乾巧は四度目の生を生きる   作:北崎二代目

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※注意

タイトルからも分かる通り今回はおふざけでありハイパーバトルビデオであり番外編です。

脚本家ネタ

メタネタ

中の人ネタ

キャラ崩壊(地の文を含む)

古すぎるネタ

これらが苦手な方は読むのを控えるか気をつけて読んでください



サブイベント ティアラの悪夢─新兵器『ファイズサウンダー』─

※部屋を明るくして画面から離れて見てください

 

 ◇

 

「私、いいことを思いつきました」

 

 あの戦いからはや数日。特にこれといって進展もなくファングたちはロロのサブイベントであるフューリーの回収だけをする毎日を送っていた。あ、ちなみにゲーム中のサブイベントは勿論全部回収してますよ。面倒くさいから描写してないだけで。ただモンスターと戦うのを見たって面白くないですし無駄ですよ、無駄。と薄汚いオルフェノクが言っていました。

 

 そんなただ無駄に貴重な人生の時間を浪費し続ける毎日を送り続けたある日のこと。ティアラはとある名案を思い付いた。それはもうグッドアイデアすぎて自分が怖くなるほどの。彼女はどや顔を浮かべて食堂に入った。

 

「それは名案だ」

「すごーい」

『グッドアイデアだ』

『いかどうぶん』

 

 絶対にしょーもないことだ。ファングたちは適当に相槌を打つ。

 

「まだ何も言っていませんわ。ああ、でもいつもと違う冷たいファングさんも・・・・・・良い♪」

 

 ぞんざいに扱われ、ティアラはムッとした。でも内心は冷たい目のファングにドキッとして胸きゅん状態だ。

 

「良いことっていう前フリで良いことだったためしはまずねえ」

 

 世間ではそれをフラグという。事前に言ったことと真逆のことが起きる。所謂押すなよ、絶対に押すなよというヤツだ。これがフラグだ。

 

「本当にいいことなんです! 皆さんが本当に未来から来たなら、未来で起こる事件や事故をご存知ですよね?」

「そうだな。第十四話から共通編終了までの半年くらい先のことまでなら把握してるぞ」

 

 世間ではこれをメタネタという。登場人物が本来知り得ない情報を当たり前のように知っている。それがメタネタだ。

 

「それを世間の人に知らせれば被害を未然に防ぐことが出来るのでありませんか?」

「つい最近、俺が予言者として金儲けしようとしたらお前止めたよな?」

「予言者ではなく詐欺師でしょう」

「あ、そっか」

 

 一瞬にして論破されてしまった。ファングはしょぼんと顔を涙目にする。

 

「でもよお、未来から来た奴がいるって状況で聞くなら普通は競馬の大穴とかだろ。なに真面目ぶってんだよ?」

「・・・・・・真面目な私は嫌いですか?」

 

 ティアラは小さい頃から真面目と周りから言われていた。それが誇らしいと思うこともあったがどちらかと言えばいい気分がしなかった。だからファングが嫌そうな顔で真面目と言ったことに彼女は動揺する。真面目である自分は嫌われてるのかもしれない、と。いやあ青春だね。

 

「大好きに決まってんだろ! むしろ愛してるって!愛してる、ティアラ! ティアラ、愛してるぞ!」

「そ、そんな愛してるだなんてストレートに言われたら・・・・・・私どうにかなってしまいそうです」

 

 ファングとティアラの周りに桃色の空間が出来上がる。流石は主人公とヒロインだ。隙あらばイチャイチャするスタイルに軽く脱帽する。

 

「ちょっと! あんたたち何良い感じになってんのよ!? あたしたちはギャグ世界の住人でしょ!?」

『そうだ。我らはブロッコ◯ー制作のゲーム版のような世界ではなくマッドハ◯ス制作のアニメ版のような世界で生きていることを忘れるな』

『もとねたわかるひといるの、それ?』

 

 仮面ライダーアギト放送時代に既に十代を越えている人なら分かるかもしれない。

 

「そ、そうだ。俺たちはギャグ世界の住人だったんだ。忘れてた」

「私はそんなのになった覚えはありません!」

 

 世界平和のために女神を復活させる物語の何処がギャグ世界なのだ。大切な人を救うために世界と戦う物語の何処がギャグだ。ティアラは突っ込む。

 

「まあまあ、そう堅苦しいこと言わないの。気楽に行こうよ。いっそのこと女神復活のこともぜーんぶ忘れちゃってさ」

「おう、それがいいな。そうするか」

『よしならば踊ろうではないか、イクササーイズ!』

「「おー!」」

 

 テーブルに置かれた『ラジカセ』から軽快な音楽が流れるとファングたちはその場で躍り始めた。イクササイズってなんだ。ティアラは困惑した。

 

「ええっ!? なにを言い出すんですか!? ちょっとおかしいですよ!」

「みんながこわれた」

「あ、キョーコちゃんはまともなんですね」

「みんながみんなふざけるとしゅうしゅうつかないからねー」

 

 もう既に収拾どころか取り返しがついていない。このままでは次回から全編アニメ版ギャラクシーエンジェルやミルキィホームズのようなストーリーを書いていかなければならない。何とか軌道修正出来ないものか。ティアラが困っていると助け船がやって来た。

 

「あれ、お前らどうしたんだ?」

「なんだか楽しそうですね」

 

 このカオスな空間に巧と果林が乱入した。掃除機を片手にした彼と窓拭きとバケツを持った果林は状況がいまいち把握出来ていないのか首を傾げている。ていうかこいつらいっつも理解出来ないことがあると首傾げてんな。他にリアクションないのかよ。

 

「ファングさんたちがおかしいんです。アリンさんとブレイズさんは訳の分からないことを口走りますし、ファングさんはいきなりあんな恥ずかしいことを・・・・・・!!!」

「あははは。ティアラ、かおまっかー」

「いいなあ、ティアラさんは」

 

 ティアラは先ほどまでの甘い一時を思い出し、顔を林檎のように真っ赤にした。あんな告白紛いなことをされれば誰だってそうなる。ましてや気になっている男の人からだ。赤くならない方がおかしい。

 

『変身ベルトを巻きなさーい!』

「「巻きなさぁぁぁぁい!」」

「おい、お前らどうしたんだ? 何やってんだよ?」

 

 ガールズトークに関わるなんて真っ平ごめんだ。巧は未だ暴走している三人に話しかける。彼らは訳の分からないエクササイズ的なサムシングをやっていた。

 

「見りゃ分かるだろ。イクササイズだ」

「いや分からねーよ。なんだよイクササイズって」

『黙れ! 貴様に名護啓介の何が分かる!?』

「分かるかよ!? だから何だって聞いてんだろ!?」

「知らないの、名護さんは最高なのよ!」

 

 知らねえよ。次から次へと出てくる固有名詞に巧は頭を痛める。どういうことだ。ブレイズまでおかしくなってしまうなんて。これはダメかもしれない。巧は疲れきった顔で戻ってきた。

 

「ダメだ、あいつらはもう完全に頭がおかしくなっちまった」

「見れば分かります」

 

 ごもっともだ。最初から頭がおかしくなっている。再確認しただけで何の現状の解決にもなっていない。どうしたものか。巧は腕を組んだ。

 

「どうする? もういっそのこと俺たちもあのノリに乗っかるか?」

「逆になりたいですか、あれに?」

「いや、無理だが」

「なりたくないです」

「ないです」

 

 ふざけるのやボケるのとは違う。あれは別次元の何かだ。文字通りギャグ世界的な。

 

「つーか、こんなこと前にもあったような・・・・・・」

「前にもあった時点でおかしいですよ」

「一度きりで十分ですわ」

「にどもけいけんしたらあたまおかしくなるよ」

 

 巧だって一度きりで十分である。というか一度でも嫌だ。とは言っても本当に見覚えがある光景なのである。軽快に流れた音楽と共に皆が突然踊り出したこの光景に。曲はまったく違うけど。そう、前回もあの変なラジカセから・・・・・・。

 

「あ・・・・・・。もしかして・・・・・・!」

「えっ? 何か分かったのですか、この現象について!?」

「いやもう全部把握した。これあのラジカセが原因だ」

「え、ラジカセ?」

 

 巧たちはラジカセに視線を向ける。彼の記憶が正しければあれは『ファイズサウンダー』だ。てれ◯くんで優秀賞に輝いたファイズの新兵器。流れる音楽は人間やオルフェノクの気分を高揚させる一種の麻薬的効果を持っている。ファングたちがおかしくなった原因はこれで間違いない。

 

「なに、これ?」

 

 いつの間にやら食堂に来ていたエフォールが興味深そうにファイズサウンダーを眺めていた。不味い、巧は嫌な予感がする。

 

「あ、エフォール触ん『ポチッとな』な!」

「ポチッとなって本当に言う人初めて見ました」

「流石はエフォール、あざといです」

「なんかおんがくかわったよ」

 

 ファイズサウンダーから流れる音楽が変わった。

 

「なんだかアイドルが歌いそうな曲調ですわ」

「あれ、この曲前にどっかで・・・・・・?」

 

 そうだ、思い出した。確かガルドたちとカラオケに行った時に果林が歌っていた歌がこんな曲調だったはず。巷で話題のアイドルソング。巧は彼女に視線を向ける。

 

「巧さん、いいえプロデューサーさん! 私、頑張ります!」

「ああ、初ライブ頑張れよ!」

 

 いつの間にやら白いアイドルの衣装に着替えた果林は黒いスーツを着た巧に励まされていた。

 

「果林とたっくんもこわれた」

「壊れてなんかない。こことは違うどこかの次元で俺はアイドルのプロデューサーをやってたんだ。そして果林もこことは違う次元でアイドルをやっていた」

「どんな次元ですか!?」

「だから中のひ『あ、それいじょうはまずいよ!』」

 

 危なかった。危うく触れてはならない一線を越えるところだった。本日一番のファインプレーだ。しかし、果林と巧までおかしくなった今、ティアラとキョーコの二人だけではどうしようもない。いっそ果林の前でサイリウムを振り回しているファングたちのようになれたらどれだけ楽か。

 

「ティアラ。ファイト、だよ」

「お願いだからこれ以上事態をややこしくしないでください」

「ごめんなさい」

 

 両手でガッツポーズをしたエフォールにティアラは頭を押さえる。

 

「どうです、プロデューサーさん? 私輝いてましたか?」

「ああ。凄く輝いてたぜ。正にシンデ『わー!わー!わー!』ガールだ!」

「あなたたちはいつまでアイドルとプロデューサーをやっているんですか!?」

 

 巧と果林は二人揃ってティアラに頭を叩かれた。

 

「は、俺は・・・・・・」

「・・・・・・何をしていたのでしょう?」

 

 本当に何をしていたのだろうか。いきなり歌い出したり、プロデューサーになったり訳が分からない。自分以外のナニかが取り憑いたのではないか。二人は冷や汗を流した。

 

「よーし、次は俺が歌うぞ!」

「イエーイ!」

「ならば選曲は俺に任せろ」

 

 ブレイズがラジカセのスイッチを押す。

 

「ねえ、ファングたちに何があったの?」

「むしろ私が聞きたいのですが」

「きっと悪いオバケに取り憑かれてしまったんですよ、エフォール」

 

 エフォールは困惑した目でファングたちを見つめる。マフラーは正義の証だのなんだのとどこぞの仮面ライダーを丸パクリした仮面ノ◯ダーのテーマソングをファングはノリノリで歌っていた。

 

「あの歌どこかで聞き覚えがあるのに歌詞が違うのですけど」

「違うのは歌詞だけじゃない。世代もだ」

 

 生で見ていた世代はもう三十代中盤に差し掛かっているだろう。録画で見ることしか出来ない世代からしたら羨ましい限りだ。

 

「流石にV2は版権が怖いからやめておくか。・・・・・・よし! 次はお前が歌えよ、ティアラ!」

「嫌です。というか版権ってなんですか?」

「版権は版権だ。うっかり触れちまえばそれは法に触れたのと同然の行為になる。お前も気を付けろよ」

 

 もう遅い。今日だけで何度触れたか分からない。

 

「いいかげんにしてよ! これぼうけんだからね!? らぶこめもぎゃぐもぜんぶいらないから!」

「いや、元から割りとこんなノリでしょ」

「そうだ。キョーコ、お前も一緒に踊ろうではないか。レッツダンシング!」

「あー、もういらいらするー!」

 

 両手で頭を押さえるキョーコの周りでアリンとブレイズが踊り出す。

 

「皆、大変だよ!」

「不味いことが起きた!」

 

 ハーラーとバハスがドアを勢いよく開けて飛び込んだ。一斉にファングたちの視線が彼女に向けられた。え、と二人は首を傾げる。

 

「大変なのはこっちだ!」

「・・・・・・どうしたの、皆?」

「お前さんらに何があった?」

「本当にどうしてしまったのでしょうね」

 

 ハーラーとバハスはこの混沌とした空気に困惑する。比較的ボケ側の彼女が一歩後ろに下がるほどに。

 

「それより大変だよ、オルフェノクが公園で暴れてる!」

「買い出しの帰りに見たんだ!」

「「な、なんだってー!?」」

「そのリアクションがなんなんですか!?」

「果林、突っ込んでる場合じゃねえ! 行くぞ!」

 

 ◇

 

 件のオルフェノクが暴れているという公園は阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。・・・・・・色々な意味で。巧たちはポカンと口を開ける。

 

『ね、ね! お願い。先っちょだけだから使徒再生させてお願い。先っちょだけだからあああああ! お願いだからあああああ!』

「いやあああああ! お金あげるからやめてー!!」

 

 両手を突き出してロロを追いかけ回すオックスオルフェノク。今までで一番絵面がやばい。

 

「えーい! シーネ! シーネ!」

『ちょ、やめ。お願い、石投げないで』

「きゃははは!」

 

 子どもたちに囲まれて石を投げつけられているマンティスオルフェノク。むしろ怪人側に同情しそうだ。

 

『俺は所謂チンピラさ。てめえらを殺すのが大好きなチンピラだぁぁぁぁぁ!』

「ライダー助けて!」

 

 一人だけ真面目に人間を襲っているフロッグオルフェノク。真面目だから地味だ。

 

「つ、罪のない人々を傷つけるのは見過ごせないな!」

 

 巧はオックスオルフェノクとフロッグオルフェノクをバジンで轢き飛ばしていく。最近の日アサで放送したら間違いなく保護者の方々からクレームが来るだろう。それくらい勢いよく轢いていた。

 

「こら! 弱い者いじめをするんじゃない!」

「あ、見つかちまった。逃げるぞ、お前ら!」

 

 巧が怒鳴ると子どもたちは逃げていった。近所の悪ガキには困ったものだ。彼はため息を吐くとマンティスオルフェノクに手を差し伸べる。

 

「大丈夫か?」

『しねぇぇぇぇ!』

「うおっ! 何すんだ!? 助けてやっただろ!」

『黙れ! お前も優しい人間のフリをして俺を殺すんだろ、偽善者がっ!』

「っ!?」

 

 助けてやったにも関わらずマンティスオルフェノクは巧に鎌を振り被った。彼は軽々と避ける。やはり人間とオルフェノクは分かり合うことが出来ないのか。差し伸べた手を拒絶されたことに巧は動揺する。こんなふざけた番外編にも関わらず彼は精神的に深いダメージを受けた。こんなふざけた番外編にも関わらず。

 

「仕方ありません、巧さん。こうなったらこっちも変身です!」

「ああ」

 

────555

 

────standing by

 

「変身!」

 

────complete

 

 巧はファイズに変身した。

 

「頑張れ、たっくん!」

「いけー、たっくん!」

「たっくん言うな!」

 

 野次を飛ばすファングとアリンのコンビにファイズはため息を吐いた。

 

「って何を見ているのですか! あなた方も頑張るのですよ!?」

「えー」

「めんどくせえな。それより踊ろうぜ」

 

 いくら下級オルフェノクといえど流石に一度に三体を相手にするのは戦い慣れたファイズでも厳しい。正面のオックスオルフェノクに殴りかかれば他の二体から挟み撃ちを食らう。仲間の援護がなければ苦戦は必至だ。だがファングはやる気がないのか呑気に踊っている。1話前の彼とのあまりのギャップにティアラは絶句した。

 

「くそ、お前ら踊ってないで手伝えよ!」

 

────battle mode

 

『ピロロ!』

「助かった!」

「流石はバジンちゃんです!」

 

 袋叩きにあっているファイズをバジンが救う。機銃の掃射でオルフェノクを追い払った。流石はいつでも飛んで来る頼れる仲間だ。あまりに増えすぎたパーティの都合上やむなく登場の機会を減らされてるのがもったいなくなるくらいの活躍ぶり。それでも要所要所では必ず巧のピンチを救う献身的な姿は正にヒロインそのもの。この物語のヒロインはアリンでもティアラでも、ましてや果林でもない。バジンだ。間違いない。

 

「違う。ヒロインは、私」

「ん? エフォールちゃん、一体誰に話しているんだい?」

「・・・・・・なんでもない」

 

 エフォールは本当に誰に話しかけていたのだろうか。まったくもって理解不能だ。

 

「よし、そろそろ決めるか」

 

─────complete

 

 ファイズの装甲が展開され、スーツからエネルギーが溢れ出す。アクセルフォーム。草加から託された巧の新たな力。その力は絶大で十秒間だけ常人の千倍の速さで動けるようになり、高速戦闘を可能とする。中間フォームでありながら屈指の人気を誇り、こちらが最強フォームという人も少なくはない。

 

────start-up

 

 ファイズはファイズエッジを片手に高速の世界に突入する。彼を取り囲んでいたオルフェノクたちに次々と斬撃を浴びせていく。ガンガンドンドンズガガン。何故かアメコミのような演出が掛かり、攻撃をする度に謎の擬音が鳴る。こんなところまであの時の再現か。巧は苦笑を浮かべた。

 

「巧、これを使え!」

「ファイズサウンダーよ!」

「・・・・・・あー、使いたくねえ」

 

────ready

 

 ファングとアリンから投げ渡されたファイズサウンダーをファイズはオルフェノクたちに向けて構える。

 

────exceed charge

 

 ファイズサウンダーの二つの砲頭から赤い超音波が発射された。

 

『せ、せめてあの娘に先っちょだけ・・・・・・ガクッ』

『お、おれは悪いことしてないだろ・・・・・・ガクッ』

『良かった、フェンサーじゃなくてライダーに倒されて本当に良かった・・・・・・ガクッ』

「あれ、何かおかしくありませんか?」

 

 オルフェノクたちは捨て台詞を残すと昇天して崩れ落ちた。死んだのだろうか。魂が抜けたようにピクリとも動かない。いや、おかしい。普段と違って灰にならないオルフェノクを不思議そうにティアラは眺める。どういうことだ。彼女はオルフェノクと今まで戦ってきて色々と詳しい巧に視線を向ける。

 

「やったな!巧、イエーイ!」

「「イエーイ!」」

「イエイ☆」

 

 肝心の巧は皆に囲まれてノリノリでハイタッチを交わしていた。というか、これは本当に巧なのだろうか。いくら気分が高揚していても彼がこんなことをする姿はまったく想像出来ない。実は今、ティアラの目の前にいるファイズの中身は巧ではなくまったく別の誰かなのでは。だとしたらどのタイミングで入れ替わったんだ。

 

「ってここは何処ですか!?」

『ありがとう巧ー♪』

 

 気づけば白いタキシードに身を包んだファングたちが巧を讃えていた。ティアラを除いて。あの相対的常識人であるはずの巧もどこぞのハリウッド映画に出てくるサイボーグのコスプレをして踊っていた。

 

「み、みなさん本当にどうしてしまったんですかー!?」

 

 ティアラは今日何度目か分からない悲鳴を上げた。

 

 ◇

 

「んん・・・・・・夢?」

 

 ティアラはボーっと辺りを見渡す。巧と果林が掃除をしながらさっきのアイドルの鼻歌を歌っていた。

 

「うたた寝していたようですわね」

 

 ティアラはその場で両手をグッと伸ばすと彼女は身体に掛けられたファングのコートに気づく。風邪をひかないように暖めてくれていたのだろう。ティアラは薄く微笑む。

 

「よだれ垂らしてたぞ」

「た、垂らしてません!」

 

 意地悪な笑いを浮かべたファングにティアラはムッとした。

 

「なんかうなされてたみたいだけど」

『嫌な夢でも見たのか? そこに紅茶の入ったポットがあるから飲むと良い。心が落ち着くぞ』

『おかしもあるよー!』

 

 いつも通りの妖聖たちにティアラはホッとため息を吐いた。良かった、現実に帰って来れたのだと。

 

「・・・・・・私、夢の中で良いことを思いつきました」

「良いことって前フリで良いことだった試しはまずねえ」

「ふふ、夢の中のファングさんと同じことを言っていますわ」

 

 現実でも夢でもファングは変わらないな。ティアラは笑みを浮かべる。

 

「皆さんが本当に未来から来たなら、これから起きる事故や事件をご存知ですよね? それを世間の人に知らされば被害を未然に防ぐことが出来るのでありませんか?」

「・・・・・・お前空気読めよ」

「え?」

 

 呆れた目線のファングにティアラはドキリとした。もちろん胸の高鳴り的な意味ではなく緊張的な意味で。あまりに夢の中のファングと言動が似ている。もしやこれは正夢では。彼女は冷や汗を流した。

 

「俺たちがニュースの内容とかいちいち覚えてる訳ねえだろ」

「そっちですか!?」

「どっちだよ?」

「当たり前でしょ」

 

 よっぽどの大事件や大災害でもない限り半年間の出来事を覚えてる人間なんてそうそういない。

 

「もう。やっぱりファングさんはファングさんですわね。ブレイズさんは分かりませんか」

『すまない。俺も何度か自分の知り得た事件や事故と照らし合わせてみたが内容が変わっているのだ。盗賊の集団から救われた少女と老人の事件など、な』

『おじいさんとおんなのこがきられたんだよね、まえとちがって』

『ああ。だから参考にはならぬ。すまないな』

 

 ファングも何もやっていなかった訳ではない。フューリー探しをやらない暇な日はある程度事故や事件を未然に防いでいた。例えば街の人を襲ったモンスターを事前に倒しておく、など。だがその規模が大きくなればなるほど内容が変わったり、起きなくなったりでフェンサーである以外ただの人間である彼では対応することが出来なくなっていた。

 

「そうですか。・・・・・・それは残念です」

「お前が気にすることじゃねえよ。相変わらず真面目だな」

「・・・・・・真面目な私は嫌いですか?」

 

 この質問も夢の中でしたものだ。夢の中みたいに愛しているっていってくれないかな、ティアラは内心ドキドキしながら期待した。

 

「まあ嫌いじゃねえけど・・・・・・」

「なんですか、その含みのある言い方は」

「・・・・・・なんでもねえよ」

「だったら顔を上げてください」

「嫌だね。あ、こら! 覗き込むな!」

「え、何。見せなさいよ!」

 

 ファングとティアラ、アリンはその場で追いかけっこを始める。

 

「たく、あいつらは相変わらず騒がしいな」

「ふふ、そうですね」

 

 掃除の手を止め、巧と果林はその様子を眺める。過去に戻った最初の頃は内気だったティアラも今では前のように笑顔を見せるようになった。少しずつ前に進んでいるのだな。そう実感すると巧も自然と笑みを浮かべる。

 

「こんな日がいつまでも続けば良いんだけどな」

「そうですね。私もそう思います」

 

 皆で笑い合える当たり前の日々。それがどれだけ愛おしく、そして尊いものなのか巧はあの悲劇から痛感した。願うことならこんな毎日をずっと送っていきたい。今はここにいないガルドたちも一緒に。そしていつかは────

 

「────オルフェノクともこんな風に笑い合える日が来るといいですね」

 

 隣で呟く果林に巧は微笑を浮かべて頷いた。

 

 

 

 

 

 

 アイテムを入手した。

 

『ハリウッド風の革ジャン』

 

 アイテムを入手した。

 

『ファイズサウンダー』

 




やりすぎました、すいません。本家さえ越えなければ大丈夫だろ思考でふざけすぎた気がします。次回からシリアスが続くのでそれでプラスマイナスゼロにします

余談ですが入手したハリウッド風の革ジャンはたっくんの専用コスチュームです。これでフィールドを冒険する姿を想像して楽しんでください。ストーリー的には特に意味はありません。

ファイズサウンダーは宿屋に入ればファイズの曲が聞けるようになりました、的なアレです。同じく特に意味はありません


本当は北崎たちも参戦する予定でしたがボツにしました。
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