無口な黒き鎧兵   作:斬刄

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茉莉と民と芸術を愛する赤き皇帝

 

帰り道、茉莉は疲れ気味だった。

 

「はぁ、びっくりしたなぁ…」

 

中学校で最初に知り合った転校生がまさか連続殺人の暗殺者『キリサキさん』であり、魔法少女を狩る暗殺者をやっていたこととは思わない。魔法少女が魔法少女を狩ることも考えてはおらず、殺人事件のことで自分達が標的にされて襲れそうになったが、友達が殺されそうになっても茉莉自身彼女に対する憎しみはなかった。

 

理由は、快楽で殺そうとする人ではなく、むしろ鈴音はその行動に躊躇していかのようで気になっていた。好きで殺人をしているというわけではない。何か理由があるから、千里を襲ったから許せないという強い憎しみはなかった。

 

千里の言うように、あの少女と関係のある鎧の魔物と対話をすることには先に賛成した。その鎧は鈴音のことを知っているのなら、どんな関係なのか知る必要がある。

 

しかし、問題はその魔物の居場所と出会った時の対応をどうするかだった。敵視して襲われてしまうのではないかと、心のどこかで不安もあった。

 

「ただいま。あっ、そういえばスズネちゃんに課題を貸しているから早めに終わらせないといけないんだっけ…」

 

仮に居場所を掴めたとしてももし鎧の魔物が臆病だった場合すぐ霧を出現させて同化し、どこかへ逃げて行く。まるで自分達や他人と接触するのを避けるかのように。

むしろ魔物は人と接するのを極端に避けているために逃げてしまうだろう。

 

茉莉は魔物を見て、人を襲うような敵ではないと思っている。攻撃的な魔物なら一人になっているところを不意打ちするか、漁夫の利を狙われてすぐに襲われている。

 

それなのに鈴音に呼びかつつ、炎に焼かれても全く諦めようとはしなかった。助けた千里を見向きもせずに全力で攻撃を受けている。

 

茉莉は食事を終えて部屋に帰ると、突然床から魔法陣が出現する。

「⁉︎なっ、何⁉︎」

その魔法陣は突然光り出して、赤いドレスを纏った金髪の美少女が出現した。

「答えよ。そなたが、余の奏者か?」

 

人が突然床から出てきた。開いた口がふさがらず、目を丸くしている。茉莉は立ったままネロを眺めていた。しかし、それに気づかない赤の英霊は部屋を見渡す。

 

そして目の前にいる少女の手の甲を確認して、マスターだと認識する。

 

「うむ!どうやらそなたが奏者でいいのだな?実に可愛らしいマスターだ。気に入ったぞ!…む、どうしたのだ奏者」

漠然と見て、まったく返事が返ってこない茉莉は倒れ込む。そして、

「ううううっ…」

「目を回して…気絶しておる」

彼女の目が回っていた。何もない場所から光が放たれて、そこから人が出てきたのだから気が動転して当たり前だった。

 

ネロは茉莉が寝転んでいる間に頬をつついていた。

 

*****

 

茉莉が倒れこんで30分後

 

「起きたか、奏者よ」

「夢じゃなかった…あの、貴方は一体誰でしょうか?」

 

 

茉莉の方はネロの事について夢だと思いたかったが、実際こうして目をさましており、目の前にいるために現実であることを認めざるおえなかった。詳しい話をする前に課題や明日の支度をしなければならないためにネロの話を聞くのはまた後からになった。

 

午後の10時頃にようやくネロの話を聞くことになる。

一体何者なのか?どうしてここに出現したのかも。

ネロは英霊召喚によって呼び出されるはずだったが異例なことに召喚に必要な触媒も陣も記されておらず何もない状態でネロを召喚したということだった。本来、聖杯戦争によって呼び出されるはずだが、この世界には聖杯戦争が起きていない。

 

英霊の機能はあり、霊体化して消えることもできる。聖杯戦争は7つのクラスで戦うことになるが、彼女のクラスはセイバーという形で呼ばれることとなっていた。

ネロの魔力は茉莉から貰っている。

「これが、令呪?」

「そうだ。令呪というのは奏者がサーヴァントに三つの絶対命令権を下すことができる。だが、令呪というものは無闇に使用せず丁重に扱う必要がある。

いざという時のためのもの」

「えっと、例えば?」

「うむ。奏者の命が危険な時に使ったりする危機的状況や余が今まで以上の力で敵を倒せと命じられるとその力をこれまで以上に発揮して敵を倒すというのも可能。

 

令呪というのは膨大な魔力を秘めておる」

 

聖杯戦争がない以上、ネロは茉莉に自分の真の名前は言っている。ネロは真名や歩んだ歴史のことについて教えたとしても茉莉にとって混乱している。

 

「えーっと、つまりローマの国に住んでいた偉人ってこと?それでいいのかな?」

「うむ、まぁそう解釈してもらっても構わぬ」

それでも、歴史上の人物が突然現れたことに茉莉は戸惑っている。まだ中学生の身であるため、色々なことを1日で教えられて理解できるわけがなかった。

 

「ごめんなさい。ちょっといろいろとありすぎて分からない。まだ、混乱してる…」

「少しずつ理解すれば良い。余は奏者のサーヴァントであるからどんな頼みでも手を貸そう。何かあった時は余を呼んでほしい」

「おやすみ、ネロ」

ネロは霊体化して消え、茉莉は寝る支度をする。

「英霊かぁ…」

茉莉は自分以外の三人にも英霊が召喚されたんじゃないかと思っていたが、英霊ではなく別の存在が出現したことは明日に学校で会う時に分かることだった。

 

ネロ以外にも色んな異端者が介入したことに。

 

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