頼もしている。仲間や身内のことを考える男だし、敵であるお前に手紙を渡せと託すぐらいだぜ? …それにロマンも持ち合わせているしな。」
「その通りだヴォルツ、エシャルは最高に良い男だぜ? 基本アホだけどな。手紙になんて書いてあるのか分からねぇけど、信じてみな。お前達が馬鹿なこと、裏切らないのなら手を差し伸べてくれるぜ? エシャルはな。」
信用するに決まっている、裏でゴソゴソしているけどな。それも俺達のことを考えてのことだし、何の文句も無い。まぁアホだし腹立ちこともあるけど、全部引っ括めて信用している。…どうしようもないクズには悪魔だが、それ以外には色男だ。
俺達の言葉を聞いて、ヴァンは再び黙り込む。
「因みに私らは出会ってからの日が浅いからねぇ、ヴォルツやベオ程までにはいかないけど信用しているよ。まぁ何をやらかすか分からない人だけど、基本温厚で優しいからねぇ…。」
「ぶっちゃけモテモテですね、男の人にも女の人にも。不思議な魅力を持つ方です、エシャルさんは。」
そんなヴァンに、レイミアとクーもエシャルについて語る。…二人の言葉を聞いて少し、
「…そうかぁ、良い男かぁ…。悪名高くなっちまった俺に手紙を渡すような人だ、…信じるのが筋ってもんかもなぁ。」
お…? 信じる方に傾いたようだ。…ってことは、これで戦わずに…、
「俺は信じたいと思うが、家族の意見も聞きてぇ…。あいつ等の人生にも関わることだしなぁ、…で相談なんだけどよぉ。」
俺達は、ヴァンが城へ戻ることを承諾した。自分一人で決めることなく、仲間に意見を聞こうって所に共感したからだ。上に立つ者としてそれは如何なものか? と思うだろうけど、俺達傭兵は仲間同士の信頼があってこその集団だからな。旅団全てに関わることは、皆で決めることにしている。ヴァン一味の海賊達も俺達と同じってことで、共感しちまった。
…その結果、一戦交えることになってもな。…つーか、何を書いたんだ? エシャルの奴。一人じゃ決めきれないぐらいの内容、どんなもんなのかね?