なんかstay nightっぽいネ!と思いつつ一話目を投稿。巻き込まれる系のスタートだとどうしてもstay nightの始まりかたみたいになってしまうのぅ。
突然ではあるが、麻来留 調は最近学校に通っていない。
あくまで最近だ。ここのところ急に自分の体質が強烈になっているせいで行こうとしても道中で挫折する。
おかげでここ十数日は知り合いのツテを使って授業内容を覚える以外にやることがない。しかもそのペンを握るのさえ体質で一苦労という始末だ。
「ってかここ最近雨続きすぎだよなぁ……」
なんでも気象観測の機材が壊れたとかなんとかでアルマーレはこのところ天気予報がない。
そんな大事なもの、壊すような場所に設置するかねぇ、と思いつつも外を見てまた一憂。外の雨はもうここが沈むんじゃないかと思ってしまうくらいの期間雨に晒されている。
そんな風に思っていると、不意に電話が鳴り始めた。誰だよ、と思いながらゴムカバーのついた受話器を取ると、そこから聞きなれた声が聞こえてくる。
『もしもーし、しらくん起きてるー?』
「起きてなきゃ電話に出るかよ」
『それもそっか。兄貴から今月の分のお米とお金貰ってるから来てねー』
「は?おいコラ、俺は体質のせいでロクに外出できない状態だぞ!?だのに態々学校行くのと同じ距離歩かされるとか冗談だろ!?」
『えー、だって生憎の天気だしぃ?私か弱い女の子だしぃ?』
「お前がか弱い女の子なら世界の女の子の九分九厘病院暮らしだストロング!」
『ダメー、聞きませーん。餓死したくなかったらさっさと来てねー』
「ふざけんな筋肉女!だいたい体調不良って言って休んでるのに米抱えて長距離うろちょろするバカがいるか!?わかったらおま━━━き、切りやがった……」
マジかよ……と軽く絶望しながら荒れた手を床に着ける。暫くすると落ち着いたのか、調は軽く身支度を整えると、観念したように家から出ていった。
◆◇◆
途中、ゴム装備を完備しながらも時折バチバチと静電気に当てられた調はそれでも仕方がないと自分に言い聞かせながら目的の場所、瀬川と書かれた表札の家にやって来た。
「おいアリア、いるんだろ」
ゴーン、とやけに厳かな音のなるインターフォンを鳴らして口早に喋る。暫くするとマイペースな声音で『せっかちは嫌われるよ~?』という声が聞こえてきた。
「うるっせ、誰が呼んだと思ってる」
『それもそうだよね~、まぁ上がりなよ』
促され、カチッと鍵の開く音がしたのでそれに従って門を開ける。ご丁寧に絶縁体でコーティングされたそれは特に苦もなく開かれた。
その先には栗色の紙と藍色の眼を持つ、スラリとした長身の少女が一人、ニッコリと笑って出迎えてきた。
「遠路はるばるご苦労しらくん」
「本当に苦労した。で、どこにあんの」
「地下の倉庫。疲れるだろーけどがんばれ男の子」
「くたばれ筋肉」
負け惜しみじみているが、調程度ではあの女、瀬川 アリアに挑むということは返り討ちという見え透いた未来が待っている。だから挑まない。
「あ、そーだしらくん」
「あん?」
「地下倉庫、今ホームステイしてる子がぐっすりしてるから起こさないでね」
「は?ホームステイ?聞いてないぞ」
「言ってないからね」
なんだそりゃ……と内心で呟く。相変わらずアリアの考えていることは読めん、と思いつつ寝ているという人をなるべく起こさないように足音を殺して階段を降りる。
暫く降りていると、徐々に小さな声が耳に入ってくる。なにを言っているのかは残念ながらわからないが、抑揚の付け方やイントネーションから女性だとわかる。
なんだ、起きていたのか、そう思うと気持ち足音が大きくなった。音を鳴らしながら少し上がった歩行速度で歩くと、四歩もしないうちに声を掛けられた。
「誰かしら」
出るか出ないか、何故かその二つの選択肢が浮かんだが、そもそも自分はなにもやましい気持ちがあって来たわけでもなければ盗みに入り込んだわけでもない。正当な理由でここに来ていることを思い出してそのまま階段を降りきって倉庫に足を踏み入れ━━━
「━━━!?」
途端、何故か足が止まった。別に金縛りにあったわけでも不審なものを見つけたわけでもない。なにかこの先に足を勝手に踏み入れるのはいけない、そんな気配に晒されたのだ。
「……なるほど、モデルとしての最低限はクリアね」
モデルとはなんだ、と言おうとしても下手なことを言えない。今目の前にいる不思議な少女はおよそ人間とは思えない、形容のできない感覚を有している。
「顔は━━━人並みより少し上下するくらいかしら。出来すぎても不出来すぎても困るわ。文句なしの合格ね」
ペタ、ペタ、と衣服に触り、頬に触れた瞬間、互いの身体の間で静電気が発生した。
「っ━━━!」
「痛っ……なるほど、特異体質。これは筆が乗るわ」
筆が乗る?もしかしてこの少女は作家かなにかか?だとすればこの浮世離れした感覚や人とは違うなにかを感じ取っても不思議ではないか?
「よし、観察完了……これで少なくとも九割は掴んだ。あとは会話ね。貴方、誰?ここに来た理由は?」
少女が質問してきた瞬間、何故か横一文字で固まっていた口が動くようになっていた。そうなって喋ることを許されたのなら、まずは問われたことと自分の身を照明するのが先決か。
「ぁ……、麻来留 調。ここの家のアリアに米を持ってくように言われたから来た」
「調ね。嘘はついていないようで結構。私は……そうね、
日本の観光地の冬木っていうところに言峰教会っていう教会があるのよ、知ってた?と聞いてくるが、日系ロシア人とはいえ知らないものは知らない。調はハッキリと首を横に振る。
「っと、そういえば調はここのお米に用があるのだったわ。どうぞ、邪魔してしまってごめんなさいね」
「あ、いや……」
反応に困る、といった風にぎこちなく頷く。米俵を持ち上げて重っ……と呟きつつ倉庫から出る。地下から離れる階段を昇っていると、清奈も上に用があるのか、はたまた下に用がなくなったのか調の後を着いてくる。
「貴方面白いわ。あの子も楽しいマスターだけれど……そうね、調を主人公にした物語が書きたくなってきちゃった」
「楽しい……?俺が?」
「ええ。貴方、
そう言うと清奈はわざと道を遮るように調の前に立つ。調もそれに合わせて米俵を置く。
「夜のこの街は多分、今日辺りからとても物騒になるわ。主人公のモデルの貴方にはできるだけ死んでほしくないし、この家の人達を悲しませるのもよくないわ……だから、
「……どういうことだ?」
「言葉の通りよ。強いて例を挙げるなら、銃刀法違反の人が沢山出てくるとか?兎も角、夜に危険な目に遭ったら私を頼るといいわ。きっと力になってあげられるから」
あまり深い意味はわからなかったが、記憶の片隅にでも留めておこう、清奈はそう思うと再び俵を持ち上げた。
◆◇◆
「あっ……ぅ、ご……」
「赦せ、とは言わない。これもマスターの命だ」
夕方、人通りの少ない路地にこの世のものとは思えない光景があった。
数人の死骸が転がっている。一人は火達磨、一人は凍り付いた上で造花の如くバラバラに、もう一人はまるで内臓が身体の内側から弾け飛んだかのような傷痕、そして一人はなにもない空間で首を吊り、また隆起したコンクリートに貫かれている者もいるし、今しがた殺された最後の一人は文字通り真っ二つ。どれもこれもが有り得ない死に方。
その場に立つ赤い槍を持つ男が抉り出された心臓を喰らっている。周囲に血は零れていない。血が流れることすらなかった神業とでも言うのだろうか。
カニバリズム。
表情もなく自発的に内臓を喰らう。そしてその後は頭を踏み砕き、身体を
そうして最後の一つに取りかかろうとした時━━━音が鳴った。
「━━━誰でしょう」
男が冷たく問い掛けると、目の前にいつの間にかいた一人が化性を見たかのような表情で、だが叫び声を挙げることなく駆け出した。
「仕方ありません……かっ」
男は最後の死体を一纏めにプレスして口に放り込む。しっかりと咀嚼して呑み込むと━━━その目が変わった。
「見られたからには、デザートになってもらいましょう」
◆◇◆
「はッ……!はぁッ!ぐっ、げほっ、は!な、なんだよ、アレ!?」
そして同時刻、調は全力で走っていた。理由は……語るまでもない。先程の男に出くわしたのは他でもない調だ。
(人を喰ってた!?しかもこんな夕方に!?いや、そもそもなんだよ!?あのデカい槍みたいなのはさ!?)
あんなものを突然見せられて気が動転しない方が珍しい。なさけなく悲鳴を挙げることがなかっただけ調はよく耐えた方だ。
「見ましたね」
「なッ……!?」
そうして全力で逃げて、向こうが動き出すのにもインターバルがあったはずなのに、あっという間に調に追い付いている。
「見られたら殺すのが常識なので。己の非運を恨むことです」
「ゴァッ……!?」
男に胸部を裏拳された。有り得ない力によって調は後方に二十メートルは軽く吹っ飛ばされる。
「ガッ……ぐ」
だが調はそれに全神経を集中させてなんとか受け身を取って、勢いそのままに駆け出す。
三秒としない内に追い付かれてまた攻撃をくらう、その直前。
「
指を素早く動かして空に文字を描いたかと思うとそこから強力な雷光が男に襲い掛かる。
「っこれは……!?」
「人には使いたくなかったが……正当防衛だからな!
次の瞬間、調の身体が軽くなったかのような感覚に陥って先程の倍の速度で走り出す。
(これでもう大丈夫なはずだ!大丈夫!大丈夫!大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫!!!!)
そうやって感じる嫌な感じを拭いとろうと自己暗示を掛ける。そうやって全力で走り回り、家について靴も脱がずに自室に入る。
大丈夫、大丈夫だ、大丈夫だから……消えない震えを抑えているが、それもすぐ無駄な行為だと知る。
「まさか、ルーンを使うとは……一般人かと思っていましたが、まさか先程の物は前菜だったとは」
身体が固まる。恐怖。怖れ。絶望。
部屋のドアを蹴破ってやって来た男は先程の赤い槍を携えながら悠然とやって来る。
「ほんの少しとはいえ私を驚かせるとは、大した魔術です。ですが……そろそろ待ち惚けも退屈だ。メインディッシュはゆっくりと味わうとしましょう」
槍の切っ先が向けられたことでようやく身体が動く。先程の言葉を唱えて窓を突き破り、数メートルの高さを飛び降りる。
「見苦しい。諦めなさい」
「ギャ……!!」
幾分か加減をされたのだろう。回し蹴りが顔面に突き刺さり、小屋へと突き飛ばされる。
そのまま仏壇に頭から入って、それが壊れるほどの跡を作る。
「ぁ……が……は、……」
「魔術師とはいえど人間がよく耐えたものです。動けないのであれば、一刺しでその苦しみを終わらせましょう」
「ぐぁ……げほっ……」
血の混じった痰が出てくる。尋常じゃなく痛い。
だが怖くはない。有り得ない物を見すぎてしまったからその辺の感覚が麻痺しているのだろうか。
それでも、死ぬつもりは毛頭ない。生きる。生き抜く。
「……死ねない……」
「その諦めの悪さは友を思い出しますが……諦めなさい。いずれにせよ貴方はここまでだ」
切っ先が胸に軽く当たる。正直痛い。でも生きなきゃ。
━━━死ねない。
━━━生きる。
死ねない、生きる、死ねない、生きる、死んでたまるか、生き延びてやる、死んでやるもんか、生き足掻く、死ぬことは許されない、生きなければ、死ねない、生きる、死ねない、生きる、生きる生きる生きる生きる生きる生きる生きる生きる生きる生きる━━━!!
『生きろ。死ぬな。お前が生きてくれていれば、私はそれだけで満足だ』
『さぁ呼べ!叫べ!
━━━死なない。生きてる。
「死んで、たまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
渇望は声となり、声は想いに変わり、想いは願いと姿を変えて、願いは望みと成って、望みは希望となる。
呼べという声が聞こえる。生きろという姉の想いが聞こえる。
死ねないという渇望は生きるという願いに変わり━━━望みは死なないという希望と成る。
死ねないのではない。今、生きている。
ただ一つ、たった一つ。それだけで充分だ。
それだけで、誓いは果たすことができる━━━
「━━━な!?サーヴァント!?まさか……こんなことが!」
白い光に包まれて、双眼は開くことすら敵わない。
やがて光が止んで、瞳を開ける━━━そこには、先程なかった姿が一つ。
何着か重ね着した着物を纏い、流麗な黒髪をたなびかせた少女。だがその右手にはその姿に似つかわしくない大きな刀が添えられている。
いや、そんなことはどうでもいい。この少女の風貌やなぜ突然現れたかも。どうでもいい。
「━━━召喚に応じてこの場に来た、サーヴァント……バーサーカー」
厳かで、人にとっつかなさそうな吊った両目は夕焼けで紅く染まった月にとても映えており━━━
「問うぞ、お前がオレのマスターか」
ただ、その少女の瞳はそんな命の危機すら遠いなにかのように感じてしまう美しさがあった。
バーサーカー
真名
???(女性)
属性・カテゴリ
秩序・中庸(人)
身長・体重
身長149cm、体重43kg
固有スキル
カリスマA-
支配者として最高級のカリスマだが、特定地域出身のあいてに対しては効果減。
殺戮者の恩寵B
選択対象のバッドステータスを一組解除する。
etc.
クラススキル
狂化D
思考の単純化と長考ができなくなる代わりにステータスに補正。ただし殺戮者の恩寵によって基本的にデメリットは消えている。