はたけのかかし 【カカシ×サスケ】   作:かなで☆

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其の十五  寄り添う存在

 その後部屋に戻り、カカシは荒れた呼吸を整えながら焦りを覚えていた。

「体がかなり重いな…。

早く戻さないと…」

大きく息を吐き、ベッドに入る。

と、その時、バサッと入り口の辺りで何かが落ちる音がした。

振り向くと、目を見開き立ち尽くすソラがいた…。

足元には花が落ちている。

「ソラ…」

呼ばれてハッと我にかえり、ソラはまるで出席をとるような口調でカカシの名を呼ぶ。

「カカシ!」

「はい!…?」

思わず返事をするカカシに、ツカツカと歩み寄りながら、ソラは(まく)し立てるように言葉を続ける。

「ごめん!先に謝っとく!

だから…今だけ…許して…っ!」

そして、涙を流しながらカカシに抱きついた。

「ソ…ソラ…お前…」

その言葉に、深く関わりを持ってはいけない…という自分の覚悟に、ソラが気づいている事をカカシは知る…。

「もう…目を覚まさないかと…っ…」

震える肩に回しかけた手を、カカシはぐっと握りしめこらえる…

…が…

「すまない…オレも先に謝っておくよ…。

…今だけ…」

そう言ってソラを抱きしめた。

自分の身を案じ、無事を喜んでくれる存在がこんなにもありがたいなんてな…

サスケも同じように感じているだろうか…

ふと、サスケの病室の方に視線を上げ、

「…っ!」

 カカシは固まった。

 ニヤニヤと笑いながら、自来也がドアにもたれて立っていたのだ。

 カカシの様子に気づきソラもそちらに視線を向け、慌てて飛び退()く。

 「自…自来也様!」

 よりによって…一番見られたくない人物に…

カカシは顔を引きつらせる。

カカシにとって自来也は、昔からなぜだか少し反発してしまう存在であり、苦手な人物だ…。

 「いやぁ…ええのぉ。若いというのは」

 自来也はおもむろに紙とペンを取りだし何やら書き綴る。

 「先に謝っておくよ…今だけ…か。よいセリフだ…次の新作の小説に使わせてもらうとするか」

 「~ッ…!」

 二人とも真っ赤だ…。

 「一体何の用ですか!」

 カカシが声を荒げる。

 「何だ、聞きたくなかったか?」

 その言葉に真顔に戻る。

 サスケと…イタチの…

 「いえ、お願いします」

 「うむ」

 頷き、自来也はソラの用意した椅子に座る。

 「ワシも先に謝っておくとするか…。

 カカシ…すまんかったな…もっと早くに止めてやるべきだった…。

 サスケの気持ちを汲んだつもりだったが、そのせいで、ひどい目に合わせてしもうた」

 サスケの身を思ってだろう。

 自来也はスッと頭を下げた。

 カカシは驚き、慌てる。

 「よして下さい…。

 ナルトの事もありましたし、それに…オレも…同じ事をしたかもしれません…」

 それは正直な気持ちだった…。

 サスケにとって、イタチはずっと恨み、追い続けてきた存在だ…

 実際その場に居合わせたら一矢報いさせてやりたいと、そう思ったかもしれない…。

 「それで…」

 話の先を待つカカシに、自来也は顔をあげる。

 「あやつ…イタチのやつ、容赦なしだ…。

 サスケの千鳥を簡単に受け流して、印を組めぬよう手首の骨を折りよった。

 そして幾度も殴り付けて、罵り感情を傷つけ…あげくの果てに幻術だ…」

 「…サスケ…」

 「ひどい…」

 その様子を想像して、ソラも辛そうに顔を歪める。

 「必要以上に揺さぶりをかけておった…。

 お前には興味はないと、挑発するような言葉…

 そして、お前は弱い…憎しみが足りない…とな」

 自来也は鋭い眼差しでカカシを見る。

 「完全なる敗北感…届かぬ焦燥…。

 カカシ…気を付けてやれ…」

 「はい…」

 「うむ。

 …しかし…あれだのぉ…」

 急に声のトーンを上げて、いつもの調子でニカッと自来也が笑った。

 「お前らがうまくいっとるようで安心したぞ」

 「…え?」

 一瞬カカシとソラが顔を見合わせる。

 そしてすぐにソラがそれを否定した。

 「違うんです!あれは私が勝手に。

 ほら、突然目を覚ましたので驚いてしまって。

 だから違うんですよ!」

 自来也に向かってニコリと笑い、持ってきた花を生けようと、窓辺の花瓶を取りに行く。

…ソラ…すまない…

 その様子を見て事を悟ったのか、自来也はカカシをジトリとにらんだ。

 「お前…」

 「な…なんですか…」

 「まだ下らんことを言っとるのか…」

 「何のことです…」

 「まったく…

だから、先に…今だけ…か…。

 そういう所がいかんのだ、お前は!」

 「…どういう所ですか…」

 「()()()()()だ」

 自来也は大きく息を吐いた。

 「そんなことだからイタチなんぞにしてやられるんだ」

 「なっ! 

 それは関係ないでしょう」

 「かつての部下にいいようにやられおって…。

 なっさけないのぉ」

 「あなただって!逃げられたんでしょう」

 「むっ!わしは撃退したんだ!」

 「おかしいですね…ずいぶん簡単に術を破られたと聞きましたが」

 「なっ!くそ、ナルトか…

 あやつ…余計なことを…」

 「里への侵入者は捕らえて尋問するのが基本だったと思いますがね…。

 オレの覚え違いですかね…」

 「お前…言うようになったではないか…」

 「いえいえ、伝説の三忍自来也様には敵いませんよ」

 しばしにらみ合う。

 が、自来也が「ガハハ」と豪快に笑った。

 「ふん。まぁそれくらい口が回ればじき退院できそうだのぉ」

 そして、再び真顔に戻る。

 「カカシ…サスケも気になるだろうが、ナルトを頼むぞ…。

 あれには里の未来がかかっとる…いろんな意味でな…」

 「と言いますと…?」

 しかし自来也は意味ありげに笑みを浮かべ立ち上がる。

 「いずれわかる。 

 じゃぁの。

 ソラ、カカシを頼むぞ」

 静かに頭を下げるソラを満足そうに見つめ、背を向け際に、何かの包みをカカシの布団の上に投げてよこす。

 そして、 

 「糖分を取れ」

 そう言い残して部屋から出て行った…。

 「なんだ…?」

 カカシが包みを開けると…

 「団子…。

 オレ甘いの嫌いなんだけど…」

 ソラが「フフ」と小さく笑う。

 「ん?」

 「これ」

 包み紙を指さす。

 「このお店のお団子、甘さ控えめなのよ」

 「…あ…そ…」

 またソラが小さく笑った。

 「あなたと自来也様って、何だか…サスケ君とあなたを見てるみたい…」

 カカシは心底嫌な顔をする。

 「やめてくれよ…」

 あの人は…妙におせっかいで、事あるごとに何かと口うるさくて…

 そのくせ、肝心なことは言わず、『自分で答えを見つけろ』と言わんばかりにいつも含みを持たせた物言いで…

 どこか癇にさわる…

 オレにとっては面倒な存在だ…

 「でも、ここぞという時には必ず来てくれる…でしょ」

 言われてはっとする…。

 そして、カカシは過去の自来也との事を思い出していた。

 オビトとリンを失い…恩師ミナトまでが死に…喪失感に捕らわれていた時。

 カカシは無理やり自来也に旅に同行させられたことがあった。

 その旅で、カカシは大切なものに気付き、それが大きな人生の岐路になった…。

 ほかにも、自分の色々な場面に自来也がいたことを、カカシは思い起こす。

 

 

 …オレがサスケに感じるのと…同じ気持ち…?

 

 

 思いもしなかったことだが、そう考えると、スッと心に収まる事が多々あった…

 そして、あの旅の中で自来也に言われた言葉が浮かぶ。

 

 

 「お前は木の葉の大事な若葉だからのぉ」

 

 

 それはまさしく、カカシがサスケ達に抱いている感情だ…。

 カカシは団子に目を落とし、小さく笑った。

 

 

 想いは…こうして受け継がれてゆくものなのか…

 

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