が、この時のカカシの心情を描いておきたかったので、申し訳ありませんがご了承ください…
中忍試験本戦会場…。
失格を言い渡される間際に登場したサスケに、会場はわきあがっていた。
そしていよいよ試合開始の合図が出された。
カカシは観覧席でそれを見守る。
…サスケ…油断するなよ…そいつは、お前にとってはある意味…相性が悪い…。
カカシは数日前のことを思い出していた。
千鳥完成を間近に控えたあの日…
どこでどう嗅ぎ付けたのか、我愛羅がサスケに接触してきた。
いつものように岩場で修業をする二人…
「サスケ!もう一度だ」
カカシは声をあげ、ふと視線をそらす。
「カカシ…どうした?」
サスケのその問いに答えず、カカシは少し離れた岩に向かって言葉を投げた。
「そんなに殺気出してちゃバレバレだって。
隠れてないで出てきなさいよ」
岩陰から現れたのは我愛羅…
その表情には何の感情もなく、かえって不気味さを目立たせている。
「お前か…」
カカシは低い声で警戒を現わす。
我愛羅は全くカカシを視線にとめず、ひたとサスケをにらみつけ口を開いた。
「お前の目的はなんだ。
一体何のために力を求める」
ほんの少しも動かない…が、一瞬で間合いを詰めてくるであろうその力に、対峙する3人の間に緊張が張りつめてゆく。
サスケも感じているのだろう。
うっすらと頬に汗を浮かべている。
それでも、気圧されまいと言い放つ。
「てめぇには関係ないことだ。
失せろ、修行の邪魔だ」
サスケの意思を受けたかのように、強い風が吹き抜けてゆく…
その風に反し、そして、切り裂くように我愛羅はサスケに背を向ける。
「お前はオレと同じ目をしている。
力を求め、憎しみと殺意に満ち満ちている目。
…その目…オレに似ている」
サスケの目が鋭く光る…。
カカシはそんなサスケを視線の端に捉えながら、我愛羅に注意を払う。
背を向けたとはいえ、こいつは一瞬でサスケに届く…
カカシの警戒をものともせず、我愛羅は言葉を続ける。
「忘れるな…お前は…オレの獲物だ…」
そしてその場を去ろうとする。
しかし、それをサスケが止めた。
「待て!
なぜ、そこまで俺にこだわる」
カカシはそんなサスケを、何か言い知れぬ不安を感じながら見ていた。
強い者が自分を求めるその理由…
そこに、イタチと自分の関係を結びつける何かを求めているような…そんな気がしたのだ。
「本当の孤独を知る目」
我愛羅の言葉にサスケの瞳が揺れる。
「そして、それがこの世の最大の苦しみであることを知っている目…
言ったはずだ、お前はオレと同じ目をしている。
力を求め憎しみと殺意に満ち満ちている目。
オレと同じ、己を孤独という地獄に追い込んだ者を殺したくてうずうずしている目だ…」
「…………っ!」
サスケの目が見開く。
その脳裏にイタチがよぎった事をカカシは察知する。
…サスケ…とどまれよ…
ここでとどまれれば…きっとお前は…
しかし、その思いを邪魔するように
「その目だ」
我愛羅が追い打ちをかける。
そして、ザッと足を踏みしめる。
サスケが動かずとも、このままでは…
臨戦態勢に入ったサスケを見て、カカシが声をあげた。
「はぁい待った」
二人の間から一瞬で張りつめた空気が消え、我愛羅の殺意が今度はカカシに向けられる。
カカシはそれをさらりとかわす様な…それでいていつでも応戦できる様な空気で言葉を続ける。
「我愛羅とか言ったな。
お前が一体サスケの何を知ってるかは知らないけどねぇ、サスケのすべてを見透かすような言い方はダメでしょ」
言葉は緩いが、その口調は厳しさを帯びている。
この数週間、サスケの心に寄り添い見守ってきた…
そこには誰も踏み
カカシのその思いがサスケにも伝わったのか、サスケから戦意が消える。
「本戦前にこんなとこまで嗅ぎ付けてきて、いったい何が言いたいの…?」
我愛羅が地底から響くような低い声で答える。
「戦いとは他者と自分の存在をかけ、殺しあうことだ」
サスケの目が、恐怖とも怒りともいえない何かに染まる。
「勝った者だけが己の存在価値を実感できる」
サスケの変化を気にかけながらも、カカシは我愛羅から視線を外せない。
ただの下忍ではない…
カカシはその身に注がれる殺気にそう感じていた。
「つまり言いたいのは試合ではなくて殺し合いをしようぜっ…てことかな?」
しかしカカシに答えず、我愛羅はサスケに言い放つ。
その胸にまるで狙いを定めたかのように…。
「うちは、お前も本当は望んでいるはずだ。
心の奥底で自分の存在価値を確かめたい…果たして自分は本当に強いのか。
その殺意に満ちた目を向ける相手より本当に強い存在なのか」
もはやサスケの中を、あの日とイタチが埋め尽くしているのは明白だった…。
あの後、驚くほどあっさりと我愛羅は去って行った。
サスケもカカシが心配したほどのダメージを受けていなかったのか、すぐに気を取り直し修行に戻った。
だが、カカシの中には拭いきれない不安が残った…
あいつは…我愛羅は、サスケの心の闇の中心をついてくる…
その存在は、サスケを復讐へといざなう…
できれば近づけたくない相手なんだがな…
カカシはあたりに警戒を払いつつ、会場に目を向ける。
鍛えぬいたサスケの体術が我愛羅を圧倒してゆく様に、会場は釘付けになっていた。
いいぞ…サスケ…
その口元に誇らしげな笑みが浮かぶ。
しかし、ほどなくして、戦況が変化した。
我愛羅が砂のかたまりに閉じこもり、何やら仕掛けてきそうな雰囲気だ。
しかし、構わずサスケが飛び込む。
…が、サスケの拳が届くと同時に砂が形状を変え、棘となりサスケを襲う。
「くっ…」
サスケの頬に一筋の傷が走り、足元に血が流れる。
届いた拳にも血がにじんだ。
…かなりの強度と攻撃力だな…
カカシが眉をひそめる。
と、その時ナルトが駆け寄ってきた。
「カカシ先生!
今すぐこの試合を止めてくれってばよ!
このままじゃサスケ死んじまうぞ!」
その瞳には必死の色が浮かんでいる。
…ナルトのやつ…我愛羅と何かあったか…
それに、ナルトは案外感がいいからな…オレと同じように、我愛羅の中の何かを感じているのか…
でも、
「まぁ、心配するな。
あいつもオレも、無駄に遅れてきたわけじゃないさ」
「先生…それって…?」
近くでサスケの戦いを見守っていたサクラが声をあげる。
「聞きたい?」
おどけた様子のカカシにナルトがいらだつ。
「だから!んなこと言ってる場合じゃねぇんだってばよ!」
「黙ってあいつを見てろ」
有無を言わさぬその口調に、サクラとナルトが息を飲む。
「びっくりするから」
見つめるその先で、サスケはチャクラを足にためて会場の壁に張り付き、左手を構えている。
…やるか…サスケ…
みるみるうちに左手にチャクラが集まってゆく。
その様子を見て、近くにいたガイが声をあげる。
「ま、まさかあれは!」
そしてカカシに振り向く。
「オレがサスケの修行についたのは、あいつがオレと似たタイプだったからだ」
視線の先でどんどん膨れ上がるチャクラが、チチチチチ…と音を立てる。
そして、一同が見つめる中サスケが駆けた!
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
切れぬ物のない刃と化したサスケの左腕が、壁を…そして大地を削る。
…行け…サスケ!
お前の力を見せてやれ!
キィィィィィィィィィン!
甲高い唸りを上げ、サスケの千鳥が我愛羅の砂を突き破った。
「よし!」
カカシが声をあげる。
我愛羅の棘による攻撃も、写輪眼での見切りですべてかわした。
完璧だ!サスケ!
だが、喜んだのもつかの間…サスケの様子がおかしい事にカカシは気づいた…。
砂にとらわれた腕を引き抜こうと必死にチャクラを発し、その場から飛びすさる。
そして、引き抜いたサスケの左腕に引きずられるように、正体不明の何かが出てきた。
それはずるずると音を立てて、我愛羅の砂の中に戻ってゆく。
そのすぐあと、我愛羅から正体のわからない『気』が発せられ、サスケが…そして、試合に立ち会っていた試験管のゲンマがたじろぐ…。
会場内も怪しげな雰囲気に包まれていく…
…なんだ…今のチャクラは…
カカシの視線の先で、サスケが怯えた表情を
…これは…止めるべきか…
カカシが動こうとしたその瞬間。
我愛羅の砂が音を立てて崩れる。
中から現れた我愛羅は肩に傷を負い、血を流していた。
サスケは千鳥の衝撃で…我愛羅は傷を負い…お互いに肩を押さえて対峙する。
カカシは今度こそ…と会場に向かおうとした…
が、その時、会場内に白い羽が降り注いだ…
…パタリ…と後ろでナルトとそばにいたシカマルが倒れ込む。
幻術に強いサクラは自力で幻術を返しているが、会場内の人々が次々に倒れていく。
「カカシ!これは」
ガイが声をあげる。
「ああ、幻術だ!」
大蛇丸…動いたか!
そして、試験会場は戦いの場と化した…。
こうして中忍試験は中止となり、サスケは会場を去った我愛羅を追い、そのサスケを止めるためにサクラ、ナルト、シカマルが任務にあたった…。
…サスケを…頼むぞ!
会場から飛び出したナルトたちの背に、カカシは思いを託した。