【済】IS 零を冠する翼   作:灯火011

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※読まなくても本編には一切影響がありません。


ガルパンはいいぞ。ということで、オープニングのDreamRiserを聞いていたら思い浮かんだIF。

主人公がもし、束と同じ世代で生を受けていたならば。
そして、もし偶然にも、主人公の零戦を生で見る機会があったのならば。

宇宙に憧れた少女と、空をただただ愛する人間の「もしも」の話。





もしも の はなし
IF:DreamRiser


 その日、私は荒れに荒れていた。私が完成させた研究である「マルチフォームプラットスーツ」を発表したのに、机上の空論だと一蹴されたのだ。

 確かに実機はまだ完成しては居ない。でも、これが完成した暁には、誰でも簡単に宇宙を目指せるはずなんだ。

 

「何が、何が机上の空論だよ!何が小娘のたわごとだよ!あぁ、もう!」

 

 こうなったら、何が何でも奴らに認めさせるしか無い。手段は選ばない。私の研究を理解できない「凡人」は、こんな世界は、私の手で変えてやる。

 

 

 実機の完成と、世界の改変を行おうと準備を行っていた時、私はちーちゃんの誘いで戦史保存のイベントが行われている羽田空港へと足を運んでいた。

 ちーちゃん曰く「前の戦史保存のイベントですごい機動をする戦闘機がいたんだ!」とのこと。話を詳しく聞くと、あのちーちゃんがその戦闘機のマニューバに一目惚れしちゃったらしい。…ちーちゃんが一発で惚れる戦闘機かぁ。どんな戦闘機なんだろう?

 それはそうとして、この戦史保存会とでもいうイベントはつまらない。旧式の戦闘機ばっかりだし、技術的に見所もない。本当、ちーちゃんの誘いがなければ、私はこんな所絶対にこないはずだ。展示飛行といっても、空の上を適当に飛んでいるだけだし。

 

 と、そんな思案を続けながら、会場内をちーちゃんと歩いていた、その時である。

 

 一機の戦闘機が、エンジン音を響かせながら、いままでのどんな戦闘機よりも低く、私の上をかすめて行ったのだ。

 

 「うわっ…危なっ!」

 

 私はそういいながら、頭上すれすれを飛んでいった戦闘機を目で追った。追ってしまった。そうして、目で追った先では、羽から雲を引きながらのびのびと空を泳ぐ戦闘機の姿があったのだ。

 

 「…え?」

 

 なんだろう。いままでの戦闘機の展示飛行とは、ぜんぜん違う。今までの戦闘機は「飛ぶ」ことが精一杯であったように思えた。だけど、あの戦闘機は「飛ぶ」ことを、思いっきり楽しんでいるように感じたんだ。

 

『束!あれだ、あの戦闘機だ!あの緑色の!』

 

 ちーちゃんが何か叫んでいる。だけど、私はあの戦闘機から目を離せない。常に羽から雲を引き続けながら、他の戦闘機よりも明らかに低い高度でマニューバを繰り出すあの姿は、私のこころを、直に揺さぶった。

 

---只今の展示飛行、使用機体は「零式艦上戦闘機21型」。発動機はオリジナルの栄。パイロットは日本戦史保存会において、女性ながらにしてのエースパイロット「小鳥遊彩羽」!---

 

 もしかしたら、もしかすると、小鳥遊彩羽というパイロットならば、私の夢を理解してもらえるかもしれない。そう思った私の足は、小鳥遊彩羽が所属している「小鳥遊家」へのブースへと、勝手に歩みを進めていた。

 

 小鳥遊彩羽とは、案外すんなりと出会うことが出来た。どうやら、彼女は展示飛行専門で、飛んでいる時以外は時間があるらしい。

 

「ねぇ、小鳥遊彩羽って貴女でしょう?私は篠ノ之束。」

 

「おや、篠ノ之束さん。何がご質問がありましたら、あちらの方に…」

 

「貴女に用があるの。ねぇ、さっきの戦闘機、貴女が乗ってたの?」

 

「えぇ、そうですよ。」

 

 長い黒髪に、笑顔が似合う切れ目の女の子。それが、小鳥遊彩羽だった。

 

「そう、それならちょっと話聞いてもらいたいんだけど。」

 

「うん…?なんでしょうか?」

 

「ここだと話しにくいから、あっちのカフェでいいかな?」

 

 

 小鳥遊彩羽は、私のぶしつけな要望にも嫌な顔せずに、私の話を聞いてくれた。私の夢は、友達と、大切な人と宇宙を目指すことだって。そのための研究も出来上がってるし、マルチフォームプラットスーツの実機も完成するんだって。

 彼女はそれをただただ聞いてくれていた。普通の人間だったら、学会の人間と同じように私を馬鹿にすることだろう。蔑むことだろう。

 だが、彼女の答えは、私の予想していたものと全く別物だった。

 

「…その夢。最高じゃないですか!もしそのマルチフォームプラットスーツが出来上がったら、ぜひ乗らせてください!」

 

 彼女は、満面の笑みを浮かべて、私の手を握ったのだ。こんなこと、ちーちゃんでもしないことだ。

 

「本当?貴女は私を馬鹿にしないの?」

 

「しないですよ!だって、『空を超えて宇宙を飛べるなんて、最高じゃないですか!』」

 

 小鳥遊彩羽はそう言うと、篠ノ之束へと笑顔を向けていた。

 

(あぁ…。理解してくれた。一緒の夢を、持っている人がいた!)

 

 私は小鳥遊彩羽を正面に見据えると、同じように笑みを湛えながらゆっくりと、しかしはっきりと彼女に伝わるように、言葉を紡いだ。

 

「…最高だよね、そうだよね!判った!私の研究が上手く行ったら、『たっちゃん』にすぐ知らせるよ!」

 

「うん!お願い!そういえば束さん。そのマルチフォームプラットスーツの名前ってあるの?」

 

「勿論だよ、たっちゃん!重力を超え、しがらみを超え、無限の成層圏へと羽ばたく翼。私はこう呼んでるんだ。」

 

---インフィニット・ストラトス---と。

 




こんな世界もあったのかもしれない、そんな妄想が溢れ出ました。

この世界では、軍事施設のハッキングも起きず、ミサイルも飛んできません。
その代わりに、宇宙開発の要として「インフィニット・ストラトス」が世界中で研究されていきます。

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