今回は前回に続きFFFのヒロインが登場します
「ここまで来れば大丈夫だろ」
『知らぬ間にゼルウィンズ地方の中心まで来ていたようだ』
「マジか? ここならフェンサーも集まるんじゃねえか?」
ファングたちが流れ着いたのは大都市ゼルウィンズ。大企業『ドルファ・ホールディングス』を中心に栄えた巨大都市。街の中心にはドルファのビルが悠々と立ち、その発展ぶりを物語っていた。数多くのフェンサーが集まるこの地方でも最もフェンサーが多い場所だ。結果的にファングのフェンサーの願望を知りたいという本来の目標は達成されたも同然だろう。
「それなら好都合よ。あたしの目的とも一致してるわ」
「お前、記憶が戻る具体的な方法とか分かるのか?」
「巧にはもう言ったんだけどね。女神さまを復活させればあたしの記憶も戻ると思うの」
やたらと時間が掛かりそうな手段にファングはうへえと声を漏らす。
「百本も集めてられるかよ。正気か? 俺の知り合い足してもまだ四本だぞ。考えただけで気が遠くなる」
「もう一つ、アリンを知ってる妖聖を見つけるって手段の方が手っ取り早いだろうな」
「俺もそっちのが良い」
「まあね。でもどの道フューリーを集めないといけないのは同じよ」
とにかくアリンの記憶を戻す手段はフューリーを集める以外にないようだ。仕方がない。面倒という理由だけで見捨てるほどファングも巧も薄情ではない。
『だが問題はどうやってフューリーを探すかだ』
『わたしたちのちからでもきびしいよ』
「俺もお前ら手に入れたの全部偶然だしな」
どうしたものか。腕を組んで悩んでいるとリュックサックを背負った幼い少女がファングの前に現れた。
「ねえ、そこのカッコいいお兄ちゃん」
「ほう、俺様の魅力に気づく奴がいるとはな。確かに俺はイケメンで天才だ」
「乗せられてるだけだろ。誰だ、お前は?」
上機嫌なファングと呆れる巧に少女は笑顔を向ける。
「あたし、ロロ。便利屋やってるの。お兄ちゃんたちフューリーを探してるんでしょ? 今ならお得な情報売ってるよ」
「こんなガキが便利屋? それは確かな情報なのか?」
『人は見かけによらん。特に彼女は人かどうか。・・・・・・まあ信頼して大丈夫だろう』
疑いの目を向ける巧。だがブレイズが言うなら間違いはないのだろう。
「ま、ガセならガセでまた金は稼げば良い。さっそく一つ頼むぞ、ちびっ子」
「はいはいまいど~。あたしお兄ちゃんとは気が合うかも。じゃ、お代をいただくね。特別サービスで今ならこのお値段だよ~」
「高っ!」
ロロの提示する金額は中々に高値な数字になっていた。記憶がなく物の相場がよく分かってないアリンや巧はふっかけられているのかそれとも妥当な金額なのか分からない。まあ百本集めれば願いが叶うフューリーなら幾ら払っても欲しい人間はいるだろう。そう考えるとどんな金額でも釣り合いはとれる気がしてくる。
「しょうがねえだろ。巧、金よこせ」
「あ、待って。お金なら巧よりあたしの方があるわ」
「お、結構あるな。盗んだのか?」
『アリンを何だと思っているんだ、お前は?』
アリンが持っている金は髪飾りを売った物だ。妖聖の装飾品は中々に価値が高いらしく数日の宿代を差し引いてもロロの情報代くらいは余裕で賄えるだろう。
「ほらよ」
「ありがとうお兄ちゃん。フューリーはソーヨル草原にあるよ。強いモンスターもいるから気をつけてね」
代金を手に入れるとロロは上機嫌でどこかへ行った。謎が多い子どもだ。そう思いつつファングは彼女の後ろ姿を見送った。
「ソーヨル草原・・・・・・遠いな」
「俺のバイクもないし、歩くしかないな」
「えー、アリンとお前で行けよ」
「バカなこと言わないの。パートナーなしでどう戦うのよ」
えー、とファングは不満を漏らす。
「無事にフューリーを手に入れられたらファングの好きな物食べさせてあげるからしっかりしなさい」
「よし! とっととフューリー手に入れるぞ。お前ら俺に続け」
『アリンおかあさんみたい』
『ならファングはわがまま息子だな』
上機嫌で歩き出したファングにブレイズたちは苦笑を浮かべた。
「そういえば巧、バイクはどうするんだ?」
「大丈夫だ。その内勝手に自力で戻ってくる」
◇
ソーヨル草原はのどかな草原だ。小鳥の囀りがあちこちから聞こえ、様々な動物が生息している。遠くに見える古代文明の長い塔は冒険者たちの間でも研究が盛んに行われているらしい。
「ここがソーヨル草原ね・・・・・・」
「強力なモンスターがいるって言うからどんなもんかと思ったが悪くない場所だな」
「よし、今日はここまでにしよう。疲れた」
『阿呆。まだ何もしてないだろう。フューリーを探す目的をもう忘れたのか』
「へいへい」
ファングたちはソーヨル草原を歩き始める。彼らは あちらこちらのモンスターに細心の注意を払う。見つからないように。道中にいるモンスターは出来るだけ避けて通らなくてはならない。それは別に戦うのが面倒くさいとかそういう理由ではない。生態系を壊さないためだ。自然界にはあまり人間の手を加えてはならない。今現在の肉食獣と草食獣のバランスが崩れればたちまちこの豊かな自然を持ったソーヨル草原は枯れた大地となるだろう。だから極力モンスターとは戦わない。これは旅人であるファングが強く巧たちに注意したことだ。
「意外。ファングって自然を大事にするんだ。優しいところもあるのね」
「旅をするなら当たり前だろ。別に優しいとかじゃねえよ」
『同感だ。心掛けない方がおかしい』
だらしないファングだがこういうところはしっかりしているから不思議だ。
「旅をするならこれだけは守れ。一つ目は『ゴミは捨てない』これは当たり前だな。二つ目は『命を捨てない」
「どういうこと?」
「動物を殺せばその動物の仲間が自分を殺しにくるから、自分が動物に殺されれば誰かが悲しむから・・・・・・だったか?」
「お、巧。覚えてたか」
あの長い砂漠を渡っている途中でファングが言っていたことだ。何時になく真面目だったから記憶に残っている。
「自衛のため以外で命を奪うのは止めとけ。縄張り意識が強いヤツらだと死ぬぞ」
「・・・・・・凄い。ファングがなんか賢い!」
「賢いのは当然だから驚く必要はない」
『当然と思い込んでることに驚かせられる』
せっかく上がった評価を瞬時に下げるのがファングの悪いところだ。やたらと自信過剰なのを直せばイケメンで天才にもなれると思うのだがそれをやろうとしない。そこが彼の魅力なのだけど。ブレイズもキョーコも不真面目なファングについて行くのが楽しいから一緒にいるのだ。真面目ないい子チャンのファングでは面白くない。
「そういえば巧の携帯ってどうなってんだ?」
「あ、それあたしも気になった。銃になるのよね? どこで買ったの?」
「さあな。スマートブレインってところが作ってんだとよ」
「何処の会社なんだろうな」
それは巧が一番聞きたいことだ。彼の記憶の手がかりは間違いなくそこにある。この携帯もあの変形するバイクも全てそのスマートブレインの物なのだから。
「あ、あれフューリーじゃない? ほら刺さってるあれ」
「なんであんなとこに刺さってんだよ。誰も拾わないのか?」
『罠、の可能性もあるな』
小一時間ほどソーヨル草原を歩いていると地面に突き刺さったフューリーを見つけた。あまりに簡単に見つかったため今まで何故他のフェンサーが手に入れなかったのか巧は疑問に思う。
「ま、俺が抜けば大丈夫だろ。アリンと巧は下がってろ」
『見たところ危険はなさそうだが警戒は怠るなよ』
「アリンじゃあるまいし、俺がそんなヘマするかよ」
「お金がないのを忘れて捕まるバカには言われたくないわよ!」
ファングはフューリーに近づく。
「そこの方、お待ち下さい」
呼び止められファングは振り向く。そこには少女がいた。
「見ればずいぶんとお疲れのご様子」
その少女は誰が見ても前置詞に美を付けてしまうような容姿をしていた。腰の辺りまで伸びる水色の髪は一見すると銀色にも見えるくらいに綺麗に透き通っている。所謂お嬢様が着るフリルの付いたドレスを違和感なく着こなすのが彼女の洗練された美しさを物語っている。これを着こなすのは例え優れた容姿の人間でも簡単ではない。エフォールが着ても似合わないな、とファングは思った。
「疲れてるのか、俺? そこまで疲れてねえけど」
ファングは小一時間しか歩いてない。流石に日頃から旅をしている彼がこの程度で疲れるとは考えにくい。ファングは少女に怪訝な目を向ける。
「いいえ、疲れてます。せっかくの良い顔が台無しですよ」
「じゃあやっぱり疲れてんのか」
「疲れてるのも良い顔なのもどっちも嘘だろ。騙されてるぞ、ファング」
ファングに睨まれ巧は視線を反らした。
「このお茶には滋養と疲労回復の効果があります。是非飲んでください」
「お、うまそう」
「こら! 知らない人からもらった物を飲んじゃダメでしょ!」
『待て、阿呆! こういう輩は薬を盛ってるに決まっている。いつものパターンだろう!?』
「・・・・・・熱そうだな」
アリンたちの警告を聞かずにファングは美味しそうに茶を飲む。
「ぐへ。し、痺れる。やっぱりか・・・・・・!」
「やっぱりってお前本気でバカだろ!」
『ファングだいじょぶ!? ぺっ、して。ぺっ!』
『ええい、もう遅い!』
何故疑いを持っていながら飲んだのか本当に意味が分からない。盛ったはずの少女まで首を傾げる。
「・・・・・・あなたはもしかしてお馬鹿さんなのですか?」
「う、うるせえ。出されたもんを無駄にするくらいなら俺は騙されるバカのが良いんだよ!」
「どういうことですか?」
また少女は首を傾げる。
「・・・・・・お前が本当に親切心で茶を入れたならもったいねえだろ」
「それだけでこんな古典的な方法に騙されるなんてどうかしてますわ。あなたフェンサーには向いてませんよ」
「こっちは別にフェンサーなんか興味ねえよ・・・・・・」
少女は膝を突いて苦しむファングに解毒剤を投げ渡す。
「解毒剤です。そのままでは忍び難いですから」
「盛ったと思ったら解毒剤渡すなんて訳わかんねえよ」
「訳が分からないのはあなたですわ。これも疑いもせず飲むなんて本当に大丈夫ですか?」
ファングが苦しむ中、少女はフューリーを引き抜く。
『貴様、何者だ?』
「私、ティアラと申します。こちらはパートナー妖聖のキュイ」
人を罠にはめたとは思えないほどすんなり少女は名乗った。偽名、と思ったが嘘ではなさそうだ。
「キュイキュイ」
『「か、かわいい」』
ティアラのパートナー妖聖のキュイは真っ白な子犬のような愛くるしい見た目をしていた。アリンとキョーコはキュイに心奪われる。
「あら、可愛いだなんてそんな当たり前のことを言わなくても良いのですよ? まあ当然ですけど」
「お前に言ってねえよ、自意識過剰のくそ女!」
「おいファング。無理するな」
身体の痺れを感じながらもファングはティアラを睨みつけた。
「・・・・・・!」
ファングのストレートな罵倒に怒りを覚えたのかティアラは顔を赤くする。
「こ、これは警告の餞別として私がいただきますわ」
「ま、待ちなさい! 巧、何とかあの女から取り返して!」
フューリーを持ち逃げしようとするティアラをアリンが止める。彼女は巧をビシッと指差した。
「え?」
名指しされた巧が困惑の声を上げる。
「え?」
聞き返すアリン。
「俺が取り返せると、本気で思うか?」
「・・・・・・無理なの?」
巧は無言で頷く。
『アリン、お前は普通の人間がフェンサーに勝てると思うのか?』
「あっ・・・・・・!」
「今の今ままで戦力として数えていたことにびっくりだ」
アリンはもしかしてここまでずっとファングと巧が二人で戦うこと前提に考えていたのか。なんだかこれからの旅路に暗雲が立ち込めて来た気がする。巧は額から汗を流した。
「残念なお顔に残念な頭なんて救いようがありませんわ」
「更に言うなら口もうるせえんだよ」
「あら、気が合いましたね」
「ちょっと人のことなんだと思ってんのよ!」
言いたい放題言われたアリンは顔を真っ赤にして怒る。
「五分もすれば痺れは解けます」
「くそ、待て! 覚悟しとけよ。お前に同じことを、いや倍返しにしてやる! 滅茶苦茶にして泣くまで許さねえからな! 腹黒女め!」
『落ち着け阿呆。言動が危ういぞ』
それ以前に苦し紛れに繰り出される罵声がもしティアラの逆鱗に触れればどうなるかわかったものではない。身動きがロクにとれないことをファングは忘れてるのではないか。ブレイズは呆れた。
「滅茶苦茶・・・・・・泣くまで・・・・・・腹黒」
ティアラはぶつぶつとファングの言葉を反芻する。
「お、おいファング。なんかヤバくないか」
ティアラの顔は見ることは出来ない。だが正面から見たらきっと心臓が止まるほどに恐ろしいものだろう。巧は冷や汗を流す。
「出来るものなら是非やって下さい」
不気味な笑顔を浮かべてティアラは離れていった。
「助かったの、か。・・・・・・たく、あんまり挑発すんなよ、バカ」
「しょうがねえだろ。あの女絶対許さねえ!」
『はやくおおう!』
だがファングは動くことが出来ない。
「ちょっと待て。まだ痺れが解けてねえ」
「もう、早くしないと逃げられちゃうわよ!」
『・・・・・・ふむ、ファング。万能薬を使ったらどうだ?』
万能薬は混乱や気絶、麻痺や猛毒などどんな状態異常も治すその名の通り万能薬だ。なかなか高いが旅人の必需品として重宝される。
「もったいねえけどそれしかねえか」
ファングはカプセル状のそれを飲み込む。
「よし、追うぞ」
ファングたちは駆け足でティアラの跡を追う。急がなければフューリーを盗られてしまう。
「あ、だからお前あのお茶普通に飲んだのか。つーかそんなのあるならもっと早く使えよ!」
◇
「あのお方、私になんて非道いことを・・・・・・」
「キュイ?」
ソーヨル草原から街道へと向かうためティアラは歩く。その間も頭の中はファングのことでいっぱいだった。
「ああ、でもこの不思議な胸の高鳴りはなんなのでしょう・・・・・・?」
ティアラの脳裏にファングの鋭い目が、乱暴に繰り出された言葉が何度も何度も浮かんでは消える。彼女は気づいてないがその頬は赤く染まっていた。
「あら、どちらさま?」
「へへ、おれは所謂ちんぴらさ。お決まりのキャラってヤツだ。おとなしくそのフューリーを渡しな」
そんなティアラの前に一人の男が現れた。ちんぴらフェンサー。巧に完敗したごろつきフェンサーより更に弱いちんぴらフェンサーだ。
「お決まりなキャラでつまらない顔のあなたに渡すものなんてありませんわ」
ティアラの挑発もちんぴらはニヤニヤと受け流す。
「なら腕尽くでもらうぜ。あんたごとな。ひひっ、その綺麗な顔が泣き顔になるのが楽しみだ」
「それは俺も見たい」
「誰だ!?」
ちんぴらが振り向くとそこにはファングたちがいた。
「あなたはファングさん、だったかしら」
「そうだ。偉大なるファング様だ」
「なるほど。私を追いかけてきたんですね。わかりますわ、私を愛してしまったのですね。ふふふ、可愛いらしい方ですね」
ティアラはどこからその自信が沸いてくるのか照れ笑いを浮かべて言った。ファングは顔を歪める。
「んな訳ねーだろ!」
「この自信のありっぷり・・・・・・」
『まるでファングだな』
巧はブレイズの言葉に頷いた。
「てめえらこの女の仲間か?」
「俺たちの会話を聞いときながらどうしてそう思う?」
「ええ、そうです。このファングさんは私の下僕です」
「ちげえよ!」
いつの間にか下僕扱いされてることに全力で否定するファング。
「ファングさん、私この方につきまとわれて困ってるんです助けていただけませんか?」
「いや、あんた本気?」
『よくあれだけのことをして素知らぬ顔でファングに救いを求められるな』
アリンとブレイズはティアラに呆れた。
「へへ、お前もフェンサーか。ならフューリーを置いてきな」
「あちゃー。あたしたちまで目を付けられちゃったわね」
「・・・・・・断れる雰囲気じゃなさそうだな、ファング」
「ち、仕方ねえな」
ファングは剣を持つ。
「死ねえ」
ちんぴらが剣を振った。ファングは簡単に避ける。あの男の時のように感覚ではなく目で追ってかわせる。直線的で攻撃の仕方がなってない。これなら喧嘩が強い巧でも勝てるかもしれない。ファングは瞬時に後ろに回りこむとちんぴらの腕を捻り上げた。
「ぎぎぃ」
激痛に呻き声を上げ、ちんぴらは手に持っていた剣を落とした。
「お前、本当にフェンサーか?」
その辺のモンスターのがよほど苦戦を強いられる。特殊能力者といっても過言ではないフェンサーは普通なら素手で勝てるはずがないのだが。このちんぴらは宣言通りお決まりのキャラだったようだ。
「てめえ『それ以上喋るとわかってるよな?』ひぃぃ」
ファングが腕を掴んでいた手を放すとちんぴらは悲鳴を上げて逃げていった。
「ふ、口ほどにもない」
『おおっ、ファングかっこいい!』
『フェンサーになって更に身体能力があがったようだな』
ファングは手についていた汚れを払った。
「お疲れ様でした。ファングさんはお強いんですね」
「あんた、よくもぬけぬけと・・・・・・」
「その強いファングと戦いたくはないだろ。フューリーは返してもらうぞ」
巧が手を出して返せ、と催促するがティアラは首を振った。
「それは無理です。ですがもっと素敵な物をプレゼントいたします」
ティアラは見る者を魅了する笑みを浮かべる。
「まさか肉か!? 肉なのか!?」
「あんたにとってフューリーは肉以下なの?」
『ファングかっこわる~い』
『・・・・・・阿呆め』
「お前の頭の中は食い物しかないのか」
願いを叶えるフューリーよりも肉を求めるファングにアリンたちは呆れる。
「いいえ、もっと素晴らしいものです」
肉より素晴らしい物なんて探せばいっぱいあるだろ。巧は内心突っ込んだ。
「あなたたち、マジで私の下僕にして差し上げますわ! どうです。素敵でしょ。嬉しいでしょう?」
ティアラはとんでもないことを自信満々に言った。
「肉すら越えられないのか・・・・・・?」
呆然と巧が呟いた。どんな発想をすれば願いが叶うフューリーよりも彼女の下僕になる方が素晴らしいのか、真面目に問い詰めたい。
「はあ?」
『・・・・・・正気か?』
『げぼく、てなにー?』
アリンたちの反応はごもっとも(約一名理解できてない者もいるが)なものである。どれだけ美しかろうと下僕になれと喜ぶ人間はいな────
「ヤダね。お前が俺様の下僕になるならフューリーをやっても良いぞ」
「ダメに決まってます。でも・・・・・・な、なんて魅力的な要求なんでしょう」
「・・・・・・俺が言っといてなんだがどこに魅力的な要素があった?」
いた、というかティアラ本人だった。ファングに下僕になれ、と言われ恍惚とした表情を浮かべる。彼にしては珍しく困惑しているのが分かる。
「なに、こいつ?」
「さあな。俺だって知りたい」
『自分がされたら嬉しいと思うことなら相手も嬉しいと思ったのか。なるほど』
引き気味のアリンと巧と何故か納得するブレイズ。
「あ、いっそファングだけ下僕になるってのはどうだ?」
『「っ!」』
「お前らそれだ!とか思ってたらぶっ飛ばすぞ。誰が下僕になんてなるかよ」
巧の画期的な案はファング本人によって拒否された。
「私は構いませんわ。ファングさんのような腕の立つ方がいればとっても助かります」
「いや、俺が困るだろ」
「でも俺たちは困らないぞ」
ファングは巧の足を無言で蹴った。
「もう、ファングさんは私のようなか弱く美しい乙女があのような目に合うかもしれないのに心配じゃないんですか!」
「いや、お前もフェンサーだろ」
「フェンサーが二人いれば戦闘も楽になると思いますけど」
確かにそうだがそれなら素直にフューリーを集めるのを協力してくださいと頼めば良いのではないか、ティアラ以外の全員がそう思った。
「それに私の縁者が経営してる宿を提供しますわ。根無し草のあなたたちには嬉しいでしょう?」
「宿は悪くないが下僕にはなりたくないんだが・・・・・・」
『俺も巧に同意だ』
「あたしもこんな腹黒女と一緒は嫌よ」
巧たちは難色を示す。ティアラについて行けば何をされるかわかったもんじゃない。あとはファングが拒否をすれば良いのだが・・・・・・。
「その宿の飯は美味いのか?」
『うまいのかー?』
「もちろん。なんでもどこぞの三ツ星レストランのシェフを引き抜いたと聞いてますわ」
ティアラの一言にファングは目を輝かす。巧は何となく彼が何を考えてるのか察した。
「よし、組もう」
「お前はほんっと単純だな」
巧が呆れ顔で笑顔を浮かべるファングに言った。
「飯も美味くてフューリー集めんのも楽になるなら一石二鳥だろ」
『どうせあの女に任せてお前はサボろうとか考えているんだろう?』
「うわー、それありえる」
面倒なことはティアラに任せて自分は楽をする。既にファングの頭の中は自分に都合の良い方向に向かっていた。こんなパートナーで本当に大丈夫だろうか、アリンは不安で胸がいっぱいになる。
「さて、宿に案内しろ。三ツ星のメシでも食おうじゃねえか」
『わーい、ごはんごはんー!』
「ええ、付いていらして下さい」
ファングはティアラの跡を嬉々として追いかけた。
「え、ほんとにあいつについて行くの?」
「・・・・・・まあ肉よりは良いんじゃないか」
「そういう問題じゃないでしょ!」
巧も渋々二人を追いかける。
「ちょっと待ちなさいよ! こらー!」
一人置いてかれそうになったアリンは急いで走り出した。
草加さんはこれからイチゴマンの編集長をやるそうなのでよい子のみんなの傍にはいられなくなりました。皆さんも草加さんにあいたかったらイチゴマンの購読とTwitterのフォローをしましょう(ステマ)
555の登場は多分あと三話くらい先になります
関係ないですけどフェアリーフェンサーエフの主人公が葦原さんだったらヒロイン全滅しますよね