はたけのかかし 【カカシ×サスケ】   作:かなで☆

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其の十七  新たなる時代

 夕方…カカシはサクラが帰ってからサスケの部屋を訪れた。

 「入るぞ」

 ドアを開けると、声が聞こえてなかったのか、サスケはベッドに座りぼんやりと窓の外を眺めていた。

 その表情は、なんとも不思議な空気をまとっている…

 悲しそうな…辛そうな…でもどこかにほんの少しの苛立ちを含んでいるような…

 複雑な心がそのまま表れていた…

 「サスケ」

 サスケはその声に少しめんどくさそうに返す。

 「サクラが帰ったと思ったら、次はあんたかよ…」

 「ま、そう言うなよ」

 「何の用だ」

 別段、機嫌が悪そうではないが、心ここにあらず…という感じだ。

 「用というか…」

 その言葉の途中で看護師が二人部屋に入ってきた。

 「カカシさん、こちらに夕食お持ちするように聞きましたが、よろしいんですか?」

 「ええ。

 ここで食べますんで」

 食事が乗せられたトレーを受け取り、ベッドの端に座る。

 「何で…」

 「サスケ君も、しっかり食べてね」

 眉間にシワを寄せるサスケの前にも夕飯が置かれる。

 「では、また後で取りに来ますので」

 「よろしくお願いします」

 看護師を見送り、カカシは手を合わせてサスケを見る。

 サスケは顔をしかめたままカカシをにらんでいた。

 「自分の部屋で食えよ…」

 「いいじゃないの。

 ずっと一緒に食べてたんだから。

 ほら」

 促されて、サスケは仕方なく手を合わせる。

 「いただきます」

 「…いただきます…」

 カカシの声に小さい声で続く。

 懐かしいその感じに、二人の空気が以前の物に戻っていく…。

 「質素だな…」

 サスケが呟く。

 メニューはお粥に、煮物と温野菜…

 「ま、ずっと寝たきりだったからな、こういう物から少しずつ体を慣らさないとな」

 「…肉が食いたい…」

 ふてくされた顔で野菜をつつくサスケに、カカシは「ハハ」と笑いながら、ほっとする。

 先ほどナルトに見せたような苛立ちは感じられない…

 内心は色んな思いがあるだろうが、平静を取り戻してはいるようだな…

 「退院したら焼肉連れってってやるよ」

 言いながら煮物を口にする。

 「旨いぞ」

 サスケも食べるが、不満そうに顔を引きつらせる…

 「味がしない…。

 あんたが作った方がまだましだ…」

 「あのねぇ、素直にオレの料理が上手いって言えよ」

 その言葉にサスケは呆れたように鼻で笑った。

 「何だよ…」

 「別に」

 「何だよ!」

 「何でもねぇよ…

 ていうか、さっさと食べて部屋に帰れよ!

 邪魔だ!」

 「お前ねぇ…怪我より先に、その口の悪さを直せ!」

 「知るか!」

 

 

 バンッ!

 

 

 段々大きくなる二人のその声を断ち切るように、ドアが勢いよく開いた。

 驚き目を向けると、そこには顔をひきつらせた綱手が立っていた。

 「お前らぁぁ…」

 こめかみに血管が浮かび上がる…

 「静にせんかぁぁぁぁ!」

 腰に手を当てて仁王立ちで二人を睨む。

 サスケは耳を軽く押さえながらチラリと綱手を見る。

 「あんたが一番うるさい…」

 「こら…バカ、殺されるぞ」

 カカシの小さいその声を綱手はきっちりと拾う。

 「何だと…カカシ」

 その恐ろしい形相に、カカシは慌てて顔をそむけた。

 「いえ…」

 「ったく、いい大人が病院ででかい声出すんじゃないよ」

 …どっちが…

 カカシとサスケの心の声が重なる。

 綱手はフンッと息を吐き、付き人のシズネとともに病室に入ってくる。

 「サスケ、手を見せてみろ」

 箸をおき、サスケは素直に手を出す。

 綱手はチャクラをためた手をサスケの左手にかざし、しばし集中する。

 そして背中や胸、傷を負った箇所を続けて診てゆく。

 「うむ。まぁ大丈夫そうだな…。

 早くて1週間くらいで退院できるだろう」

 「まだそんなにかかるのかよ…」

 うんざりした様子だ。

 「我慢しな。

 今無理すると、もっと長引くぞ。

 …おまえもだ…」

 カカシをジトリとにらむ。

 「はい…」

 「わかったら、さっさと部屋に戻れ」

 カカシは、はぁ…と肩を落としながら立ち上がる。

 「これは私が」

 まだ少しふらつきのあるカカシから、シズネが食事のトレーを受け取った。

 「シズネ、甘やかすんじゃないよ」

 綱手は立ち上がり、カカシを軽く押しやる。

 「ほら、さっさと歩け。

 次はお前を診てやるから」

 「お手柔らかに…」

 この快活さは本と変わらないな…

 カカシはそんな事を思いながらサスケに振り向く。

 「じゃぁな、サスケ。

 ちゃんと全部…」

 「人の事はいいからさっさと行け!」

 言葉半ばに部屋まで追い立てられる。

 「ま、お前も1週間ってとこだな。

 今のうちにしっかり体を休めな」

 カカシの体を診終わった綱手は、そう言ってさっさと部屋を出て行った。

 「相変わらず…嵐みたいな人だな」

 つぶやき、先ほどのサスケとのことを思い出す。

 思っていたより落ち着いていたな…

 心配しすぎ…か…

 様子をよく見る必要はあるだろうが…

 「まずは、オレもあいつも早く体を戻さないとな…」

 カカシは手早く食事を済ませ、早めに就寝した。

 

 

 綱手が里に戻ってから1週間後の朝。

 カカシは退院が決まり、着替えを済ませてサスケの部屋を訪れていた。

 「サスケ、準備できたか?」

 サスケの退院は明日だが、今日は綱手の火影就任式が行われるため、外出許可を取りカカシと共に出席することになっている。

 「ああ」

 いつもの服に着替え、窓際に立つサスケ。

 体調はもうすっかりよさそうだ。

 あのあと、カカシは何度かサスケの部屋を訪れたが、結局サスケは我愛羅のことも、イタチのことを語らず、とりとめのない話をしたり、退院後の修行の話をしたり…

 お互いにあの日のことは触れずに過ごしていた。

 サクラは相変わらず毎日病室を訪れており、そのおかげかサスケが大きく心を乱すような事はない。

 だが、時折顔を見せるナルトに、やはり表情を変えることがあり、その精神状態はやや不安定なように思えた。

 それでも初日のようなことはなく、少しずつおさまってきいるようだった。

 「じゃぁ、行くぞ」

 並んで病室を出る。

 ふと、カカシは隣を歩くサスケを見て気付く。

 「お前…背、伸びたな」

 「そうか?」

 カカシは初めて会った頃のサスケの背丈を思い出していた。

 「これくらいだったろ…」

 と、自分の胸の下あたりに手を出す。

 「いや、そんなに小さくないだろ、これくらいはあった」

 サスケはその少し上をさす。

 「サバ読むなよ…」

 「読んでない…

 つぅか、あんたが縮んだんじゃないのか?」

 意地の悪い笑みを浮かべる。

 「だから、年寄り扱いするな…オレはまだ20代だぞ」

 「ギリギリだろ」

 「まだ数年は猶予がある」

 そんなたわいもない会話をしながら病院から出ると、中忍のイズモとコテツが二人を待っていた。

 「ご苦労さん」

 カカシのあげた手に、二人は頭を下げる。

 「ん?なんだ?」

 サスケがカカシを見上げる。

 「ああ、一応お前まだ入院中の患者だから、一人では出歩けないのよ。

 就任式の後、オレはすぐ任務だし、帰りは二人と一緒に病院に戻れ」

 「付添いなんていらねぇよ…」

 「まぁ、これも決まりだから」

 サスケはチッと舌打ちし、歩き出す。

 しかし本当のところ、この二人は、サスケが無理なことをせず病院に戻るようにカカシが手配したものだった。

 「悪いね、忙しいところ」

 カカシのその言葉に、イズモとコテツは「いえ」と笑顔で返し、サスケの後ろについた。

 道はにぎわい、就任会場のアカデミー前はすでに人だかりで、先に来ているはずのナルトとサクラを見つけることはできなかった。

 カカシたちは少し離れた場所で木の陰に入り、アカデミーの屋上に姿を現した綱手を見上げた。

 「サスケ…これから里はまた新しい時代を迎える」

 カカシは視線を綱手に向けたまま言葉を続ける。

 「変わるべきところを変え、良き物を残し、それを発展させ…。

 そうして未来を作り、守ってゆく」

 サスケは木に体を預け、足元を見つめている。

 「どんどん新たな命も産まれ、多くの人がこの里での未来に希望を抱き暮らしてゆく。

 オレはその未来に少しでも多くの光を残したいと、そう思っている。

 そのために仲間と切磋琢磨し己を磨き、共に戦い、任務をこなしこの里を守る。

 求める未来にたどり着くには時間がかかるかもしれない。

 でもな、歩み続ければ必ずたどり着ける」

 サスケの視線はわずかにカカシに向けられている。

 「おまえも、時間をかけて見つけろ。

 この里で、仲間と力を磨きあい、ともに任務に励み、自分のゆくべき未来をじっくりと探せ。

 そうすることで見える物もある。

 …焦るな」

 無言のままカカシを見つめるサスケの髪を、風がなびかせた。

 その表情は、どこか少し大人びた色を帯び始めていた…。

 ふと、会場内に歓声が湧き上がる。

 見上げると、綱手が火影帽を外し、力強い笑顔で里を、里の人々を見つめていた。

 そして、大きな声でその宣言を上げる。

 「今日から私が木の葉の里を治める…五代目火影だ!」

 ひときわ大きくなる歓声。

 サスケは里の新たな時代に何を感じ、何を求めるのか…

 その胸にはいくつもの不安や、様々な感情が渦巻いているだろう…

 それでも、その瞳はしっかりと新たな火影を見つめていた。

 

 

 

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