無口な黒き鎧兵   作:斬刄

14 / 24
挫けない思い

遥香はピチューを連れ、三人と合流してキュウべぇを問い詰めていた。ソウルジェムが黒くなると魔法少女から魔女となるというのは聞いていないから何も知らない三人は驚いている。

亜里沙は酷く睨んでおり、茉莉と千里は話を聞いてもまだ釈然としていなかった。ワドルディ、花京院とネロはマスターを危機に瀕しようとしたために強く敵意を持っている。

 

 

遥香の方も最初知った時は冷静でいられず、真実を知ったことでソウルジェムが黒くなっていることに恐怖を感じた。誰にも助けを求めることはできず、絶望に飲まれそうになっていた。もしも鎧兵がその場に出て来て、助けてくれなかったら今頃魔女となって暴れており、何も知らない三人はそのかつて遥香だった魔女を倒すこととなる。

 

「一体何が目的なの…あなた達の言うシステムって一体何?もう知らないって言って隠すことも誤魔化すことはできないわよ」

「僕は別に隠すつもりもないし、教える必要もなかったからね。全てはこの宇宙の維持のためなんだ」

 

そこから先はインキュベーターの説明が始まった。宇宙の寿命を伸ばすために、宇宙人として地球に降り、小中くらいの小さい女子に契約をする。契約の際に効率よくエネルギーをもらうために、人から出る感情を利用し、特に女性から取り入れられるエネルギーがより多くのものを手に入れる事ができる。そのエネルギーの中にはエンドロピーというもので、宇宙の寿命をより伸ばす事も可能となった。

 

「茉莉…何を言っているのかわからないよ」

「だから言ったじゃないか、こんなことを説明したところで分からない人もいるからね」

 

歳が若い彼女らがその説明を聞いても理解ができず、困惑することしかできない。花京院やネロ側の方は説明を理解した上で怒っている。

「言っても分からないから無駄だとでも…貴様っ…」

唯一分かったことは人の心を利用してエネルギーだのと言いい、何とも思わない生物だったこと。

「だったら何…要は結局、あんた達にとって私達は消耗品扱いかよッ‼︎」

「落ち着いてっ亜里沙」

 

キュウべぇにいくら当たっても自分達の身を都合よく変えることなんてできるわけがない。もう既に契約をしてしまったのだからその契約を破棄することも無理なのだ。

 

亜里沙が手を出す前に、

 

「…心配いりません。僕が仕留めました」

 

彼女らが手を出す前に、花京院のエメラルドスプラッシュでキュウべぇの頭を弾いた。

「花京院…」

「人の命を弄ぶ外道を許すわけにはいかない。しかしこれでもう「勿体無いじゃないか、代わりはいくらでもいるけど無駄に潰されても困るんだ」なにっ…⁉︎」

 

粉々になった肉体を別のキュウべぇが食べている。至る所の少女に魔法少女の勧誘しているのだから、単一ではなく複数で動いている。だから、少数のインキュベーターを潰したところで擦り傷程度ほどのものにはならなかった。

「後はもう説明通りの意味さ、僕の目的はそのエネルギーで宇宙の寿命を引き伸ばさなくてはいけない。それに君達には契約する前に願いを1つ叶えてあげたじゃないか?それに君達に真実を伝えたとしても関係に亀裂が出るのなら教える必要もないからね」

 

願いという言葉にだんまりをするしかなかった。千里と茉莉は家庭と肉体的な面で仕方なかった部分もあったが、亜里沙と遥香は自分の私利私欲の為に願いを告げてしまった。

 

キュウべぇの目的は話したもののまだ、不自然な点が残っている。

「ちょっと待って⁉︎じゃあすずねちゃんが魔法少女を殺しているのもそれが関係あるの⁉︎」

「関係あるね、彼女が魔法少女から魔女になるって知っていたから」

まだ茉莉達は『キリサキさん』のことについてあまり知っていない。正体とその知人がいただけで、目的は頑に喋ろうとはしなかった。知人のタートナックと接触しても、彼女とは知り合ってはいたもののどうしてあそこまで豹変したのか全く知らなかった。

「スズネはかつて椿って人と一緒にいて魔女退治をしていたんだ。椿はスズネの面倒を見て、しかも自分の穢れをグリーフシードまで譲渡した。その途中で魔物であるタートナックと遭遇したんだ。

 

魔女退治に協力し、一緒に暮らすこととなって幸せな生活をしていたけれどそんなに長くは続かなかった。

なにせスズネのソウルジェムを浄化していたのだから案の定椿は魔女に変身し、スズネが倒すこととなってしまったんだ。このことを知らなかったタートナックは椿を守れなかったその罪悪感で逃げ出し、一人きりとなったスズネは泣きながらも椿のもらった力で魔女を止めることだ」

キュウべぇはスズネの過去を語り出した。

彼女がなぜ魔法少女を殺していたのかを。

スズネがなぜあんなことをしていたのか分からないと言っていたのは理由を知ったところで理解はされなかった。

彼女を放置しておいた方が効率よくエネルギーを得ることが大事だった。

「誰かが彼女を倒してくれるかもしれないしね」

「てめぇ!それなら千里や遥香がこのまま死ぬことも分かって「そんなのありえない…」え?茉莉?どういうこと?」」

「奏者よ、こやつの矛盾に気づいたか」

なぜなら茉莉にとってタートナックから聞いた内容とキュウべぇの言っている内容が違いすぎていた。

「タートナックは、逃げてなんかない。椿って人を助けることもできたけど、その魔物は自分の立場に悩んでた。でも、ずっとスズネと一緒にいてあげられなかったことを悔やんで離れ離れになったんだ。でも…帰ってきたと思ったらいつの間にかスズネちゃんが記憶をなくして、敵だど認識されて」

「まさか、タートナックと接触したのかい?」

茉莉がタートナックと接触していたことに、キュウべぇは知らなかった。ネロのおかげでカリギュラに敵とみなされることなく、こうして対話することができたのだから。

「なんでタートナックにカリギュラが付き添っているのが分かる?」

「…何が言いたいのか僕にはわからないんだけどな」

サーヴァントのシステムはネロが説明している為、茉莉はその説明から椿の死に疑問思った。

「タートナックの手には私のような呪令がつけられていなかった。それに、この呪令がスズネちゃんを持っている様子もない。もしスズネが令呪をつけているのならカリギュラはタートナックを発見して倒そうと襲ってくる。

 

カリギュラにはネロと同じようにマスターと令呪を持つ必要がある。タートナックの体内に入る人が椿っていう人であり、彼女がマスターだから…絶対に死んでなんかいない。スズネちゃんのことを見ていたなら、生きているのをその目で確認している」

「…初耳だよ。君がそんな情報を持っていたなんて」

今度もキュウべぇは椿が死んでいたという嘘を彼女達に伝えてしまった。タートナックと接触して話を聞いたことで、つちづまが全く合わないことを。

「何よそれ…あんたまた私達を騙そうとしたわけ⁉︎」

「何度も言うけど、言う必要がなかったから言わなかっただけなんだ。それに僕自身も君が知っていたなんて思わなからね」

「なら、なんでスズネの真実を隠すようなことをしたのですか?」

「…」

ワドルディの質問にキュウべぇは黙ることしかできなかった。キュウべぇは自分の利益(エネルギー)のためにずっと動いてきたのだから、タートナックを利用すればエントロピーを凌駕できる少女の感情を何度も使って生まれ出てきた魔女をその魔物が吸い込み、後から人に変えて契約を繰り返すことで効率よくエネルギーを利用することができる。

 

「まさか裏に誰かいるのか…?スズネの記憶を消した奴と何か取引をして」

 

 

茉莉達が段々と真実に迫っていく。カガリと取引をしていたことにまで踏みいれようとしている。もしも椿が生きており、カガリを騙していたなんてことが知られたら計画は確実に頓挫する。

スズネの真実を隠した理由だけでも話した時点で危険すぎる。話してしまえば、絶対に茉莉達はタートナックを近付けさせまいと動くに違いなかったからだ。せっかく宇宙のエネルギーを大量に得ることができるものがこの世に存在しているのだからそれを利用しない手はない。タートナックをインキュベーターが手放すわけにはいかなかった。

 

 

不穏な空気が漂い、みんながキュウべぇに疑惑の目を向けている時、遠くにある森の付近で爆発が起きた。

「今度は何⁉︎」

 

魔女の気配はないはずだが、誰かが戦っていることでみんなが爆発のある方へと移動した。

 

*****

 

 

スズネは魔法少女に変身して、他の魔法少女の探索を行う。彼女は四人組の魔法少女が最近散らばらずに全員で行動することになっているために不信感を思っている。

 

タートナックは隠れながらも彼女を見て安全かどうか確認した。

 

彼女は不審に思いながらも四人を見ていただけですぐに戻っただけだった。タートナックは安心して帰ろうと後ろを振り向くと腰にはカーテン、胸には星の形をした紋章をつけているガイコツが浮いている。ガイコツがそのカーテンの中を開くと、黒魔道士が緑の杖をタートナックに向けて出現し、魔導弾が至近距離で炸裂した。

 

 

タートナックは攻撃される前に武装を遥香のソウルジェムで手にした負の力で防御を強化し、一命をとりとめた。強化された鎧と盾はすぐに崩れ、身軽にはなったものの魔導師は逃がそうとしない。

 

「オォォォッ‼︎」

 

魔導師が杖で魔弾を溜める前にカリギュラが横に入って、鎧兵を助けた。

 

ーーー魔導師のほかにも何人かが自分を追って来ているかもしれない。

 

魔導師が動いたと同時に、タートナックの周囲から不穏な動きをしているのが四体もいる。魔導師の方はカリギュラに任せて、鎧兵は出来るだけ遠くに離れるために霧となって移動する。このまま街中で戦えば、余計戦いにくくなるため、森へ誘導することで鎧兵にとって有利な状況が作れる。ずっと森に滞在したのだからどういう地形なのかをタートナックは理解している。

 

しかし、追っ手の一人が実体化していたところを後ろから襲われ、鎧兵は地面に叩きつけられた。無事に生きており、廃止された建物と森の近くまで移動することができた。

 

「⁉︎」

「ス、ズネ…ニゲ」

そんな時にスズネが膨大な魔力を感じ、また魔法少女に変身してすぐに駆けつけてきた。タートナックはスズネがこの場所は危険だと思い、二人と一緒に逃げるために手を差し伸べた。

が、

 

「…炎舞」

 

タートナックの思いは届かなかった。記憶が消えてしまった彼女にいくら呼びかけても敵だと認識して魔法を使って炎をぶつけ、そして斬りつけてくる。タートナックは傷つけることができないから腰にある剣を抜き、守ることしかしていない。彼女から見て、タートナックには使い魔がまだ生き残っていたのかと思っているだけだ。

 

(なんでこんなにしぶといのっ…それに)

 

それでもタートナックは諦めずに炎を何度も食らってもまだ立ち上がろうとしている。彼女の攻撃を耐え凌ぎ、かつ決して反撃をしようとはしなかった。

 

 

(手が、震えているっ…⁉︎)

 

攻撃をするうちにスズネはこの鎧兵を相手に手加減をしてしまった。最初は殺すつもりで襲ったが、何故か手が勝手に緩めてしまう。それは強大な敵に対する恐怖というものでもなく、ましてや疲れなどの身体的な面の問題ではない。彼女の心のどこかで鎧兵を痛めつけたり傷つける事に躊躇していた。

彼女は手が震えているのを見続けていると頭痛が生じた。あまりの激痛に持っていた剣を落としてしまい、両手で頭を抱える。

 

(頭がっ…なにこれっ、‼︎)

 

タートナックとスズネが動けない間、シャドウファイターこと緑の勇者リンクが鎧兵の元に到着し、剣と盾を構えていた。前のように喋ることはなく何も言わないまま機械的に弱っているタートナックを躊躇なく殺そうと近づく。彼は勇者としてではなく、単なる邪魔者を排除するために動いていた。

 

 

リンクは必死に防ごうとしているタートナックの剣を振り払い、弾かれて壁に突き刺さる。もうタートナックには武器も防具も何もない状態になってしまった。

 

リンクは伏せていたタートナックにトドメを刺す。その横から

 

「待たせたなっ、友よっ‼︎」

 

 

茉莉のサーヴァントであるネロ・クラウディウスがリンクのマスターソードを薙ぎ払った。友というのはカリギュラこと叔父上と仲が良いためにこうして鎧兵を守っている。

 

 

頭上から仮面をつけ、悪魔の羽をした小さなナイトがネロの背後からドリルのように回転して襲ってくる。その横からハイエロファントの結界が発動し、エメラルドスプラッシュが横から飛んでくる。

 

 

飛んでいる方は当たったものの、リンクは盾でエメラルドスプラッシュを防ぎつつ、地面に突き刺さったマスターソードを拾った。

「め、メタナイト…」

「あんたの知り合い?」

「はい、彼はデデデ大王様の部下としてプププランドに一緒に暮らしてました…」

ワドルディは空で飛んでいるのを見てそう呟いた。襲ってきたのがカービィと酷似しており、宝剣ギャラクシアとマント、仮面という三つの特徴を見た時点でカービィとは違うとすぐに理解した。相手がカービィではないのが何よりも救いだったが、メタナイトとなればまた別の意味で厄介な相手だった。空を飛んで浮くことは両方ともできるが、彼の場合は羽で滑空を利用し、空から奇襲することもできる。

 

 

(殺気が感じられない…この人達、感情とか関係なしに標的を襲ってきている)

 

メタナイトとリンクに似た偽物達は殺す気で襲ってきているのならそれなりに感情の内にある殺意を持っている。恐れや対抗があるものの彼らにはそんなものがなく、形は本人とは似ているものの表面的な色に関しては全く別のものとなっている。自分で考えるような能動的ではなく、誰かの指示に従って機械的に動かされているかのようだった。

 

現に彼らは鎧兵を標的にして襲ってきた。遥香達はバラバラで動かずに全員で動いているため、複数を相手にどうにか対処することができた。

 

「叔父上はどうしたのだっ…⁉︎」

「タタ、カッテ、ル」

 

タートナックと彼女達の後ろでカリギュラが落とされた。相手していたのは宙に浮いている黒い魔導師一体だけではなく、二体のシャドウファイターが囲んでいる。

 

「無様だな」

 

カリギュラは魔導師との戦闘中にディンの炎を食らい、身体中が燃えている。メタナイト、リンクの二体だけではないが、その二人も見覚えのある人達だった。ゼルダとガノンドルフの二体が魔導師を支援し、カリギュラを追い詰めた。

 

千本(サウザンド)ナイフ‼︎」

 

黒魔道士は魔法で空には数え切れないほどのナイフが空間に出現させ、カリギュラに向かって飛ばす。手負いになっているカリギュラを守る為にネロが動くものの。

 

「邪魔をするなっ‼︎」

「ピチューゥゥッ‼︎」

ガノンドルフがネロの足を止める。代わりにカリギュラをピチューの落雷によって飛んでくる大量のナイフが崩れていく。ゼルダは今度はネロとピチューにまたディンの炎を使うが、千里の銃で攻撃できないようにする。

 

「危ないっ‼︎」

 

茉莉が千里を庇ったのはゼルダがディンの炎を使ったのではなく飛び道具を反射させるバリアを張って、危うく千里に跳ね返るところだった。

 

「あの時の借りをここで返すわよ‼︎」

「千里や遥香を助けたんなら、あんたのことを守ってあげるし信用するわ!」

 

リンクとメタナイトがまたタートナックを襲うところをピチューとワドルディ、遥香と亜里沙が助ける。親友である千里を守り、魔女化になりそうだった遥香を助けてくれた。その恩人として今度は、タートナックを守る。

 

 

しかし、囲まれている状況の中で黒魔導師は杖に黒い魔導弾を込め、膨大な魔力を注入する。

 

「⁉︎みんな逃げてぇぇっ‼︎」

 

それに気づいた遥香は全員に呼びかけようとするものの、もうすでに遅い。

 

ーーー黒・魔・導(ブラック・マジック)

 

黒い魔導波によって建物が崩れ、爆発と共にタートナックと遥香達全員がそれぞれ離れ離れとなってしまった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。