無口な黒き鎧兵   作:斬刄

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魔物と魔法少女

公共施設の図書館内で二人は鎧を纏っている何者かに警戒していた。さっきの魔女を倒したとしても、彼女らの目の前にいる正体不明の存在が敵か味方かわからない。

 

日がよく照らされ、天気は良好。

窓からの日差しが激しく、鎧に反射している。その鎧が魔女の使い魔なのだとしても当の既に魔女を倒したから、消えさられている。魔女の使い魔でないのならあの鎧の戦士は魔女の空間にいても全然平気のままでいたこと。そのことについて椿は不可解であった。

 

「…」

(一体何者なの…?)

 

 

タートナックは魔女を殺した二人の敵討ちをする気にもならなかった。余りにも突然なことでどっと疲れている。魔女はもういなくなり、一人でしか生き延びるしかない。

 

そもそも人間以前に誰かと話したこともなく、後ろへ退いて、この場からひたすらに逃げるという選択肢しかなかった。戦っても構わなかったが、タートナックにとって今はそんな気分にはなれない。

 

「⁉︎ま、待って!」

 

霧を吹き出し、同化してさっさと逃げて行く。

一人にしてくれと言わんばかりに二人から逃げていった。

*****

 

 

タートナックは逃げている間にあの時見かけた二人以外の他の少女達が使い魔を倒している。タートナックは一度足を止めて隠れながら見ていると彼女らの手には結晶体のようなものを持っており、黒く濁っている。

 

魔女を撃破して落としたものをその結晶体に当てると、黒く濁ったものが元の綺麗な状態へと変わってゆく。

 

「はいこれ、もうグリーフシード濁ってるから」

「分かったよ」

彼女らのそばには白い生物がいた。

彼女が渡したのは魔女から落ちていくものをグリーフシードと言い、グリーフシードをキュウベェの体内に入れている。しかし白い生物は一匹だけではなくチラホラと何匹か、町中に見かけている。

「あの…なんでしょうか?」

「僕と契約して魔法少女になってよ!」

 

別の白い生物は少女達を勧誘し、契約の話をしていた。その生物は彼女達のことを魔法少女と呼んでいる。

その生物達が大量に出現している。

契約すれば言葉通り魔法を用いた少女ということになる。

 

二人以外にも魔法少女がいていつかは討伐されるんじゃないかと身を震わせながらも安全な場所を探していた。

 

*****

 

タートナックは逃げ続け、自分にとって安全な場所をどこにすれば良いか迷ったが末に森の中へと逃げた。ここまで来れば見つからないと甘い考えで鎧や武器を側に置いて寝ていたが、それが仇となった。

 

「ようやく見つけたわ」

 

次の朝、タートナックが起きると、網か何かで捕縛されている。白い子の少女が能力を使ってタートナックを動けないようにしていた。昨日に出会った美琴椿が見つけ出し、逃げ隠れしているタートナックを発見していた。

 

「待ちなさい!貴方には色々と聞きたいことがあります」

 

すぐに拘束を解いて逃げようとするともう一人の魔法少女と炎で周囲を遮られてしまい、逃げ道がなくなってしまう。タートナックは諦めて、すぐに御用となってしまった。

 

「ひとまず…ここじゃあ話し辛いから…でも」

 

二人は余りにもタートナックの鎧姿の格好が派手で、目につきやすいから困っている。このまま他の魔法少女に見つけられると厄介なことになる。

タートナックは仕方なしに霧を作り出して同化した。

 

「⁉︎貴方…ありがとう」

 

霧へと変貌してそのまま停止した。

タートナックは彼女の後ろをついて行き、後を追う。鈴音は霧に変貌したタートナックを見て若干怯えて、椿にひっついている。

「襲ってこないかな…」

「大丈夫よ、スズネ」

 

椿の家へと向かって帰る。このまま霧を空へと飛んで逃げても、タートナックにとっては良かった。が、すぐに椿に気付かれてしまうために潔く彼女の家に行くこととなる。

 

家にたどり着くと、元の姿へと戻る。

タートナックが霧から鎧に変わったのを二人が目を丸くして間近で見ていた。

 

「西洋の騎士みたい…」

「触って良い?」

 

鎧を纏った姿に二人は興味津々に玄関近くで武器や盾、鎧をところどころ触り続けてくる。武器を置いて、別に触られても構わないと身体を動かないようにしていた。

鈴音はコンコンと鎧を軽く叩く。

 

「ありがとう、もう良いわ」

 

奥へと進み、リビングに入ってゆく。タートナックは鎧と武装を霧と同化させて、外した。

 

「私は美琴椿です」

「あっ、あの…天乃鈴音って言います」

 

少女である鈴音はタートナックに頭を下げて丁寧にお辞儀をする。

「早速だけど貴方のお名前は?何者なの?」

質問を聞いたタートナックは突然立ち上がり、リビングの周囲を見渡すと側にあった紙と鉛筆を見つける。

 

「…喋れないの?」

 

紙と鉛筆を手にとり、タートナックは何かを書いている。魔物である身であり日本語ではなくカタカナの方がタートナックにとって伝えやすいものだった。

〔ナハ、タートナック。

シャベレルトイエバ、アマリシカシャベラナイ。

ナニモノカトイエバ、マモノ〕

「ま、魔物⁉︎」

 

魔物であるから嫌悪されるんじゃないかと。が、二人はタートナックのことを不快な目で見ておらずもっと知りたいと質問を何度もしていた。

 

「ねぇ、なんで喋れないの?」

〔イツモヒトリデタタカッテイルカラ、ダレカトハナスキカイガナイ〕

「そうなの…」

 

このタートナックは一人で戦うことだけに特化しており、いつも口を閉じていた。ゴブリンのように強欲で下衆な考えや、忠誠を尽くして主人の邪魔をする輩は問答無用に力ずくで叩きのめす魔物もいる。

 

〔マジョトイウソンザイニヨビダサレテ、キヅイタラココニ〕

本来魔物は人々にとって害悪なもの。

市民や村人などの幸せな人達を脅かす魔物、魔女、魔王を退治するために勇者などの希望が存在して、それらを伝説の剣や盾などを所持して立ち向かう。

 

この魔物はコミュニケーションの少ない魔物だった。集団の群れに入ることなく、黙々と一人で目的を遂行していくことが好きだった。

 

前まではずっと【ぼっち】ではあった。自分が騎士ではなく魔物であることを話し、魔女に呼び出されていたことを話す。

二人はタートナックの話を信じた。

 

「それじゃあ今度は私達からね。

私達は魔女を倒す魔法少女なの」

 

人々を危険に晒そうとする魔女を倒すために魔法少女が存在する。1つの願いを叶える代わりに魔法少女に変身して命がけの戦いをする。

生き残る為に。

 

人々の命を脅かす魔女や使い魔を倒すために懸命に必死になって戦う少女や、縄張りを張っている魔法少女達もおり、魔法少女同士との争いとなって戦闘もある。

 

 

「そして、もう1つ紹介したいのが」

「椿!正体不明の鎧騎士を見かけたって聞いたけどこの人?」

 

椿が話をしている最中に白い生物が部屋に入ってくる。赤い2つの丸い目と長い耳、四足歩行をして机の上に座っている。

「ちょうど良かったわ、この子がキュウべぇ。私達のような魔法少女になるには契約しなきゃいけないのよ?」

 

キュウべぇという白い生物だった。

タートナックのことについてキュウベェに話し、タートナックの方は彼女達以外にも他の場所にチラホラと見かけていたと書いた。キュウべぇが複数もいることを書く。

 

キュウベェがそのことについて話すと、二人とも何も知らない為に驚いて叱っていた。

 

タートナックはキュウべぇのことを不審にしか思えない。

この生物は少女達とずっと一緒にいるのに隠していることが余りにも多すぎると感じていた。

「ねぇキュウべぇ。何かわかることがある?」

「うん、少しずつだけど肉体から彼女達の穢れを吸い取っている。こんなこと初めてだ」

タートナックはお腹を空いておらず疲れていない理由は負のエネルギーと穢れを少しずつ吸い取っている。

キュウベェはタートナックのことを異質な存在だと言っており、魔女や使い魔でなく人に害を加えないのなら何も問題はないも言っている。

魔物でも無闇に暴れたりしないのならばキュウべぇからすると放っておいても構わなかった。

「ねぇ、タートナック…協力してほしいことがあるのだけど良いかしら?もちろんここに住んでもらって構わないわ」

 

椿が鈴音の為にタートナックにも魔女の撃破に協力して欲しいと頼んでいる。魔法少女に初めてなった鈴音は、まだ未成熟であり、椿がその子を支えなければならなかった。

 

人手が増えるのは椿にとっても嬉しいことであり、タートナックもまた住む場所があるならという理由で軽々しい気持ちで協力することとなった。

 

*****

 

「ツバキ〜。タートナックー。帰ろ!」

 

タートナック、天乃鈴音と美琴椿の3人が魔女退治を何日かやっていくうちに自然に仲良くなっている。

タートナックは前線でいつも戦っており、敵の攻撃を盾で防いでいる。後方では椿が炎の魔法で援護し、トドメは鈴音がやっていた。

 

椿は炎の魔法を使っているが、鈴音は倒した魔女の力を吸収して保持することができる。

キュウべぇは上書きする時は慎重に選んだ方がいいと言っているものの鈴音は魔女を倒した後にどんな力が宿っているかという喜びを感じている。

 

「ねぇ、タートナック?昨日のように乗せてもらっても良い?」

魔女退治が無い時は、たまにタートナックは鈴音の相手をして模擬戦をしたり、下になって鈴音を乗せて肩車をしていることもある。

「高いたかーい♪」

(♪)

タートナックも機嫌が良く、鈴音を喜ばせていた。

二人は楽しくしており、鈴音はいつも助けてくれるタートナックに笑いかけていた。

 

*****

 

タートナックは魔女の戦闘でクタクタになって別の部屋でぐっすりと寝ていた。

 

リビングで、椿はお世話になった人が死んで、その人の名前を紙に書き出し、お守りにしまっている。忘れることなく一緒にいられるおまじないをしていた。

 

「何しているの?」

鈴音は椿が何をしているのかと、顔を出している。

 

 

彼女の作っているおまじないの意味は死んだ人の名前を書いて忘れずに一緒にいること。

 

鈴音はそのおまじないを見てもしも自分やタートナックが死んでしまったら名前を書いて忘れないように一緒にいられると言っているが、椿はそんなことをしなくてもずっと一緒にいますと抱き締めた。

 

 

 

*****

 

ある日の深夜のこと、椿がタートナックを呼んで、話がしたいと鈴音が眠っているうちに話しをしようとしていた。

 

「少し話があるのですが、いいですか?」

 

 

彼女は鈴音との出会いからまず話を始めた。それはまだ鈴音が魔法少女になる前の、その少女と出会った話。

 

椿は魔女を倒しに行こうとするが鈴音とその両親が魔女の結界に入ってしまい、魔女に殺されたことを話した。

助けに行った時には鈴音しか生きておらず、椿はそれ以降、鈴音に尽くすこととなった。

 

「もし私に、何かあったら…あの子のことをよろしく頼みます。無茶なことなのはわかってます。でもこれはずっと一緒にいてくれた貴方にしか頼めないの」

 

自分が死んだ時のために、一人ぼっちの鈴音のことをタートナックに頼んでた。しかし、タートナックは鈴音と二人だけで一緒にいるということに苦難していた。

(デモ、ソレハ…)

 

鈴音にとって椿もいなければならない。しかも魔物に少女を育めというのは、タートナックにとって余りにも重荷である。頭を頷いて承諾することも、横に振って断るのも心苦しいものだった。

 

(…ナンデアンナコトヲ)

 

椿の状態が危険だというのなら、タートナックが彼女よりも頑張れる。タートナックが鈴音の手本になって身体を休めればいいだけの話だ。しかし、椿が頼んだ本当の理由をタートナックはこの時は何も知らなかった。

 

 

魔法少女の本当の真実を知るまでは

 

 

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