名付けにおいて些細な事であれば、必要不可欠であるという話である。
【リンドウ】
なぜ鈴音達にそう呼ばれいるかというのは、それは仲間が神の恩恵として滞在が帰還かを迫られてから約1ヶ月経った後のことである。
「ねぇ、私達さ…鎧兵さんって何回か呼んでるけど、本当の名前について全く聞かされて無いよね?」
休憩中に集まり、何気ない会話をしている中で亜里沙がある疑問を口にした。
例えで言うなら、ペットショップで動物を飼うときにペットの呼び名を付けずないまま犬と呼んでいるようなものである。
赤ん坊を産む時とかも、必ず名前をつけられるだろう。
そう考えると、魔物であり、姿からして鎧兵でもあり、タートナックという名でもあったが、ただ単に種類の名前を言っているだけではないかと。
「確かに…それもそうね」
「タートナックっていうのが名前とかじゃないの?」
動物の種類にある馬、昆虫という種類の蟷螂といったような種族に基づいた物がある。
しかし、そんな種族にも違いはあるだろう。
蟷螂にだって背景に擬態できるものもあれば、
RPGのモンスターもスライムのような魔物がいて、そんなスライムにも、赤スライムとか青スライムとか異なっている。
「そのタートナックが使い魔まで生産してるんだよね?使い魔もタートナックって呼んでるみたいだから…それって余計ややこしいことになるよ」
この現代において人間が生きて、付けられた名前も皆がバラバラであり、一括りにされることは無い。名前が被ってる人もいるが、それでもごく稀な事なことである。
鎧兵は、魔物という種族とタートナックという種類があっても、鎧兵自身の名前は何も持ち合わせていない。
「えっと…鈴音ちゃんは、なんで呼んでるの?」
「…?今でも鎧兵さんって呼んでるよ?」
「その鎧兵さんにあったのって、小さい頃に会ったんでしょ?」
「うん。
幼い頃はタートナックって呼んでたりもしてたよ。でも、呼びにくかったから鎧兵さんって言ったも良いってことて」
大事にされてる鈴音や親しい人ですら、その鎧兵の本当の名前を全く知らない。一緒にいた椿も、同じように声をかけていたから。
*****
鎧兵が神浜市に帰ってきた時、今までちゃんとした名前が付けられてなかった事について鈴音達が詰問をしていた。
鎧兵はなぜみんながこうも名前のことで何度も質問している事に小首を傾げ、自分に大した特徴が無いから一括りにされてると理由を話していく。
その理由が、彼等にとって驚かられることも知らずに。
『…?固有ノ名前ハナイ、一括リニサレテイル』
「え…?」
「ちょっ、ちょっと待って…それじゃあ今まで誰かに名前を付けられないままになってたってこと?
アリのシロアリとかチューリップのアンジェリケみたいな種別で…私達、ずっと呼ばれてたの?」
全員が目を丸くし、言葉を失った。
それでも鎧兵ともタートナックの両方どちらで呼ばれても、怒ることもなく気にはしていない。
「鎧兵デモ、タートナックデモ。
好キナ呼ビ方デ、良イヨ」
「「「「「「絶対にダメっ‼︎‼︎」」」」」
それを聞いた鈴音達は猛反対し、鎧兵は理解できずに困惑する。
「名前って凄い大事なんだよ!え、それじゃあ…名前すら言わずにただ犬を犬って今まで呼び捨てにしてたの…」
「気が利かなかった私達も、いけなかったけどさ…」
「誰かに厨二病のような変な名前を付けられてなかっただけ良かったよね…」
最も、そんな話を聞いて鎧兵以外は誰も納得などできなかった。猛反対し、今すぐに名前を考えようと催促する。
『全ク、分カラナイ…』
彼らの反応に慌てつつ、どう呼ばれた方がいいか考えもしなかった。自分の名前を決めて欲しいと言われても、何も思い浮かべなかったのだ。
魔王は側近でも無い限り、駒扱いする魔物に対して名前をつけてなどいない。すぐに倒されてしまうのだから、どうでも良い扱いを受けているから名前など気にしない。
だが、実際に親愛している鈴音と彼女の周りに名前付けを強いられることに直面している。
だ考えても、考えても結局思い浮かばないので、困り果てている。自分では考えらないため、最年長の椿から何か名付けのアドバイスをもらおうとしていた。
【竜胆】
花に詳しい彼女がふと思いついた名前であり、その花言葉は勝利と正義、誠実、あなたの悲しみに寄り添うことである。勝利という花言葉には、リンドウの根に薬や漢方薬といったような病気に打ち勝つことが由来している。
実際に誠実であり、魔法少女の悲しみに寄り添い、彼女達の闇の部分に打ち勝っている。
その意味に相応しくもあり、そのまま新しい名前を付けられることとなった。
なお、鎧兵の名前の件で亜里沙と春香の二人は2匹のことを思い出し、また危機感を抱いていた。
「ねぇ、もしかして…ピチューとワドルディも…種族を一括りにした名前?
もし、そうだとしたら」
「元いた世界ならともかく…この世界で1匹だけしかいないから、それでリンドウは大して問題ないって返事をしたから。
この様子だと、ピチューもワドルディも…同じ返答をしそうだわ」
「ハァ…この世界に来て、そんな扱いをずっとしてたら可哀想よ。
今度、名前を考えましょ…」
ネロとカリギュラはちゃんとした真名であることを明かし、歴史書にも載ってあることを教えている。
鎧兵の名付けをした後日、イービルの隠れ家に訪問し、春香と亜里沙は名前のことで聞いてみたものの本人達は別に気にすることもなかった。
「そう呼ばれるのが当たり前の世界ですし、名付けをされるなんてことはないです」
「こっちはどうしても名付けしたいトレーナーとかかなー」
ピチューとワドルティの二匹は、鎧兵同様に全く気にしていないことに、今度は春香と亜里沙の二人は頭を抱えている。
デデデ大王にはワドルディと呼ばれており、区別されることもない。ピチューもまた同様であり、当たり前となっているが、例外としてポケモントレーナーがニックネームを付けることもあるという反応だった。
イービルについても既にワドルディやピチューの2匹から先に真名を伝え、他にもブラック・マジシャンがいるから括りではあることも認めた。キャスターかイービルの二つ名で、彼の名前については特に気にしない。
そんなこんなで、
「「だから、僕らも気にしてないよ」」
「あの
用がないなら帰れ、私は忙しい」
「そ、そうなのね…」
「あんた達本当にそれで良いの…」
マスターのカガリに変な名前を付けられたくないと嫌がっていたことから、別にブラック・マジシャンでもイービルでも問題ないと無理矢理この話は打ち切られる。
その話題に、彼はただ呆れて憂鬱な顔のままジト目をしている。
「えっと、名前って結構大事なの?」
「…大事じゃなかったら、私も春香も苦悩なんてしないわよ」
なお、二匹の名前については春香達全員でまた考えていたとのこと。