「……………はぁ………」
御坂美琴、学園都市では有名な名前だ。能力者の頂点『level 5』という他の学生からすれば喉から手が出てしまいそうな程の称号、それを所持している。
本人としては別に威張る気もなく、努力の結果がこれであった、ただそれだけ。
その ただそれだけ、が問題なのだ。それのせいで好きな男の子と近づけない。
それは全くの勘違いなのだが、御坂美琴には気付く余裕すらない。
「ボク………どうすれば、いいんだろ……」
押さえきれない恋心―――思春期の女の子には当然の事かもしれない、けれども今の自分の立場が恋を許さない。いや、許されない。
告白? そんな事したら、あっちに迷惑が掛かってしまう。そんな事、あってはならない。
どうすればいいのか、わからないまま時間は過ぎてゆく。
………太陽の日差しが体に降り注ぐ。体がゆでダコになりそうな程、体は暑くなっていた。しかし、それでも御坂は動かない。自分がどんな状態なのか気付いてすらいないのだから。
「……………………はぁ……」
いくら悩んでも答えは出ない。もしかしたら答えなんて最初からなかったのかもしれない。
なら、諦めてしまった方が―――
「っっ! 駄目っ!!」
理解する事を拒否してしまった。もし、それを認めてしまったら……壊れてしまいそうだった。
私が私で、御坂美琴は上条当麻を好きって事…それは揺るがないし消えもしない。
それでいいのかもしれない。あの距離感が丁度良いのかもしれない。でも、それで私は良いのか?
「わかんないよ、そんなの…………」
そんな時―――
「あれ……御坂? 何してるの、こんな所で」
手を差し伸べるのは一人の女性。
御坂の先輩でもあり、学園都市『level 5』の第四位、麦野沈利、その人である。
「麦野………さん?」
「そうだけど―――って、どうしたの!?」
見た途端に涙が溢れてきた―――何故か止まらない。
「うぅ……うぁぁぁん!!」
そのまま麦野さんの胸へと飛び込んでいった。自分でも分からないが、何故かこうしたくなった。
尊敬してる先輩に助けてほしかった、教えてほしかった、どうすればいいのか―――
「ちょっ……ちょっと! 何で急に!?」
「むぎぃ………のさぁん―――助けてくださぁい……」
「わ、わかったから! 一旦離れて!!」
「はぁい…………」
素直に離れる。麦野さんが怒ると怖いのを、御坂は知っている。だから離れた。滅多には怒らないが、怒る時はとことん怒る人である。
「もう………綺麗な顔が台無しよ?」
麦野さんはポケットからハンカチを取り出す。そのままボクの顔を吹いてくれる。
これではまるで、母親と子供である。
ある程度涙が収まってきたので、お礼を述べる。
「ありがとう……ございます」
「別にいいわよ。大切な後輩が泣いてるんだもの、ハンカチの一つ位どうってことないわ」
また涙が溢れてきそうになったが、ギリギリで堪えて耐える。これ以上泣くわけにはいかない。尊敬してる先輩の前でこれ以上の失態は駄目。流石に恥ずかしい。
「さて………それじゃあ、話を聞かせてもらうわよ」
これ以上ない先輩からの有り難いお言葉。
・・・
「ふーん、恋愛ねぇ………」
「麦野さんは恋人が居るんですよね!」
「そう……だけど」
「ボクにアドバイスを下さい! ボクの好きな人は、とにかくモテモテで! 街を歩けばライバルが沢山いるんです!!」
「なにそれ」
余りの話に頭を抱えてしまいそうになった。それも無理はない。超が付くほどのお人好し、能力とかも打ち消す右手、ウニ―――どこのヒーローだって突っ込みたくなった。
「普通に告白すれば良いのに……」
「出来ないから困ってるんですよ! ボクの立場を考えると………相手に迷惑が掛かって……」
「………………………」
「だから、その……ボクは―――」
「あのね」
ボクの言葉を遮って、麦野さんが………顔を見ると、少しだけ怒ってる様に見えた。
「もし、御坂がそんな考えで……その男を好きになるのなら―――恋愛なんか辞めなさい」
「―――なんで……ですか」
「わかってないからよ。御坂が」
麦野さんは呆れたような表情をしている。
ボクには分からない。何がわかってないのか? ボクに足りないもの? なんだろう、わからない。
「立場なんて関係ないでしょ? 好きな人との間なんかに」
「…………それは」
「今の貴女は――逃げてるだけ。わかってるんでしょ?」
胸に突き刺さる。薄々は感じていた、わかっていたのかもしれない。認めたくないだけかもしれなかった……ボクが逃げてる事を。
確かに立場なんて関係ないのかも……それでも。
「でも……ボクは」
「迷惑を掛けたくない、かしら?」
「………はい」
「確かにその心構えは良いかもしれない、けど無理よ。迷惑を掛けない人なんていないの。この世に完璧な人間なんていない、ただそれだけなの」
「……………」
「付き合ったりする以上、持ちつ持たれつ。迷惑を掛け合って、お互いを支えあって生きていくの」
「!」
「わかった?」
麦野さんの問い掛けに、ボクは答えない、答えられない。何も反論出来ない位に、ボクは滅茶苦茶にされてしまった。
正論、そう正論だ。わかりきっていた事を言われて、ボクの心で勝手に丸め込んでいただけだった。
「まだ若いのよ? 御坂は。時間はいくらでもあるの………だから、ゆっくり考えて。後悔しないように、ね?」
「……はい」
この時、御坂は決意した。
「麦野さん、ボク決めました」
「? 何を?」
必ず、愛する人を……。
「ボク、明日―――」
射止めてみせると。
「告白します」
「…………………………はやっ」
余談そのいち
・あのハンカチ、数万円です。
・麦野から御坂への好感度は天元突破してます。その為に御坂から麦野への好感度も天元突破してる。
・この世界の麦野はウマ面と幸せにイチャイチャしてます。
・よかったね! 麦野さん!!