はたけのかかし 【カカシ×サスケ】   作:かなで☆

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其の十六  平穏と不穏

 次の日の朝、カカシは体を動かそうと少し早めに起きて、病室の中を歩いていた。

 昨日よりは動くようになったものの、まだふらつきと、息切れは取りきれない…

 「まいったな…」

 窓を開け、風に当たりながらつぶやいたその言葉に、

 「年だな」

 誰かの声が続いた。

 振り向き、そこにいた人物に驚く。

 「サスケ…」

 「よぉ…」

 サスケは少し気まずそうに目をそらす。

 そして部屋に一歩入り、ふらつく。

 「あ、おい!」

 自分もふらつきながら、慌ててサスケを支える。

 「お前だって…まだ…」

 サスケをベッドに座らせながら、カカシは戸惑っていた。

 昨日の様子では、しばらく口をきかないだろうと思っていたのだ。

 まさか、自分から来るとは…

 「で、どうした?」

 カカシはその真意が本当に分からず、ストレートにそう聞いた。

 我愛羅との一戦の後、サスケの不安定なその心は、どうにも読み切れない…

 サスケはしばらく黙っていたが、顔をそむけたまま本当に小さな声で言った。

 「……悪かった…」

 「ん?」

 何のことかわからずカカシは首をかしげる。

 「だから…その…昨日の…」

 「昨日のって…」

 …オレの手を払ったことを言ってるのか…?

 「お前…わざわざそれ言いに来たのか?」

 「悪いかよ…」

 気まずそうに顔を少し赤くするサスケの様子に、カカシは何か胸に溜まっていた霧が少し晴れるようだった。

 カカシはサスケの頭に手を乗せていつものように笑う。

 「気にしてないよ」

 そしてサスケの隣に座る。

 サスケはほっとした顔を見せるが、やはりその表情は重い。

 が、カカシはいくつもの言葉を飲み込んだ。

 イタチとの力の差を痛感しているサスケを、今下手に慰めるのは逆効果か…

 少し沈黙が落ち、

 『退院したら…』

 二人の声が重なった。

 お互いに顔を見合わせ、そして同じように小さく笑みを浮かべる。

 「サスケ、覚悟しておけよ、この間より難しい修行になるぞ」

 「ああ」

 まだ、オレを頼ってくれるんだな…サスケ…

 お前がオレを求めていられるように、もっと強くならなければいけないな…

 ふわり…と窓から入ってくる風がカーテンを揺らす。

 と、その時、部屋の前をサクラとナルトが通りかかった。

 「あれ?サスケ君、ここにいたの?」

 サクラが少し心配そうな顔で入ってくる。

 「もう、動いて大丈夫なの?」

 「ああ。大丈夫だ」

 サクラに対しての、そのやわらかい口調と表情にカカシはまた驚いた。

 まるで、サクラを気遣っているような雰囲気だ。

 まあでも、綱手から聞いた話ではサクラは毎日サスケに付き添っていたようだし…それをサスケも聞いたんだろう。

 サクラには心配をかけまいという気持ちがあるのかもしれない…

 「サクラちゃん、心配いらないってばよ!

 こいつはちょっとやそっとじゃくたばらないってばよ!」

 そう言いながら、ナルトはサスケの肩に手を置こうとする。

 が、その手を昨日のように、サスケが払った。

 「触るな!」

 それは、本気の苛立ち…

 一瞬で場の空気が張りつめるほどの…

 「サ…サスケ君?」

 サクラの怯えた声に、サスケがハッとする。

 「この…ウスラトンカチが…。

 怪我してるとこ触ろうとするんじゃねぇよ」

 徐々にいつものサスケに戻る。

 「な…なんだよ。

 おどかすんじゃねェってばよぉ!」

 ナルトも笑いを返し、またわざと触ろうとする。

 「ここが痛いのか…なるほど…チャンスだってばよ」

 にやりと笑う。

 「やめろ!この馬鹿が!」

 「やめなさい!ナルト!」

 それは本当に以前のやり取りそのもので、本当ならカカシにとって嬉しいはずだ…。

 しかし、先ほどのサスケの苛立ち…

 カカシは気づいていた。

 ほんの一瞬、サスケの目が写輪眼になったことを…

 そして思い出していた。

 イタチの襲撃の前の日にサスケに投げかけた問い…

 

 

 『何に苛立ってるんだ』

 

 

 サスケ…お前…ナルトに苛立ちを感じているのか…?

 一体なぜ…

 先ほど少し晴れた胸の霧が、再び濃く立ち込める。

 その不安をよそに、3人はしばらく騒ぎ立てていた。

 「サスケ、偉そうにしていられるのも今のうちだかんな!

 オレってばすんごい術覚えたんだってばよ!

 今度見せてやっからな」

 サスケの顔がまた一瞬冷たく変化する。

 「なぁに言ってんのよ、ナルト。

 どうせまた変なエロ忍術でしょ。

 サスケ君にかないっこないんだから、黙ってなさい!

 ねぇ、サスケ君」

 「あ?…ああ」

 サクラに答えるときにはすでにその冷たさは消え、やわらかい空気だ…

 なんだ、この感情の変わり方は…

 カカシは何とも言えない不安に襲われていた。

 どれが本当の感情だ…

 「サスケ…」

 「サスケ君」

 カカシの声がサクラにかき消される。

 「そろそろ部屋に戻ろ。

 もうすぐ朝食の時間でしょ」

 「そうだな」

 サスケはふらつきをこらえて、平静を装いスッと立ち上がる。

 それに気付いたのか、サクラがさっと肩を貸す。

 「私が連れて行ってあげる~」

 サスケの性格を把握しているからだろう。

 あくまでも自分が勝手に肩を貸す…といった雰囲気だ…

 サスケもそれに気付いているのか、素直に受け入れる。

 「サクラちゃぁん、そんなやつほっとけばいいんだってばよ」

 ただ一人気づかないナルトがふてくされ、

 「うっさい!ナルト!」

 サクラにかみつかれて、いじけながら部屋を出る。

 「サスケ君、行こ。

 カカシ先生、じゃぁね」

 「ああ。

 サスケ、あとで行くよ」

 サスケは一瞬カカシを見たが、スッと視線を外した。

 その瞳が暗く曇ったように見えた。

 しかし、サクラと言葉を交わしながら部屋を出て行くサスケの顔は、落ち着いている。

 …今サスケの心を留めているのはサクラか…

 無意識か意識的にか、献身的なサクラの気持ちに感謝する心が、作用しているのかもしれない……

 しばらくはサクラの存在が支えになりそうだな…

 

 

 ナルトとは…少し難しい時期に入りそうか…

 

 

 カカシの胸に妙な緊張が走った…

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