はたけのかかし 【カカシ×サスケ】   作:かなで☆

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其の六   忍者は裏の裏を読め

 …大蛇丸め…なぜ急に動き出したんだ

 走り去る大蛇丸の後を追い、カカシは路地の角にさしかかる。

 そして、ハッとする。 

 …しまった!

 この先は確か…行き止まり…!

 ザッ…と音を立てて止まるが、勢いは止まらず、カカシは角を曲がり切っていた。

 行き止まりの壁の前…大蛇丸が静かにたたずんでいる。

 そしてその後ろに、サスケが倒れていた。

 「サスケ!」

 カカシは額あてを上げ、写輪眼を開き、一気にチャクラを右手に練り上げる。

 チチチチチチ…

 かつてこれほどまでに早く雷切を発動させたことはない…

 驚異のスピードだ…

 さすがの大蛇丸も、一瞬身じろぐ。

 「サスケは渡さない!」

 …あの時…サスケの呪印封印の場に大蛇丸が現れた時、オレの体はなかなか動かなかった…

 恐れ…すくんでいたんだ…

 でも、もう恐れない!

 地を蹴り駆ける!

 そして右手を振り上げた!

 その時…目の前の大蛇丸が声を上げた。

 「ま!待つんだなコレ!カカシ先生!」

 「………え?」

 勢いが止まらないものの、反射的に術の軌道を変える。

 

 

 ごがぁぁ!

 

 

 その雷切は、後ろの壁を吹き飛ばし、がれきが飛び交う。

 カカシは戸惑いながらもサスケを抱えて飛びすさる。

 そして着地してサスケを見やる。

 「サスケ…大丈夫か…」

 と、次の瞬間、背後にただならぬ気配を感じて振り返る。

 路地の向こうから飛び込んでくる影が一つ。

 「チェストォォォォォォ!」

 「ガ!ガイ!」

 そのすさまじい蹴りの矛先は…

 「オ…オレ?」

 さっとかわし、思わず蹴りを返すカカシ…

 「どわぁっ!」

 それは見事に決まり、いまだ巻き上がる砂ぼこりの中へとガイが消える。

 「な…なんだ…」

 しだいに消えてゆく砂煙の中…現れたのは、完全に気を失ったガイと、恐怖におののきプルプルと震える大蛇丸…

 「え?」

 混乱するカカシの目の前で、急に大蛇丸の体がボンっと音を立てて消える。

 「分身変化!」

 次の瞬間…

 

 

 ……チリン……

 

 

 鈴の音がした…

 カカシが視線を落とすと、サスケが抱えられたまま、鈴を手に得意げな表情を浮かべていた。

 「サ…サスケ…」 

 呆然としながらサスケを離す。

 軽く砂を払いながら、サスケは改めてカカシに鈴を見せる。

 「大丈夫か…じゃねぇよ。

 あんたこそ大丈夫かよ。

 いきなり写輪眼に雷切……壁ぶっ壊して、その上あんたのライバルとやらはあのざまだ。

 どんだけルール破るんだよ」

 そう言って笑う…

 その笑顔は今までに見たことがないほど、素直な…屈託のない…本当に年相応の…笑顔…

 カカシはそんなサスケを見て、やっと正気に戻ったが、鈴のことなんてどうでもよくなっていた。

 …大蛇丸ではなかった…

 …サスケは…無事だ…

 知らぬ間に、サスケに腕を伸ばしていた…

 そして、いまだ笑いながら「それでも上忍かよ」というサスケの言葉が終わるより早く、その体を抱きしめていた…

 「な!やめろ!気持ち悪い!」

 サスケが驚き、その腕を振りほどこうとするが、カカシは離さなかった。

 …サスケを失うかもしれない…そう思った…

 それがどれほど恐ろしいことか、改めて身に染みた…

 「離せ!」

 カカシの胸を押し返す。

 その時、わずかにカカシの体が震えていることに、サスケは気づいた。

 「な…なんだよ…大げさだな…」

 サスケの手から力が抜けた…。

 とその時、

 「おいおい。ずいぶん派手にやったなぁ」

 突然路地の向こうから飛んできた声に、カカシはハッとして声のほうを見やる。

 そこにいたのは、シカマルだった。

 「サスケ、うまくいったのか?」

 腕を頭の後ろに組みながら、こちらに歩み寄ってくる。

 サスケは緩んだカカシの腕からするりと抜け、鈴をシカマルに見せた。

 「ああ。あんたの作戦通りだ」

 「そりゃよかった」

 「よくないんだなコレ!」

 その後ろから、怒り声をあげ、木の葉丸が顔を出す。

 「分身じゃなかったら、死んでたんだなコレ!」

 その言葉に、サスケは「フッ」といつものように軽く笑う。

 「だから、お前に頼んだんだろ。

 本当は影分身がよかったんだがな」

 「影分身は…まだ練習中なんだなコレ…

 ていうか!贅沢言うなコレ!

 分身を変化させるのだって大変なんなぞコレ!」

 「……コレコレうるさいな…お前…」

 「なっ!

 お礼も言わずにその言いぐさは何だコレ!」

 「……うざい…」

 「何だとコレ~!」

 騒ぎ立てる木の葉丸を見てシカマルが笑う。

 「ハハ…確かにうぜぇな」

 「シカマル兄ちゃんまで…

 ひどいんだなコレ!」

 そのやり取りを呆然と見つめるカカシ。

 「どうやら」 

 不意に後ろから声がした。

 「うまくはめられたようだな…俺たちは」

 「ガイ…」

 カカシはサスケを見つめたままガイに返す。

 「そのようだな」

 ようやく笑みをこぼす。

 …サスケのやつ、この広い里で、一人で探し回るのは無謀だと思い、知能派のシカマルに相談に行ったのか…

 そしておそらくシカマルはこう言ったんだろう。

 『探すのではなく、おびき寄せるほうが効率的だ』と。

 そのためにサスケは、木の葉丸を使って、オレが確実にはまる罠を仕掛けた…

 それが大蛇丸だ。

 まず自分が大蛇丸に変化して見本を見せ、それを手本に木の葉丸が何体か分身を作り、オレと接触したものがうまく路地裏に誘い込む…。 

 そういう作戦か…

 大蛇丸のことを知らない木の葉丸だが、ナルトから教わった「お色気の術」をマスターするために、普段から分身変化の術をかなり訓練しているのだろう…見事な変化だった…

 とはいえ、落ち着いてチャクラを読めば、大蛇丸でないことぐらいすぐに分かったはずだが…

 サスケは自分が気を失って倒れているふりをして、オレの動揺を誘い、その上ガイを使っての不意打ち…

 オレにそのすきを与えなかった…

 …まったく…お前ってやつは…

 カカシは驚いていた。

 その内容もだが、何よりサスケが誰かに協力を頼むとは、思いもしなかったのだ。

 しかも、木の葉丸にまで…

 …オレは今朝「今回はお前一人だからな」と、あいつにそう言った。

 サスケはオレのその思い込みを利用したのか…

 …忍者は裏の裏を読め…

 お前たちに、オレが教えてきたことなのにな…

 成長したな…

 それに…お前はオレが思っている以上に周りを…仲間のことを、ちゃんと見ていたんだな…

 そして自分から必要とした…

 そのうえ、自分を呪印で苦しめている大蛇丸まで利用して…

 そしてガイには…

 「カカシに化けた何者かが里に侵入している…。

 あのあとすぐ、シカマルがそう言ってきた。

 オレにだけ伝えるようにお前に言われた…とな…。

 お前の様子もおかしかったし…さっきはサスケを捕まえてるように見えてなぁ…

 まんまとはめられたよ。

しかし、下忍とアカデミー生に騙されるとは…

 大蛇丸の事があるとは言え、俺達はもう少し冷静にならねばならんな…」

 「ああ。

 いい教訓になったよ…」

 してやられた二人だが、若手の成長を里の上忍として嬉しく思ったのか、3人を見る その表情はにこやかだ。

 「ガイ…悪かったな、巻き込んで……」

 「何も言うな」

 カカシの言葉を遮る。

 「オレとお前はライバルであると同時に、親友だ。

 あの熱い抱擁を見ればすべてわかる」

 …見られてたのか…ていうか、あれで何か分かったのか…?

 そんな疑問を抱きながら、カカシはかなりの恥ずかしさに襲われる。

 そんなカカシに、ガイはにっと笑った。

 「説明は不要だ」

 「ガイ…」

 「いや、説明はしてもらうぞ」

 その声は上…路地横の家の屋根から降り注いできた。

 カカシとガイが凍りつく。

 二人とも、そちらを見なくても、声の主が誰なのかを悟っていた…

 そして、ガイがプルプル震えながら口を開いた。

 「さ…三代目…」

 それだけではない、この気配…

 「暗部!」

 シカマルが驚愕する。

 今上層部は大蛇丸の件で厳戒体制中だ…

 そんな中、里内でカカシの雷切が炸裂したのだ、火影としてはしかるべき対処だろう…

 「これはどういう事だ」

 「あ…いや…あの」

 しどろもどろのカカシ…

 「三代目!」

 ガイが、バッ…と、ヒルゼンを見上げ、慌ててフォローに入る。

 「これは…あのぉ…何と言いますか、カカシとサスケの熱い青春がですね~…爆発したと言いますか…」

 「ほぉ…。

 随分な爆発だなぁ…カカシよ…」

 「あ、ハハ…恐縮です…」

 大人二人が怒られている様子を、サスケ達は面白そうに見ている。

 そんなサスケをちらりと見て、ヒルゼンはカカシに言った。

 「大丈夫なようだな」

 カカシは穏やかな顔で答える。

 「はい」

 ヒルゼンは「ふむ」と頷き、その場に背をむける。

 「それは、お前たちで直すんだぞ。

 それから、後で説明に来い。わかったな」

  ガイとカカシはがっくりと肩を落とし、声をそろえた。

 『はい…』

 「いい気味なんだなコレ!」

 カカシの雷切を根に持っているのか、腕を組み、言い放つ木の葉丸。

 ヒルゼンはちらりとそちらに目を向け、厳しい口調で言った。

 「シカマル!サスケ!木の葉丸!

 お前たちもだぞ」

 「はぁ?冗談じゃねぇよ…」

 「くっ」

 「なんでなんだなこれぇぇぇぇ!」

 その叫びに答えることなく、ヒルゼンと暗部はさっと姿を消した。

 「ハハハハハハ!

 子供たちよ、これが自業自得、因果応報というやつだぁ!

 勉強になっただろう!

 さぁ!力を合わせてともに青春の汗を流そうではないか!

 直すぞー!壁を!フルパワーだー!」

 ガイの雄叫びが響く中、大きくため息をついてシカマルがサスケをにらむ。

 「サスケェ、とんだとばっちりだぜ…

 くそめんどくせぇことに巻き込みやがって…」

 「そうなんだなコレ!

 どう責任とってくれるんだなコレ!」

 「知るか!文句はカカシに言え!」

 言われて、ジトリとカカシに視線を刺す二人。

 「う…わ…わかった…わかったよ…

 昼飯おごるから」

 「ま、それで手を打つか」

 「しょうがないんだな、コレ」

 はぁ…と今度はカカシがため息をついた。

 そして、ぶつぶつと文句を言っているサスケをちらりと見る。

 「サスケ…修行は明日だからな」

 「な!なんでそうなるんだ!」

 「なんでって…」

 壊れた壁を見ながら、カカシは疲れた声で言った。

 「昼までに終わんないでしょ…これ…」

 「………………くっ…」

 そんな二人を見て、ガイがまた叫んだ。

 「青春だぁぁぁ!」

 その声が里にこだましていった…。

 

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