乾巧は四度目の生を生きる   作:北崎二代目

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バーナード CV(草加雅人)

今回は完全にオリジナルです


男たちの意地

「本当に乾さんたちを追わなくて良かったのですか? 何か危険な目にあっていたらどうするんですか」

「しょーがねーだろ。あんだけ暴風が強けりゃ追うのは危険なんだよ。二重遭難しちまうだろ。こうなったらガルドと巧を信じるしかねえよ」

 

 巧と北崎が交戦を始めた頃。そんなことはもちろん知らないファングたちはビューイの谷のフューリーを探していた。目を開けるのがやっとのこの場所でフューリーを見つけ出すのは至難の業だ。それはまた巧たちにも当てはまる。最初こそ追いかけようとしたが完全に視界から消えるとファングは追跡を諦めた。どこかで彼らと合流しなくてはならないがせめてフューリーを手に入れてからでなくては時間がいくつあっても足らない。

 

「おい、妖聖組。フューリーはこっちの方角であってんだろうな」

『おそらくな。微弱だが気配を感じる』

『かんじる~』

 

 巧たちとフューリーが唯一違うところは大ざっぱだが場所が分かるところだ。基本的に一本道だった洞窟系の迷宮の時はともかく今回のような先も分からない土地では彼らの力は非常に頼りになる。

 

「つーか、巧とガルドがいねえとこのパーティー女率がたけえな。おっさんとブレイズしか話し相手がいないとか俺にとっては二重で地獄だ」

『ならば俺が一番の地獄ではないか』

「お前ら二人のどっちからも地獄扱いされるオレが一番の地獄だっていうのは間違いないだろうな」

「確かに口うるさいのが二人だと私がファングくんの立場なら地獄だよ。それに比べればキレイどころの妖聖や女の子がいるこっちは天国だよ、ぐふふふ」

「あー、そっちが羨ましいなー」

 

 暇さえあれば会話をしている巧がいないと意外と寂しいものだ。ファングはバハスの顔を見る。どう見てもその辺のおっさんと変わらない彼と何を話せば良いのか分からず彼はため息を吐いた。

 

「そう言えばファングくんは可愛い子に囲まれてるけど誰が一番可愛いと思ってるんだい? 無論私だよな」

「は? なんだよ、藪から棒に」

「いやー、巧くんに聞いてもこの中にはいないって言われたから君はどうなのかな、って。ちなみにガルドくんは全員って答えたよ」

 

 ハーラーの質問にファングは面倒くさそうに頭を掻いた。

 

「あたしよ。なんせパートナーだもん」

『つきあいがいちばんながいのはわたしだよ。だからわたし』

「じょ、女性が軽々しく殿方にそんな話題を振るものではありませんよ」

 

 自然と女性陣から集まる注目にファングはますます面倒くさそうな顔になる。

 

「じゃあ・・・・・・マリアノ」

 

 アリンとティアラから張り手が飛んだ。

 

「なにしやがる」

「それはこっちのセリフです。別にアリンさんやハーラーさんと答える分にはいくらでも我慢出来ますがあの女性の名が出るのだけは許せませんわ・・・・・・!」

「同じく!」

「はは、ファングくんは乙女心が分かってないねえ」

 

 何が違うのかさっぱり分からん。だいたいこの中から選べば絶対に面倒なことになると分かっているからこの場にいない女の名前を出したのだ。別にそれはマリアノじゃなくてエフォールでも構わなかった。女ってやっぱり面倒だ、とファングは思う。こんなことならエフォールと言っておけば良かった。

 

(ファングは以前、マリアノとティアラの美しさは五分と言っていたな。つまりマリアノの名が出るということはそれは・・・・・・)

 

 ブレイズはそれを言ったらますます荒れるだろうな、と思い黙っておく。

 

「しっかしフューリーはどこにあるんだ?」

 

 あてもなく探すことは何度かあったがこれほど探し出すのに手間取ったのは初めてかもしれない。もしこのまま見つからなかったとしたら引き返した方が良いだろう。ファングがそう考える理由は二つある。ロロの情報がデマだったか、あるいは

 

「────ふ、貴様のお目当ての物はここにあるぞ」

 

 既にフューリーを手に入れた者がいるかの二つに一つなのだから。

 

「・・・・・・誰だ?」

 

 ファングは目の前に姿を現した男を睨みつける。ティアラと同じ髪の色をした美男とも言えるその男は底知れない雰囲気を放っていた。強敵。彼の脳裏にアポローネスやザンクが浮かぶ。だがこの男はそれ以上かもしれない。彼らはここまで接近されなければ気づけない程にその濃すぎる気配を隠せるだろうか。いや、不可能だ。それにもう一つその男を強敵と証明する者が彼の足元にはあった。

 

「さ、さつ・・・・・・」

「エフォール!? あんた、その娘に何したのよ!?」

「パートナーの果林さんをどこにやったんですか!?」

「・・・・・・女の子にそんな酷いことをするなんて穏やかじゃないねえ」

『それもガキに、だ』

 

 エフォール。ファングを苦しめた凄腕のフェンサーが傷だらけになって男の足元に倒れていた。何をされたか一目瞭然だ。ファングたちはみな目つきを険しいものに変えた。ハーラーに至ってはバハスをフェアリンクさせ男に銃を向けている。

 

「私がキミたちを狙っていると気づいた小娘が何を思ったか勝てないはずの私に挑んでね。このバーナードに逆らう人間は全て邪魔なんだ。残念ながら排除させてもらったよ。それは君たちも同じだ」

「・・・・・・どうでもいい。そいつを離せ。殺されたくなかったらな」

 

 ファングは鋭い殺気を男────バーナードにぶつけた。

 

「ぁああ・・・・・・!」

「何か言ったかなあ?」

 

 バーナードは笑いながらエフォールを足蹴にした。彼女の口から苦しく呻くような吐息が漏れる。

 

「聞こえなかったか? 今すぐ殺すって言ったんだ・・・・・・!」

 

 ファングはバーナードがエフォールを踏みつけたと同時に彼に斬りかかった。目にも止まらぬ早さ。目の前で気にかけていた少女を傷つけられた彼はアポローネスやザンクのように殺しだけはしてはいけないという無意識のリミッターが外れていた。ファングとバーナードが交戦を始めるとティアラはエフォールを抱えて離れる。

 

「はは。素直だな、君は。好きになりそうだよ」

 

 ファングの剣を受け止めたバーナードはニヤリと笑った。

 

 ◇

 

 ファングがバーナードと戦いを始めた頃。

 

「ラァッ!」

「フン」

「た、巧はん。あんなに強かったんか。あの北崎と良い勝負しとる」

 

 ファイズとサイガは激しい戦いを繰り広げていた。拳と拳がぶつかり合い、蹴り蹴りが互いに突き刺さる。ライダーとしてのスペック差は歴然。人間としてのスペック差もまた歴然。普通ならサイガに変身した北崎が圧倒しているはずだ。だが巧はそれでも食い下がっていた。今の彼は北崎に対して強い殺意を抱いている。巧は今まで人間であろうとして強き理性で抑えていたウルフオルフェノクとしての本能を極限まで解放した。不良の喧嘩スタイルとは各段に違う高速戦闘を得意としたウルフオルフェノクのトリッキーな戦闘スタイルが北崎を翻弄する。今の巧は普段よりも遥かに強い。それは直接戦ったガルドが驚愕する姿が証明している。

 

「ふふふ。キミ、そんなに強かったんだ」

「アアアアア!」

「まるで初めて戦った時みたいだ・・・・・・!」

 

 かつて北崎は、ドラゴンオルフェノクはウルフオルフェノクに初の敗北を与えていた。とある孤児院の同窓会を襲った時に通りかかった彼と交戦したのだ。その時は一瞬で巧は敗走している。だが長い戦いで経験値を手に入れた今の彼はその時より断然強よくなった。その時よりは。

 

「でもキミ、僕からしたら何時もより弱いよっ!」

「ギィッ!」

「た、巧はん!?」

 

 サイガは疾走する獣と化したファイズの首を掴むと勢いよく駆け出し、地面に叩きつけた。更に追撃で拳を振り下ろす。そう、北崎はまだまだ本気を出してはいない。手加減した方が楽しそうだから、ここまでの互角の戦いは全て帝王サイガの気まぐれの児戯にすぎなかった。マウントポジションを奪われたファイズは滅茶苦茶に殴られる。徐々に彼の意識が遠のく。

 

「巧さん!」

「っ!」

「うわっ!」

 

 果林が悲痛に巧を呼ぶ声がファイズの意識を呼び戻す。顔を反らして拳を避けると彼は頭突きを放った。まともに頭突きを食らって昏倒するサイガを振りほどくとファイズはハイキックを叩きつけた。地面に膝をつくサイガの顔面にファイズは追い討ちに膝蹴りをお見舞いする。更にサイガの首を掴むとその顔面を鋭い拳で殴りつけた。怯んだサイガは後ろに仰け反る。隙が出来るとファイズはその拳に555ショットを装着した。

 

「アアアア!」

 

 ────exceed charge

 

  フォトンブラットを纏った拳がサイガの腹に突き刺さった。

 

「へえ、リキ入ってんじゃん」

 

  だがその必殺の一撃すらもサイガには効果がなかった。ソルメタルよりも頑丈なルナメタルの装甲に加えファイズよりも純度の高いフォトンブラットを纏ったサイガの前にはグランインパクトなどただの拳と違いなどない。サイガはジークンドーをベースとした綺麗な回し蹴りをファイズの胸に喰らわした。鋭い痛みが巧の身体を 突き抜ける。構わずファイズはサイガにタックルをした。サイガはその攻撃を軽々と受け流し、ファイズのその腹に膝蹴りを与える。ファイズはふらふらと後ろに後退した。

 

「バカの一つ覚えじゃないんだからさあ・・・・・・。もっと色々考えて戦ってよ。飽きちゃうじゃない」

「・・・・・・くそ、バジン!」

「ピロロ!」

「そうそう。こんな感じにね!」

 

  今にもファイズにトドメを刺そうとするサイガを前にバジンが立ちふさがった。不意打ち気味に放たれたバジンの拳を彼はくるりと避けるとその背中に装着されたジェットアタッカーの操舵を握り高々と飛翔した。バジンも負けじと飛翔する。空中戦だ。サイガはバジンから放たれるバスターホイールの波を曲芸師のように掻い潜ると青い光弾を放った。それはバジンを狙ったものではない。ファイズたちに向けて放たれたものだった。彼らの頭上に光弾の雨が降り注ぐ。

 

「う、うそやろ、飛ぶとかそんなんありか!? 『フェアライズ!』」

『ガルドちゃん、果林ちゃんを守って!』

「おう! 巧はんの大事な娘はワイが守ったる!」

「きゃあ!」

 

  ガルドは空中からの攻撃に絶句しながらもその身に疾風金色の鎧を纏う。風を纏った必殺の鎌から振り抜かれた鎌鼬が果林に降りかかる光弾を弾き飛ばした。

 

「ガルド、頼む!」

「はいな!」

 

  ファイズは彼らの無事を確認すると高々と飛び上がった。サイガを打ち落とすつもりだ。迎撃で放たれる光弾の撃墜はガルドに任せた。降りかかる光弾が鎌鼬にかき消されるのを見送りながらファイズはバジンに手を向ける。バジンから投げ渡されたファイズエッジにエネルギーを纏わせてファイズはサイガの懐に潜り込む。忌々しい砲台も接近すれば無防備な置物でしかない。この一太刀を浴びせれば流石のサイガもひとたまりもないだろう。

 

「タァァァ!」

「三対一なんてずるいなあ。ま、それでもまだ僕のが強いけどね」

「なにぃ!?」

 

 ────exceed charge

 

  空中で無防備になったのはサイガだけではない。ファイズもまた同じく無防備であった。群青の三角錘状のエネルギーがファイズの身体を拘束する。サイガは急降下して彼に蹴りかかる。不味い! 巧の脳裏に明確な死のイメージが浮かび上がった。

 

「バジンはん! ワイを投げてくれへんか!?」

「ピロロロロロ!」

「よっしゃ! させへんでえぇぇぇぇ!」

 

  巧のピンチを救ったのはガルドだった。バジンの剛力によって投げ渡された彼は巨大な斧を強大なエネルギーと化したサイガに振り下ろした。フォトンブラットの塊が砕け散り凄まじい衝撃が二人を襲う。

 

「わああああああ!」

「うわああああ!」

 

  巧とガルドは吹き飛ばされた。巧の身体からベルトが飛び、ガルドもフューリーフォームが解除された。

 

「巧さん!」

「は、離せ!」

「ガルドちゃん!」

「ま、マリサ離してえな。まだ戦いは終わってへんねん」

 

  果林は巧を、マリサはガルドを抱き寄せた。

 

「あーあ、壊れちゃった。ダッサイなあ。いてて!」

 

  フライングアタッカーから煙が吹き出し、サイガは着地した。流石の北崎も暴発したエネルギーを前に少なからずダメージを受けたようだ。それでも巧たちと違って変身解除されてないことが彼の実力の高さを物語っていた。

 

「飽きちゃった・・・・・・って良いたいところなんだけど仕事なんだよねえ。ごめんね、やっぱり消すしかないや」

 

 ────ready

 

  サイガは使い物にならなくなったフライングアタッカーから唯一使える武装のトンファーエッジを持って巧たちに近づく。王の判決の下、極刑がくだされようとしていた。抵抗しようにもベルトもフューリーも彼らの手元にはない。先ほどの衝撃で飛ばされてしまった。勇猛果敢に立ち向かったバジンはビークルモードに戻される。万事休すだ。

 

「こ、殺すなら私だけにしてください!」

「うん?」

 

  なんとか立ち上がろうとする巧たちだが身体の痛みで動くことが出来ない。二人の前で両手を広げて果林は庇うように立つ。

 

「果林!? 何言ってんだ!?」

「・・・・・・私だって巧さんを、皆さんを守りたいんです。だから守らせてください」

 

  北崎は静止した。彼は状況がイマイチよくわからず首を傾げる。

 

「ま、別に僕はそれでも構わないよ。始末を任されたのは君だけだからね」

 

 ────exceed charge

 

  果林が盾になるというならそれはそれで構わない。北崎からしたら巧とガルドは暇つぶしのおまけでしかない。青白く輝くトンファーをサイガは構えた。

 

「・・・・・・巧はん。男が女の子にこんなこと言わせてはならん。ここは気張らな、気張らなあかんで!」

「ああ・・・・・・!」

 

  ガルドと巧は痛む身体にむち打ち無理やり立ち上がった。

 

「まだやるのー? キミたち、言っとくけど僕はわざわざ武器を取るのを待つほどお人好しじゃないよ。もう十分キミらの強さはわかったから。・・・・・・どうせならあの紅いのかファングくんと戦いたかったな」

「くそ! 巧はん、ワイが時間稼ぐ。もう一度変身してくれ!」

「ダメよ! ガルドちゃんが死んじゃうわ!」

 

  丸腰でサイガの時間を稼ぐ。それがどういう意味か、言わなくてもわかることだった。巧は首を振ってガルドの、果林の前に立った。どの道、ファイズの力でサイガに勝てるとは思えない。ならば彼らを守る方法は一つしかなかった。

 

「・・・・・・ガルド、嫌いになってくれて構わねえ」

「は? 巧はん、こんな時に何を?」

「へえ、これはちょっと予想外だね」

 

  巧は空を見上げた。綺麗な青空だ。

 

「ウオオオオオオオオオオオオ!」

 

  巧はウルフオルフェノクへと変貌した。

 

 ◇

 

「中々やるな。少しは手こずりそうだ」

 

  ファングとバーナードは激しい激突を繰り広げていた。横に払えば縦で受け止め、縦に払えば横で受け止める。両者共に無駄を一切なくし洗練された剣術を使う者同士の戦いは僅かにバーナードに分がある。ファングの剣術は独学もあるが彼の師匠をベースに鍛えられたオーソドックスなスタイルだ。対してバーナードの剣術は芸術的でありながらもどこか冒涜的でファングとはまるで違う邪道なスタイルだった。まるで剣を通して邪教を見せられている気分だ。こんな剣を使う人間は見たことがない。強いて言うならザンクが一番近いが彼の場合は片手で滅茶苦茶に振り回す巧と同じく不良の喧嘩のそれだ。レベルが違う。表の剣を極めた者がファングの師やアポローネスなら裏の剣を極めた者がバーナードだろう。そしてファングはどちらも極めてはいない。一人で勝つのは難しい相手だ。

 

「アリン!」

『わかったわ。『フレイムアサルト!』』

 

  ファングは剣から炎を吹き出し、滑空する。炎の連撃がバーナードを襲った。しかし、彼は余裕の笑みを崩さない。軽々とその高速剣を見極め、全て受け流す。

 

「ティアラ!」

「はい!」

「ふん、小細工しようとしても無駄だ」

 

  ファングがバーナードの剣を押さえ込むとティアラが水圧を纏った薙刀を降り下ろした。彼はファングを蹴り飛ばすと剣で受け止める。バーナードは万能武器であるフューリーの特性を最大限に活かし、剣の一部を銃に変貌させると彼女に発射した。目を閉じるティアラの前に大剣を盾にしたファングが割って入る。

 

「大丈夫か、ティアラ!?」

「え、ええ。ありがとうございます」

「心配しなくても彼女を殺す気だけはないさ。無論、彼女以外のキミたちには死んでもらうがね」

「・・・・・・?」

 

  バーナードはティアラに気味の悪い目線を送る。

 

「は、コイツは俺様の所有物だ。死んでも渡さねえよ」

「こ、こんな緊張感のある状況でドキドキさせることを言わないでください!」

『なぜ今のでドキドキする!?』

 

  ティアラを見つめるバーナードにファングは剣を振り下ろした。不意打ちで放たれた攻撃にも難なくバーナードは対処する。しかし、ファングの狙いは別にある。

 

「ハーラー!」

「ごちゃごちゃした戦いは好きじゃないんだよねえ」

 

  フェアライズしたハーラーが必殺の一撃を放った。弾丸ミサイルレーザーありとあらゆる飛び道具の豪雨がバーナードに降り注ぐ。サンザンドブリッツ────圧倒的な火力で多数の敵を殲滅するハーラーの必殺技だ。流石にこの攻撃が当たればファングたちの中で一番防御力の高いファイズでもただではすまないだろう。

 

「やった、のか」

 

  爆風を前にファングは呟いた。

 

「ふ、少しは効いたぞ 」

 

  爆風が晴れるとバーナードの変わらず健在だった。いや変わってはいる。彼の身体は銀色の異形に変貌していた。禍々しくも神々しいその姿はまるで邪神の化身のようだ。ファングは剣を構えた。

 

「なんだ、あの姿は!?」

『気をつけろ、ヤツはただの人間じゃない!』

『あれはじゃしん・・・・・・?』

「そうだ! 私は邪神の血を引く者の末裔だ!」

 

  バーナードの紫色の頭部が輝く。そこには禍々しい紋様が浮かび上がっていた。

 

「なにぃ!? ぜひキミの髪の毛をくれないか?」

「丁重にお断りする」

『こんな時にふざけないでよ!』

「じゃ、邪神の末裔・・・・・・!?」

 

  ファングたちは驚愕に目を見開く。ただ一人ティアラの顔が青ざめる。バーナードは彼女の様子の変化に顔を歪めた。

 

「────まずは鬱陶しいのから消えてもらおうか」

「は?」

 

  バーナードが呟いた瞬間、ファングの後方にいたハーラーがふっ飛んだ。

 

「無事か、ハーラー!」

「人を気にかける余裕があるのかなあ?」

「・・・・・・な、『フェアライズ!』 ぐっ!」

 

  ファングがフューリーフォームになるのと同時にバーナードが剣と化した腕を彼の背中に振り下ろされた。激しい激痛がファングを襲う。一瞬で彼のフューリーフューリーが解除され、バウンドしたボールのようになんメートルも撥ね飛ばされた。

 

「ファングさん! よくも・・・・・・!」

「おっとキミには一緒に来てもらわなくてはならないんだ。余計な抵抗は止めてくれないか。その美しい姿を傷つけたくはない」

「この私が黙ってるとでも!?」

「・・・・・・残念だ」

「う、く」

 

  抵抗の意思を見せたティアラの首をバーナードは掴んだ。

 

「てめえ! ティアラを少しでも傷つけてみろ! 俺が必ず殺してやる!」

「ふふふ、そう吠えるんじゃない。私の手元が狂ってしまうぞ」

「くっ・・・・・・!」

 

  ファングはバーナードを睨みつけるしか出来なかった。彼の手がティアラに触れている以上ファングは手を出せない。ファングは、だが。

 

「────殺」

「つぅっ! き、貴様ぁ!? 今までどこに!?」

 

  優れた暗殺者であったエフォールならバーナードに気づかれずに奇襲をかけるなど造作もないことだ。彼女の鎌が彼の腕に深々と突き刺さり、その手からティアラが離れる。

 

「エフォール、よくやった!」

「ファ、ングさん」

「しっかりしろ、ティアラ。もう大丈夫だ、大丈夫だから・・・・・・!」

「ふふ、泣いてはダメですよ。あなた・・・・・・男の子でしょう?」

 

  ティアラはファングの腕に抱かれる。バーナードに首を締められ意識を失う寸前だった彼女の瞳は焦点が定まらずぼんやりと彼を見つめるだけだ。ティアラの首は赤く血が滲んでいた。もしかしたら一生残る傷になるかもしれない。どうしてこうなった、ファングの顔から表情が消える。立ち尽くす彼にお前が弱いからこうなったんだ、と誰かが囁いた。彼の剣を握る手が震える。お前が負ければティアラは死ぬぞと誰かが囁いた。ファングの手に抱かれたティアラが弱々しく笑う。

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

  ブツリとファングの中の何かがキレる。その時、この世界の向こう側に存在する邪神が微笑んでいた。

 

「消えろ小娘が!」

『エフォール、避けて!』

「っ!」

 

  怒りに震えたバーナードの剣がエフォールを襲う。

 

「・・・・・・てめえが消えろよ」

 

 ────ヒュイン!

 

「なんだこれは?」

「殺?」

『・・・・・・我らが聞きたい!?』

『わけわかんないよー!』

 

  二本の剣がエフォールの身を守った。ブレイズとキョーコだ。彼らは宙に浮いていた。何者かの意思に操られているようだ。考えられる可能性は一つしかない。

 

「お前だけはぜってえ許さねえ!」

『ファング、あんたどうしたのよ!?』

「わかんねえ、わかんねえけどコイツだけは許せねえ! それにティアラを守らないといけないんだ! だから俺に力を寄越せ!」

 

  ファングだ。ファングが何らかの力を使って彼らを操ったのだ。

 

「『フェアライズ!』」

 

  ファングの魂にアリンの剣が突き刺さる。いや、アリンだけではない。ブレイズの剣もキョーコの剣も纏めて彼の身体に突き刺さった。まるで精神世界に封印された女神や邪神のように。通常ではありえない変身をしようした代償で激しい痛みに絶叫するファングの身体が灼熱を越えた紅炎に包まれる。

 

「・・・・・・貴様は何者だ?」

 

  ファングは紅炎真紅の戦士へと変貌を遂げた。今までの身体の一部を覆っていた鎧とは違う。まるでファイズやサイガのようなアーマースーツによく似た姿。だが何処か生物的な印象もあり根本はファイズたちとも違う。見知った者が見ればまるでそれはこことは異なる世界で『アギト』と呼ばれた神の力を持った戦士に限りなく近いと思うだろう。炎を纏った不死鳥の鎧は世界を照らし続ける太陽の皇帝へと進化した。

 

「お前を倒す者だ、バーカ」

 

 ◇

 

「ウオオオオ!」

「はははは」

 

  ウルフオルフェノクとサイガは激闘を繰り広げていた。ウルフオルフェノクはサイガのトンファーを掻い潜りその首筋に牙を突き立てた。だが彼は怯むことなく笑いながらウルフオルフェノクを背負い投げる。ウルフオルフェノクもまた怯むことなく立ち上がるとその拳に装着された唯一の武器メリケンサックをサイガの腹に叩き込んだ。

 

「な、なんなんやアレ・・・・・・?」

 

  オルフェノクの存在を知らないガルドは巧の変貌に動揺していた。無理もない。果林のように人外ならまだしもガルドは本当の意味で人間だ。自分とは異なる存在を前に動揺しない人間はいない。

 

「な、なんであろうと巧はんは巧はんや! やったれ巧はーん!」

 

  ガルドの場合は動揺しながらも巧の味方をした。

 

「へえ、良い仲間じゃない。僕たちみたいな化け物を受け入れるなんて中々出来ることじゃない、っよ!」

「ウォッ!?」

 

  サイガのローキック、回し蹴り、ハイキックの連打をウルフオルフェノクは喰らう。サイガとウルフオルフェノクは単純な戦闘力ではおおよそ互角。だが上級オルフェノクの中でも文句なしで最上級のドラゴンオルフェノクが変身したサイガは類い稀なる戦闘センスによってスペック以上の力を発揮する。巧が本気を出してもまだ手の届かない高みにサイガはいた。

 

「あ、でも今化け物なのはキミだけだね」

『何が言いたい!?』

「だってそうだよね。僕がしているのはキミがやってた怪物退治と同じことじゃない。キミ、自分が今どんな姿になってるか分かる? どんな顔で僕と戦ってると思う? 普通のオルフェノクと変わらないよ」

『っ!?』

 

  サイガのその言葉は巧にとって大きな動揺を誘うものであった。ライダーが怪人を倒す。それは仮面ライダーが存在する世界では絶対的な意味を持つ。ライダーという正義。怪人という悪。そして今自分は悪である怪人だ。それが彼の胸に重くのし掛かる。別に北崎が正しいと思っている訳ではない。だが今自分がウルフオルフェノクとして戦っていることを客観的に見たらどういう風に見えるのか。またサイガがウルフオルフェノクを倒そうとするのがどういう風に見えるのか。どちらが正しいか考えだしたら頭がおかしくなりそうだ。棒立ちになる巧の顔をサイガが殴る。殴られても彼は動くことができない。

 

「黙りや!」

「おっと。なに、キミもまだやる気?」

 

  サイガの背後からガルドは鎌の一撃を放った。

 

「ああ! やる気満々や! こっからはワイが相手や!」

 

  巧を守るようにガルドは立った。

 

「果林はん、巧はんを頼む! ワイが時間を稼ぐ!」

「は、はい」

 

  ガルドは巨大な斧でサイガを吹き飛ばした。果敢にサイガに立ち向かうガルドを横目に果林はウルフオルフェノクに駆け寄った。

 

『なあ、果林。俺は俺だ』

「はい。巧さんは巧さんです」

『人間の俺は俺だ。ファイズの俺も俺だ。なら怪物の俺も、俺なんだ。俺はあいつを倒すんじゃなくて殺したいと思っちまった。それは誰かを悲しませる怪物と変わらない。・・・・・・俺は消えるべきなんじゃないか』

 

  それはずっと前から巧が思っていたことだ。罪なき人々が死ぬ度にオルフェノクなんて全て消えてしまえば 良いと何度も願った。自分自身も含めて。

 

「・・・・・・私だって、人じゃないんです。私も消えるべきなんですか!?」

『果林・・・・・・。それは、違う』

「私に言ってくれたじゃないですか・・・・・・! 妖聖の私に普通の女の子らしくしてみろって。だったら怪物の巧さんだって人間として生きて良いんです。エフォールよりもこんな私の方が大事だって言ってくれて凄く嬉しかったんですよ。ずっと傍にいたいじゃなくてずっと傍にいてほしいと初めて思った人なのに・・・・・・だからそんなこと言わないでください。私はあなたに消えてほしくないんです」

「・・・・・・」

 

 ────俺は戦う! 人間として、ファイズとして・・・・・・!

 

  ウルフオルフェノクは、巧は気づいたら人の姿に戻っていた。目に涙を浮かべて想いを語り、そして微笑む果林を前に彼は沸き立っていた負の感情が抜けていくのを感じる。代わりに別の想いが巧の中に入っていく。それは彼がかつて抱いていた鋼鉄の意思。どす黒く濁っていた巧の目に不変の信念が宿る。

 

「うわぁ!」

 

  吹き飛ばされたガルドを巧は止めた。

 

「大丈夫か、ガルド?」

「なんとか。それより巧はんこそもう大丈夫なんか?」

「ああ。大丈夫だ」

「なら、これ受け取りぃ」

 

  ガルドは懐からファイズギアを取り出して巧に手渡した。いつの間に回収した。巧は目を見開く。

 

「どんな姿でも巧はんは巧はんや。でもやっぱりあのかっこええスーツ着て戦う巧はんのがワイは好きなんや」

「・・・・・・はは、俺もだ。人間として、ファイズとして人を守る方がオルフェノクとして戦うよりも好きだ」

 

  巧とガルドは笑い合う。

 

「巧さん!」

「果林・・・・・・ありがとう」

「ふふ、どういたしまして。・・・・・・絶対に勝ってください」

 

  巧は無言で頷く。果林は笑顔を浮かべた。

 

「・・・・・・で、まだ続きをしないの?」

「お望み通り今すぐ続きをやってやるよ」

 

  余裕の態度を崩さないサイガを前に巧たちは構える。

 

「やれるか、ガルド?」

「言われなくとも準備万端や!」

「行くぞ」

 

  肩を並べた二人は頷く。

 

 ────555

 

 ────standing by

 

「変身!」

「『フェアライズ!』」

 

 ────complete

 

  巧の身体を紅い光が、ガルドの身体を黄緑色の光が包み込む。鋼鉄不変で不屈の意思を体現した機械仕掛けの戦士へと巧は変身し、疾風金色で優しき信念を体現した勇ましき鎧の戦士へと変身した。

 

「なんや同時変身なんてかっこええわ!」

「・・・・・・さっさとやるぞ」

「ああ、置いてかないでくれや。いけずやなー!」

 

  二人同時の変身に目を輝かすガルドを追い抜きファイズはサイガに殴りかかった。彼は正面からファイズの一撃を受け止める。

 

「そうそう。キミを倒すならやっぱりファイズじゃないとね」

「俺もお前を『倒す』ならファイズが一番だって気づいたぜ。北崎!」

 

  ファイズの戦い方が不良の喧嘩スタイルへと戻る。ただひたすらに力を込めた拳がサイガの身体に吸い込まれていく。サイガも負けじとファイズの身体に拳のラッシュを叩き込む。今度こそ本当の互角。一度変身を解除してエネルギーを再充填したファイズに対して度重なる戦闘によってエネルギーを激しく消耗したサイガのスペック差は防御力を除いてほぼゼロになった。ファイズのハイキックがサイガを仰け反らせる。

 

「しばいたる!」

「くっ。キミは邪魔だよ!」

 

  追い打ちにガルドが懐に潜り込んだ。手甲に変形させたフューリーをとにかく力を込めて振り抜いた。滅茶苦茶に振り回された拳は的を何度か外れたが直撃するとファイズ以上の威力でサイガにダメージを与えた。堪らずサイガは後退し、腰のベルトに付けられたサイガフォンから光弾を放った。当てる目的ではない。接近させるのを避けるための牽制だ。

 

「ふん! ワイの『仲間』を傷つけるならとことん邪魔したる! マリサ!」

『リミットアタック』

 

  ガルドは背中の太鼓のようなブースターから火を出し、サイガに向けて滑空した。サイガの周りを円を描くように飛び竜巻を巻き起こす。天空の覇者であるはずのサイガが風に翻弄される。無数の竜巻がサイガを飲み込む。ガルドの必殺技────天上天下。サイガが天空の覇者ならばガルドは風の覇者だ。その鎌の一撃を浴びせるべく宙に浮いたサイガに向かいガルドは飛翔する。流石にこれはマズイと判断した北崎はドラゴンオルフェノクの力を発動する。両手を重ねると竜巻の拘束を振りほどいた。

 

「大気なら僕も操れるんだよ!」

 

  サイガはトンファーエッジをガルドに振り下ろし迎撃した。だがガルドは痛みに顔を歪めながらもニヤリと笑う。

 

「今や! 巧はん!」

「・・・・・・ああ!」

「なにぃ!?」

 

 ────exceed charge

 

  空中で無防備になったサイガを紅い三角柱状のエネルギーが拘束する。彼が下を見れば自分に向けてファイズが足を向けていた。紅い閃光と化したファイズがサイガに突っ込む。クリムゾンスマッシュ────必殺の一撃がサイガを掠める。

 

「ぐわああああ!」

 

  サイガはトンファーエッジを交差させて辛うじて直撃を防いだ。だが大ダメージを避けることは出来ず彼は変身を強制解除された。身体中にかすり傷が出来た北崎が地面に膝をつく。巧とガルドは顔を見合せぐっとサムズアップをした。

 

「やった。やったで! 巧はん、ワイらの勝ちや!」

「ふ、そうだな」

 

  巧とガルドは互いの手を叩いた。

 

「・・・・・・まだだ。まだ勝負は終わってない!」

 

  北崎の顔に灰色の紋様が浮かび上がる。ドラゴンオルフェノクになる気だ。だが巧は首を振った。

 

「やめろ。その姿になったら今度こそ俺はお前を殺す。お前と同じようにな」

「・・・・・・今日のところは見逃してやる。言っておくけど僕がオルフェノクになればキミたちは絶対に勝てない。ああ、それと運良くこの僕はに勝ったキミたちに特別に教えてあげようかな。・・・・・・『青い薔薇』には気をつけなよ」

「青い、薔薇?」

 

  北崎はふらふらと歩いて消えていった。

 

「なんや、あいつ。負け惜しみなん、か?」

「いや、どうだろうな。あいつずっと手加減してたぜ。殺す気だったのは俺がオルフェノクに、あの怪物の姿になった時だけだ」

「っ!?」

 

  巧の言葉にガルドは目を見開く。

 

「ま、次戦っても負ける気はしねえな。俺とお前、それにファングたちがいればな」

「せや! 何度来たってワイらが返り討ちにしてやるで! 北崎、首を洗ってまってるんやな! なははは」

「その意気よ、ガルドちゃん!」

 

  調子に乗るガルドに巧はふっと笑った。

 

「信じてました、巧さん。格好よかったです!」

「ああ。・・・・・・それよりエフォールを助けにいかねえとな」

「せや。あんさんのパートナーがピンチなんやったな。いくで巧はん!」

 

  ガルドは来た道を戻るために走り出した。

 

「いくか、果林」

「ええ。行きましょう。・・・・・・先に行って良いんですよ?」

 

  巧は首を振る。

 

「ずっと傍にいてほしいんだろ? ずっとは無理でも今くらいは傍にいてやるよ」

 

 ◇

 

「ハーラー、あれはなんだ?」

 

  進化したファングのフューリーフォームにバハスは首を傾げた。

 

「いてて・・・・・・。あれはレゾナンスエフェクトの終着点、いや一つの到達点だろうね。通常は深い絆で結ばれたパートナーとしか出来ないフェアライズをファングくんは他の妖聖とやってのけたんだ」

「そんなことが出来るのか」

「理論上は融合係数が高ければ出来るはずさ。フューリーには互いを共鳴し、その力を高める不思議な効果がある。この前の戦いのヤツとかね。ファングくんはどういう訳かその共鳴を限界以上に引き出したんだ。フェアライズが出来るほどに。ブレイズくんやキョーコちゃんとも彼は深い絆があるからね。ありえないことではない。だけど一つの身体に3つの魂を重ねるなんて無茶だ。今の彼は人間かどうかも怪しい。ぜひサンプルとして髪の毛がほしいなあ」

 

  ハーラーがイヤらしい目線をファングに向ける。彼はそんなことに気づかずにバーナードと向かい合う。

 

「私を倒す、だと。キミが? 調子に乗りすぎじゃないかなあ!?」

「ハァ!」

「ぐっ!」

 

  突然のファングの変貌に明らかなイラだちを覚えながらバーナードはその巨大な腕をファングに叩きつけた。先ほどはこれを喰らい一撃でフェアライズが解除された。だが彼はその重い一撃を片手で受け止め、カウンターで拳を叩きつける。

 

「どうした? こないのか?」

「こ、小癪な!」

 

  バーナードは巨大な腕を剣に変貌させ、ファングに振り下ろす。彼は手を掲げると大剣を召喚し、その一撃を防ぐ。さらにもう片方の手にブレイズの剣を召喚した。二刀の剣舞がバーナードの強化されたはずの肉体を切り裂く。彼の流れた血がファングの身体に触れると一瞬にして蒸発した。バーナードは驚愕の声を上げる。堪らず彼は後退した。

 

「逃がすか」

 

  ファングが手を振り下ろす動作をするとバーナードの頭上にキョーコの剣を先頭に今まで彼らが集めた無数のフューリーが降り注いだ。

 

「な、なんなんだ。なんなんだ貴様は!?」

「だから言ったろ? お前を倒す者だ」

 

  剣の檻によって拘束されたバーナードは震えた声でファングに言った。バーナードは初めて他人に対して恐怖の感情を抱く。そして後悔した。この男を『本気』にさせるべきではなかった、と。

 

「トドメだ」

 

  ファングはアリンの剣を地面に突き刺した。無数の大地のエネルギーが剣を通して彼の身体に集まりだす。ワールドインフルエンス────地脈を刺激して自然に変化をもたらすフューリーの特性を彼は攻撃に転用した。果てしない力が集まる感覚をファングは覚えると彼はバーナードに向けて跳ぶ。灼熱深紅の炎を纏った必殺のキックが彼の身体を貫いた。

 

「この私が負けるだと。ありえない! ありえなっ────」

 

  バーナードの変貌した巨体が爆散した。

 

「ざまあみろ。ティアラとエフォールを傷つけた罰だ」

 

 ◇

 

「ファング、大変だ。エフォールが!」

「エフォールが、どうしたって?」

「・・・・・・お前らが助けたのか」

 

  巧たちが大急ぎでファングたちと合流すると既にエフォールは彼によって救出されていた。彼女はファングに背負われてすやすやと眠っている。果林はほっと胸を撫で下ろした。

 

「それよりお前がいない間こっちは大変だったんだぞ」

「こっちだって大変だったんだよ」

 

  巧とファングは何があったか互いに話し合った。

 

「へー、巧の方にもそんなことがあったんだ。果林、巧に助けてもらえてよかったわね」

「はい。・・・・・・とても嬉しかったです」

「ちょい待ちぃ。ワイも頑張ったんやで、ほんまに!」

 

  アリンに意図的にスルーされ、ショックを受けるガルド。

 

「心配しなくてもガルドさんが巧さんを助けたことは分かっていますわ」

 

  タオルで首を押さえたティアラがガルドに微笑む。その真っ白いタオルは赤くなっていた。

 

「おおきに。・・・・・・ティアラはん、ワイがあとで回復魔法使ってその傷治すさかい安心しい。せっかくのべっぴんさんが台無しになってしまうわ」

「ふふ、ありがとうございます」

「ああ。俺からも頼む、ガルド。・・・・・・傷が残らなくて良かったな、ティアラ」

 

  ファングはティアラに笑みを浮かべた。

 

「お優しいんですね、ファングさん。そういえば私があの男に傷つけられた時も本気で怒っていましたし」

「・・・・・・お、俺様はただ自分の所有物を傷つけられるのが許せなかっただけだ」

「そ、そんなときめかせることを言わないでください! 勘違いしてしまうじゃないですか!」

「「「ねーよ!」」」

 

  巧、アリン、ファングが同時に突っ込んだ。

 

「それよりファングくん。あれどうやったの?」

「あー、あれか。なんかぶちギレたら出来たんだよ。理由はわかんねえけど。ふ、やっぱり俺は天才ってことだな」

『今日に限れば貴様は間違いなく天才だろうな。あのような芸当が出来るフェンサーなど初めて見た』

 

  あのフューリーフォームはファング自身どうやって出来たのか分からなかった。そもそも複数のフューリーを使ってフェアライズしようとなんて自分自身考えてなんていない。ブレイズは無意識でそれをやってのけたファングを天才と評しておく。もしも第三者からの介入があったのならそれは・・・・・・。今は考えるのをやめておこう。

 

「・・・・・・ん」

「お、エフォール。起きたか?」

 

  背負っているエフォールが軽くなったのを感じ、ファングは彼女の意識が覚醒したことに気づく。

 

「・・・・・・うん。起きた」

「そうか。もう一人で歩けるか?」

「まだ、キツイ。もう少しこのままがいい」

 

  そう言うとエフォールはファングの首に手を回した。なんだか妹が出来たみたいだ。彼はうっすらと笑みを浮かべた。

 

「はあ?」

「あれ?」

「あら?」

『むむっ!? これは・・・・・・』

『えっとえっと?』

 

  巧とアリンたちは首を傾げた。

 

「エフォールはん、ザンクって名前に心当たりはあるんか?」

「・・・・・・懐かしい」

「え、ちょっと待ってください。エフォール・・・・・・?」

「かまへん。なんか積もりそうやし、あとでええわ」

 

  果林も首を傾げる。おかしなことが一つあった。

 

「お前なんであいつと戦ったんだ?」

「・・・・・・ファングを殺すのは私。誰にもファングは渡さない」

「いやあ、モテるねえファングくん」

「ふ、俺も罪なお、とこ・・・・・・?」

 

  そしてファングも気づいた。

 

『しゃ、喋ったー!!!???』

 

  この日起きた様々な出来事がエフォールの小さな変化によって一瞬で吹き飛んだ。

 

「・・・・・・なんか私変なこと、した?」




スペックで勝てないなら気合いで勝てばいいんです(暴論)ファングのオリジナル強化は平成ライダーでおなじみの中間フォームです。この段階では普通に戦ってもバーナードには勝てないのでこうなりました。見た目はアナザーアギトバーニングフォームをシャイニングフォームのカラーにした見た目です。でもあまりオリジナルを多用するわけにもいかないので扱い的にはトリニティフォームになります。

ちなみにバーナードはグンダリ無駄遣いおじさんのように生きてるので安心してください。死ぬにはまだ早すぎですから。

次回からは何話かオリジナルストーリーになります。ちょっとしたギャグありの日常とマリアノ北崎関連、シリアスの予定です。もしもネタに行き詰まって更新停滞しそうになったら普通に本編やるのでその点は大丈夫です。
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