これは全部夢の話   作:こつめ様

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四話

四話

 

 

 

 

 

「早く泣き止んでよね……。ほら、歩きなさいよ」

 

「あ"い」

 

「……」

 

呆れた顔のにこの後ろを引きずられる様に腕を引かれながら歩く。

 

「ほら、段差あるわよ。気をつけて」

 

「あ"い」

 

返事をする事で精一杯な程醜い姿を晒している。

(察してはいたけれど)唐突ににこに会った瞬間の感動と、にこのお母さん姿を拝めている感動。もう周りの目なんて知らない。

 

「どうしたん、にこっちお母さんみたいやんなぁ。一番子供っぽいのに」

 

希がにこをいじり出す。

 

「一言余計なのよっ!!うちの子達がよく段差で転ぶから心配なだけよ!」

 

「ふぇ〜?にこっちは一応お姉さんやしね」

 

煽り気味の希がさらににこをいじる。

にこがキィィィと発狂し、希がにやにやするまではお馴染み。

だが問題はそこではない。

それよりも、うちの子達ってあの子達だよね…。あの年齢の子達と一緒にされてる………?

それって結構まずくないか?

 

「……」

 

流石に黙っていられない私は「あんな子達と同じにしないで頂きたい!」と言う気持ちを込めにこを反抗的な目で睨んでみる。……がただ涙袋に涙を溜めているのは仕方ない。睨む事に意味があるのです。

 

「なによその顔。今のアンタ見たら誰だってそう思うわよ」

 

とにこ俗に言うジト目で見てくるにこ。

確かにその通りだから何も言い返せずに黙ってしまう。

ふぅっとにこがため息をつき

 

「ほら、もう泣き止みなさいよ」

 

さっき睨んだ時とは違う。優しい顔。

本当にお母さんの様に安心してしまう。

 

「……っ」

 

にこの優しさに不覚にもキュンと来てしまった。さっきまでの涙は消えていきどんどん気持ちが収まっていく。

もう泣かない。

 

「ふふっ、やっと泣き止んだわね」

 

と絵里。遅くなってすいません。

 

「まぁ、にこが言ったからね」

 

とにこ。そんな事ないと思いますけど。

 

「いやいやにこっちのお陰じゃないやろ」

 

と希。いやにこのお陰もあるかな。

 

「違うわよ!にこが言ったから泣き止んだんじゃない!」

 

またまたにこ。そんな事はないですね。

 

「いやぁ?うちが那華と一緒に登校した時はすぐ泣き止んでくれたで?」

 

と更に希。『すぐ』は泣き止んでないかな。

 

「ほらほら、那華で争わないの。困っちゃってるでしょ?」

 

そして絵里。

目の前で三年生達のお馴染みの会話を目の前にし唖然としてしまう。

 

「ほんまや、にこっちが言う事聞かないから困っちゃってるやろ?」

 

元凶その一。

 

「そんな事言ったら希だって困らせてるじゃない!」

 

元凶その二。

 

「このままじゃけりがつかないなぁ」

 

けりってなんですか?

 

「そうねぇ……、ここはやっぱり那華に決めてもらおうかしら」

 

巻き込まれた。

 

「おぉ!にこっちやるやん!たまにはええ事言うなぁ。………で那華?どっちなん?どっちがええの?」

 

どっちがいいってなんですか?

 

「一言余計よ。……那華……にこだよね?」

 

二人に潤んだ瞳で見つめられ言葉に詰まってしまう。

 

「え、えっと……私は……『キーンコーンカーンコーン』

 

私の言葉を遮って無情にもチャイムが鳴る。

 

「うっわ!予鈴よ!!!走るわよ!」

 

とにこが私の腕を強く引っ張り走り出す。そして私もそれにつられ走り出す。

 

「茶番なんてやってる場合じゃなかったわ」

 

茶番と自覚がある希。

 

「私は楽しかったわよ?」

 

と絵里。

 

にこが足を止めた。そうすると引っ張られていた自分の足も止まる。

そう、自然すぎて気づかないかもしれないが手を繋いでいたという事は秘密。

 

「ほら、着いたわよ」

 

そうして俯いてた顔を上げる。

そして目の前に広がっていたのは

音ノ木坂学院の

校内だった。

 

「なにぼけっとしてるのよ。急いで」

 

そうにこに急かされて足を前に出す。

 

見た事のある下駄箱

見た事のある掲示板

見た事のある廊下

見た事のある階段

見た事のある窓からの風景

 

「凄い……」

 

自然と口から出てきてしまう。

歩けば歩くほど夢じゃない事を実感する。

 

「そんなにキョロキョロして何かあったん?」

 

と不思議そうに聞く希。

キョロキョロ周りを見るのも当たり前である。

画面の向こう側にあるはずの景色が今目の前に広がっているんだから。

薄っぺらだったはずなのに実際にあるのはこんなに違う。

 

「転校生みたいね」

 

と絵里が笑う。

見た事があるようでこの景色は初めて見るものと何も変わらないのかもしれない。

細かい所を始めて見るのだから興奮が抑えれない。

 

「ほら、早くしなさい!」

 

と叫ぶにこ。

そして、次の目的地に走り出すのだった。

 

 

 

 

 

「あれ?私って三年生?」

 

「まだぼけてるの?」

 

と無意識に呟いた私に絵里の厳しいお言葉。

なんだか自然に三年生が集まってくるから何気なく接していたけど、流石に三年生の教室に案内されると多少なりとも驚いてしまう。

三年生なのに『学校の事全くわかりません』とか言ってたのか。恐ろしい。

 

「ほらはよ座らんと鳴るよ?あ、那華の席はあそこやから」

 

そう希に言われ急いで座る。

とその瞬間に始業のチャイムが鳴り先生が教室に入ってきた。

ほっ……と一息つくと前の席の希が私の方に振り返り。

 

『よかったね』

 

と口パクで言いニコッと笑う。

 

その瞬間顔が赤くなり鼓動が早くなる事が自分でもわかる。可愛いって好きってこういう事なんだと不覚にも感じてしまう。

 

『ありがとう』

 

と私も口パクでお礼をしニコッと笑ってみた。

 

「こら、佐々木。なににやにやしてるんだ」

 

「あっ、はい。すいません」

 

先生に注意されなければいい展開だったけど。

 

 

 

 

 

午前の授業が終わり、お昼を食べ、午後の授業が終わった放課後の教室。何かが起きてもおかしくないシチュエーションなのだが生憎まだ他の生徒が残っているのでお預け。

それにしても、一時限休んだが午前も午後も授業を受けたので疲れがくる。

だけど……

 

「なんか三人共急に元気なった?」

 

急に踊りだしたとか、暴れだした訳じゃなくて、顔が晴れたと言うか雰囲気がいきなり明るくなった。

 

「そうかなぁ?」

 

「だって、希『とても楽しみ』って顔してるわよ?」

 

「えりちだってそんな顔してるやん」

 

要するに二人共とても楽しみそうな顔をしている。

とここで違和感を感じる。何かが足りない。黒髪がいない?

 

「にこちゃんは?」

 

「ほんまやにこっちどこいったん?」

 

「あ、にこならもうとっくに出てったけど」

 

と絵里が教えてくれたのだがいつの間に出て行ってしまったのか。

なにか急ぎの用事でもあるのかな。挨拶くらいはしたかったな。

にしても二人共明るい表情だしなにかあるのかな?

なんて考えていると

 

「ほら、那華も早く行くわよ?」

 

と絵里に呼ばれる。

 

「え、でもどこに行くの?」

 

もちろんどこに行くのかなんて知らないので聞くのは当たり前だと思うのだが、不思議そうな顔で二人共私の顔を見てくる。

 

「そんな事まで忘れたん?」

 

「部活よ?」

 

「部活?」

 

もちろん部活なんて入ってる記憶なんてないし入っていないはず。中学生の時は帰宅部だったし運動なんてできない…。文化部だって向いてない。そもそも部活は辛いものという印象があるから二人共がどうしてこんなに楽しみそうなのかわからない。

 

「まぁ、思い出せなくても付いてくればわかるから心配せんでええんよ?」

 

希がそう言い強引に私の腕を引く。

 

「え、ちょっ。待って。入部してないって…」

 

そんな事を言っても全く聞こえてないかのように希が走り出す。そして絵里が微かに笑い

 

「ふふっ、平気よ?那華ならね」

 

「はぁ?」

 

そして強引に謎に包まれた『部活』に連れて行かれるのであった。




後書き書かないマン










今回は個人的に気に入らなくて何回も書き直したり修正していたので更新が遅れました。気がついたらのぞにこでした。絵里ごめん。今度からしっかり絵里を出したいです。でも次回からは一気に9人…とか考えてるので皆をお伝えできるか不安ですがとりあえず頑張ります。なるべく更新早くしたいですね。多分頑張る。
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