とある聖王の双子兄妹   作:tubaki7

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古代ベルカ諸王時代――――それは、天地統一を目指した諸国の王による戦いの歴史。”聖王オリヴィエ”や、”覇王イングヴァルト”もそんな時代に生きた王族の人間である。いずれもすぐれた王とされる二人の関係は、現代の歴史研究においても明確になっていない。

 

 

 

 †

 

 

 朝。今日はいつもとは違い、ヴィヴィオと登校することはせずに湾岸第六警防所によってから学園へと向かった。というのも、件のことでの始末書だったり各所方面に出向いていた為である。若干初等科4年生といえども、嘱託魔導師としての仕事はきっちりとこなす。それがヴィット自身自分に課した課題でもあるからだ。それが終えれば、そのまま学園へ。担任教師やその他の教師たちにも自分の素性などはもう説明済なので、たとえチャイムが鳴った後だとしても堂々と校門をくぐることができる。幸い今回は執務官であるティアナが同伴だったためそのようなことはなかったが、それでも問題はあった。

 

  さっきから周囲の生徒達の視線が妙に自分に集中している気がする。その原因となる人物を、ヴィットはジト目で見た。

 

「・・・あのさ」

「はい」

「なにも一緒に登校しなくてもよくね?」

「ティアナさんから、こうするのが友達として普通だとお聞きしましたが・・・」

 

 いや間違っちゃねーけどさ。何も言い返せず右手で頭をくしゃっとかく。すると、何を思ったのか急に足を速めた。自分の目の前に立つと、少し背の高い彼女と目が合う。

 

「なに?」

「少し、ジッとしててください」

 

 そう言うと、急に手を頭に乗せてきた。なんのことか訳が分からず狼狽えるヴィット。女子に、しかもつい数時間前まで本気の殴り合いをしていた子に頭を撫でられている。そんな状況とこの周囲の視線がヴィットの羞恥を増大させていった。

 

「な、なにすんだアンタ!?」

「なにって、そんなに頭をくしゃっとしたら髪が乱れてしまいます。なので、手串をと」

 

 なんの抵抗もなくやってのけるあたり此奴もうちの家族(アレと)同類か、と思う。とにもかくにもこのままでは恥ずかしさでどうにかなってしまいそうなので。

 

「いっ、いい!そのぐらい自分でできるっつの!」

 

 思わず強引に手を払いのけてしまった。ハッとしてアインハルトをみると、少し悲しそうな目でこちらを見ている。周りからしてみれば、此方が彼女をイジメているようにも見えているのだろう。ヒソヒソと話し声が聴こえてきたりなかったりだ。

 

「だぁぁぁめんどくせぇ!わかった、わかったからそんな顔すんな!」

 

 どうしてこうも自分の周りはメンドクサイ奴ばかりなのか。そう嘆くヴィットだが関わってしまった以上もうどうにもならないわけで。頭を抱えたくなることだが、どうしもならないのであれば仕方ないと諦めるように溜息をつく。やがて二人はそれぞれの玄関口へと別れる為に反対方向へと歩いていく。その途中、いつもの三人組と合流した。

 

「おっはよ~・・・ってどうしたのヴィット、朝からなんかグロッキーだ」

「リオ、頼む。お前にしかできないことがあるんだ・・・聞いて、くれるか?」

 

 ガシっと肩を掴まれ、いつになく真面目な顔で言われたことにリオは若干たじろぐ。今まで意地悪な奴と思っていた彼の、真剣な眼差し。親友と同じ異彩色の眼がジッと自分を見つめて離さない。それを見て、ふと思う。

 

(な、なによコイツ・・・よくよく見れば・・・)

「一発、殴らせてくれ。俺の精神衛生の為に」

「ちょっとでもときめいた私の純情返しやがれーッ!」

 

 などとほぼほぼいつも通りの漫才を繰り広げつつ教室へ。当然リオの機嫌が斜めになると反比例してヴィットは少し機嫌を良くしている。まったくこの二人はとヴィヴィオは軽く溜息をついてからハッと何かを思い出したように振り返る。

 

「そういえば放課後ノーヴェが会わせたい人がいるって言ってたんだけど、ヴィット何か知ってる?」

「いや、知らねー」

 

 嘘だ。本当は知っている。ついさっきまで件の人物とは一緒にいたのだから。だがあえてここは知らないを通そうと知らんふりをすることに徹する。

 

「そっか。あ、でもそういえば結局話してくれなかったけどどうしてこの前は朝帰りだったの?」

「ブフッ!?」

「あ、あああ朝帰りぃ!?」

 

 予想だにしない妹からの不意打ちに思わずむせてしまうところだった。口走った単語とそのあどけなさから何故かこちらが背徳感に駆られてしまうのは、既に世に出て色々知ってしまっているからなんだろうか。それとも、自分が単に邪推しているだけか。それはそうと、このざわつきをどうにかしないといけないのは間違いない。

 

  あれ、なんかさっきもこんなことあったような。

 

「どどど、どういうことなのヴィット!?」

「ええい近いわコロナ!勘違いすんな!俺はただ、嘱託の仕事で遅れただけだ!」

「なーんだ」

「なんてちょっと落胆してんだおまえ・・・」

 

 友人の、若干見たくない部分を垣間見た気がするヴィットであった。

 

 

 

 

 

 閑話休題(その日の放課後)

 

 

 

 

 午前でその日の課程を終え、4人で下校。ノーヴェと待ち合わせたカフェに向かうと、そこにはナカジマ家5姉妹と教会からオットーとディードもいてかなりの大所帯となっている。

 

「よくもまぁこんな大人数で・・・」

「スバルが言いふらしたみたいでな」

「ちょっとー!人聞きの悪いこといわないでよぉ!」

「で、今日会ってもらうやつのことなんだが」

「無視!?」

 

 ギャーギャーとわめくスバルを華麗にスルーしつつ、話を強引に進める。ヴィヴィオには事前情報として格闘技をやっているとだけ伝えてある。だがそれだけのことしか知らないのに、かなりテンションがあがっているのか行動に落ち着きがない。流派は?何歳くらいの子?などとノーヴェを質問攻めにする。

 

「落ち着けっつの」

 

 そんな落ち着きのない妹に軽くチョップをくらわす兄。

 

「うぅ~・・・右手でやったぁ・・・」

「そうせかせかすんな。年は俺らの学園の中等科一年、ちなみに俺とおまえと同じ。虹彩異色だとよ」

「ホント!?・・・って、やっぱりヴィット知ってるんじゃん」

「ナンノコトヤラー」

「・・・で、流派なんだが、古代ベルカ式の古流武術だな」

 

 その情報をきいて、さらにテンションを上げるヴィヴィオ。さっきから飛び跳ねたりしてますます落ち着きのない彼女をいい加減落ち着かせようとスッと右手を掲げたその時。凛とした透き通った声が、その場に響いた。

 

「失礼します。ノーヴェさん、皆さん。アインハルト・ストラトス、参りました」

 

ノーヴェがアインハルトの姿を認めて手を上げる。小さくお辞儀をしてから歩み寄ると、ノーヴェ伝いで簡単な紹介をされた後。一行は区民センター内にあるスポーツコートへと向かうことに。

 

 だがそこに、緊急を知らせるコールが鳴った。何事かと、その音の意味を知っている管理局の職に就いている数名は報せを受けているアルケミック・スター(ヴィットの愛機)を見る。内容を確認したヴィットが、少し目つきを変えた。

 

《ノーヴェ、ごめん。近くで誘拐事件があったみたいだから、俺はそっちに行く》

《それはいいけど、一人で大丈夫?》

 

 ティアナがヴィットの身を案じて自分も行こうかと進言する。が、ヴィットはそれを拒否し一人で行くと言い切った。

 

《それは心強いけど、情報からして何かしらの犯罪グループってわけじゃなさそうだ。それに、それだけ危険だったらティアさんにも連絡が行くだろうし。何より、俺も一応あの二人の息子やってないからな》

《それだけで説得力があるんだから、ホントあの二人はスゲーよ・・・わかった、けど気ぃ付けろよ?》

 

 ノーヴェの承諾を得たところで思念話通信を終え、仕事で抜けることをヴィヴィオに伝える。少し不満そうなヴィヴィオだったが、それでも仕事ならと渋々納得してヴィットはその場をあとにし、現場へと向かう。

 

「アル、犯人の情報まだ何かないか?」

『黒いワゴン車ということと、複数人・・・目撃情報からすると、おそらく6人ほどのグループかと。ナンバーは控えてあります。それから、少し気になることが』

「なんだ?」

『その誘拐犯たちを、走って追いかけている女性(・・・・・・・・・・・・)がいるとの情報が』

 

 走って・・・追いかけている女性?局員の人間ならそのデータがあってもいいはず。それが何もないということは、非番の者という線もあるが、それだとしても走って追いかけるなんてマネはまずない。いくら魔力で強化しても、疲労がないというわけではない上に、いくらなんでも無茶すぎる。では、一体何者なんだろうか。少しの謎を孕んだその事件を一刻も早く解決させるため、ヴィットは先を急いだ。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 車が判別できているなら、駆け付けるのもたやすい。ヴィヴィオ達から別れてから約10分。肉体強化魔法を使いアルのナビゲートを受けながらの移動に、そう時間と体力の消耗をすることもなくたどり着けた。場所は、スラム街にある古びたゲームセンター。その入り口付近に停車している黒いワゴン車のナンバーと、門番をしているの男の顔が目撃例と一致している。そこからこの場所に間違いないと踏んだヴィットは裏手から侵入しようとするが、ここで一つ問題が起きた。

 

 息を切らせながらも、自分と同じく内部を伺おうとする眼鏡の女性が一人。これも情報にあった人物像と一致する。

 

「ちょっとおねーさん」

「ッ!」

 

 声をかけたその瞬間。一瞬にして間合いを開けられたことにヴィットは驚愕する。瞬きするよりも速く、まるで流れるように自分の死角に入った動きはもはや一般人ではない。身のこなしからして、かなりの訓練を積んでいることがわかる。そして、その顔からしても局員でも警らの人間でもないことがわかった。

 

「子ども・・・?」

「あ~・・・俺、こういう者なんだけど」

 

 説明するよりは早いと、アルを出して自分が嘱託魔導師であることを相手に証明する。

 

「あ~!貴方、この前雑誌のインタビューに答えてたわよね!」

「ああいうのは苦手なんだよね。色々と比べられたりするし・・・って、知ってるなら話が早いや。危険だから、帰ったほうがいい」

「あら、こんなところに来てるっていうのに女性一人で帰らせる気?」

「普通の人間が走行中の車を見失わずに走って追いかけられるわけないでしょ。おねーさん、少なくとも武装隊の人間ってわけじゃなさそうだけど。並大抵の鍛え方してないみたいだし」

 

 まるで小ばかにしたような言葉にムッとなって論破するヴィット。「それもそうかもね」なんておどけてみせるこの女性を少し鬱陶しく思いながらも、早く終わらせて帰ろうとそれ以上の会話もせずに溜息をつく。

 

「ちょっと、どこ行くの?」

「裏手から侵入する。情報の裏付けってわけじゃないけど、一応自分の目で確認したいからさ」

「そんな場合かしら」

「・・・どういう意味?」

「誘拐されたのは貴方とほぼ同年代の女の子・・・かなりかわいい子だったわね~。あれなら、男なら放っておかないんじゃないかしら?」

 

 イヤな笑みをする。すっかり苦手意識を抱いた女性の言葉から察するに、「女の子の純潔(・・)が台無しにされる前にどうにかした方がいい」ということだろう。それならそうと言えばいいのに、こんな回りくどい言い方をそんな挑発するかのように言うのはハッキリ言ってメンドクサイ。似たような性格をした紫髪の少女を少し思い出しながらも、仕方がないと割り切りをつけて正面から堂々と入っていく。

 

 次の瞬間、女の子の悲鳴がその場に木霊した。おそらく、誘拐された子のものだとみて間違いないだろう。中の状況はかなり悪いことが想定される。こうなれば、犯人達を刺激しないようになんて悠長なことを考えている場合ではなくなった。

 

「あーもう!言わんこっちゃない!」

 

 しびれを切らせた女性が飛び出して門番の男に飛び蹴りを叩き込む。すると男はまるでボールのように吹っ飛びながらガラス戸を派手に突き破って中へと転がった。エグい。そう感想を漏らしながらヴィットも中へと入る。そこでまず目に飛び込んできたのは、地面に伏せられた状態で顔を赤く腫らし、衣服を破かれた女の子の姿。そして彼女をそんな姿にした男一人と、取り巻きの仲間とおぼしき男が約5人。

 

「ガキと女だァ!?」

「時空管理局地上部隊108隊預り、嘱託魔導師の高町ヴィットだ。今すぐその子を解放して投降しろ。そうすれば、弁護の機会がアンタらにはある」

 

 業務ということで、一応は投降を促す。本音で言えば今すぐにでもこの連中をボコってやりたいが、それでは此奴らと同じになってしまうと冷静に対処する。だがそれでも、男たちは従おうとはしなかった。横から殴りかかろうと飛び出した男が一人。だがその拳は傍らに立つ女性を捉えることなくノールックで叩き込まれた裏拳によって地面に沈む。顔面から鼻血を流し、その様からそれなりの威力で叩き込んだようだ。それにしても、またしても無駄のない動作。やはり只者ではないと思いつつ。ヴィットも同じように襲い掛かってきた男を振り向きざまに右拳を叩き込む。鳩尾にクリーンヒットした後、ピクリとも動かずに地面に臥せった。

 

 残り、三人。内二人がリーダーとおぼしき男のアイコンタクトでナイフを取り出してきた。

 

「やっちまえッ!」

 

 男の指示と共に二人がこちらに向かってナイフを突き出して向かってくる。が、それも無駄に終わった。一方は勢いを利用され背負い投げ、もう一方は蹴りを受けてそのままゲーム機を壊しながら派手に転がり気絶する。

 

「おねーさんてさ、エグいね」

「そうかしら?」

「ちきしょう・・・こンの、化け物がぁぁぁぁぁぁあ!」

 

 逆上してキレた男は懐から黒い光を放つものをこちらに向けてくる。

 

「拳銃・・・質量兵器を所持って時点で軽犯罪なんて軽く飛び越えてるぜ」

「ちょぉっとこれは予想外かな・・・」

 

 今更弱気にならないでくれよ。そう心の中で突っ込みを入れつつ、ヴィットは一瞬にして間合いを詰め、右手で男の銃口を握った。ふりほどこうと力を籠めるも、ビクともしないことにさらに神経を逆なでさせる。引鉄に指をかけたのをみて、ヴィットが小さく「あ、」と漏らす。直後、銃声が鳴ったと思えば、撃ったはずの男が左肩を抑えて蹲って苦しみだした。

 

「危ないから撃つなって言いたかったんだけど遅かったか」

「ちょ、大丈夫なの?」

「この右腕・・・機械鎧(オートメイル)はそんじょそこらの鉄とはわけが違うからさ。こんな風に銃口を抑えたままで撃たれると弾丸が跳ね返って逆に撃った方を怪我させることがあるから。それを言おうと思ったら遅かったみたいだ。・・・さて」

 

 悶絶する男をよそに、女の子を救出する女性。自身の上着をかけてやりながら、無様にも地面を転がる男を冷めた目で見据える。

 

「ふざけんなよ・・・俺はただ、彼奴に病院送りにされた妹の仇を・・・ッ!」

「なに?」

「彼奴が悪いんだ!妹とその友達は、ただの口論になっただけで・・・それを彼奴は暴力で・・・!」

「・・・だってよ?」

 

 男の言葉に確認を取るかのように後ろにいる少女に問う。

 

「・・・本当に、そう説明されたんですか?」

 

 震える手で握りこぶしを作る少女。その雰囲気は今までされてきたことへの恐怖というよりは・・・男の言葉へ対する、怒りに見えた。そして少女は応える。事実と違うと。

 

「そんな筈はない!妹は優しい子だ。そんな子が、嘘をつくはずなんてあるわけない!」

「どっちが正しいかどうかは後で調べればわかる。たとえアンタの言ってることが全て真実だったとして、それでやった事への罪が全てチャラになることなんてねぇんだよ。ましてや、質量兵器(そんなもの)まで持ち出して使ってりゃな」

「グッ・・・だったら・・・だったらせめて!此奴だけは!」

 

 再び銃を拾い上げて、今度は少女へと向ける。そしてその引き金が引かれる――――そんな一瞬。渇いた音が鳴り響くと、二人の目の前、足元の地面が盛り上がりまるで壁のようにそそり立ち弾丸を無力化した。驚いて目を丸くする三人。壁が元の地面に戻ると、今一度乾いた音がなり、ヴィットが銃に触れる。すると一瞬の光を放ったかと思えばグニャリと銃身が曲がり使い物にならなくなってしまう。それにあっけにとられている男の顔を、振りぬいた右足が直撃し蹴り飛ばす。地面に転がり、まだ立ち上がる気力のある男を見ながら言う。

 

「立てよド三流。格の違いって奴を教えてやる・・・!」




というわけで、ヴィヴィオ対アインハルトの裏でもしもあの事件が起こっていたらという感じでかきました。時系列的に微妙な感じもあるのと、ヴィット君がしばらくの間空気になりそうな気がしたのでこういう形にしました
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