眩しい。窓から覗く朝日が眠っていた巧の意識を覚醒させる。彼はうっすらと目を開いた。たった一つを除いていつもと変わらない朝だ。その一つが違うだけで大きく違うのだが。久しぶりの人間としての朝。気分は不思議と変わらない。巧はあくびをした。
「・・・・・・あー、変身出来ねえ」
巧はポツリと呟く。既に何度も試みたが全てが無駄に終わった。ダメだ。ウルフオルフェノクになれない。リタの言っていたことは本当だった。どうやら巧は本当に人間に戻ってしまったらしい。オルフェノクとしての力は一切残ってないようだ。今の巧は正真正銘ただの人。何も出来ることはない。
「喜ぶべき、なのか?」
鬱陶しいと思っていた。人を殺せと囁く内なる自分自身に嫌気が差したから。消えてしまいたかった。怪物として誰かを傷つける自分自身が怖かったから。だから望んでいた。人に戻りたいと。何度も何度も。決して叶わぬその望みに思いを馳せた。なのにこうしていざ人間に戻れた巧が感じたのは空虚感だけ。そこには喜悦の感情は一切ない。かといってオルフェノクであった自分に未練がある訳でもない、はずだ。なんだか矛盾していて気持ちが悪い。巧は頭を横に振った。過ぎたことは仕方がない。どうすれば良いかは後で考えればいい。
「巧さん、起きてますか?」
こんこんとノックを叩く音が聞こえる。リタだ。彼女は巧が返事をするよりも早く扉を開いた。
「おはようございます」
「・・・・・・おい、勝手に開けんなよ」
「起きてることは分かってるのですよ。私に居留守は通用しません」
「お前、ほんと便利な存在だな」
「ふふ、褒められるのは悪い気がしませんね」
自慢気に笑うリタに巧は褒めてねえよと内心毒づく。そしてこの思考もバレてるかもしれない事実にちょっとだけ寒気がした。
「どうです、人間としての目覚めの気分は? 久しぶりなのでしょう?」
「いつもと変わんねえよ」
別に人間でもオルフェノクでも基本的な生活は変わらない。オルフェノクも元はただの人間だ。オルフェノクになれる以外に人間と違うところは特にない。強いていうなら人としての本来隠している凶悪な性質が強大な力を持ったことで浮き彫りになる者が多いだけだ。
「では、まず一つ。変わらないことを見つけられましたね」
「はあ、何がだ?」
「人間とオルフェノクの違いですよ」
どういうことだ。巧は首を傾げる。
「別に私はこのままあなたを一生人間のままにする気はありませんよ。ただ単にオルフェノクとしての自分を受け入れられるように一度人となってもらっただけに過ぎません」
「なんだよ、それ」
「すぐに分かりますよ。巧さんが巧さんである限り必ずあなたはオルフェノクに戻ることになるのですから」
リタが何を考えているのか分からない。戻すつもりならわざわざ人間にさせる必要があるのか。しかも、まるで巧が自ら望んでオルフェノクに戻ることを望みとでも言いたいような言動だ。おかしい。何でせっかく人間に戻れたのにまたオルフェノクにならなければいけないのだ。まるで意味が分からない。巧はまた首を傾げる。
「さ、朝食が出来てますよ。行きましょう」
◇
「さーて、メシだ。メシメシ! 今日の朝メシは和食か。うめえ!」
巧が食堂に向かうとファングが上機嫌で朝食にありついていた。普段は遅くまでぐうたらと眠っている彼が今日に限ってやけに早起きだ。リタと色々あって食堂に来るのが遅れたとはいえ巧より起きるのが早いなんて珍しい。何か理由でもあるのだろうか。
「メシのことになると騒がしい奴だな」
巧はファングの近くに腰掛けるとテーブルに和食の載ったお盆を置いた。味噌汁や焼き魚などオーソドックスな和食のフルコースはとても美味しそうだ。これはファングのテンションが高いのも納得だ。
「まったくだ。朝っぱらからやかましい奴め」
「せやか? ワイは賑やかな方が好きやで」
「・・・・・・私は苦手だ。朝は気分がどうにも優れない」
朝からテンションの高いファング。熱いお茶を飲んでいたアポローネスは鬱陶しそうに彼を見つめた。元から賑やかなのが好きで久しぶりに彼らと食事を共にするガルドは笑みを浮かべる。
「ふぅふぅ。あ、おはようございます。巧さん」
「・・・・・・おう、おはよう」
一心不乱に味噌汁を冷ましていた果林。彼女は巧が目の前に座ると顔を上げて笑顔で挨拶した。
「どうしたのですか、乾さん? あまり顔色が優れてませんわ。やはり昨日のことがショックできちんと睡眠がとれなかったのですか?」
「まあ、な」
昨日は昨日でもファイズギアのことではない。あれも心配だが今はオルフェノクのことだ。心配するティアラに巧は曖昧な返事をした。
「気分が優れないならこれをどうぞ。カモミールティーです。披露回復に良いのでお飲みになってください」
巧はティアラに差し出されたカモミールティーを無言で見つめる。今の自分は人間に戻っている。なら、今ならもしかしたら猫舌も治っているのではないか。巧の猫舌はオルフェノクになったのが原因のようなものだ。治っていてもおかしくない。淡い期待を込めて巧は熱々のそれを一気に口へと傾けた。
「熱っ!」
人間に戻っても猫舌は変わらないらしい。巧は慌てて冷たい水を飲んだ。
「もう、何をやっているのですか?」
口元を押さえている巧にティアラは呆れる。彼が猫舌なのは周知の事実だ。このパーティに加わったばかりのアポローネスにまでそれは知れ渡っている。いきなり熱い物を口にする奇行にティアラは目を丸くした。
「い、いや。もしかしたら猫舌が治ったんじゃないかと思ってな」
「え、何故です? 何か変わったことでも?」
「・・・・・・何となくだ」
オルフェノクから人間に戻ったから、なんて巧の正体を知らないティアラに言えるはずがない。二重で驚くことになるだろう。せめてオルフェノクのままだったらまた話しも別なのだが。
「ふふ、これでまた変わらないことが一つ見つけられましたね」
「うるせえよ」
耳元で囁くリタに巧は眉を歪めた
「お前、力が使えなくなったのがショックで頭おかしくなったんじゃねえか? 猫舌なんてそう簡単に治るもんじゃねえだろ。記憶でもなくさない限り」
「そうです。同じ猫舌の私が断言します。巧さんは記憶でもなくさない限り治りませんよ」
「な、なんや。やけに具体的な治療法やな」
記憶喪失をやけに強調するファングと果林にガルドは苦笑を浮かべる。というかそんな方法で本当に猫舌が治るかどうかも怪しいのだが。
「記憶なんてなくせるかよ。他に方法ないのか?」
「ないない。諦めろ」
「もう、巧さんは良いじゃないですか。治る余地があるんだから。私なんて氷の妖聖ですよ。存在自体が猫舌なんですからね」
「あ、ああ。わりいな」
珍しく怒る果林に巧は頭を下げた。氷の妖聖は生まれつき猫舌なのだ。生まれつき治る余地のない彼女からしたら贅沢な悩みだ。しかし、炎の妖聖であるアリンとキョーコは以前かき氷を美味しそうに食べていたから不思議だ。どこで差が出たのだろうか。疑問である。
「そういえばファング。お前、今日はやけに早起きだな」
「別段早起きではないと思うのですが・・・・・・」
「ああ、ちょっと皆に話したいことがあってな」
話したいこととは? 巧は首を傾げる。他の面々も概ね同じ反応だ。
『あれー、でもエフォールがいないよー』
『言われてみれば。今朝から見ていないな』
困った。何かを相談しようにも肝心のメンバーが揃っていないのでは相談出来ないではないか。ファングはここにはいないエフォールに頭を掻く。
「エフォールさんなら散歩に行くと言ってましたわ」
「あいつ・・・・・・こんな一大事に呑気なもんだな」
いつ敵が襲撃してきてもおかしくないというのに。巧はこんな状況下で単独行動をするエフォールの自由人振りに少し呆れた。
「ただいま! ファングー! 果林ー!」
「お、帰ってきたみたいだな」
噂をすればなんとやら。エフォールが向日葵荘に戻ってきたようだ。ドタドタと慌ただしく鳴る足音に何事だ、とファングたちは思った。しばらくして食堂に入ってきたエフォールに彼らは目を見開く。
「皆。見てみて! ワンちゃん拾った!」
『・・・・・・ワウ』
犬。エフォールは小さな両腕に灰色の子犬を抱えていた。言動から察するに捨て犬を拾ったのだろう。通りで散歩の帰りが遅くなる訳だ。
「きゃあー! 可愛い!」
可愛いものが好きなアリンはその子犬に目を輝かせる。エフォールから犬を受けとると彼女は一心不乱に頭を撫で回す。
「こら、エフォール! 今すぐ元いた場所に戻してきなさい! ダメじゃないですか、捨て犬なんて連れてきちゃ!」
「捨て犬じゃないもん。河原にいたの」
「野良犬ならなおのことダメです。悪い病気を持っていたらどうするんですか!?」
エフォールは犬を返してこいと言われて涙目になる。果林はエフォールの保護者としての一面を久しぶりに発揮した。彼女に説教をされたエフォールはファングに救いを求め、視線を向けた。なんで俺なんだ。ファングは困ったように頭を掻く。
「うー、ファングー」
「しゃあねえだろ、そもそもここ宿屋だぞ。犬なんて勝手に連れて来たらダメだろ」
「ダメ・・・・・・?」
「かわい────あー。いや、そんな目で見られても俺が決められることじゃねえよ。家主に聞け、家主に」
上目遣いと涙目のコンボに一瞬ドキリとしたファング。だがペットを飼う判断は彼の一任でどうにかなるものではない。宿で犬を飼うなんて女将のミツボが許すはずがなかった。ただでさえキュイやセグロという動物が・・・・・・。あ、とファングは気づいた。
「よく考えてみれば俺たち既に犬を一匹飼ってたな」
「キュイ?」
目の前でドッグフードを食べていたキュイにファングは視線を向ける。キュイが許されるならこの犬も大丈夫かもしれない。というかセグロですら許されるのに犬が許されない理由がなかった。
「キュイは犬ではありません。見た目はともかく立派な妖聖ですわ」
「立派な妖聖に犬の餌を食べさせるんか・・・・・・?」
ガルドは思わず突っ込む。
「ミツボ、この犬飼っても大丈夫?」
「私は構わないよ。この宿はペット同伴OKだからね。でもちゃーんと躾しなさいよ。トイレもそうだけど他のお客様に迷惑もかけないように」
「うん!」
一件落着。犬を飼っていいと言われたエフォールは笑顔を浮かべた。
「良かったな、エフォール」
「うん!」
嬉しそうなエフォールの頭をファングは撫でた。
「名前はどないするん? 無難にポチとかでええんかな?」
「キュベリオル二世にしましょう。キュイとおそろいです」
「あんたのネーミングセンスどうなってんの? てかキュイってキュベリオルの略だったの!?」
「意外な真実ですね」
「落ち着け。名前よりまずは犬小屋だ。それにトイレ用の砂、あとオモチャを用意しなくてはな」
「意外と犬好きなんだな、お前さん」
「エミリが昔、捨て犬を拾ってきてな。私も可愛がったものだ」
「それにしてもこの犬の犬種はなんだろう。見たことがないなあ」
ファングたちは犬の周りに集まるとワイワイと盛り上がる。ここ数日疲弊する毎日が続いていた。こうした癒しは彼らにとっても必要だ。
「・・・・・・この犬」
巧は皆に囲まれても尻尾一つ振らない犬に目を見開く。この子犬は犬ではない。本来は狼。子狼だ。無愛想で人間になつかないところがそれを物語っていた。だが巧が狼と気づいた理由はそんな現実的なものではない。その目が狼と合った瞬間、ある種の確信が彼の脳を駆け抜けた。
「気づきましたか?」
「こいつは俺、か?」
無言で頷くリタ。やはり、と巧は思った。この子狼の正体はウルフオルフェノクだ。灰色の体毛。額にうっすらと浮かび上がった紋章。それは巧の変身したウルフオルフェノクの特徴と一致している。
「ウルフオルフェノクの記号。あなたから抜きとったそれに命を吹き込みました」
デタラメだ。今までもデタラメだったが今回は理解の範疇を越えている。人からオルフェノクの力を奪うだけでも異常だ。そこから更に命を吹き込むとは。信じられない。言葉で表現することができない。こんなの反則ではないか。巧は引きつった笑みを浮かべる。
「ふふ、これでオルフェノクとしての巧さんを客観視出来るでしょう? 我ながら素晴らしいアイディアだと思ってます」
「いや、犬をどう見たら客観的に自分を見直すことになるのかぜひ教えてくれ」
「人の姿だったら本当に何も変わらないですからね。客観視するためにあえて獣にしたんです。あ、本当にあえてですよ。これであなたの本心が分かりますよ」
自分そっくりの人間が目の前で行動している。想像しただけで気味が悪い。確かに獣で良かったかもしれない。巧はリタの言っていることを信じた。ここまで来たらそれが嘘でないと分かる。未来予知したり、人の心を読んだり。Sランク妖聖はどれだけでたらめなんだ。その気になればリタは死者すら生き返らせられるかもしれない。これほどの力があるならオルフェノクが欲するのも納得だ。
「巧、リタ。お前ら何やってんだ?」
「・・・・・・なんでもねえよ」
「ええ、なんでもありませんよ」
輪に入らず遠目で何かを話し込んでいる巧とリタ。それに気づいたファングが怪訝な表情を浮かべる。
「まあいいか。それより皆。ちょっと話したいことがあるんだ。ちょっとそこのワン公のことは後回しにしてもらっても良いか?」
「えー」
「えー、じゃないですよ。元を正せばあなたのせいで遅れたんですからね、エフォール」
エフォールは不満を顔に浮かべながらも渋々引き下がった。
「わりいな。後で遊んでやるからな」
『・・・・・・ワン』
ウルフオルフェノクはファングに頭を撫でられると無言で頷く。ウルフオルフェノクは心地がいいのか尻尾が僅かに動いていた。
「お、こいつキュイより賢いんじゃねえか? 俺の言ってること分かってんぞ」
「キュイ!?」
「当たり前だろ!!」
「キュイィ・・・・・・」
キュイはファングと巧に犬よりも下と言われてショックを受ける。特に巧は普段から自分に無害という認識だったのでその裏切りとも言える行為のショックは大きい。まあ巧からしたらファングの言い分を否定したらキュイより自分の知能が劣ることを認めたことになるので仕方ないのだが。
「ちょっとお二人とも。キュイをいじめないでください」
「俺はいじめてねえよ」
ティアラは震えているキュイを抱き上げた。
『おい、ファング。いい加減本題に移れ』
「あ、悪い悪い」
ブレイズに促され、ファングは懐から何かを取り出した。
「これを見てくれ。・・・・・・俺宛にドルファからの立食パーティーの招待状が届いたんだ」
「おっさんのじゃないのか?」
「いや。そもそも今回はおっさんからの招待状自体来てねえ。シャルマンがいねえからな。ピアノの演奏もないんだろ」
ファングが取り出したのは立食パーティーの招待状だった。それは前の世界ではティアラが受け取っていたものだが今回の世界ではファング宛に変わっていたようだ。
「これに皆で行こうと思ってな」
「え、やった! またご馳走が食べられるじゃない!」
「・・・・・・楽しみ」
食べることが大好きなアリンとエフォールは立食パーティーの招待状に目を輝かす。
「確か、ドルファは世界征服を企んでるんですよね。罠ではないのですか?」
「せやせや。わざわざダンナをご指名とは奴さん明らかに何か企んどるわ」
元から警戒心が強いティアラ、つい最近までドルファに所属していたガルドはこのパーティーの招待状に疑問を抱く。確かに前の世界ならともかく今回の世界ではファングたちはドルファの邪魔しかしていない。明確な敵であるファングをわざわざ自分たちのパーティーに招待するなど不審だ。何かを企んでると考えていいだろう。
「ドルファの狙いは大方予想がつく。・・・・・・ファング、貴様を手中に収めるつもりだ」
「ファングを?」
「この世界は以前とは違う。あのオルフェノクという怪物どもはドルファの兵力と同等、あるいはそれ以上。互いに今のところは不可侵な状況が続いているがそれもいつまで続くか分からん。ドルファは来たるべきオルフェノクとの全面戦争に備えて、戦力集めに躍起になっているのだ。そんな中で私が離反した。今すぐにでもその埋め合わせが必要なのだろうな」
パーティーの目的はフェンサーの勧誘。以前の立食パーティーの時にそんな話しをティアラから聞いた覚えがある。巧自身はフェンサーではないのですっかり忘れていた。それならこの招待状も納得だ。あの時よりも兵力が下がっているドルファなら今のファングは喉から手が出るほど欲しいはず。たった一人でドルファ四天王に匹敵する力を持っている男だ。
「そんなこと言われなくても分かってる。あれだけ派手に戦ってれば嫌でも有名になるだろ。ま、勧誘は前の世界からあったんだけどな」
しかし、それを分かっていながら何故ファングは立食パーティーに向かうのか。まさか単純にご馳走が食べられるからとかそんな理由ではあるまい。いや、ファングならそれもあり得るか。巧は疑問に思う。
「なに? では貴様はドルファに与する気か?」
「んなこと言ってねえよ。俺が立食パーティーに行きたいのはタダ飯が食えるからだ。・・・・・・ってなんだよ、その冷たい目は? 冗談に決まってるだろ!」
冷ややかな視線を向けられたファングは慌てて否定する。彼は軽く咳払いをした。
「戦力が欲しいのはドルファだけじゃねえ、俺たちもだろ」
「あ、もしかして!」
「あいつらを!?」
ファングが何を考えているのか気づいたアリンと巧は目を見開く。彼はニヤリと笑った。
「ああ、マリアノと北崎を仲間にしようと思う」
「ドルファ四天王を全員仲間にする気?」
やはりか。ここまでファングはアポローネスを仲間にし、ザンクの協力を取り付けている。そうなると残ったドルファ四天王の二人を仲間にしようとするのは自然な流れだ。アリンは北崎ではなくパイガが四天王であることをすっかりと忘れていた。まあ、パイガと一度も戦った記憶がないから忘れていても仕方がないのだけど。
「そんなに上手くいくんか? アポローネスはんが抜けて必死なんやろ。マリアノはんや北崎を手放すと思えんけど」
ガルドはドルファが一枚岩でないことを痛いほど知っている。そう何度も易々と自らの戦力を失うような失態はしないはずだ。
「大丈夫だって。アポローネスも言ってるだろ。ドルファはオルフェノクとの全面戦争に備えてるって。俺たちの敵もオルフェノク────奴らを操っているシャルマンだ。敵の敵は味方だろ。ここはお互い協力してオルフェノクと戦うんだ。北崎がいれば巧のベルトを取り返せる。後はオルフェノクたちを倒した後でそのままマリアノたちが仲間になってくれたらラッキーだな」
『ファングが頭を使うなんて珍しい』
「仲間のピンチだから当たり前だろ」
ファングは食いしん坊のバカだが頭が回る。常にその時に最善の方法を本能的に選ぶことが出来る力があるのだ。巧のベルトが奪われてすぐに取り戻す算段を立てるのは素早い判断だ。ブレイズは久しぶりに彼を評価した。
「なるほどねえ。ドルファもファングくんもオルフェノクと戦う戦力が欲しいのは一緒だ。これなら利害も一致してる。一時共闘か、確かに上手くいくかもね」
「だろ?」
「うんうん。ダメ元でも行く価値ありだわ。こっちにはどう転んでも損なんてないんだし」
アリンの言っていることはもっともだ。ファングは何をされてもドルファに属する気はない。何か不利な条件が提示されたのならその時点で引き下がれば良い。ドルファの協力を得ることが出来なくても他にも戦力のアテはある。まだ再会してないピピンやファングが窮地になれば駆けつけると約束している剣崎。彼らと合流出来れば何とかオルフェノクと戦うことも出来るはず。変に気負う必要はない。
「じゃ、皆。今日の立食パーティーは参加で良いか?」
「私は構いませんわ」
「俺も構わねえ。北崎に会いたかったからちょうど良い」
「あたしは最初から行く気だし」
「ワイはダンナに何処までもついていくで。よーし、腹減らしとこ」
「貴様の決めたことなら口は出さん」
「私も何でも良いや」
そうと決まれば急いで準備をしなくては。彼らは立ち上がった。
「zzzzzzzz」
「起きなさい、エフォール。もう皆部屋に戻りましたよ」
「・・・・・・あ、寝てた」
「もう。難しい話でもちゃんと聞かないといけませんよ」
◇
ゼルウィンズのどこかに存在する廃墟となったバー。
「やはりファングくんはそう簡単には死んでくれませんか」
「そうなんだよ。あいつ強すぎだぜ、大将。王の力にも匹敵するかもしれねえよ」
『不死身の王が敗れるとは思えないのだけど。確かにあの男を始末するのは骨が折れそうだわ。こっちも切り札を使わないと厳しいかしら』
ここにオルフェノクの幹部が集まっていた。バットオルフェノク、冴子、レオ。そしてシャルマン。彼らはファングの抹殺を密かに企てていた。
「あれを使うのはまだ早すぎます。それに核となる『彼』もまだ復活していない。今は他の手段を考えましょう」
「でもあいつらサイドバッシャーも通用しなかったぞ。正攻法で勝つのは不可能だぜ」
『まったく。本当に乾巧や北崎くん以上に厄介な存在になったわね』
「ファングくんは人間ですからね。刹那の時を生きる彼らとは伸びしろに圧倒的な差があります」
『だからこそ。さっさと殺さないとね』
上級オルフェノクである二人は確かに強い。ウルフオルフェノクとドラゴンオルフェノクは現状存在するオルフェノクの中でも最上位の強さだろう。だがその二人よりも今のファングは強い。既に進化を遂げた彼らと違いファングはまだ進化の途中。その実力はまだ底が見えていない。だからこそ一番厄介なのだ。どれだけ強力でも素の実力では王を越えることは不可能な二人。彼らと違いファングには王を越える可能性がある。その差はあまりに大きい。
「あ、そうだ。おい、影山。てめえ乾巧がオルフェノクだって知ってたろ!?」
「Why did you remain silent?(何故黙っていた?)」
巧の名前が出たことでバットオルフェノクは冴子の肩に掴みかかる。彼とレオはウルフオルフェノクについて知らされていなかった。そのせいでファイズに変身したレオは初見殺しのウルフオルフェノクに敗北し、標的を取り逃がしている。巧がオルフェノクだと最初から分かっておけばいくらでも対応の仕方はあったはずだ。知略に長けた戦闘も得意とするバットオルフェノクは怒りを露にした。
『わざわざ話す必要がないでしょう。ファイズに変身出来るのはオルフェノクだけ。なら乾巧もオルフェノクに決まってるじゃない。もしかして気づかなかったの?』
「気づくか! 人間に味方するオルフェノクなんて例外が何人もいると思う訳ねえだろ! あやうくレオがやられるところだったんだぞ!」
『あまり怒らないで頂戴。確かに私にも落ち度はあるけど。あなたたちも悪いのよ。それに死んでも『また』復活させれば良いだけのことでしょ』
「てめえ・・・・・・!」
『あら、私に対して喧嘩を売る気?』
バットオルフェノクと冴子の間に一触即発のムードが漂う。
「Quit. The mistake was mine(よせ。俺のミスだ)」
「レオ・・・・・・」
冴子に掴みかかろうとしたバットオルフェノクの手をレオが引く。
『物分かりが良いと助かるわ。バットと違ってね』
「あぁ?」
今度こそバットオルフェノクは冴子の肩を掴んだ。
「仲間内で争うのはやめてください」
二人の間にシャルマンが割って入る。
「バットさんがいなくなっても冴子さんがいなくなっても僕達には損失しかないんです。ただでさえゼルウィンズ各地に散っているライオトルーパーも黒き仮面の戦士に倒されているという話です。これ以上の損失は避けなくては。オルフェノクの復活にも時間が掛かりますからね。なるべく今は兵力を温存しなくとはなりません」
「ち。大将に感謝するんだな」
『それはこっちのセリフよ』
本当に相性の悪い二人だ。シャルマンはため息を吐く。かつての村上はよく彼らや北崎などの問題児を管理できたものだ。
「ところで皆さん。失敗に終わったSランク妖聖の回収はどうしましょうか?」
「俺は諦めた方が良いと思うぜ。戦ってはっきりと分かったからな。ファングは次元が違うって。マジで奴とはオルフェノクの王でもなければ勝負にならねえよ。止めとけ止めとけ。・・・・・・それとも大将自ら出向くか?」
「僕は遠慮しておきますよ。ファングくんとの実力差は前の世界から感じてましたからね」
『あら、本当に諦めるの? シャルマン、あなたの願いを叶えるチャンスよ』
「いえ、無論諦める気はありませんよ。・・・・・・あなたの出番です」
シャルマンは視線を出口に向けた。金髪の男がフラりと現れる。いつの間にそこにいた。強者であるレオにすら悟られずに現れたその男は一体何者なのだろう。まるで神が顕現した、そう錯覚してしまう程に男は底なしの雰囲気を持っていた。
「ようやくワイの出番か」
「ええ。ファングくんが別次元の強さを誇っていても彼がフェンサーである限りあなたの前には無力だ。確実に仕留められるはずです。Sランク妖聖の回収、お願いできますか?」
「もちのろんや。大船に乗った気でいてくれや」
ニヤリと笑うと男はどこかへ姿を消した。
「本当に頼りにしてますよ『ギャザー』さん」
◇
「やっぱりドルファって凄いわね。相変わらず人が一杯だわ」
二度目の立食パーティーも以前と変わらず豪華絢爛なものだった。高そうな花に高そうな装飾品。とにかく辺りにある物全てに高そうが付きそうな光景にアリンはまた目を輝かした。
「このお肉美味しい」
「こっちの寿司も美味いで!」
「わーい、ごちそうごちそう!」
「ふふ、あまりはしゃぎすぎてはいけませんよ」
エフォールたちはさっそくパーティーを満喫しているようだ。喜んで食事をしている姿にティアラは微笑みを浮かべる。
「アポローネスくんは食べないのかい?」
彼らが各々パーティーを楽しむ中で一人だけ周囲を鋭い目で見渡すアポローネスがハーラーは気になった。賑やかなのは苦手だと言っていたのは本当のようだ。彼は心なしそわそわしていた。
「そこまで腹は減っとらん。それより今は北崎とマリアノを見つけることが先決ではないのか?」
「大丈夫だって。心配せずとも俺様が目当てなら向こうから来んだろ。お、このフカヒレうめえ!」
「言い出しっぺの貴様が呑気に食事をしてるんじやない」
やはり目的は仲間を得ることではなくタダ飯だったか。アポローネスはため息を吐いた。
「あれ、そういえば巧は?」
「乾さんならリタさんと一緒に北崎さんを探しに行きましたわ」
「果林ちゃんもこっそり跡を追いかけてたよ。しかし女の子と二人なんて乾くんが珍しいね」
巧とリタはやけに仲が良いな。基本的に一匹狼の性質を持った巧が誰かを引き連れて行動するなんて珍しい。彼とかなり距離が近い果林だって二人っきりなんて状況はなかったのに。何故か出会ったばかりのリタとは今朝からやたらめったら二人っきりで行動している。これは一体・・・・・・? ハーラーは巧にあらぬ疑いをかける。
「まさか。乾くんはリタちゃんに気でもあるのかな?」
「いやいや。ありえねえよ」
「そんなことにかまけている余裕は奴にも我々にもないだろう」
「まったくだ。これはフューリーを集める冒険だ。恋愛にかまけている場合じゃねえよ」
「そうですわ。私たちは一刻も早く世界を平和にするのです。寄り道してる暇はありませんわ」
いや、お前らがそれを言うな。ハーラーとアポローネスは同時に突っ込んだ。
◇
一方その頃。
「乾くんから僕に会いに来るなんて珍しいね。何の用?」
巧は北崎と再会していた。彼はパーティー会場にはおらず見つけるのに手間取った。町外れの公園。北崎はそこにいた。例によって例のごとくリタの能力によって彼の居場所を特定し、巧とリタは瞬間移動をした。彼女の計らいによって転移した果林も一緒に。目の前に現れた二人に北崎は驚かされた。
「いや、少しお前に聞きたいことがあるんだ」
「ふーん、話してみなよ」
巧はこれまでの経緯を全て北崎に話した。ファイズギアを奪われ、皆の前でオルフェノクになり、そしてオルフェノクの力を失ったことを。北崎は黙ってそれを聞いていた。
「俺、人間に戻っちまってさ。ファイズにもオルフェノクにもなれないんだ」
「力を失った、か。ちょっと会わない間に色々とあったんだ。大変だったね」
巧は北崎が座っていたブランコの隣に座る。二人がこうして肩を並べて語らう日が来るなんて初めて戦った時には想像がつかなかった。
「巧さんに、そんなことが」
それを果林は隠れて聞いていた。彼女は巧がただの人間に戻ってしまったと知り驚愕する。
「もしかして、私のせいで・・・・・・!」
果林はリタに自分が言ったことを思い出す。オルフェノクとしての自分を受け入れられない巧が心配だ、と。リタが巧を人間に戻したのは間違いなくそれが原因だ。どうしよう。とんでもないことを自分はリタに相談してしまったのかもしれない。彼女は後悔した。
「・・・・・・なあ北崎。俺はこれからどうしたら良いと思う?」
「うーん。せっかく人間に戻れたんだから自由に生きれば良いんじゃないかな」
「自由にって・・・・・・俺は真剣に考えてるんだよ」
それが分からないから聞いているのだ。かつてのようなはファイズギアを奪われただけならまだ取り返せばすむ話しだった。だが今回失ったのはベルトだけではない。オルフェノクの力もだ。ファイズの力はオルフェノクにしか使えない。彼はファイズに変身することが出来なくなった。ただの人間となった巧がファングたちに出来ることは何もない。オルフェノクを倒して人を守ることも出来ない。巧は自分自身がここにいる意味が分からなくなってしまった。そのどうしようもない不安を巧は北崎に吐露する。
「俺は何もかも失った。今はただの人間なんだ。もう誰も守ることが出来ない。誰の夢も守ることが出来ないんだ」
巧は乾いた笑みを浮かべる。北崎は何とも言えない表情で頭を掻いた。
「・・・・・・今の乾くんはさ、昔と違って贅沢だよ」
「贅沢?」
「ファングくんたちみたいな優しい人たちが傍にいて。その人たちと一緒に笑い合える場所があって。オルフェノクとしても受け入れてもらえて。それがどれだけ幸せなのか分かるよね? ずっと一人だった僕は君が羨ましいよ」
北崎はかつての自分の姿を思い出す。触れた者を灰にする能力を秘めた彼は人間だけではなくオルフェノクにまで恐れられていた。他のオルフェノクとは次元の違う強さ。北崎の周りには誰もいない。彼を最強たらしめる力は同時に彼を世界から孤立させていたのだ。孤独なんて当時は意識していなかった。誰もが恐れるこの力が心地よかったから。孤独により寂しさを紛らわせる程に。だがこうして力が制御できるようになった今、もしあの時の自分に戻れるとしても。北崎は絶対に戻りたくないだろう。エミリに触れることが出来なくなる。孤児院の子どもたちと遊ぶことが出来なくなる。人の温もりを知ってしまった北崎にはそんな苦痛耐えられるはずがなかった。
「・・・・・・人間としてどう生きれば良いか分からないなんて悩み、やっぱり贅沢だよ」
誰も理解してくれない孤独こそが異形である者の一番の悲しみであり、痛みなのだ。どれだけ人々を守っても、どれだけ人々を愛しても、狂気に包まれたその肉体がある限り彼らとの間には越えようのない壁が生じる。それを乗り越えられる人々は限られている。その限られた人たちとこの世界に来たその日から巧は当たり前のようにずっと一緒にいられた。彼は本当に奇跡的な出会いを重ねてきたのだ。
「贅沢、か。確かにそうなのかもしれないな」
北崎に言われて巧は今までの日々を思い出した。
「なあ、もう一度聞いて良いか? 俺はこれからどうすれば良い」
「もう一度言うよ。生きれば良いんだよ。自由に。人間になった君にはいっぱい時間があるんだから。何をしたいのかはこれから見つければ良いじゃない。そうだ。そこで君のことをさっきから心配そうに見ている女の子に聞いてみなよ」
そこ? 巧は北崎の視線の先へと目を向ける。木の陰から狐の耳が飛び出していた。あ、と巧が声を出すとその耳がビクリと震える。
「あ、あはは。見つかっちゃいました」
「果林・・・・・・」
姿を現した果林の元に巧は向かう。北崎はそれを笑顔で見送る。
「なあ、果林。俺、人間に戻っちまったんだ。これからどうすれば良いと思う」
「私にも分かりません・・・・・・」
「そう、か」
「・・・・・・だから一緒に考えましょう。巧さんは一人じゃないんです。私もファングさんたちもいます。一人で抱え込まないでください。心を閉じないでください。皆で一緒に考えればいいんです」
涙目で寄りかかった果林を巧は支える。少しだけ肩の荷が降りた気がした。
「いつにも増して自分を追い詰めていたみたいだけど。あとは果林ちゃんに任せれば大丈夫かな?」
「自分を追い詰めているのはあなたもですよ、北崎」
「君はリタちゃん、だっけ? 僕が追い詰められてるってどういうこと?」
「さ、殺気を出さないでください。あなたの力はとりませんから」
リタは北崎の前に立つ。自分の力も奪われると思った彼は僅かに殺気を溢れさせる。流石のリタも北崎ほどの強者の殺気を前に冷や汗を流す。
「・・・・・・あなたは同族であるオルフェノクを殺して敵であるはずの人間を守っている。それは何故です? 頑なに人であろうとする巧さんとは違う。オルフェノクであり、人間でもあろうとするあなたはいずれはどちらからも追われる現実にある。いえ、もう既に残酷な現実は少しずつあなたを壊そうとしている。なのに迷いがないのは何故ですか?」
リタは北崎という存在の危うさに気づく。オルフェノクに戻っても人間というスタンスを貫くであろう巧とは違う。北崎はオルフェノクの力を隠そうとしない。それどころか同族を殺すのに率先してその力を使ってる。もはや彼はオルフェノクであるとドルファに所属する兵士から周知されているだろう。ガルドたちのように受け入れられる人間は本当に稀だ。受け入れられない人間が北崎に何をするか。それは彼が元々いた世界の人間が証明している。つまり人間が勝ち残ってもオルフェノクが勝ち残っても彼の末路は・・・・・・。だが北崎はそうと分かっていながら人間の味方をする。自分の正体を隠さない。それは何故なのか。人より優れた視野を持つリタにも分からなかった。
「僕が最強だからだよ。僕は僕でなければならない。僕は僕だから。・・・・・・王に生き返らされたオルフェノクには意思がない。ただ人を殺すだけの傀儡だ。壊すだけの怪物だ。でも僕はそうじゃない。北崎という意思のあるオルフェノクだ。守りたい者がある北崎という人間だ。だからこそ僕は彼らを倒されなければならない。それが僕である証だから・・・・・・!」
リタは北崎の言葉一つ一つに込められた強い意思に目を見開く。自分という存在を証明するために彼は命を削っている。そんなことが出来る者は他にいるだろうか。最強を自称する北崎にしか出来ないことだ。
「・・・・・・ところでさ、リタちゃん」
北崎はブランコから立ち上がると視線を空に向ける。月が怪しく輝いていた。彼は目付きを鋭くする。
「はい?」
「さっきから僕たちを覗き見しているそこの妖聖は君の知り合い?」
「・・・・・・っ! いえ、知りません!?」
リタの返答と同時に北崎は青い火球を空に向かって放った。月に向かっていったはずのそれはナニかに当たって爆発する。
「北崎、何があった!?」
「これは一体?」
「さあね。あの人に聞いてみなよ」
近くにいた巧と果林も視線を空に向ける。金髪の男。翼を生やした金髪の男が腕を組んで空を飛んでいた。
「降りてきなよ」
「へー、気配は完璧に消したと思ったんやけどな。この時代にもいるもんやなあ、強者って奴は」
ふわりとその男は空から舞い降りた。
「君、いったい何者?」
「悪いけど正体は隠すように頼まれてんねん。そこのお嬢ちゃんに聞いてくれや」
北崎たちの視線がリタに向けられる。彼女は青ざめた目で震えていた。巧は驚愕する。あれほどまでに反則的な強さを持ったリタが怯えているなんて信じられない。彼女が恐れるということはそれはこの目の前にいる男がリタよりも強いということだ。
「ぎゃ、ギャザー・・・・・・。な、何故あなたがここにいるんです!?」
「リタ、何者なんだ?」
「わ、私と同じSランク妖聖です」
「同じSランクでも格がちゃうねん、格が」
「本当に、格が違う」
目の前にいる金髪の男『ギャザー』はククっと笑う。妖聖である果林はギャザーがどれほど恐ろしい存在か気づく。この男は邪神の末裔であるバーナードより邪悪だ。決して近づいてはならない。目を合わした瞬間から彼女の脳がそう警鐘を鳴らしている。
「ふうん。リタちゃんと同じSランク妖聖か。ねえ、じゃあ君は強いの?」
「ああ。少なくとも神々を除けばこの世界でワイが最強や」
「へえ。じゃあ僕と同じだね」
北崎はベルトを腰に巻いた。
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────standing by
「ダメです、北崎! ギャザーとは絶対に戦ってはいけません! あなた、死にますよ!」
「そう思うなら早く逃げてくれないかな。全力で時間稼ぎするからさ。・・・・・・変身!」
────complete
北崎はサイガに変身を遂げた。
「死にたくなければリタはんを差し出すんやな」
「君こそ死にたくなければリタちゃんを諦めなよ」
ギャザーは魔力を解放する。彼の身体から暗黒の霧が溢れ出た。周囲の草木が一瞬で枯れる。サイガがドラゴンオルフェノクの力を解放した。周囲が一瞬にして灰の焦土と化す。何という力だ。次元の違う戦い。もしも巧がファイズに変身出来たとしてもこの間に割って入るのは不可能だ。今までの北崎は本気ではなかったのか。サイガに変身した状態でドラゴンオルフェノクの力をフルで解放させた北崎。それに怯むどころか余裕の笑みを浮かべるギャザーに巧は冷や汗を流す。二人とも最強を自称するだけはある。彼らに匹敵するのは邪神の力を解放したファングしかいないだろう。
「必ずファングさんを連れてきます!」
「待ってろよ、北崎!」
「絶対に死なないでくださいよ、北崎さん!」
リタの瞬間移動によって三人はパーティー会場に向かった。
「そっちにいっても無駄なんやけどなあ」
「僕が君を倒せば済む話でしょ」
サイガのトンファーエッジがギャザーの顔に迫る。ギャザーの拳がサイガの腹を狙う。両者の攻撃は互いの片手に防がれる。
「少しは楽しめそうやなあ」
「それはこっちのセリフだよ」
最強のオルフェノクである北崎。最強の妖聖であるギャザー。二人の最強が今激突する。
果林ちゃんみたいな可愛い娘に心配されるたっくんは贅沢です。
新キャラ二人が登場しました。ウルフオルフェノクの化身(元ネタあり)と隠しSランク妖聖のギャザーです。彼を手に入れるのは苦労しました。
このウルフオルフェノクの化身の正体が分かった人は結構凄いと思います。
変身した状態でオルフェノクの力を使うと北崎だけとんでもない強さになりますね。ブラスターにでもならないとたっくんがインフレに置いてけぼりを食らいます。早く登場させなくては。