副隊長、やります!   作:はるたか㌠

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UAとお気に入りが一気に増えていて何事かと思ったらランキング入りしていてびっくり。
本当にありがとうございます。


ガルパン二次もどんどん増える一方、嬉しい限りです。


では、パンツァー・フォー!


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1箇所だけ修正しました。


第7話 新たな戦車です!

 四発エンジンの大型機が、大洗女子学園の頭上に姿を見せた。

 みほと梓、そして戦車道履修者や生徒会の面々がグラウンドに出揃う。

 派手に土埃を巻き上げながら、機体はピタリと停止。

 タラップが降ろされ、乗員が手を振りながら顔を出した。

 C-5Mスーパーギャラクシー。

 アメリカ空軍も使用する世界最大級の輸送機であるが、勿論この機体は米軍所属ではない。

 機体に書かれた文字を見るまでもなく、大洗の生徒ならばその姿を忘れる事もないだろう。

 

「ハーイ! みほ、オッドボール! それにラビット!」

「こんにちは、ケイさん」

「やっぱり恥ずかしいから止めて下さいって!」

「あはは……。もう諦めた方がいいですよ、秋山先輩」

 

 すっかりラビット呼ばわりが定着してしまった梓は、苦笑するしかない。

 ケイも親しみを込めてそう呼んでいるのだし、第一彼女らはケイには頭が上がらない。

 先だっての廃校強行の際、戦車を一時預かって欲しいという杏の要請をケイが快諾してくれなければどうなっていたか。

 大洗女子学園は戦う手段すら失い、為す術もなく学園を去る事になっていただろう。

 偽装紛失に加担したという事で、サンダース大付属やケイが処分を受ける恐れすらあったのだ。

 だがケイはその程度で尻込みする事なく、大洗女子学園に協力を惜しまなかった。

 彼女が善人という事は勿論あるのだろうが、兎に角大洗に取っては恩人も恩人。

 足を向けて寝られないとはまさにこの事と言えた。

 

「やあ」

「全く、隊長もナオミも人が良すぎるわよ。私だってやらなきゃいけない事あるのに」

「アリサ、何か言った?」

「い、いえ。何でもありませんマム!」

「そう。今日はお招きありがとうね、みほ」

 

 そう言いながら、ケイはみほにハグをする。

 やはり慣れないのか、みほは目を白黒させている。

 そこに、片手を上げながら杏が近づいた。

 

「やあやあケイ。ようこそ」

「ヘイ、アンジー。こちらこそありがとうね」

「先日はうちの秋山ちゃんが世話になったみたいだし、今日はお礼にご馳走用意したから。大洗のハマグリは特に絶品だからねぇ」

 

 杏の言葉に、サンダースの面々が歓声を上げる。

 大洗は、兎に角海産物が豊富。

 ハマグリにアンコウ、ホッキガイ、タイ、シラス……。

 それが山と積まれ、炭火の香りが一面に漂っていた。

 旬を外れた食材もあったが、そこは栄養科の創意工夫が存分に発揮されたらしい。

 

「どうしたアリサ。食べないのか?」

「た、食べるわよ!」

「遠慮するなんて失礼よ? レッツイート!」

「わ、わっ! こんなに一度に食べられませんってば!」

 

 あまりのノリノリぶりに、みほと梓は呆気に取られてしまう。

 

「ケイ殿は相変わらずでありますな」

「優花里さん。サンダースでもこんな感じだったの?」

「はい。普段あまり食べないのですが、兎に角次から次へと勧められて大変でした」

「あはは……。そ、そうなんだ」

 

 

 

「そうそう。みほ、頼まれた物運んできたわよ?」

「本当ですか。ありがとうございます」

 

 食事の後、ケイは輸送機から何かを運び出すよう指示。

 トレーラーに載せられたそれは、そのまま倉庫へ。

 

「これ、直せるの……?」

「ただの鉄屑にしか見えないよねぇ」

「大丈夫なのかな、本当に」

 

 あやと優季、桂利奈らがそれを眺めてはわいわい騒いでいる。

 

「でもみほ、オッドボール。本当にコレでいいの?」

「はい!」

「無料で譲っていただいた上に、しかも態々運んで来ていただけるなんて。まさに感激であります!」

「ならいいけど。ウチの整備科ですらレストア諦めたジャンクよ?」

 

 ケイは呆れたように言うと、その物体に目を遣った。

 T26E1。

 あのM26パーシングの試作車だけあり、あの優花里ですら最初は見間違えてしまった程。

 サンダースの学園艦にジャンクとして放置してあったのを、学校間交流で訪れた優花里が発見。

 それを聞いたみほが、ケイに対して譲渡を申し入れた。

 そのぐらいお安い御用だと、こうして態々自ら運んできた……という次第。

 

「どうですか、ナカジマさん?」

「確かにかなりやり甲斐があるね、これ」

「……そうですか。でも、修理出来れば大きな戦力になりますから。どうか、お願いします」

「ま、見ててよ。私達の卒業制作代わりにきっちり修理してみせるからさ。おーい、ホシノ! クレーン車持って来て!」

 

 ナカジマと一緒に車体のチェックをしていた梓は、その様子にホッと胸を撫で下ろす。

 いくら何でも直してしまう自動車部とは言え、お手上げと言われたらそれまで。

 ケイに無駄な手間を掛けさせる事への申し訳無さもあるが、それ以上に戦力強化に期待した一手が空振りに終わる事が一番怖かった。

 

「ホント、ウチの隊長は人が良過ぎるわよ。いくらジャンクだからって、ライバルにタダでくれてやるなんて」

「いくらウチの学園艦が広いと言っても、ジャンクをそのまま放置しておくよりはいいだろう? アリサのプライベートルームみたいだからな、彼処は」

「うっさいわね! そこまで散らかってないわよ!」

 

 アリサとナオミの掛け合い。

 もはや夫婦漫才と言える気の合いぶりに、周囲から笑い声が上がる。

 

「梓、ちゃんと車内も調べた方がいいよ。ほら、紗希もそう言ってるし」

「…………」

「また盗聴してるとか?」

「アリサさんだからねぇ」

「うんうん」

「ちょっとちょっと。みんな、聞こえるよ?」

 

 梓が慌てて止めたが、手遅れだったらしい。

 アリサがワナワナと肩を震わせている。

 

「しないわよ! 私は盗聴しか出来なさそうに言うな!」

「そうだな。タカシに相変わらず振り向いて貰えないのも、ある意味芸の一つだし」

「ナオミまで!」

「あはは……」

 

 完全に弄られキャラと化しているアリサに、梓は苦笑するしかない。

 

「じゃ、帰るわよ。……ラビット、またアリサが何かやらかしたの?」

「いえ、そういう訳ではないんですが」

「ならいいけど。ナオミ、アリサ。帰るわよ」

「イエス、マム」

「うう、覚えてなさいよあんた達! 来年はボコボコにしてあげるんだからっ!」

「ほら、帰るぞ」

 

 ナオミに引きずられていくアリサ。

 

「来年かぁ。サンダースはまだ隊長しか決まってないんだっけ?」

「そのようですね、沙織さん」

「うちをボコボコにする前に、チームがボコボコにならなければいいがな」

「れ、冷泉先輩まで……」

 

 あまりの言われように、思わずアリサに同情してしまう梓だった。

 

 

 

「とりあえず、T26は修理待ちね」

「これで九両か。後一両は欲しいが、どう思う西住?」

「そうですね。レギュレーションを考えると、私もその方がいいと思います」

「けど、もう学園艦にはなさそうだしねぇ。自動車部に作って貰おっか?」

「いくら何でも無理ですよ、会長。それに、新製だと違反ですって」

 

 生徒会室で、テーブルを囲む五人。

 全国大会優勝の上、文科省の横暴による廃校強行騒ぎで大洗女子学園の知名度は一気に高まった。

 来年度予算からは助成金の増額も検討されていて、OGやファンになった人々からの寄付金も続々と集まり始めている。

 ……が、それでも戦車を買うとなれば到底足りない。

 改造用の部品ならば何とかなるが、車体そのものは仮に軽戦車と言えども安く済ませるのは難しい。

 戦車道のルールとして、一九四五年八月までに生産若しくは試作車が完成している車両のみ使用可という大前提がある。

 製造から七十年以上が経過した車両ばかりで、本来であれば博物館展示が当たり前。

 一部のコレクターや博物館では動態保存されているとしても、基本は骨董品レベルだ。

 台数も限られているので入手自体がそう容易ではない。

 その上、今は相場が上昇する一方。

 需要と供給のバランスで、需要が増えれば価格が上がるのは当然である。

 

 皮肉にも、その原因を作ったのは彼女達。

 マイナーで古臭いとあまり見向きもされなかった戦車道だが、大洗女子学園が繰り広げた戦いは人々に感動を与えた。

 日本人はブームに弱い傾向があるが、まさに戦車道は今や大人気となっていた。

 そうなれば全国の高校や大学、企業も挙って戦車道を始めようと動き出す。

 戦車道には当然戦車が必要だから、そうなれば争奪戦になるのは必定。

 こんな騒ぎになる前ですら、戦車の増強には頭を痛めていたのが更に事態が悪化してしまっていた。

 

「もう叩き売りなんて無理よね……」

「兎に角、条件を満たす戦車なら何でも売れているみたいだな。第一次世界大戦世代の車両ですら引き合いが多いとか」

「戦車の性能が劣っていても戦術でカバーできるのは西住ちゃんだから何だけど、なかなか理解出来ないのかもねぇ」

 

 柚子がパソコンで戦車売買情報を検索し、杏と桃が覗き込む。

 が、出てくる情報は完売とか商談中の文字ばかり。

 ネットオークションはまさに天井知らずで、ティーガーⅠやIS-2、M26パーシングなどは勿論、III号戦車とかM3軽戦車、一式中戦車のような車両まで引く手数多となる始末。

 

「IV号やM3中戦車、それに八九式中戦車があり得ない値段まで上がってますね……」

「あ、本当だ。三突に38t、ルノーB1……三式中戦車まで」

 

 梓とみほも別の端末で調べ始め、驚きの声を上げた。

 

「全部、うちの車両ばかりね」

「これが売れ残りばかりだと知れたら大変だな」

「そうでもないかもね、意外とわかってて人気なのかも知れないぞ?」

 

 柚子と桃は首を傾げるが、梓は杏の見方が案外的を得ているとかも知れないと思っていた。

 性能的には圧倒的に見劣りする車両揃いなのに、みほが指揮を取る事で他校を翻弄し見る者を魅了する存在となってしまう。

 実際、梓自身も弟から学校で戦車プラモブームになっていると聞かされていた。

 今度IV号やM3の実物を見せて欲しいとせがまれ、練習試合の時に必ずと約束させられてしまった。

 無論大洗の所有車両全てに思い入れがあり、愛着もある。

 ……が、一歩引いて見ればいずれも決して高性能とは呼べないと言うのも理解出来る。

 

「西住。何か伝手はないのか?」

「あ、あの……。私はご存知の通り、一度は戦車道から離れた身ですから」

「だが家元の直系なのだろうが。何とかならんのか」

「桃ちゃん、いくら何でも無茶だって」

「いくら西住ちゃんでも、まさか黒森峰から戦車は貰えないよねぇ?」

 

 桃に詰め寄られ、みほはオロオロし始めた。

 

「もう、いい加減にして下さい! 西住隊長にだって、無理なものは無理です!」

「ヒッ!」

 

 それを見かねた梓の剣幕に、桃は竦み上がった。

 

「そうだね、澤ちゃんの言う通り。何でもかんでも西住ちゃんに頼りきりは良くないし、それで西住ちゃんを責めるべきじゃない。そうだろう、小山?」

「はい。桃ちゃん、西住さんに謝って」

「な、何だと!」

「そうですね。河嶋先輩のあの言い方はありません、西住隊長に謝るべきです」

「ゆ、柚子ちゃーん……」

「会長さん、小山さん、梓ちゃん。私はその、気にしてませんから」

「西住ちゃん、それは駄目」

「そうね、駄目だと思う」

「ええ。お二人が仰る通りです」

 

 退路を断たれた桃は、結局みほに謝罪。

 みほは困惑したまま、ただ受け入れる他なかった。

 

 

 

「南が吉と出たぜよ」

「よし、行ってみるか」

「はい」

 

 梓は生徒会室を出ると、その足でカバさんチームの所へ。

 以前戦車捜索の際、彼女らの卦が役に立った事を聞かされていたからだ。

 今回はおりょうとカエサルが梓に同行すると申し出て来た。

 エルヴィンと左衛門佐は念の為、同じ方角を手分けして探すと言って別行動になった。

 

「しかし、まだこの学園艦に戦車が残っていたとはな」

「意外ぜよ」

「前回あれだけ探しましたからね。ですが、もう一度記録を確かめたらもう一台ある可能性が出てきたんです」

「ならば、探すのみだな」

「ぜよ」

 

 みほには、捜索に行く旨をメールで伝えてあった。

 ややあって返信があり、了承と気遣いが記されていた。

 

「それにしても副隊長。一つ疑問なんだが」

「何でしょうか、鈴木先輩」

「カエサルだ」

「たかちゃん、の方がいいと思うぜよ?」

「おりょう!」

「まあまあ。ではカエサル先輩」

「あ、ああ。書類を見つけたのは副隊長だと言うのはわかったが、何故自分で探そうとするんだ?」

「副隊長としての仕事が山積している、そう聞いているぜよ」

「……実は」

 

 梓は、生徒会室でのやり取りを二人に話した。

 協力して貰う以上は正直に事情を打ち明けた方がいい筈で、そもそも梓は隠し事は好まない。

 みほとの内緒事でさえ、梓にとっては思い切った行動としか言えない程だ。

 

「……なるほどな。我々が考えている以上に、事態は深刻という訳か」

「追い込まれた幕軍状態ぜよ」

「そ、それは兎も角。どうしてもあと一両、この学園艦にあるならそれを探し出したいんです。西住隊長にこれ以上負担をかけないように」

「副隊長は、本当に西住隊長の事を想っているのだな」

「まるで、恋する乙女ぜよ」

「え? そ、そんなつもりは」

 

 わたわたと手を振る梓。

 

「冗談ぜよ」

「……え?」

「あまりに一生懸命だから、少しからかってやりたくなっただけだ。悪く思うな」

「……あ」

 

 赤くなる梓を、カエサルとおりょうは微笑ましく見ていた。

 

 

 

 学園艦の南端。

 甲板の下は何層もの構造になっていて、船舶科の生徒ですらその全容は把握していない。

 前にP虎(ポルシェティーガー)が見つかったのも、滅多に人の立ち入らない区画。

 同じような場所を、地図を頼りに三人は降りて行く。

 

「そう言えば、副隊長はあの時遭難したんだったな」

「そうでしたね……。西住隊長が救助に来て下さいましたけど、それまでは本当に心細かったです」

「しかし、本当に巨大ぜよ」

「ああ。そろそろ、何か見えてきても良い頃なのだが」

 

 懐中電灯で辺りを照らすカエサル。

 ふと、梓は何かを見た気がした。

 

「カエサル先輩。もう一度、あの辺りを」

「よし。……おや?」

「何かあるぜよ」

 

 ゆっくりと近づいた三人の眼に飛び込んできたもの。

 錆が浮き、異臭すら放ってはいたが……紛れも無く、鋼鉄の巨人。

 

「……T-28のようです」

「何だと? 大学選抜チームが使っていたあの化物か?」

「いえ、それはアメリカ製の重戦車。此方はソ連製の中戦車です」

 

 プラウダ高校が使用している主力戦車であるT-34よりも前の世代に開発された多砲塔戦車。

 第二次世界大戦でも活躍し、フィンランド軍などは鹵獲車両を戦後まで運用していた程。

 今の大洗女子学園には、十分に戦力として期待できる存在に違いなかった。

 

「やったぜよ」

「はい! お二人のお陰です」

「いや、副隊長のお手柄だ。やったな」

 

 おりょうとカエサルにもみくちゃにされながら、梓は感慨に浸っていた。

 

(西住隊長……。喜んでくれますよね、きっと)

 

 

 

 この二両は自動車部によってきっちりレストアされ、大洗女子学園の一翼を担う戦力となった事は言うまでもない。




別作の方でM7とT-26を追加するという設定で書きましたが、ドラマCDで優花里がパーシングと見間違えたジャンク戦車を貰ってくる方が自然かな、と。
T-28は継続高校が持っていそうな気もしますが、公式設定にないので出してしまいます。
どちらかと言うとT-26の方が被りそうですし。


今週中に続きを投稿できるよう頑張ります。
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