次の日、何故か朝早くに目が覚めたカカシは朝霧が立ち込める中、親友の名が刻まれている慰霊碑の前に来ていた。
先日の戦いによって命を奪われた者の名も、多く刻み込まれている。
「オビト…この世からは、なかなか戦いの連鎖はなくならないよ…」
少し冷たい空気の中、カカシは瞳を細めた。
「…カカシ?」
不意に掛けられたその声に、カカシはゆっくりと振り返る。
そこに立っていたのは、薬草の入った籠を持つソラだった。
あの戦火を無事に
「ソラ…こんな早くから薬草摘みか?」
「ええ。この時間にしか開かない花があるのよ。
その蜜を取りにね。
あなたは…眠れなかった?」
いつもすべてを見透かされているな…
カカシはフッと笑みをこぼしながら、どこか安心感を覚える。
「まぁね」
と、そう答えたと同時に、カカシとソラの間にサッと暗部が4名姿を現わし、
「やはりここでしたか」
スッと頭を下げる。
声からすると先の戦いで命を落とした、ハヤテの恋人の夕顔のようだ…
「どうした…」
夕顔は後ろにいるソラを
極秘事項か…
しかし、
「構わない」
カカシはソラと暗部、両方へと向けて言った。
この状況での極秘事項は、おそらくすぐに里の上忍に伝えることになるだろう…
それに、ソラの情報網はカカシも知らないがかなりの物だ。
おそらくここで隠しても知りうるだろう…。
夕顔が「ハッ」と短く答え、低く抑えた声で言う。
「先ほど関所の見張りが何者かに幻術をかけられ、倒れているのを発見したと別の隊から伝令がありました」
「な…なんだと…」
驚き、顔を見合わせるカカシとソラ。
「その者の幻術を解き話を聞いたところ、術にかけられたのはつい先ほどで、相手は見慣れぬ赤い紋の入った黒い羽織装束。袈裟をかぶった二人組とのことです」
その出来事も奇妙だが、カカシは今の状況に眉をひそめた。
「なぜ…オレに…」
夕顔が顔を上げる。
「三代目火影様より、
「三代目が…そうか。しかし、それではあの方が…」
暗部にはもう一人幹部がいる。
カカシの脳裏にその人物が浮かんだ。
しかし、夕顔が首を横に振る。
「ダンゾウ様は同じ暗部とはいえ『根』の方。
火影直轄の我々への干渉はありません。
あの方はそのあたりはきちんと線を引かれている方ですので…」
「…………」
カカシは言葉が出なかった。
自分には荷が重い…
それが正直な気持ちだった。
しかし、三代目が自分を信じ託してくれた暗部だ…
応えようとするその気持ちも、また正直な思いだった。
「分かった…。
引き続きその隊を関所付近の警備にあたらせてくれ。
それから、急ぎ自来也先生に。
手分けして里の上忍にも連絡を…
その見慣れぬ装束も…調べてくれ…」
「ハッ」
切れの良い返事を残し、暗部たちは姿を消した。
里が疲弊しているこのタイミングでのこの動き…。
…まさか…
カカシの脳裏に、ある組織の名前が浮かんでいた…
しかし、確証はない…
だが、もしそうだとしたら、狙いはナルトか…場合によっては…
カカシの額に汗が浮かぶ。
さっき関所を通ったとすると、里につくまではもうしばらく時間はあるか…
ナルトには今日から自来也先生が修行につくことになっている…
オレは…サスケを…!
「カカシ…」
黙り込み思考を巡らせるカカシに、ソラの瞳が不安に揺れた。
普段あまり人には見せない表情だ。
だが、一つの戦いが終わったばかり…
その不安はもっともだろう。
「心配するな。
誰にも手は出させないよ…」
「…うん」
「お前はすぐに家に戻れ」
そう言い残し、自身も家へと急ぐ。
が、そこにはすでにサスケの姿はなかった。
時間からして、先ほど暗部の言っていた何者かとの接触は考えられない。
…帰ったか…
台所を見ると、用意しておいた朝食には手を付けていない。
「食べなかったのか…」
その行動からも、サスケの精神的な揺れが見て取れる。
とにかく、サスケと合流しないと…
カカシは部屋の窓を開け、ピュっと口笛を鳴らす。
すぐに一羽の鷹が舞い降りてくる。
腕にその鷹をとまらせ、カカシはそのくちばしを撫でる。
「サスケをオレのところに連れてきてくれ」
そして、空へと返す。
頼むぞ…
飛び立つ姿を見送り、嫌な予感を胸に、カカシは飛び出した。
そして…カカシの予感は…見事に的中していた。
里への侵入者は、以前自来也から聞いていた『暁』という組織の一員…。
忍刀七人衆と呼ばれる者の一人、
自来也から聞いた話から考えると、狙いはナルト…
しかし、ナルトはすでに自来也と共に里を出ており、念のためサスケも遠ざけた…
あとは、この二人を撃退するだけ…
しかし、ふたりとも広く名を馳せたかなりの手練れ…
イタチに関しては、うちはの正当後継者にして、一族一の天才…
そう簡単に行くはずもなく、カカシは上忍仲間のアスマと紅の3人で激戦を繰り広げていた。
しばらく一進一退の攻防を繰り広げていたが、次第に追い詰められ、イタチの強力な瞳術を警戒してアスマと紅は動けず、カカシは幻術による精神攻撃を受けて動きを封じられ、劣勢を強いられていた。
そして、鬼鮫の鋭い攻撃がアスマと紅に襲いかかったその時、突如水しぶきが上がり…
「木の葉強力旋風!」
吹き上がる水しぶきの中から、ガイが現れ、その蹴りが鬼鮫を吹き飛ばす。
カカシは荒い息で体を大きく揺らしながら、水面に降り立つガイの背中を見つめる。
…来たか…
水面を滑り、着地した鬼鮫が鋭い視線でガイをにらみつけた。
「何者です!」
ガイは構えを取り、毅然と言い放つ。
「木の葉の気高き青い猛獣。
マイト・ガイ!」
ポーズを決めてはいるが、緑一色のトレーニングスーツ…。
その独特のいでたちに、鬼鮫が戸惑いにも似た声をあげる。
「なんて格好だ…
珍獣の間違いでは…?」
しかし、イタチの表情は厳しい。
「あの人を…甘く見るな…」
その声にわずかに緊張の色を含ませる…。
カカシは自分の前に立つ親友の背にすべてを託した。
…ガイ…あとを…頼む…
そして必死に繋ぎ止めていた意識と共に水の中へと沈んだ…。