乾巧は四度目の生を生きる   作:北崎二代目

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特に意味もない思いつきのネタ

邪神編で北崎の性格が改変され、涼邑零のような性格に変化する。

今のペースだと何年後になるんだろう


レッツゴー! ヤルゾー! 好感度チェッカー!

「本当はとっくの昔に普通に話せてた」

「ちょっとそのお肉あたしのものよ!」

「所詮この世は弱肉強食。早い者勝ちや!」

「ガルドに同意だ!」

 

  あの激闘の翌日。祝勝会と称して設けられたバハスの特性鍋パーティーの席でエフォールがそう言った。彼らは激しい肉の奪い合いをしているファング、ガルド、アリンを除いて耳を傾けていた。特に猫舌である巧と果林は相性最悪の鍋に目もやらない。

 

  エフォールのことをまったく知らないハーラーたちは訳が分からず微妙な表情をしている。そりゃいきなり私の殺殺口調が治りましたと言われてもだからなに? だ。彼女のバックストーリーを知らなければ誰でもそうなる。

 

「それで? いつ頃から話せるようになったんだ?」

「パーティーの、あとくらい?」

「結構前だな」

 

  つまりエフォールはだいたい三週間くらい前から普通に会話が出来るようになっていたという訳か。その割りに果林までそのことを知らなかったのは何故だろう。三週間もパートナーの彼女にまで隠して生活してきていたとは。相当驚かしたくて我慢していたようだ。

 

「もう。私にまでどうして黙っていたんですか?」

「・・・・・・恥ずかしかったから」

「えーと。殺殺としか言わない方が恥ずかしくないかい?」

「う、うう」

 

  エフォールは顔を両手で抑えた。いざ客観的に振り返ってみるとやはり自分でもおかしな口調だったという自覚はあるみたいだ。小さな両手の向こう側が赤くなっている。

 

「せやか? ワイはおもろいから好きやで」

「ガルド、それはフォローになってねえぞ」

「むしろ追い打ちではないか?」

 

  ある程度肉の確保に成功したガルドが話しに加わってきた。だが加わってもあまり意味がなさそうだ。更にエフォールの顔は赤くなった。

 

「あの痛々しい口調はさておき『エフォールは痛い子じゃないですよ!』・・・・・・どうして話せるようになったのですか」

「心に余裕が出来た、から?」

「ず、随分アバウトやな」

「エフォールはフェンサー養成施設で育ちました。そこの環境は劣悪で日々誰かが死ぬ毎日でした。そんな毎日が続くうちに彼女はまともな言葉を話せなくなったんです。ファングさんと出会ってそれが変わったんです」

 

  元々エフォールがまともな言葉を話せなかったことは過去のトラウマによるものだ。その過去のトラウマを払拭する何かがあったのだろうか。

 

「フェンサー養成施設、か。その名前はあまり良い思い出がしねえな」

「おい、お前一人で肉盛りすぎだろ」

「うるせー野菜も食うから良いだろ。そういう場所には俺もぶちこまれそうになったことあるからな。ああいう場所にいたら確かにまともに話すことも出来ないかもな」

 

  器に肉の山を築き上げてご満悦のファングも話しに加わる。彼の隣にいるアリンは二人がいなくなったことで残った肉に一気に猛チャージをかけ始めた。

 

「・・・・・・そんなことあったか?」

 

  妖聖を除くとパーティーの中でファングと一番付き合いの長い巧にも心当たりがないことで彼は首を傾げる。

 

「一年くらい前だからな」

「正確には一年と半年前だ」

「こまけえことは良いんだよ」

 

  相も変わらず破天荒な旅をしている男だ。普通に旅をしていてもこうはいかないだろう。ティアラは苦笑した。

 

「で、結局エフォールはなんで話せるようになったの? イメチェン? きっかけは?」

「お前も肉盛りすぎだ」

「これはキョーコの分もあるからファングと一緒にしないでよ」

 

  器二つを山もりにしてようやくアリンも話しに加わった。バハスは肉のなくなった鍋にため息を吐きながら追加の肉をいれた。

 

「果林がいないと誰とも話せないから」

「え?」

「ピアノ汚れた時、誰にも謝れなかった」

 

  確かにあの時、通訳の果林はいなかった。一応の通訳が出来るキョーコはいたが子どもが代弁して謝ったところでバカにしていると思われただろう。ファングが代わりに謝罪しなかったらどうなっていたことやら。とにかくそれがきっかけで話してみようと思って口を開いたら普通に話せるようになっていたという訳だ。

 

「そっかそれで話せるようになったのか。俺が謝った甲斐があるぜ」

「うん。ファング、あの時はありがとう」

「それが自分で言えるようになったなら礼はいらねえよ」

 

  出来ることなら礼を言うよりも殺すことを諦めてくれた方がファングにとっては嬉しいし助かるのだが。まあこのまま改善していけばそれを諦めるのもすぐになるだろう。

 

「結果的に果林さんが席を外したのは良かったみたいですわね、乾さん?」

「俺に聞く意味ねえだろ、それ」

「あら? そうなると果林さんを外に連れ出したのは一体誰だったのでしょう」

 

  巧はため息を吐いた。ティアラが彼をこうやってからかうのは何度目だろうか。しかも、今回は何時もと違ってファングたちもいる。何時ものように自分が適当に流して終わりという訳にはいかないだろう。

 

  巧の予想は当たりその手の話しが大好きそうなアリンやガルドは面白そうに顔をニヤつかせた。

 

「そういえば巧、あの時果林をおぶってたわね。何があったのかしら? それともナニ?」

「お、なんやなんや? 巧はん、一匹狼でありながら夜の狼でもあるんか? やりますなー」

 

  お調子者たちの食い付きっぷりは予想以上のもので下世話な話しにまでもつれ込む。巧はティアラが常識人だったと今になって初めて気づいた。

 

「そんなんじゃねえよ!」

「そ、そうですよ! 私と巧さんは何もないんですよ、何も・・・・・・そう、何もないんです」

 

  全力で否定する巧と果林。だが途中で明らかに彼女のテンションはだだ下がりする。

 

「あー、巧はんこれはやってしもたなー」

「そうだよ。今すぐ彼女の後ろに回り込んで抱き締めてあげな」

「ハーラー、それは飛躍しすぎではないか?」

 

  巧へのからかいは更にエスカレートし、ついにはブレイズまで加わった。

 

「どうしてそうなんだよ!? いっとくけど俺は果林のことなんてなんとも思ってねえよ!」

「・・・・・・な、なんとも」

 

  果林は更にテンションが下がった。このままでは彼女は目のハイライトが消えてとある世界で草加雅人を愛した女性のようになってしまう。ああ困ったものだ。しかし巧は自分の命の危機に気づいていない。

 

「じゃ、なんとも思ってないか試してみるかい?」

「「え?」」

 

  訳が分からず巧たちは首を傾げた。

 

 ◇

 

「これを見たまえ」

 

  ハーラーは胸元を大胆に開けた。巧は目を背け、ガルドは身を乗り出した。ファングは興味がないのか一心不乱に肉に食らいついている。

 

「うっひょー、ハーラーの姉さんええ身体してまんなー!」

「なに見ているんですか、この変態!」

「ちょ、ティアラはん。なんでワイだけ・・・・・・。でも、ええ右手や」

 

  躊躇いなくハーラーの胸を覗き見たガルドはティアラに殴り飛ばされた。しかし、その顔は不思議と満足げだ。

 

「ちょっと。注目するのは私の胸じゃなくてこれだよ」

 

  ハーラーは胸元から血圧計のようなものを取り出した。どこに収納していたのだろう。

 

「やはり谷間、か」

「ブレイズどうしたのー?」

「なんでもない、キョーコ。本当になんでもない」

 

  ガルド以外に煩悩を刺激された男はここにもいた。ブレイズは軽く咳払いして首を傾げるキョーコの頭を撫でた。

 

「あ、ハーラー。お前また無駄遣いしたな!」

「良いじゃないか。だってこれ本物だよ?」

「そういう問題じゃない。まったくお前ってヤツはわざわざ家計簿を書いている俺の身にもなれ」

 

  この男は家計簿まで書けるのか。女子力の上位互換のおかん力でも高い位置にバハスはいけそうだ。ハーラーを除いたパーティは全員そう思った。

 

「それはなんだ?」

「これ? ドルファ社製の好感度チェッカーだよ」

「好感度チェッカー? なんだ、そりゃ」

「何が好きなのか指定してこの穴に手を通すとこの機械が読み取ってランキングにしてくれるんだ。例えば食べ物なら一位ハンバーグ二位カレー、とかね」

 

  ドルファすげえ!とファングは目を見開いた。今までの中途半端な商品が嘘のような便利な機械だ。

 

「じゃあ試しにファングくんやってみるかい?」

「え、俺? まあ良いか。面白そうだ」

 

  ファングは意気揚々と機械に腕を通した。なんとなく嫌な予感がした巧が逃げようとするとガルドとアリンがその肩を掴んだ。

 

「で、これどうや『最近可愛いと思った回数の多い女の子!』んだ? ・・・・・・は?」

 

  唐突な質問にファングはポカンとした顔になる。ハーラーを見れば好感度チェッカーにつけられたマイクで喋っていた。

 

  『一位 ティアラ』 『二位 アリン』 『三位 エフォール』 『四位 マリアノ』 『五位 キョーコ』

 

「あー・・・・・・これはちょっとみんなには見せられないかな」

 

  ハーラーは目の前で出た結果を即リセットした。

 

「え、ちょっと。まさか今の質問の答えも分かるの!?」

「うん、勿論。本当に万能だから買ったんだもん。面白いよ、これ」

「おもろいだけですまへんやろ。めっちゃおもろいでそれ!」

 

  ガルドは目を輝かせて機械の前に立った。ファングは既に最初の質問の時点でこの機械がとても面倒な物だと気づいたらしい。見るからに先ほどまでのやる気をなくしていた。

 

「おい、下らねえ質問するなら俺はやらね『ダンナが信頼してる人!』えぞ。・・・・・・まあそれくらいなら良いけど」

 

  『一位 アリン』 『二位 乾巧』 『三位 ブレイズ』 『四位 キョーコ』 『五位 ティアラ』

 

  やはりファングのパートナーたちは軒並み順位が高い。度々共闘していて付き合いも長い巧が二位なのも納得だ。ガルドはほう、と唸った。ファングたちも結果の書かれた画面を覗き込んだ。

 

「これは確かに信憑性が高そうやな」

「やっぱりあたしが一番ね!」

「俺が二番目か。ま、別に一番にこだわる意味もねえな」

「・・・・・・私が五番目とはファングさんは見る目がありませんわ。普通は私が一番になるべきなのに」

「むしろ基本ギャラリーのお前が五番目にいるだけありがたいと思えよ」

 

  可愛いと思っている回数では一番だ、とハーラーは言いたくなったがそれだと今度は上機嫌のアリンが不機嫌になるから止めておく。まあ多分総合的にはアリンの順位の方が高くなるのだろうけど。

 

「次、あたしやりたい!」

「はあ? これやりたがるとか正気か?」

「え、なんか楽しそうだし」

 

  巧は機械に腕を通したアリンに驚く。

 

「なんでも聞いてみな『ではイケメンと思っている殿方!』さい!」

「ティアラ、んなもん俺様が一番に決まって」

 

  この時ファングは知った。

 

  『一位 シャルマン様』 『二位 ブレイズ』 『三位 乾巧』『四位 ファング』 『五位 ガルド』

 

  機械という存在がいかに残酷か。

 

「・・・・・・お前、本当に俺のパートナーか? シャルマンのヤローはまあ顔なら俺様と互角でも許してやるがブレイズや巧より下ってなんだ? マジでなんなんだ?」

 

  ファングはアリンの柔らかい頬っぺたを摘まんだ。

 

「・・・・・・ごめん、ごめんね」

「謝ってんじゃねえよ! 余計悲しくなんじゃねえか! しかもシャルマンの野郎だけ様づけかよ!」

「いふぁいわよ」

 

  平謝りされるくらいならふざけ半分で笑われた方がまだ良かった。これではファングはただひたすらに惨めで虚しくなるだけだ。彼の肩をポンと巧とガルドが叩いた。

 

「では次はファングさんと同じく信頼している人でお願いします」

「今さらだけどどうやってこれ調べてんの?」

「おそらく読心術の魔法でも使ってるのでしょう。原理は分かりませんが混乱などの状態異常の魔法と同じものだと思います」

 

  『一位 ファング』 『二位 変身した時の乾巧』 『三位 ティアラ』 『四位 キョーコ』 『五位 ブレイズ』

 

  アリンの信頼度もやはりパートナーのファングが一番高い。互いが互いに顔と信頼度や好感度は比例しないという証明をしている辺り本当に一心同体だ。

 

「お、やっぱり俺が一位か」

「ワイはなかなかランキングに入らんなー。巧はんなんかまた二位やし平均的にかなり高い」

「頼られても嬉しくねえよ。しかも限定的かよ。戦いなんてめんどくせえっつーの」

 

  まじまじと結果に注目されたアリンは羞恥心を覚え、腕を引き抜いた。

 

「も、もうおしまい」

「あ? なんだよつまんねーな。好きな人ランキングとか聞こうと思ったのによ」

「それをやられたくなかったからやめたのよ!」

 

  面白味のない女だ、とファングはアリンにやれやれと首を振った。肉の入ったお椀片手に画面を見つめる彼は既に聞く側に回ったようだ。

 

「あ、巧さん。冷めましたよ」

「ああ、これでやっと食えるぜ」

 

  鍋が冷め初めようやく巧と果林が食事を始める。ここまで彼らだけ鍋にろくに口をつけていなかった。バハスの鍋は冷めても美味しいようで笑顔でそれを二人は食べる。

 

「ちょっと次は巧よ!」

「飯食ってるから誰か適当に先やってろ。お前らが飽きた頃にやってやる」

「うわー。巧はん上手く逃げようと思っとるでダンナ」

「これは意地でも聞いてやるしかないな。しゃーねえ、とりあえずガルド次いけ」

 

  よっしゃと意気揚々にガルドは腕を差し込んだ。正直 彼の場合はためらいなく人を評価する側面があるのでファングやアリンよりは面白味にかけるかもしれない。こうなると質問の方を面白くしなければならないな、とファングは思った。

 

「よし、じゃあ・・・・・・毎日味噌汁が飲みたいと思ってる相手!」

 

  要約、結婚したい相手。

 

  『一位 バハス』 『二位 マリサ』 『三位 ティアラ』

『四位 ハーラー』 『五位 キョーコ』

 

 

 

 

 

 

  要約、結婚したい相手。

 

「この瞬間から俺様の背後に立ったら敵とみなすからな、ガルド」

 

  ファングはどこまでも果てしなく冷たい無表情でガルドを睨んだ。

 

「ちょ、なんやダンナ。いきなり冷たく・・・・・・なんじゃこりゃあ!? なんでバハスはんが一番なんや!?」

「この瞬間から俺の背後に立ったら殴り飛ばすからな、ガルド」

「巧はんまで!? なんかの間違いや、間違い!! ワイはノーマルやノーマル!」

 

  ファングと巧は今まで戦っていたどんな強敵よりもガルドが恐ろしいモノに見えた。あれ、そういえばあいつ出会った時からやたら身体触ってきたよな。そう考え出しただけで二人から言い様のない冷や汗が流れ始めた。涙目で否定する彼を侮蔑の目線で彼らは見つめた。

 

「ガルドくん。今、君が気になっている相手は?」

 

  少し考えた様子でハーラーは言った。

 

「え、それは勿論ザンクはんと関わりのあるエフォールはんやろ」

「・・・・・・私?」

 

  『一位 乾巧』 『二位 エフォール』『三位 ザンク』『四位 ファング』 『五位 ティアラ』

 

「俺、やっぱり果林のことすっげえ気になってる。もう常に果林で胸の中一杯なんだ。・・・・・・だからガルド。頼むから諦めてくれ。俺は仲────あー、知り合いを傷つけたくねえ」

「仲間から知り合いに降格!? じゃなくてほんまになんかの誤解なんやって!」

「ランキングの中身が女性より男性のが多いのは少し問題があると思うのですが。いえ『そういう』方を差別する気はもちろんないんですよ?」

 

  流石に常識人の、むしろ常識人だからこそティアラも引いてる様子だ。

 

「ワイはほんまにノーマルや! 信じてくれえな!」

「こらこら。君たち憶測で勝手に人を嫌っちゃダメだよ。ガルドくんの言っていることは本当だよ、多分」

「お前も憶測じゃねえか」

 

  上手いことフォローしたつもりなのだろうが多分を入れたら何の説得力もない。

 

「機械だから誤差があるんだよ。・・・・・・バハスって今日の朝ごはんでお味噌汁作ってたよね」

「ああ。美味かったろ?」

「じゃあ最初のはそれが原因だね。ガルドくんにとっては今日食べたばかりのバハスの味噌汁が一番印象的に残ったんだよ、多分」

「だから多分をやめろ」

 

  この好感度チェッカーは印象に残っている者の順番で順位が変動する。今回の場合はガルドの舌だ。だから味噌汁を毎日飲みたい相手は最も新しく味噌汁を飲んだバハスが一位になった。

 

  そして気になる相手で巧が一番なのはつまり・・・・・・

 

「つまり巧はんが気になる相手で一番な理由は」

「印象に残る何かがあったからだね」

「「あ」」

 

  巧とガルドは顔を見合せた。心当たりなら一つある。ウルフオルフェノク。つい先日彼はガルドの前で真の姿を見せた。それが気になる原因だというならおかしくはない。普通、仲間が怪人になれば嫌でも気になるはずだ。どれだけ気になる相手が他にいても流石に一番気になる相手は巧になるだろう。

 

「・・・・・・ガルドさんは男性と女性恋人にするならどちらですか?」

「女性や女性」

 

  『一位 女性』 『二位 男性』

 

  この機械は二者択一も出来るようだ。ガルドの誤解が解けると同時に新たな機能が見えた。

 

「ほらね、これで誤解と分かっただろう?」

「わりいな、ガルド。完全にお前を疑ってたわ」

「ええんや。ワイも自分を疑い始めてとこやから」

 

  無事に誤解が解けてガルドはほっと胸を撫で下ろした。彼は疲れた顔で腕を引き抜く。もうこの機械で遊ぶ気は起きなかった。

 

「じゃ、次はいよいよ巧ね」

「は? まだやるのかよ? もう良いだろ、めんどくせーな」

「逃がさないわよ!」

 

  別に逃げる気はない。だが周りの視線が集まる中でこういった遊びをするのはなんとなく躊躇われる。そもそもこんな機械で人間の好感度が本当に計れるのかも怪しい。そういったことを巧は主張したが期待に目を輝かせるアリンを前にため息を吐いて機械に腕を通した。

 

「じゃあ最近気になる女の子『トアイツハイウガホントウハシンライガタカイオンナダ』!」

 

  アリンの言葉の後ろに巧はこっそりと言葉を足し、内容を変えた。これは食事の最中に彼が思い付いたこのゲームの必勝法だ。

 

  『一位 ティアラ』 『二位 果林』『三位 アリン』

『四位 キョーコ』 『五位 ハーラー』

 

「二位、ですか。・・・・・・良かったです」

 

  果林、指定された内容を巧がこっそり変えても二位である。結果的にはギリギリセーフのラインに乗った。

 

「え? 壊れた?」

「ハーラーさん、機械の様子がおかしいですわ。これでは巧さんがファングさんのように私を愛してしまってますわ」

「「愛してねーから」」

 

  二人同時のツッコミ。

 

「んー、なんでだろうねえ。愛してないのに気になるなんて変だな」

(あ、やべ)

 

  これでは何のためにはぐらかしたのか分からなくなる。せっかく上手いこと誤魔化せたのに何時ものようにツッコミを入れたせいで台無しになってしまった。

 

「では乾さんが好きな人『トティアラハイッタガホントウハスキナドウブツダ』」

 

  『一位 狐』『二位 馬』 『三位 蛇』 『四位 鶴』 『五位 狼』

 

「・・・・・・本当に壊れてしまったのでしょうか」

 

  人ではなく動物が結果として出たことにティアラは首を傾げた。遠目で見ていたエフォールは巧の策略に気づく。

 

「巧、内容変えてた」

 

  巧を指さしてエフォールは言った。

 

「・・・・・・なるほど。おい、巧。お前今からマイクに口を近づけるの禁止な」

「ち、バレたか」

「禁止禁止。ごまかすの禁止や!」

 

  巧はガルドに口を塞がれた。もちろん手のひらだ。

 

「エフォール、よく気づいたな。褒美としてこの飴玉をやろう」

「甘いもの、好き」

「あとでおっさんにケーキ作ってもらおうぜ」

 

  エフォールは嬉しそうに飴を舐める。ファングは優しい笑みを浮かべて彼女の頭を撫でた。

 

「ではもう一度。乾さんの好感度が高い人」

「まだやんのかよ」

 

  『一位 ファング』 『二位 果林』 『三位 ガルド』 『四位 ティアラ』 『五位 アリン』

 

「・・・・・・俺は果林が一番好きだぜ」

「現実を見てください」

 

  巧の顔が絶望に染まった。この機械の精密性はすでにファングたちが証明している。ガルドの件のような勘違いもなさそうだ。つまり巧がこの中で一番好感度が高いのはファングということで間違いない。間違いないということは。

 

「待て待て待て待て! 俺に近づくな、乾」

「ワイにも近づかんといてください、乾はん!」

 

  さっきのように物理的にも精神的にも距離をとられるということだ。名前から名字に変化するのは流石の巧もショックを受ける。

 

「お前らマジでぶっ飛ばすぞ」

「冗談だ、冗談。どうせ俺が一番付き合い長いからだろ。好感度にも色んな種類があるしな」

「軽い洒落やって。ワイら仲間やろ!」

 

  別に好感度は何も恋愛だけではない。友情や親愛だってある。自分の家族と恋人どちらが好きかと聞かれれば悩む人は多いだろう。だからこの結果をおかしいと思う者は

 

「・・・・・・ファングさんが消えてくれれば私が一番に」

 

  一人いた。果林の妖しい視線がファングの背筋を震え上がらせる。ふらふらと彼女は彼に近づく。

 

「待て待て待て待て待て待て! 冷静になれ!」

「おかしいでしょう? 私の一番が巧さんなら、巧さんの一番も私じゃないといけないんです。だから・・・・・・!」

「殺殺殺殺殺!」

「お前もその鎌下ろせ! ひぃぃぃ! ライダー助けてくれ! 戦隊でもウルトラマンでも構わねえ!」

 

  二人に襲われるファングを見て巧はため息を吐いた。こういう風に絶対に荒れることになるから好感度チェッカーなんてやりたくなかったのだ。こんな物で遊んだら明らかに友情が壊れるに決まっている。ましてや本当に好感度が分かるなら尚更だ。

 

「うーん、しょうがないわねえ。巧が恋人にしたいと思う人」

「あ、お前勝手に」

 

  『果林』

 

  モニターには果林の名前しか出ていなかった。

 

「これは驚いた。一人しか出ないなんて」

「珍しいんか?」

「この人しかいないってことだからね。まあ、周りに女性がいるこのパーティじゃあまずありえないね」

「巧って一途なのね」

「素敵な心がけですわ」

 

  アリンとティアラはこの結果に目を輝かしたが巧とガルドはさして驚かなかった。ウルフオルフェノク────巧の正体を知ってなお受け入れられる相手でもないと付き合うことなんて出来るはずがない。果林とガルドはすぐに受け入れたがアリンやティアラにそれが出来るかは分からない。下手をすれば拒絶されるかもしれない。そう考えたら恋人にしたいなんて思えるはずがない。

 

「わ、私だけですか。えへへ」

「勘違いすんな。他が酷いだけだ」

「他ってまさかあたしのような美少女に向けて言った訳じゃないでしょうねえ」

 

  それでも果林にとっては相当嬉しかったのか頬を紅くして満面の笑みを浮かべた。その代わり巧はポカポカとアリンに殴られたが。

 

「な、なんか知らねえけど助かった」

「ファング、もっと飴頂戴」

 

  果林が戦意を喪失したおかけでファングは命拾いした。引き続き襲いかかるエフォールは手元にあった飴を渡して手なずける。

 

「もういい加減飽きたろ? 終わりにしようぜ」

 

  エフォールの攻撃を掻い潜り疲労困憊になったファングはもはやこの好感度チェッカーを遊ぶ気にはなれなかった。彼はバハスの鍋に再び向かう。

 

「せやな。まだメシちゃんと食べてへんし」

「ふん、こんなもん二度とやるかよ」

「そうね、なんか人の心を覗くみたいでよくないわ」

 

  巧たちもすっかり興味をなくしたのか好感度チェッカーから離れていった。

 

「・・・・・・」

 

  ただ一人ティアラだけが好感度チェッカーを見つめる。

 

「わ、私が傍にいたい人!」

 

  『一位 意地悪だけど優しいファング』『二位 大切な友達の乾巧』 『三位 大切な仲間のアリン』 『四位 兄のようなブレイズ』 『五位 妹のようなキョーコ』

 

  その結果はティアラとこっそり覗いていたハーラーしか知らない。

 

「・・・・・・ふふ、ファングさんたちと出会えて私とっても幸せみたいです」

 

 ◇

 

  その日の夜。

 

「あら、食堂に明かりが・・・・・・」

 

  ふと目が覚めたティアラが食堂に水を飲みにいくと深夜にも関わらず明かりが点いていた。誰かいるのだろうか。覗き込むとそこにはエフォールがいた。

 

「あ、ティアラ」

「こんな夜分遅くにどうしたのですか? もしかして眠れないのでしょうか?」

「ううん、違う」

 

  首を振るとエフォールは小さく欠伸をした。

 

「さっきのヤツやりたかった、から」

「・・・・・・好感度チェッカーですか。もうハーラーさんは何時も置きっぱなしでだらしがないですわ」

 

  エフォールは好感度チェッカーを物珍しそうに見つめている。

 

「何を質問したいか、もう決めたのですか?」

「うん。『私が好きな人』」

 

  『一位 果林』 『二位 ファング』 『三位 ザンク』 『四位 エルモ』

 

「ザンクとあなたは一体どういう関係なのですか」

「フェンサー養成所で一緒に暮らしてた」

 

  ザンクがエフォールと同じ場所で暮らしていたとは意外な事実が明らかになった。言われてみれば彼らは少し似ている。他人を壊すことしか知らないところだ。エフォールは今はもう違うのだけど。

 

「ザンクちょっと怖いけど優しかった」

「あのザンクが? 少し信じられませんわ」

「嘘じゃない・・・・・・!」

「べ、別にエフォールさんを疑っている訳ではないんですよ」

 

  あの男にも少なくても優しいと思ってくれる人が一人いるのか。ティアラはザンクの評価をちょっとだけ改めた。だとしたらなぜ村人を全員殺したのか。そこが謎だ。これにはガルドも驚いていた。

 

「ザンクさんは罪なき人を殺すような人でしたか?」

「違う。研究者と喧嘩ばっかりしてたけど私と果林『エルモ』を守るためだった」

「エルモ、とは」

「私の友達、だった子。完全自立型の妖聖で優しかった」

 

  戦うことしか知らなかったエフォールにも心を通わせられる友人がいたのか、ティアラは少し安心した。

 

「エルモさんはどちらに?」

「分からない。養成所も壊れて探すことも出来ない」

「見つかると良いですね、エフォールさんのお友達」

「うん」

 

  エフォールは小さく笑った。ティアラも微笑む。

 

「ところでなぜ殺したいはずのファングさんが二番目に?」

「分からない。私の好きな人は果林とザンクとエフォールだけだと思ってた。それ以外の人、特にフェンサーは皆殺すべき対象。私の心の中から囁く殺せという声に抗えなかった」

「エフォールさん、辛かったでしょう」

「でもファングは違った。どれだけ私が殺す気になっても私を殺そうとしなかった。他のフェンサーは殺そうとしたら皆殺す気になっていたのに」

 

  フェンサーの世界は生きるか死ぬかだ。戦わなければ生き残れない。心優しいティアラだって果たしてザンクのような残酷な人間に襲われてそいつを生かす気になれるかどうか。でもファングはそんな残酷な人間を殺すのも躊躇う。粗暴でお馬鹿で食いしん坊だけど彼は優しいのだ。

 

「私、ファングが怖い。殺意を向けても笑顔を向けるファングが怖い。だからずっと殺したかった。でも会うたびに私の中でファングがどんどん大きくなっていたの。気づいたら向けられる笑顔のことをずっと考えている」

「ならファングさんをもう狙う意味はないのでは?」

「ううん。私、ザンクやエルモよりファングのことが好きになった。なんとも思ってなかったのに。もしかしたら何時か果林よりも好きになるかもしれない。でも大切な人たちが大切じゃなくなっちゃう気がしてまた怖くなって。ファングが私を大切にするから私変になっちゃった。だから戻るためにファングを殺したい」

「エフォールさん・・・・・・。確かに誰かに愛されると人は変わっていきます。でも安心してください。それは本当に変わった訳ではないんですよ」

 

  ティアラはエフォールを抱き締めた。人に愛されることを知らなかった少女に彼女は自分なりに出来る愛し方を教えた。

 

「ティアラ・・・・・・?」

「・・・・・・果林さんは巧さんと出会って変わりました。でもあなたが大切じゃなくなったり忘れてしまったりしましたか?」

「ない」

 

  巧と出会っても果林は何時だってエフォールを守るために行動していた。それは今も変わらない。

 

「あなたにとってのファングさんは果林さんにとっての巧さんと同じですわ」

「私も誰かを好きになっても、良いの?」

「ええ、もちろん。私たちはもう仲間、ですから」

 

  ティアラはエフォールの頭を撫でた。

 

「ティアラにとってのファングも私にとってのファングと、同じ?」

「・・・・・・どうでしょう? でも変わったのは同じですわ」

 

  ティアラはファングと出会って何かが変わった。でも何が変わったのか自分でも分からない。

 

「さあ、もう寝る時間ですわ」

「うん。ティアラ、おやすみ」

「おやすみなさい」

 

  この日、エフォールの四人しかいなかった好きな人に新たにティアラが加わった。

 

(本当は私もエフォールさんみたいに誰かに愛されるのが怖いんです。私が裏切ってしまう気がするから)

 

 




やりたかった好感度ネタ回収。

ちなみにファングは異性の中ではティアラが、総合的にはアリンが高いです。

エフォールの好きな人で出て来たオリキャラはザンクとファングの過去関係で登場予定で今後の物語に深く出張ることはないので安心してください。ライダー作品特有の唐突な伏線です

次回は北崎メインで普段と違って仮面ライダー寄りのエピソードになると思います。彼はどうしてドルファについたのか。その一部が明らかになります。
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