「というわけで、今度のライブの裏方の手伝いに呼ばれたんだ」
「なんか愉快な事になってんな…」
今日のアイドルの客は、天ヶ瀬冬馬……元961プロダクションの筆頭アイドルグループ、Jupiterのリーダーで、今は961を抜けてフリーアイドルとして活動している
961を抜けたのは社長の765プロに対する妨害に付いて行きたくなくなった……だっけか
フリーになった今でも、961の圧力は特にないようで、それなりのアイドル活動をしている
まぁ、さすがに収入はがた落ちしてて、食費の節約のためにウチで飯を食い、夕食用に弁当まで頼まれるが
「つーか、それだったらそのままアイドルになっちまえば良いじゃねーか
少なくとも才能に関しては、そこらのアイドルも目じゃねーだろうし……いややっぱなるな、他のアイドル連中が心折れてモチベーション無くしたら、こっちまで張り合い無くなる」
「いや、言い過ぎだろ ただ相手の曲を歌って踊って完成度高くしてるだけだってのに」
「特に厳しい練習積んだわけでもないのにそんなことされたら、自信が木端微塵になんだろうが!」
そうか? そんなんで自信無くすんだったら、そもそもアイドルの才能無いだけだろうし
「ま、そんなことはどうでも良いか」
「どうでも良いってお前……」
実際アイドルになるわけでもないし、関係ないことだろ?
「んで、Jupiterはその日仕事あんのか?」
「いや、まぁ精々レッスンと営業くらいだが……なんだ、チケットなら買わねーぞ?」
「俺は販売までは請け負ってねーよ
仕事の報酬の一部前払いって事で、チケット三枚貰ったけど、渡す相手が居ないからな
つーわけでやる、変装くらいはしておけよ」
「………まぁ、いらねーっつーんなら貰っとくけどよ」
家族もいねーし渡すような友達もいねーしな、だったらこいつらに渡したほうがまだ有意義だろ
「ん、これがチケットだ
で、こっちがミルフィーユカツ定食な、ソースとかはお好みで……ってのは言うまでも無いか」
「おう、サンキュー」
今日の定食はミルフィーユカツ定食
数枚重ねた豚バラ肉を揚げたミルフィーユカツ、ザクザクとした衣と脂の多めなバラ肉が調和し、肉の旨味、脂の甘みが食欲をどこまでも掻き立てる
添えるのはメジャーなキャベツの千切り、限りなく細く切ったそれは、ふんわりと、しかしシャキシャキした軽い食感が、脂でくどくなった口内をリセットする
漬物は茄子の浅漬けだ、口当たりはサッパリ、リンゴ酢を使って漬けており、酢のツンとした臭いを抑えつつ、マイルドな味わいを演出する
味噌汁はじゃがいもの味噌汁、途中でじゃがいもが崩れて味噌汁に溶けないよう、低温で加熱し、醤油を少し垂らしている
米は……うん、いつもどおり普通のだ いや、味については土鍋で炊いてるし間違いないが
「あ~…うめぇ……なんだこれ、いつも思うけど、なんか特別な事でもしてんのか?」
特別っつってもな………
「俺の技術を適当に使ってるだけだけど?」
「俺もそれなりに自信はあんだけど、料理に関しては追いつける気がしねぇな」
「こちとら本業だからな……いや半分以上趣味だが」
「趣味って……まぁ助かってるから良いけどよ、そうだ、今日も弁当頼むぜ」
「おう、カツでも詰め込んどいてやるよ」
「………文句は言えねぇけどよ」
冗談だ、カツにはしねぇよ
「ま、そうだな、牛焼肉弁当で良いか、器は洗って返せよ」
「おう、サンキューな、牛焼肉……楽しみだぜ」
「今日はこの後もレッスンあんのか?」
「軽くならあるぜ、今日は軽めのレッスンだな」
「んじゃ、二人の分も作っとくから持ってけ、どうせ翔太と北斗も参加だろ?」
「おう、助かる、アイツ等も喜ぶぜ」
さぁてと、少し気合入れて作りますかね