就任式が無事に終わり、カカシのもとには任務に向かうためほかのメンバーが集まってきていた。
「お前との任務は久しぶりだなぁ、カカシ」
ガイがスクワットをしながら嬉しそうに笑う。
「このメンバーは一年ぶりくらいか…」
タバコをふかしながら合流したのはアスマだ。
カカシは二人に「よろしく」と短く声をかけてサスケに向き直る。
「んじゃ、おとなしく病院に戻れよ」
「分かってる」
「戻るのは明後日の昼ごろだから、退院の時迎えに行けないが、お前うちで待ってろ。
帰ったら修行始めたいしな」
「…わかった」
「あ、明日の朝は病院で朝食は出ないから、ちゃんと食えよ」
「…わかった…」
「それから…」
「さっさと行け!」
心配でつい言葉が止まらないカカシに、サスケが怒鳴った。
「そんな怒んなくても…。
ま、とにかくちゃんと待ってろよ」
サスケの頭に手を置きニッと笑う。
「分かってる」
いつもの調子で答えたサスケの目が、何かを捕らえスッと動く。
カカシが振り向くと、サクラとナルトが走ってくる姿が見えた。
「サスケく~ん!」
「カカシ先生!」
その二人に目を向けながら、カカシはサスケに言った。
「オレがいない間、あいつらを頼むぞ。
お前がいないと何するかわからんからな…」
「…ああ…」
フッと口元に笑みを浮かべるサスケにカカシは少し安心した。
イタチとの一戦で負った傷は浅くはないだろうが、こうして少しずつ普段の生活にふれて、薄くしていくしかない…。
仲間の存在が助けとなればいいが…
そんな事を思いながら、駆け寄ってきた二人に笑顔を向ける。
「おう、お前ら。オレはこれから任務だから、賢くしてろよ」
「え~、先生だけずるいってばよ!
オレも連れてってくれってばよ!」
「何言ってんのよ!
このメンバーで行くような任務にあんたなんてつれて行ったら、全滅しかねないわよ」
「それは言えてるな」
上忍3人の声が重なる。
「ひどいってばよ…」
撃沈するナルト。
「それより…」
サクラがちらっとカカシに視線を送る。
そして少しその場から距離を取る。
「ん?」
そんなサクラに続くカカシ。
「どうした」
「あの…先生…早く帰ってきて…」
ちらりとサスケとナルトを見る
…サクラ…
そうだよな…
サスケをずっと見てきたお前だ…あいつのナルトへの態度に、違和感を感じてないわけがないよな…
「ああ。こんな時にすまないな…。
できればオレも今は…と思っていたんだがな…」
カカシは昨日病室に来た綱手とのやり取りを思い出していた。
「任務…ですか…」
翌日の退院に向け荷物を片付けていたカカシのもとに、綱手が任務命令のため
「ああ。さっそくで悪いがな。
要人警護…Bランク任務だが、お前を指名してきてる」
「指名…ですか…」
綱手が頷き、任務内容の書かれた紙をカカシに渡す。
カカシはさっと目を通し、顔をしかめる。
「覚えのない依頼人ですね」
「まぁ、お前は有名だからな。
どこかで過去の活躍を聞いたんだろう。
お前にはAランクSランク任務がどっさり待ってるから、断ろうかと思ったんだが、Sランク任務と同じ金額で交渉してきた。
よほどだろう。
それに、今は正直里の復興のために資金がいるからな。
…頼んだぞ」
そう言って部屋を出る綱手を、カカシは引き留めた。
「あの!
任務開始を一日待っていただけませんか?」
振り向きながらため息をつく綱手。
「サスケか?」
「はい。明後日ならサスケも退院ですし、Bランク任務ならうちの班で対応できます」
しかし綱手は渋い顔だ。
「だめだ。
お前の事情を聞き、先方はすでに2日予定を先延ばしにしている」
「では、サスケの退院を…」
「だめだ!
たとえ一日でも、退院日というのは理由があって決められとるんだぞ。
それでも、お前とサスケは早めに退院させてるくらいだ…」
「…………」
肩を落とすカカシに綱手はなだめるような声で言う。
「カカシ…任務は迅速さを要求される…。
依頼にすぐ答えなければ、特に今の木の葉は他国からの信用を失う。
これ以上はあちらも、こちらも待てない状況なんだ。
サスケが心配なのはわかるが、あいつは木の葉の忍だ」
カカシは「はい」と小さく答える。
「過保護に関わるな。
お前、あいつを早死にさせたいのか」
厳しい口調だが、綱手の言う事はもっともだった。
過保護な接し方をしていては、厳しいこの忍の世界で生き残るための力はつけられない…
「すみません」
今度はしっかりとした声で答える。
「任務、承知しました。
メンバーは、可能であるなら、ガイとアスマのスリーマンセルを希望します」
「いいだろう。二人ともちょうどあいてる。
伝えておく。
明日の午後には出てくれ」
「はい」
返事を聞き部屋を出る綱手。
カカシは依頼書を読み直し、いかに早く戻れるか…と、そんなことを考えていた。
ガイとアスマを指名したのもそのためだ。
あの二人が一緒なら、途中何かに巻き込まれたとしても迅速に対処し、二日あれば戻れる…
カカシは綱手に感謝していた。
Bランク任務に上忍3人というのはめったにないが、早く里に戻りたい…というカカシの気持ちを汲んでの許可だ。
カカシは昨夜のことを思い出しながら、ガイとアスマに目を向ける。
そして不安そうなサクラに向き直り、肩に手を置く。
「急いで戻ってくるよ。
それまで、サスケを頼んだぞ。
今のあいつには、お前が必要だ」
サクラは小さくうなずき、そのあとでもう一度強くうなずいた。
「わかった」
その心強い瞳に、カカシはサクラの成長を感じていた。
「おい、カカシ!
そろそろ行くぞ」
ガイが手をあげてカカシを呼ぶ。
「ああ」
そして、横並びで見送るサスケ達に笑顔を向ける。
「お前らちゃんと仲良く待ってろよ」
「うん」
「お土産よろしくだってばよ」
「はいはい。
じゃぁな、サスケ」
「ああ」
何か少し心がすっきりしたのか、サスケは穏やかな顔で笑った。
サクラも、ナルトも…。
久しぶりに笑顔がそろった。
しかし、3人がこうして並び、笑顔を見せたのはこれが最後となった…。
…カチリ…
静かに音を立てて、何かが動き出した…