はたけのかかし 【カカシ×サスケ】   作:かなで☆

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其の三   唯一の技

 あれから2週間が経ち、サスケの体術はかなりの上達を見せていた。

 数日前から始めた写輪眼での『見きり』の修行も、順調だ。

 「そろそろか」

 その視線の先には、影分身(カカシ)を追いつめてゆくサスケの姿。

 写輪眼を光らせ、両手両足に均一のチャクラを保てるようコントロールしながら、攻撃を繰り出してゆく。

 ほどなくして、

 「獅子連弾!」

 サスケの放った連続体術が、影分身(カカシ)を捉え、勝負がついた。

 

 力を押さえているとはいえ、この短期間の修行でオレの影分身を倒すとはね…

 

 「教え甲斐があるよ。ほんとに」

 その表情はどこか誇らしげだ。

 サスケは、カカシの影分身を倒したことに自分でも驚き、しばらく立ち尽くしていたが、ややあって実感をつかんだのか、バッ…と勢いよくカカシを見た。

 どうだ!と言わんばかりだ。

 「嬉しそうな顔しちゃって」

 

 でも、まぁ間に合いそうだな。

 

 さっと地を蹴り、サスケのもとに降り立つ。

 「サスケ、いよいよ本番だ。術を教える。よく見てろよ」

 そう言うと、カカシは右の手のひらを地面に向かって広げ、手首に左手を添え、前かがみになり集中する。

 ふわり…と、風が…カカシの足元から吹き上がり、砂埃を巻き上げる。

 「はぁぁぁっ!」

 「っつ!」

 カカシの体から膨大なチャクラが溢れだし、そのすさまじさにサスケの全身に鳥肌が立った。

 そのチャクラは徐々に右手に集中されてゆき、

 …チ…チチ…と音を立て始め、目視できるほどに膨れ上がる。

 「チャクラが目に見えるほどに…」

 サスケは驚愕した。

 これほどまでのチャクラを練り、右手に集中させるには、かなりのチャクラコントロールが必要だ。

 「チャクラコントロールの修行はこのため…」

 「ああそうだ」

 カカシの右手でバチバチと音を立ててはじけながらも、チャクラがそこにとどまっている。

 「だが、それだけじゃない!」

 そのチャクラを保ったまま、カカシは地を蹴った。

 あまりの速さに、一瞬サスケはその姿を見失う。

 尋常ならぬ量のチャクラがチチチチチチチチ…と、まるで鳥の鳴き声のように音をたてる。

 「はっ!」

 カカシは高く飛び上がり、目の前の大きな岩に右手を突き立てる。

 「雷切!」

 キィィィィィィィン!

 甲高い音を立てて、術が唸りを上げた。

 

 ごばぁぁぁぁ!

 

 派手な音を立てて岩が粉砕し、そのすぐ後、すさまじい衝撃があたりを襲う。

 「くっ…」

 爆風とともに砂埃が巻き上がり、サスケは両腕で目を覆った。

 チャクラを足に集中させて踏んばらなければ、簡単に吹き飛ばされそうだ。

 「なんて威力だ」

 しばらくして風がおさまり、消えゆく砂埃の中から現れたカカシが言った。

 「この術をお前に教える」

 ゴクリとのどを鳴らすサスケ。

 「雷切…本来の術名は『千鳥』。放出されたチャクラから生まれる音が、鳥の鳴き声に聞こえる事からその名がついた。俺の唯一のオリジナルだ。この術はいわゆるただの突き。だが、究極の突きと言えるだろう。生み出した膨大なチャクラを腕一本に集中させ、さらに、長距離の助走を加えることでこの上ないスピードと破壊力を持たせた、高速の突き…」

 「高速の…突き」

 「それに耐えうる体と、目で捉える事のできないスピードを身に着けるため、リー君の体術をベースに修行してきた」

 「肉体の活性化か」

 カカシは頷く。

 「そして、膨大なチャクラを保つためのチャクラコントロール。

 それらがそろって初めて、この術は発動する。

 だが、それ以上に、この術において最も重要な要素がある。それは、写輪眼だ」

 「写輪眼が…」

 「ああ。この術は破壊力抜群なうえに、そのスピードにより、一瞬で多くの敵を連続して捕らえることができる。

 しかし、自分自身の移動スピードが速すぎて、相手のカウンターを見きれない。普通はな。だが」

 「写輪眼があれば、見きれる」

 「そうだ。この術を使えるのは、写輪眼を持つオレとお前だけだ」

 「オレたちだけ…」

 サスケは自分の手のひらを見つめ、少し嬉しそうに口元を緩めた。

 「チャクラ性質がオレと似ているお前なら、おそらく習得できるだろう。だが、そう簡単にはいかないぞ。会得難易度A以上の術だからな」

 サスケは、パシィッとこぶしを(てのひら)にぶつけ、

 「千鳥か…。やってやる!」

 瞳に決意をたたえて、カカシが破壊しそのほとんどが吹き飛んだ岩を見つめた。

 「あ~、しかし、やる気になってるところ悪いんだが、この術の修行は明日からだ」

 「すぐにやる!やらせてくれ!」

 「だめだ。この術にはかなりのチャクラが必要だ。お前はさっきの俺の影分身との戦いでチャクラを消耗しきってる。そんな状態でこの術の修行をしても、まったくどうにもならんよ」

 「くそっ」

 「ま、もう時間も時間だしね」

 いつの間にか、空は赤く染まりだしていた。

 「帰るぞ」

 カカシはポンッとサスケの頭に手を乗せる。

 修行を始めてから幾度となくカカシがそうするものだから、サスケはそれを拒むのが面倒になり、今ではされるがままだ。

 幸いにも修行に集中しているせいか、初日のようにサスケが闇にとらわれそうになることも、今のところはない。

 

 いい傾向か…

 

 そんなことを考えながら、帰り支度をする。

 そして、ふいに思いだした。

 「あ…」

 「なんだ?」

 「いや、今日修行が終わったら火影室に来るように、三代目に呼ばれてたんだった…。ちょっと行ってくる」

 「わかった。俺は先に行ってるぜ」

 「ん?」

 どこに…?

 という顔でサスケを振り返る。

 サスケは荷物を手に立ち上がり、 

 「風呂。遅いようなら先に入るからな」

 そう言って歩き出した。

 

 はじめはあんなに嫌がってたのに。すっかり当たり前のように…

 こいつ。ほんと可愛いのな。

 

 サスケの背を見つめながら、カカシはにやけた自分の口元が、マスクで隠れていることに感謝した。

 「すぐに行くから待ってろ」

 その言葉に、サスケは足を止め、顔をしかめながら振り向いた。

 「ほんとだろうな」

そして、腰に手を当てていつもの笑みを浮かべる。

 「あんたはいつも遅いからな…」

 「大丈夫だって。じゃぁな」

 さっと姿を消すカカシ。

 再び歩き出したサスケは、自分でも気づかぬうちにまた口元に小さく笑みを浮かべていた。

 

 

 サスケと別れたカカシは、急ぎ火影室へと向かう。

 辺りは徐々に暗くなり始めていた。

 「火影様、はたけカカシです」

 火影室の前につき、ドアをノックする。

 「うむ。入れ」

 「失礼します」

 中に入ると、三代目火影『猿飛 ヒルゼン』が真剣な面持ちで座っていた。

 カカシが後ろ手にドアを閉めるのを確認してから、ヒルゼンは口を開く。

 「どうだ。サスケは」

 問われたカカシの瞳が鋭く光った。

 

 …修行の経過…ではないか…

 三代目が聞きたいのは…

 

 大蛇丸の呪印…

 

 カカシは静かに答える。

 「今のところ封印の力で抑え込めています。修行中も暴走する様子は見られていません」

 「そうか…」

 その言葉には安堵の色が浮かんでいる。

 サスケを心底心配しているのだ。

 ヒルゼンはスッと立ち上がり、大きな窓から里を見下ろす。

 「呪印を封印した『封邪法印』(ふうじゃほういん)は、本人の強い意志を(いしづえ)とする術じゃったな…」

 「はい。サスケにもそれは重々話してあります」

 

 もしお前が己の力を信じず、その意思が揺らぐようなことがあれば、呪印は再び暴れだす…

 

 封印を施したとき、カカシはサスケにそう話した。

 「あいつは、ちゃんと分かっているはずです」

 そうであってほしいとの願いを込めたその言葉に、ヒルゼンは「そうだな」と答えて振り返る。

 「カカシよ、サスケを頼む。お主なら、あいつを救える。そう信じとるぞ」

 「はい」

 「うむ」

 切れの良いカカシの返事に安心したように微笑み、ヒルゼンは再び里を見やり、そして空を見上げた。

 「今宵は満月だ……」

 カカシも空を見上げる。

 すっかり暗くなった空に、どこか冷たい光を帯びた大きな満月が輝いていた。

 「あの日によく似ておる…」

 サスケの兄『うちは イタチ』が、一族を滅ぼしたあの日の月と…

 「気を付けてやってくれ」

 サスケを想い、懇願の色を浮かべたその瞳をまっすぐに受け止め、カカシは力強く返す。

 「分かりました」

 そして頭を下げ、火影室を後にする。

 …急ごう…

 カカシはサスケのもとへと急いだ。

 

 

 いつも行く銭湯に近づき、カカシはその前に立つサスケを目に捉えた。

 賑やかな雑踏の中、静かに佇むサスケ…。

 まるでその一か所だけが別の空間に見える。

 その身には、どこか冷たく研ぎ澄まされた空気をまとっているように感じ、カカシは一瞬息をのんだ。

 サスケのその視線の先には、夜空に浮かぶ…月…

 

 …まずい!

 

 「サスケっ!」

 駆け寄り、肩をつかんで振り向かせる。

 サスケは目を見開き、驚いた表情でカカシを見つめ、

 「あ…」

 小さく口を開き、言った。

 「雨でも降るんじゃないか?」

 「え?」

 「あんたが待ち合わせに慌てて走ってくるなんてな」

 皮肉を放ったサスケの瞳は、いつもの黒い瞳だ。

 カカシはそれを見て、珍しく安堵をあらわして息を吐いた。

 

 …心配しすぎか…

 

 「息切れするほどとなると、雪かもな」

 そう皮肉を重ねるサスケに、「はは」と乾いた笑いを返す。

 「雪なんて、いくらでも降ればいいさ」

 

 お前が無事ならな…

 

 そんなカカシの気持ちに気付くはずもないサスケは眉間にしわを寄せる。

 「こんな時期に降るわけないだろ」

 「や、まぁそうだけど…って、お前が言ったんでしょうが」

 「本気で返すやつがあるかよ」

 「おまえなぁ…。まぁ、いい。そんなことより、さっさと風呂入って飯行くぞ。腹も減ったしな…」

 「ああ。そうだな」

 

 

 二人は手早く風呂を済ませ、定食屋で夕飯を食べ、帰宅した。

 家につくと、疲れがたまってきていたのか、サスケは「もう寝る」と、ベッド代わりに使っているソファにドサッと倒れ込み、すぐに眠りについた…。

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