無口な黒き鎧兵   作:斬刄

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一年以上経ってしまいましたが、お待たせしました。
まだ投稿が早くなるのか遅くなるのかが不安定になるのでそこはご理解してくれると幸いです。



負けられない戦い

魔物は勇者には勝てない。

サブがエースには勝てない。

敵キャラは主人公に勝てない。

勝つこと自体の展開はごく稀なのだ。

過程では追い込むが、最終的にボコボコに負かされて、倒れることが必ずしもある。

しかし、こうも考えるべきだろう。

ただそういう試練だから主人公が乗り越えなければならない展開であるため、そういう定めだったから?

なぜ負けてしまうのか?

努力を怠ったからか?

彼らがヒーローだから勝てたのか?

主人公または主人公補正があったから勝てたのか?

正義は必ず勝つと言う法則があるから?

 

その称号だけで巨大な敵を退くことができたのか?

【否】

 

彼らにも彼らなりのそれなりの覚悟があった。

 

リンクが戦えたのは強靭な勇敢さと手にした道具を使いこなしたからだ。もしも普通のひ弱な人がいきなり勇者という責任を強いられたら、多数の魔物に殺されることに恐怖しながらも冒険をすれば、我が身大事に愚かな背中を見せて逃げ出すこともある。それは勇敢ではなく、臆病となってしまう。

今までの冒険の中で手にした道具と、様々な出会いや努力は、彼自身の支えとなり伝説の剣で魔王を討ち取ったのだ。

 

カービィは誰も憎んだり恨んだりしない。大食らいであるのは確かではあるが、そんな宇宙から来た生物にも感情を豊かにしている。怒ったことは小なりはあったものの、それでも悪の心ではなく純粋な心を持ちあわせている。

 

カービィの敵として立ち塞がったデデデの幹部のメタナイトにも誇りがある。

 

彼らはたった一人で逃げもせずに立ち向かってきた。

 

 

だから、たとえ悪者役だとしてもといって諦めない。偽りの主役達、心なしの形だけの者に負けるわけにはいかない。

 

 

なぜなら、タートナック達には空っぽの偽者にはない『決意』というものがあるからだ。

 

 

*****

 

黒魔道士の魔導波で茉莉達は吹き飛ばされ、ここが何処なのかわからない状態になっている。

魔法少女の三人は身体能力で、花京院はスタンド自身で守り、ピチューとワドルディはハイエロファントの結界で守っていたために被害が小さかった。

「いっつ…どうなってんのよ?」

「大丈夫ですか?」

一命はとりとめたものの、爆発で生じた煙のせいでさっきまでいたシャドウファイターの姿が見えない。

 

「あれ?茉莉達は‼︎」

「それだけじゃない…さっきまでいた鈴音や鎧兵まで」

 

見渡すと鈴音と一緒にいた魔物の鎧兵もいなかった。黒魔道士の攻撃で、こちらが遠くにまで飛ばされてしまったか、それとも4人が飛ばされているのか。それはわからないままだが、見失った彼らが無事であることを祈ることしかできなかった。

 

 

「ともかく、さっきの攻撃ではぐれてしまったのでしょう…彼らのことも心配ですし、探したい気持ちもわかりますが…」

 

既に黒魔道士が結界が張り、戦いの場を用意している。周囲に人の気配はなく、空から敵がドリルみたいに飛来して突っ込んでくる。メタナイトが先行して、千里を頭上から斬りつけるがスタンドで動きを止める。

 

「そんな余裕を彼らが与えてくれると思いますか?」

「あるわけないよねっ…くそっ‼︎一体なのこいつら!」

「分からないわ。でも、私達の敵であることは違いないわね」

 

花京院は空を縦横無尽に飛んでいるメタナイトにエメラルドスプラッシュを3人に向かって撃つ。しかし、

 

「なっ、吸い込んだだとっ⁉︎馬鹿なっ!」

 

カービィは飛ばしたエメラルドスプラッシュの結晶を口を大きく開いて吸い込み、全ての結晶を食べてしまった。ゼルダはバリアで跳ね返し、メタナイトは高速で剣を振り回して弾き飛ばしつつ向かってくる。メタナイトとカービィが集中的にワドルディを狙おうとするが、亜利沙が魔法で自分の身体を強化させて庇う。

 

「ブーストッ‼︎」

「亜里沙は飛んでいるのを!私はあの丸いのをどうにかするっ‼︎注目(アテンション)‼︎」

 

ワドルディはビルの中へと逃げ込み、遥香はカービィに魅了の魔法をつけてそれぞれ別の場所へと移動させる。

 

「うぉぉぉぉっ‼︎」

 

亜里沙は強化させたままの状態でメタナイトとの一騎打ちを仕掛けた。

 

メタナイトには速さがあるが、亜里沙には魔力強化による力押しで進んでいく。

 

自分の脚の部分を強化させて、建物の屋上へと飛んで逃げようとする。メタナイトは翼を広げ、空を飛んで亜里沙を殺そうと剣を突き立てる。

 

空中に逃げれば、どうあがいても滑空能力を持っているメタナイトの方が圧倒的に有利。メタナイトは翼を広げ、殺そうと追ってくる。亜里沙は建物に移ると、身体を向けて笑みを見せた。

 

「そう来ると思ってたわよ…」

「ピチュゥゥゥゥ‼︎」

 

ピチューが遠回りして真下に移動し、かみなりを出す。リーダーの遥香が念話をしてピチューと亜里沙に指示を送っていたのだ。亜里沙を追って飛んでいたメタナイトは真下にいるピチューが見えなかったため、攻撃を防ぐことも避けることもできないまま空から落ちていった。

 

遥香の方は魅了の魔法で引きつけているが、身軽なカービィの方が早く動くことができる。

 

(まるで動きが予測できない!これじゃあ防御するだけで…)

 

右に蹴ってくると思ったら、左が脚を狙ってくる。ピチューを亜里沙達に向かわせて、メタナイトを倒すように指示したが、戻ってくるまでの間に何とか持ちこたえねければならない。反撃をしようとすれば、カービィはハンマーで遥香を吹き飛ばされたのだ。何とか急所は狙われていなかった為に立ち上がる力はあるものの、こうして防戦一方になっている。

 

「遥香っ!」

 

千里が背後から銃撃し、それに気づいたカービィは攻撃をやめて避けていく。

 

解除(リリース)

 

カービィはゼルダに近づき、彼女を飲み込んだ。

 

コピーし、ピチューの電撃をバリアで守った。電撃を反射したが、それを返されても電気をいつも使っているピチューに効果はない。

 

「その人のバリアが…魔法でよかったわ…」

 

 

自分の身を守るバリアは崩れ、銃撃を食らったカービィは変身が解かれる。

そのまま倒れてしまった。遥香と亜里沙、千里の3人が手を組んで、メタナイトとカービィを同時に撃破した。

 

 

*****

花京院はゼルダと戦っており、何とかして勝負を決めようとする。しかし、両者とも遠〜中距離に特化した能力を持っているために勝負が長引いている。

「私一人で何とかするとは言ったが…」

 

千里の魔法は魔法効果を解除することができる。しかし、あのバリアが果たして魔法なのかどうかも怪しく、花京院は千里を春香達の元に行かせてあげた。

相手はバリアで飛び道具を跳ね返し、遠くに行きすぎても炎を遠くまで飛ばして爆発させる力まで持っている。

 

 

(体内に取り込んでくれ…⁉︎)

 

ハイエロファントに飛び込むよう指示したが、魔法のベールで阻まれてしまう。別の建物に転移し、さっきのように炎を遠くに飛ばそうとする。お互い距離をとって戦うスタイルをとっており、花京院が逃げていく。

 

逃げながらも敵の動き方を確認し、どうやって倒すかを考えていく。ゼルダの視界から花京院が見えなくなると、さっきのベールを使って転移し、高い建物に移動する。

 

「掛かったな」

 

敵が罠にかかったのを見過ごさなかった。複数もの設置されたハイエロファントの触手が、ゼルダを縛り付けにする。ハイエロファントを体内に潜入してくれないのであれば、ベールの使用後に生まれる敵の隙を利用して、誘い込んでしまえばいい。

 

しかも、防ぎ切れない状況を用意して。

 

「僕はただ逃げたわけじゃない!逃げている時間の間に、ハイエロファントの結界を張っておいた‼︎

もう、貴様に逃げる術はない‼︎

今度こそ食らえ、ゼロ距離のエメラルドスプラッシュっ‼︎」

 

ハイエロファントの触手のせいで身動きの取れないゼルダはバリアを張ることができない。飛ばされる緑色の結晶をゼロ距離で狙われ、落ちていった。

 

*****

魔導弾の爆発によってネロと茉莉、鈴音とタートナックが取り残されていた。彼らの前にはカガリと褐色の肌をした黒魔道士、シャドウファイターのリンクの3人がいる。

 

「誰…?」

「つれないなぁ?私は一度も忘れたことないのに。そこの鎧兵とかも椿と一緒にいてた頃は仲良くしてたって聞いたけど」

 

紫色の魔法少女がさっきから何を言ってるのか鈴音達や茉莉達も分からなかった。

 

「忘れたとも何も、貴方と会ったことさえないわ。あの魔物ともね」

「私も…」

「ふーん…でも鈴音は椿のことをちゃんと覚えてるのに?」

 

鈴音は椿という言葉に反応した。タートナックも鈴音と同じようにカガリのことは全く知らない。タートナックも鈴音とカガリの二人があった機会を見てもないのだから。

「それじゃあ二人とも明かそうか?真実を」

「何を、言ってっ…」

カガリがある魔法を解除すると、鈴音は青ざめた顔で身震いしていた。彼女はタートナックの方を向いて泣きそうになっている。茉莉もまた、鈴音と同じように何かを思い出したような顔をしている。

「そんな、嘘だ…私は、こんなこと」

「そこの鎧兵も含めてインキュベーターのいっていた異端者達のせいで私の立てていた計画が散々になるところだったんだよ?まぁ、私側の方もこんなにいたし、あの魔術師のおかげで邪魔者が入ってこなくて助かったよ。でも私は、正直こんなに早く計画を終わらせるつもりはなかったけどね」

ずっと記憶を奪われていたままの鈴音は思い出してしまったのだ。椿を手にかけたわけじゃなく、タートナックが必死で助けた。そこで彼女は、椿のいない間にずっと一緒にいてほしいと頼んでも拒否され、鎧兵が何も言わずに去っていったこと。

 

そして、久しぶりに会いに行こうとしたら無自覚に彼女は他の魔法少女だけじゃなくタートナックを敵だと判断して傷つけ、殺そうとしたことも。

「思い…出した…」

「うそ、なんで…それじゃあ私は、この手で人を、鎧兵も」

茉莉はカガリと一緒に暮らしていたこと、かつて母親代わりとして椿に色々教えてもらったこと。そして、カガリとは一緒にいた姉妹関係であったことも。

「どうしてこんなことするの…お姉ちゃん」

「お邪魔虫なんだもん、茉莉は…でも大事な双子の妹だから消したのは記憶だけにしたんだよ?それなのになんで関与するのかな?」

 

カガリは真相を知った二人が苦しんでいるのを笑っている。茉莉はどうして側にいたはずなのに今まで分からなかったのだろうかと混乱しており、鈴音は罪悪感で倒れそうになっている。

 

「貴様、奏者に何をした!」

「前々から二人の記憶を弄ったから、それを元に戻しただけだよ。鈴音は記憶の改竄、茉莉は私に関する記憶を消したから二人はそうなってるの。でもさぁ?さっきの3人も、鈴音ちゃんが殺していけばよかったのにね!特にそこにいる大事な化け物を殺したらどんな顔したか「やめてっ‼︎」」

 

そうやって声を遮ろうとしても、カガリは黙ろうとしない。

 

「偽物の記憶なんかに騙されて人殺しになっちゃって!しかも、恩人だったそこの魔物にまで殺そうとしたんだよね‼︎」

 

鈴音のソウルジェムがだんだん黒くなっていく。魔法少女を彼女の手で殺し、ずっと一緒にいた魔物にまで無自覚に使い魔だと認識して殺そうとした。リンクは彼女らの状況など無視して高くジャンプして、タートナックに襲いかかってくる。タートナックとネロは守る為に前に出ているが、二人ともカガリに真実を明かされたせいで思うように身体が動かない。

 

「そーんな悪あがき、いつまでもつかな?」

 

リンクが右手に持っているマスターソードがある限り、斬りつけてくる以上ネロはまだしも、タートナックがかすり傷でも食らえばただでは済まない。退魔剣である為、魔物であるタートナックにとっては相性最悪なのだ。

 

「なっちゃえ!たくさん人を殺した罪に絶望して、そのまま魔女になってしまえばいいんだ!」

 

鈴音はこれまで記憶に振り回されて魔法少女を殺してきた。だが、悲しみ嘆いている鈴音の隣には鎧兵がいる。

 

「私は、なにも知らずに…使い魔か、魔物だと思って椿の炎で焼こうとして、この武器で斬り裂こうとタートナックを傷つけた。他の魔法少女だってそうした。

 

タートナックが消えて以来、魔女を倒すことも出来ずに塞ぎ込んで…もう戦うのが嫌で、誰も傷つけたくない…それなのに」

シャドウファイターのリンクは爆弾を取り出し、鈴音に向かって投げつける。それでも守ろうとしている鎧兵は鈴音に対して何も憎まず、恨まず、前に出て防いでいる。

動けない鈴音を守るために。

「殺そうとした私に、守られる資格なんて…」

 

無口な鎧兵はリンクの猛攻に、押されている。勇者の面影はなく、完全に弱っている鈴音を殺そうとするために。

カガリは何もしなくとも、勝手に魔物が死んで、真実に怯えて何もできなかった鈴音が絶望してくれれば構わなかった。だが、

 

「そんなことはないぞ!余も奏者も其奴から話は聞いた!鎧兵は裏切られたという失望感より、ずっと側で見守りながらも椿とやらとまた一緒にいたいことを望んでいた‼︎

 

椿の復活までいままでずっと待っておったのだ!また三人と一緒にいられることを‼︎犯した過ちに後悔しているかもしれぬが、それでも鎧兵が必死に守っているのは、操られていたとはいえどんなに斬られても焔にやられても、それでもそなたが大事だからではないのか‼︎」

「…話しながら戦うとは、随分余裕があるんだな?」

頭上から降り注がれる黒魔道士の黒い散弾を防いでいる。キャスターが相手ならばセイバーであるネロが優位だが、バーサーカーであるカリギュラと渡り合えるほどの実力を手にしている。

 

(…タートナックは私を置いて何処かに行ったのは、自分のせいで私が傷つくのが嫌だから)

「でも、私っ…他の魔法少女を殺して、タートナックにまで酷いことを」

「そこの鎧兵は鈴音の犯した罪をとっくに赦している!

余と奏者が保証する!それに犯したの過ちに絶望し、魔女という怪物になって鎧兵を巻き込むのが一番の望みではないのであろう‼︎」

椿を体内に取り込んだ鎧兵は、もし鈴音と一緒に居たら自分のせいで傷つけられてしまうと臆病に逃げてしまった。鎧兵は椿が復活する期間が短くなったら、鈴音に逃げたことをちゃんと謝りたかったはずなのに敵だと認識された。それでも、無口な鎧兵は鈴音を死なせないために遠くで眺めながらも側にいた。

 

鎧兵にとって椿も鈴音も、大事だったから。タートナックもボロボロになりながらも、周囲の負を吸収して回復しつつリンクと戦っている。

(私の…私の一番の望みは…タートナックと、椿もいて…またあの時のようにずっと一緒に…だからっ‼︎)

 

聖剣であるマスターソードで何度も切り刻まれ、擦り傷を負うだけでも酷い怪我になる。それなのに、タートナックはまるで弁慶のように立ち塞がっている。

 

だがリンクは、疲れを知らずに今度は鈴音を狙うと見せかけ、タートナックの隙を突く。マスターソードを腹部に突き刺せば、いくら強力な魔物とはいえ致命傷どころか一撃で殺すことができる。

しかし、

 

「…もう大丈夫だから、ありがとう。

鎧兵さん」

 

鈴音は再び立ち上がり、リンクに炎舞を飛ばした。今度はタートナックを守るために。もう過去の前科で絶望することはなく、ソウルジェムの濁りは進行することもなかった。

 

「貴方だけはっ…!」

「へぇ?…魔女になれば、楽になれたのにね?それとも貴方が大事にしている化け物でも殺せば魔女になってくれるのかな?」

「私は貴方の、思い通りには絶対にならない‼︎」

 

カガリは複数のチャラクムを投げて、リンクと同様に鈴音を狙おうとしている。しかし、鈴音とセイバー、タートナックの三人だけではない。

 

 

「…私が真相を明かしても、邪魔するんだね?茉莉」

「カガリは…椿を奪った鈴音のことを憎んでるかもしれないけど、まだ椿は鎧兵の中にずっと生きてるんだよ。タートナックさんが取り込んだおかげで、椿は生きたまま体内にいる。でも、あの時の私達はまだ幼かったかもしれないし、インキュベーターの話を鵜呑みにしてたからこんなことになっちゃったんだよね。

 

それに…関係ない千里や遥香、亜里沙まで巻き込んだ」

「…嘘なんて言わないでよカガリ。

そこの化け物が、魔法少女を救うなんて出来るわけがない。椿は魔女になって、鈴音に殺されて死んだんだ。

 

 

椿は私達じゃなくて鈴音を選んだ。椿はもう戻ってこない。

それなのに何で助けようとするの?」

「鈴音ちゃんも、私にとってかけがえのない友達だからだよ」

鈴音と最初会った時に、椿と一緒にいた彼女のことを気にかけていた。キュウべぇの契約のおかげで、見えなかった世界が見えるようになり、鈴音という最初の友達までできた。

 

「それでも殺したいほど許せないのなら…鈴音ちゃんも、鎧兵も、誰も死なせない。私は…戦うよ!」

「ふぅん…あっそ。鈴音を魔女化させたら茉莉を許してあげようと思ってたのに…ならもういいよ、私達がみんなまとめて壊してあげるから‼︎」

 

鎧兵が二人を助けに向かおうとしても、シャドウファイターのリンクが邪魔をしてくる。もうこれ以上どちらかが劣勢になるまで会話することもままならない。カガリに使えている魔導師が空から茉莉を狙って魔導弾を撃ってくる。

 

「人の事よりも自分とマスターの心配をしたらどうなんだ?セイバー」

「貴様っ…茉莉、キャスターの相手は余に任せておくが良い!」

 

茉莉のサーヴァントであるネロが、撃ってきた魔導弾を剣で防いでいる。カガリはチャラクムを変えて、両手剣で襲いかかっていく。人数では鈴音側の方が上回っているが、戦闘の最中にそれぞれの意識をカガリが手に取るように塗り替えられている。

 

鈴音が攻撃しようとすれば、誰もいないか茉莉かタートナックを斬ろうとし、茉莉も間違えて二人を攻撃してしまう。

 

「あれっ…⁉︎」

「二人ともどこ狙っているのかな?」

 

タートナックの方もまだ防いだりはしているが、リンクの攻撃を完全に防ぎきれていない。それどころかさっきまで立っていたのに、膝を曲げて体力の消費が激しくなっている。

(このままだと鎧兵さんがっ…)

「仲が良かったのにもう仲間割れ?」

 

カガリを攻撃するはずが、完全に手玉を取られている。二人がかりでもリアルタイムで認識と記憶を変えられ、急いでカガリを倒さなければタートナックと椿ごとリンクに惨殺されてしまう。

 

黒・魔・弾(ブラック・マジック)‼︎」

「なにっ…⁉︎」

 

カガリの魔法には、サーヴァントであるネロもまた例外ではない。また2回目の黒魔弾を飛そうと防ぐ構えをしていたものの、カガリの力によって認識がズレ、今度は背後からネロに直撃した。接近戦に持ち込めば、かなり有利に戦えていたものの敵は地上に降りようとはせず、意識や記憶をリアルタイムで変えようとしている。

(この女、あえてゼロ距離で撃ったが…致命傷は免れないはずだぞ)

(直撃したか…皇帝特権で身体的を強化させて防いだおかげで大した怪我はせずに済んだ。が、もし間に合わなかったら確実にやられていた)

攻撃が当たらないどころが仲間を攻撃してしまいかねない。記憶干渉だとするならと、セイバーは茉莉に向けて伝える。

「奏者よ!奴が記憶と意識を操作しているのならば数がこちらが上回っても勝ち目がない!」

(それなら…)

余裕があればネロやタートナック、カリギュラにまで操ろうとしている。意識を変えることで仲間内で潰し合うことも考えられる。茉莉は目を閉じ、魔法で気配を追うようにする。

「鈴音と言ったな!感覚を操作しているカガリを抑えるには、茉莉の言う通りに動く必要がある!

 

このままでは、勝ち目がない!」

「分かった…!」

 

カガリの余裕な表情が段々と曇っていく。改竄が鈴音だけに集中し、他のサポートもできない。

 

二人がカガリをどうにかしてくれたおかげで、戦いやすくやっている。

しかし、鎧兵の身体はほとんど限界にきていた。マスターソードという聖剣に何度も切り刻まれて、身体に激痛が走っている。

武器を落とし、這い蹲っているのがもう限界だった。偽物のリンクにマスターソードでとどめを刺すところを、

 

「鎧兵よ、無事か?」

 

リンクのマスターソードは届かず、タートナックはネロに助けられた。

リンクはネロに背後から斬り付けられ、そのまま機械のように動けなくなった。

 

「…馬鹿が」

 

黒魔道士よりもタートナックを優先したネロを、そのまま高魔力の魔導弾を撃ち殺そうとするが、横から鈴音の炎舞が邪魔をしている。

 

「魔ど…⁉︎」

「仮は、返すわ」

(なぜこいつが…カガリと戦ってるんじゃないのかっ⁉︎)

 

茉莉が気配で察知し、仲間に指示している以上もう記憶と意識の操作は意味が無くなっている。

 

シャドウファイターのリンクは倒され、黒魔道士もカガリも完全に押されていた。

 

「おい貴様!少しはこっちを手伝「邪魔しないでよ!茉莉ぃ‼︎」」

 

二人の連携はもうメチャクチャになっている。元々利害関係で手を組んでいた二人が、互いに上手く取り合えるわけがない。

 

「チッ…こんな時にあの小娘が!」

 

ネロとの戦いで黒魔道士はほとんど魔力が少なくなってしまった。リンクは撃破され、カガリを見捨てて逃げようとするが、瓦礫の山からカリギュラが勢いよく飛んでくる。

 

「な、何⁉︎貴様まだ生きてっ…」

「ガァッッッッ‼︎」

 

横から起き上がったカリギュラが入って、黒魔道士を殴り飛ばそうとする。

しかし、

 

『ろ、六芒星の呪縛っ!』

 

 

魔法で作られた罠を発動し、彼の動きを封じたが、呪縛は狂化された力によって亀裂が入り、木っ端微塵に破壊される。

(バカなっ…こいつ、捕縛の魔導を力づくで)

そしてそのまま彼の腕を掴み、地上に落下していく。

「やめろっ!離せ!」

「ォォォォォォオオオオオオオッ‼︎」

そのままカリギュラは黒魔道士を下に向かって投げ飛ばし、地面に叩きつけた。

 

 

*****

 

茉莉は目で追わずに気配でカガリを追い詰めようとしている。カガリの魔法は茉莉にはもう効かず、黒魔道士は何処かに逃亡、偽リンクは再起不能。

カガリにはもう、勝ち目が無かった。

 

「もうやめようこんなの…これ以上戦いたくないよ」

「…昔からそうだったよね。思ってないことを言ってごまかすの。ホントは私がいなければいいって思ってる癖に…」

「そんなこと、あるわけないでしょ!だって、茉莉はカガリを」

 

魔法の手の内もバレ、側にいたシャドウファイターのリンクと黒魔道士の二人も再起不能。茉莉とサーヴァント二人、鎧兵ががいるせいで計画は杜撰に終わった。

 

「はぁ…ホント、何もかも台無しになっちゃったじゃん。

これで4対1か」

 

ブラックマジシャンもカリギュラが横から殴られて戦線を離脱し、もうマスターのカガリの方に助けに行くことも難しい。しかも茉莉とダートナックのサーヴァントであるネロとカリギュラを相手に正面切って戦うなんて勝てるわけがなかった。

 

「…でも、まだ終わりじゃないよ。私の魔法は、鈴音ちゃんにやったように記憶をいじることができる。その魔法は相手だけじゃなくて自分にもかけることができるんだよ…これがどういう意味が分かるよね?」

 

茉莉はカガリが何をしようとしたかようやく理解した。計画が失敗してしまった以上、復讐できなくなり自分の身を滅ぼしてでも殺そうとする。

カガリは自ら絶望して、魔女になってまで殺そうと考えている。

 

「⁉︎ダメだよ、そんなことしたら‼︎」

「私の記憶をサイアクなお話として作って流し込めば今すぐにでも魔女になれる。だからね…」

 

魔法を使って自分の記憶を酷いものへと変えていく。絶望によってソウルジェムが濁り、とうとう魔女になる直前にまでに至ってしまう。

「そんなのダメだよ!椿だって生きてるかもしれないんだよ‼︎」

「また、嘘ついた。椿が生きてるなんて絶対に信じない…生きてるなら、椿のお守りなんてつけるわけない。

やっぱり、茉莉なんて嫌い」

 

茉莉のことが嫌いだと何度も言っていたものの、彼女の最後の言葉にはカガリの目には涙を流しながら別れを告げている。彼女の記憶が書き換えれ、ソウルジェムの濁りは止められない。

 

ーーーバイバイ

 

「カガリィィィッ‼︎」

 

 

手を伸ばそうとする茉莉はカガリに向けて叫ぶことしかできなかったが、鎧兵は彼女の口よりも身体が瞬時に動いた。

 

(タートナック⁉︎)

 

タートナックはカガリの生み出した絶望と負を直接受け止めている。カガリの顔を見て、鎧兵は椿のように魔女になるのではないかと確信した。

なんとしても魔女化させまいと、絶望の負を取り込んでいく。過去に魔女になってしまった椿の時のように、その子にも二度とあんな魔女にはなってほしくないということから考えなしに突っ込んでいく。

 

(まさか、カガリちゃんの穢れを全て吸収しようと…)

「離せこの化け物っ‼︎」

 

彼女が自分の記憶を改竄して、いくら泣き喚いて殴ってどかそうとしても、絶対に離そうとしない。まだ彼女が自分の身を滅ぼしてしまう前に、必ず会わせなければならない人がいる。鎧兵が抱きついている以上、まだ彼女の記憶の全てを最悪にさせたというわけではない。カガリは魔法でレイピアを出現させて、鎧の隙間から突き刺す。

 

しかし、これでもかというくらいに離れようとはしなかった。まるで彼女の辛さ、痛み、悲しみを包み込むように抱きしめる。だが、負を取り込むことによって耐性が付いていく。

 

もうタートナックに、意識と記憶の改竄は効かない。鎧兵はカガリを抑えたまま、その身体から着物を着た女の人が出現した。

「え、椿…な、んでっ…」

 

タートナックの隣には死んだはずの美琴椿がそこにいた。キュウべぇが死んでいると嘘を言ったせいで、まさか生きているとは本気で思ってもなかったのだから。

 

カガリは驚いて、目を丸くしている。

椿の心臓はちゃんと動いており、彼女もカガリを抱きしめていた。

 

「なんで…死んだんじゃ、なかったの?」

「私は…こうして生きています。タートナックのおかげで。

貴方達二人を巻き込みたくなかったのに、私のせいで巻き込んでしまった」

 

カガリはレイピアを落とし、目を見開いて死んだと思っていたはずの椿を凝視している。

 

「いや、私は、なんで、どうして、椿は…私達を、みす、てたくせに」

「あぁする必要があったの。私がこの魔物の身体にいなければ…今頃私は魔女になって暴れていたかもしれない。

 

そしてカガリの言う通り、殺されていたでしょう」

 

本来魔女から人に変えること自体が異常なのだ。魔女になってしまった以上、二度と人に戻ることはできかった。

 

だが、魔物はそれを可能にした。今目にしているものが現実として、実際に椿が生きている。あの怪物から鎧兵が救うことで、魔女になった椿を蘇らせた。それでも、

「…みんな嫌い、茉莉も、椿も、みんなして嘘ばっかり言ってみんなみんな大っ嫌いっっ‼︎‼︎死んでしまえばいいんだ‼︎‼︎」

 

 

カガリは椿がたとえ生きていたことがわかったとしても、自分にかけた記憶の改竄のせいで感情的になって暴れている。椿が二人ではなく鈴音の方に委ねた結果、こんな悲しい事件が起きてしまった。魔女による椿の死から、カガリの願いが鈴音の記憶を改竄させたことで彼女を殺人鬼にまで変貌させてしまった。

 

鈴音は罪のない魔法少女を暗殺し、無関係な人を死に追いやり、大事な人を傷つけた。真実を知った彼女の悲しみは、カガリの言う通り絶望に堕ちて魔女になってもおかしくなかった。

 

カガリが魔法で拳に力を込めて、鎧兵に殴りつけても、魔女にならないようにカガリを抑えようとする。

 

「離せって言ってんでしょっ‼︎」

「⁉︎やめて‼︎」

 

カガリが泣き止むまでずっとダートナックはそうしている。彼女の抱えた絶望を鎧兵は何も言わずに受け止め続けていた。

 

「もう、死にたい…このままいっそのこと…その剣で私を殺して」

「…」

 

カガリは離そうとしない鎧兵に疲れて暴れるのをやめた。絶望どころか、彼女の目には正気が写っていない。

 

「何も知らなかった私が椿が生きてたことも知らずに、鈴音をあんな風に変えて、私のことが許せないでしょ?

 

私のことが憎くてたまらないのなら、本能のままに殺しなさいよ」

 

だがこの鎧兵は、この世界の何処にでもいる魔女や使い魔のように無慈悲に人の命を刈り取れるのか。時の神殿でずっと立っていたままの人生が、魔女のいたずらでこの世界に降り立ち、様々な人達と出会ってきた。

 

カガリを【殺す(Kill)】か【許す(Mercy)】か。

 

鈴音の記憶から魔物の存在を抹消させ、さっきまでの優しい心を持っていた彼女をここまで歪に変えたのは紛れもなくカガリの記憶操作だ。

 

 

ーーーーダレカ、タスケテ

 

 

だが、彼女の絶望を取り込んだ鎧兵は、その微かな声を聞き取っていた。最悪な記憶は鎧兵がそうさせまいと動こうとした時点で防がれたが、心が疲れ果てた彼女はもう生きたいと望んでいない。カガリもまた偽りの真実に踊らされ、記憶の改竄のせいで鈴音をキリサキさんという暗殺者に変えられ、茉莉さえ利用し、最悪殺そうとしたのだから。

 

「…え?」

 

鎧兵はカガリの頭を優しく撫でる。少女の命を刈り取るために剣を取らず、彼女に慈悲を与えた。たとえ敵だったとしても彼女もまた鈴音と同じように加害者かもしれないが、同時に被害者だった。もし本当の真実を二人に伝えれたのなら、こんな事にならずに済んだかもしれない。

三人が笑い合える未来が。

 

だからこそ、無口な鎧兵が彼女に伝えることは許さないとか、殺してやるとかの憎悪ではなかった。

ただ鎧兵が伝えたかったことは

 

【ゴメンネ】

「変なの…なんで貴方が、私に謝るの?いみ、分かんないっ……!」

 

カガリは大事な人を陥れたのになんで鎧兵が謝るのか理解できなかった。

この鎧兵が一体何を考えているのか。

しかし、カガリは無意識に涙を流しており、声も震えている。今度は椿がカガリに近づいて、抱擁した。

「二人に本当のことを言わずに出て行って…ごめんなさい。タートナックに鈴音のことを任せさせたことも、鈴音にも一人きりにさせたことも…」

 

さっきまで敵だったカガリが、こうして感情的になって泣き叫んでいる。茉莉と鈴音も椿に会えるとは思っておらず、いつの間にか自然に泣いていた。

鈴音はタートナックのおかげで生きていることを知っているのにこうしてまた会えたことに心の底から嬉し泣きしている。

茉莉もカガリと同じように妻を亡くしたことで塞ぎ込んでいたのを、椿が変えてくれた。そして、キュウべぇのおかげで目が見えるようになり、世界だけではなく、二人にとってかけがえのない人が帰ってきた。

 

もう自らの首を締めて魔女に堕ちることも、誰かを殺す復讐も。

椿の生還と、鎧兵が許し(Mercy)たことでこの場は丸く収まる、はずだった。

 

「やれやれ、カガリは僕との約束を破るんだね。君は契約の時に失敗したら魔女になるって言ったのに。

しかも、ここまで隠してたことまで明るみになった上に失敗するなんて。台無しだよ、全く」

 

宇宙の維持のためにエンドロピーを集め、人の感情を利用して魔法少女にさせた。真実を伝える必要性は無いと勝手に判断し、自分達の都合で多くの少女達を散々騙してきた全ての元凶、インキュベーターことキュウべぇが横から割って出現した。

 

 

*****

 

「こんな、こんな…馬鹿なことがっ…早くここから離れて回復魔法を」

 

カリギュラに吹き飛ばされた黒魔道士は壁に手をつけて歩きながら移動していた。さっきカリギュラに空中から地面に叩きつけられたせいで出血多量になっている。杖は使えても、返り討ちにされるのが目に見えている。

 

(私以外のシャドウファイターを使えばっ…!)

 

戦力が黒魔道士とカガリの二人だけではなく、シャドウファイターの内三人がいると考えていた。彼らの実力は有名な英霊とほぼ同等である為にそう簡単に倒せないはずだと考えていた。が、

 

「貴様が襲撃者か」

 

逃げようとしたところには花京院とピチュー、ワドルディが囲んでいる。シャドウファイター達は既に倒れており、残るは血を吐きながら逃げようとする黒魔道士一人だけになった。

 

「もう、これで終わりのようね‼︎」

 

もう詰んだ状態だったが、三体のシャドウファイターの残骸を見て、黒魔道士は不敵に笑いつつまだこの状況を脱する策を閃いた。

「…それはどうかな?」

「何?」

 

黒魔道士はあらかじめ用意していた召喚陣を魔法で取り出す。

 

「⁉︎貴様ッ!何をするつもりだ‼︎」

「新しい英霊を召喚するっ‼︎貴様らは知らんだろうが、元々この世界に連れてこられた事情を知っているのは貴様らではない…この私だけだ‼︎」

 

それぞれの少女達にネロ、花京院、ピチューを、ワドルディを呼び出したことが、どういう事情で呼び出されたのかを黒魔道士だけが知っていた。

 

「神だと⁉︎一体何の話をしている‼︎事情を知っているというのはどういうことだ‼︎」

「話す口などない…あんな身勝手な神の依頼などもう知ったことかっ‼︎」

 

三体のシャドウファイターとタートナックの鎧の破片を触媒にし、新たな英霊を召喚しようとする。

 

 

「今度は何をするつもりだ!」

「あの人、僕らよりも強力な者を呼び出そうとしているんじゃないかと!」

 

身体中から黒い波動出している大男が立っていた。

 

「あの男は…それに急に空気が重く」

(誰なのかが見えない。だが、なんだ…この威圧感はっ⁉︎)

 

それはシャドウファイターで形付けられたものではない。入り混じりに変色していた形からだんだんと変わっていく。目から口、頭部に上半身から下半身へと変貌していく。

 

「…此処は、何処だ?」

 

そこから現れ出てきたのはさっきまで戦っていたシャドウファイターよりも禍々しく、ドス黒いオーラが包まれている。右手には賢者の剣を持ち、大勢の魔物達を支配した男。右手の甲にはトライフォースが光っている。

 

かつてハイラル全域を脅かし、支配しようとした魔王ガノンドロフ本人が黒魔導師によって召喚されてしまった。

ライダーとアヴェンジャーのダブルクラスという得体の知れないサーヴァントとして。

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