1DKの神様   作:not Give

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こんにちは。この度は1DKの神様を開いて下さりありがとうございます!
なろうの方でも投稿させてもらっているオリジナルです。拙い文だと思いますが最後まで読んで頂けたら幸いです。


出会いと早すぎる再会

斜陽が体を赤く染め、その後ろで黒い影を伸ばしていく。精肉店の袋を提げ、覚えたての歌を口ずさみ帰路につくその姿はもう何百回と繰り返した日常のワンシーンだろう。

 

顔に冷たい風が当たり少年-----高月彼方(たかつきかなた)はマフラーに顔を埋め、恨み言のように呟く。

 

「暦の上ではもう春なのにまだ日は短いし寒いじゃん。早く炬燵に入りてえ」

 

炬燵で暖まる同居人を想像して彼方は頬を緩めながら足を早める。

 

上代市は大型量販店や新興住宅地が立ち並ぶ一方で寺院や神社、雑木林などがまだ数多く残されている。

人が賑わい華やかな場所もあれば、時の流れが止まってしまったような静かな場所もあり適度なバランスを取っている。

そういう意味で上代市は静と動、今と昔が交錯する奇妙な町といえるだろう。

 

 

 

そしてしばらくすると年季の入ったアパートが見えてくる。八百万荘、通称不気味荘だ。

アパートの庭では雑草が寒いながらも逞しく生えており、狸の置き物に崩れかけた祠、小型モアイなど、どうしてここにあるのか分からないようなものたちで雑然としている。

お世辞にも趣味が良いとは言えないそれらは大家のものらしい。

しかも夜になると割と不気味に映るため、入居希望者が少ない。彼方はあまり気にしていないが呼び名通りという事だろう。

 

「たでーまー」

 

脱いだ靴を揃え、カバンを放りぐだぐだな口調になりながらも最早習慣となっている言葉が閑散としたアパートの一室に響く。そしてその声に反応する声が一つ。

 

「…おかえり」

 

そう短く返事をしたのは居間でまだ現役だと言わんばかりに置かれた炬燵に足を突っ込んでいる少女だった。

窓から覗く沈みかけの太陽に照らされ、こちらを向く少女は“人形のような”という表現がしっくりくる整った顔立ち。美しい着物を身に纏い腰まで届くかという長い黒髪は黒曜石のような艶やかな光を放ち見るものを捉えて離さない。

 

現に彼方もその絵画のような光景に目を奪われていた。

 

「…どうかした?」

 

「っいや、何でもない」

 

ぼーっとしていた彼方を不審に思ったのか無表情ながらも可愛く小首を傾げる少女。そこで我に返った彼方は照れを隠すように顔を背ける。まあそんなことしなくて朱色に染められた部屋では気付かれることも無いだろうけど。

 

「えっと…今日はなんかあったか?」

 

「…特に」

 

「そ、そうか、ならいいんだ。」

 

「…ご飯を」

 

「お、おう」

 

彼方はスーパーの袋を持ってキッチンへと早足で向かう。ちなみにまだ頬は若干赤い。

 

 

 

 

 

(うわぁああああああ!恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!)

俺はキッチンの床でさっきの醜態を思い出しゴロゴロと転がっていた。あっ、こんな時のために床はいつも綺麗に掃除してるよ?

 

(だいたいなんだよ「おっ、おう」って!ゴリラの鳴き声じゃねえんだぞ!

もっとこう…「じゃあ何が食べたい?(キリッ) とかさぁ、ラノベの主人公みたいに言えよ俺!)

床に頭を打ち付けながら俺は、もう第7回になる一人反省会を開会した。

 

(やっぱりあいつが可愛いからいけないんだよ。毎回あいつの可愛さにやられて言葉に詰まってろくに会話も出来ないままキッチンへと逃げ込むハメになっちまう。うん、やっぱりあいつが可愛いのが悪い!反省会終わり!)

 

スクッと立ち上がった俺は第1〜6回(これまで)と同じような結論に至り夕食作りに取りかかる。今日のメニューは特製黄金チャーハンとコロッケだ。炭水化物ばっかになるから野菜も摂らないとな、と考えてから

 

(そういえば今日で一週間になるのか。)

高校に上がり、安くて通うのも楽な場所にあるこのアパートを借りた。中学の頃から考えていた一人暮らしに最初は心を躍らせたけど、本当に最初だけだった。

部屋の片付けはもちろんのこと、炊事洗濯裁縫など何から何まで自分でやらなきゃならないっていうことの大変さを当たり前ながら実感したね。母は偉大なり。

 

そんな風に大変ながらも充実した一人暮らしの生活を送っていたんだよ。一週間前までは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日の晩飯何にすっかなー、冷蔵庫に何かあったっけ?」

 

別に何か考えてた訳じゃない。ただ何と無くいつもと違う道で帰ったっていうだけ。

俺は基本一人で帰る。別に友達がいないわけじゃない、いやマジで。みんな自転車通学で俺だけ徒歩ってだけだから。マジマジ。

 

なんて自己弁護の一人芝居をしながら歩いているとこの法治国家日本じゃ昨今お目にかかれないようなことが起こった。

 

なんと女の子が倒れていたのである。

しかも着物で黒髪ロング。何故こんなところで着物なんだというのは些末な問題で、これには俺の出会いレーダーが敏感に反応した。あれ?これキタんじゃね?

 

うつ伏せになっていて顔はよく見えないが

男なら誰でも期待してしまうような王子様展開を夢見た俺は緩みそうになる口元を引き締めたが、頭の中の俺はもう既に女の子と手を繋いでスキップしていた。

よし、紳士的に、それでいてスマートに声を…

 

(おい、どうしたんだ。大丈夫か?)

「ぇと、だ、大丈夫で、すか…」

 

男性諸君これが現実である。

 

くそっダメか…

しかし彼女はこちらに顔を向けずに一言

「……お腹減った」

 

いや、通じていた!まだ会話の余地がある!いけ、いくんだ彼方!

 

(腹が減ったならうちに来いよ、なんかご馳走するぜ)

「お、お腹が空いたんでっ、すか…」

 

重ねて言おう、男性諸君これが現実である。

 

(だめだ、死ねる。なんなのコミュ障なの?どうしたんだよ俺!)

 

「……お腹…減った」

 

(さっきより弱々しくなってる!これって本格的にマズイんじゃないの?)

 

「…! ちょっと待っててくれ」

 

 

俺はカバンをその場に置き財布を持って走り出した。

今は5時50分、あの店の閉店は6時だから…間に合う!

 

「おばちゃん!牛肉コロッケ4つ!」

 

上代精肉店、朝一で市場から卸した肉がお手頃な値段で売られており、この辺りの主婦の味方であるだけでなく、ここの手作りコロッケはリーズナブルな上大きく、お腹を空かせた学生の味方である。

彼方もここの常連だ。

 

「あら彼方くんじゃない、一体どうしたんだい」

シャッターを下ろそうとしていたおばちゃんは息を切らせた突然の客に目を丸くしている。

 

「ちょっと…お腹を空かせた…女の子がいて…」

 

ハァハァと荒い息をつきながら彼方は先ほどあったことの説明をした。

 

「まあ!そんなことがあったの。それなら早く持って行ってあげな。280円ね」

 

商売根性逞しいおばちゃんにしっかりとお金を払って、倒れている彼女の元へ急ぐ。

 

 

(よしっ、まだいる…)

彼方は内心安堵して彼女の元へ駆け寄ると買ってきたコロッケを差し出した。

 

「どうぞ」

 

その香ばしい匂いにピクンと反応してようやく彼女が体を起こした。

そうして彼方の手からコロッケの包み紙を受け取るとはむっとほおばる。

 

「…!美味しい」

 

どうやらお気に召したようだった。そこから彼女は黙々とコロッケを食べ進め、5分もしないうちに全て食べてしまった。

 

「…ありがとう、優しい人」

 

 

 

 

 

 

 

「そう言って微笑を浮かべた少女を俺はぼうっと見ることしか出来なかった。彼女の可愛らしさを100%表現する術を俺は持っていないからだ」

やべえ!口から阿保みたいなモノローグを垂れ流してた!どんだけテンパってんだよ…

 

あの子に聞かれてたらドン引きされると思って俺は一度視線を外してから、改めて目の前の彼女の様子を伺う。

 

よしっ、「え?なんだって?」って感じで聞こえてないみたいだ。女子とのコミュ力の低さに助けられた…もう低いままでいいな!

 

なんてアホな考えは捨てて今はこの子と仲良くなることを考えねえと…会話…会話…

 

「いっ、いい天気ですね!」

 

「…日は沈んだけどいい天気」

 

何故ここで会話が途切れる会話ランキング上位に入ってそうな会話を選んだんだ俺!

もっとしっかりしたことを…

 

「でもまだ寒いですよね。全く何とかならないものですかね…」

 

「…ごめんなさい」

 

謝られたよ…寒さの話題は地雷みたいだ。

会話が全然うまくいかずヤキモキとしていると彼女は

 

「…コロッケ美味しかった。ありがとう」

 

と言って去ろうとしたが

 

「待ってくれ!」

 

俺はすんでのところで彼女の手を取ってそれを留めた。うわ、手柔らけえとか一瞬考えたけど今はそれより重要なことがある。

 

「えっと、名前を教えてください…」

 

引き留めたときは気にしていなかったが、いざ言葉にすると緊張して敬語になってしまう。まあ言葉に出せただけ御の字だ。

 

彼女は少し思案するよう首を傾げたあと

 

「…天王寺 御神(てんのうじ みかみ)

 

と小さく言った。

 

「ありがとう」

 

すらりと出たこの言葉と共に俺は彼女ーー御神の手を離した。柔らかな手の体温が名残惜しかったが自重しなくては。

 

「また…会えるかな?」

 

そうやって俺ははにかむようにして聞いた。

願わくは彼女の中で印象に残りますように!

 

「会える、必ず」

 

と御神は今日喋った中で一番ハッキリとした口調で言ってくれた。

 

「じゃあね」

 

そう言って俺も御神も小さく手を振って別れた。

嬉しすぎる、勢いあまってスキップしながら帰りそうなくらいだ。こんなに女の子と喋ったのは高校に入って初めてなんじゃないか?

しかもすげえいい感じだったし。

夢じゃないよな!まあ夢だったらすぐ覚めるし、冷めるな。

 

そんなこんなで浮かれて歩きまわっていたらいつの間にか空には月が登っていた。

不気味荘に着いた俺は

 

「…おかえり」

 

と、ある意味もう聴き慣れてしまった声で出迎えられた。

 

「え」

 

そのとき俺はどんな顔をしてただろう。鳩が豆鉄砲どころかロケットランチャーでも食らったような顔をしてるんじゃねえかな。

あ、それだと俺吹き飛んでるわ。

 

「…また会えた」

 

「うん…」

 

少しテンパっているがこんなに早く(約1時間ぶり)会えたことに嬉しさもある。が次の御神の言葉でまた色々と吹き飛んだ。

 

「…少しの間、ここに居てもいい…?」

 

おかしいとは思った。なにかの間違いじゃないかもと疑った。だいたいこんな可愛い女の子がどうしてそんなことになってるんだって話だ。だが

 

 

 

返事?もちろんオーケーした。

俺は『可愛い女の子と同棲』

こんな素敵なことの前では全ての問題は些細なことだと思う。コミュ障?そんなの知らん!

 

 

 




1話を読んで下さりありがとうございます!
遅筆になってしまうと思いますがどうぞよろしくお願いします!

誤字、脱字があればすぐ修正しますのでよろしくお願いします!

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