もやっとしています -1-   作:ろーん_00

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第1話

 

 

日付が変わるか変わらないかぐらいの時間。

輝は1人足早に事務所に向かっていた。

本来は仕事後直帰の予定だったが、明日の仕事のスケジュールが少し曖昧だったので、

確認するため事務所に寄る事にした。

夏が近付いているせいか、最近は夜になってもそんなに冷えない。

 

ふと、足を止めた。

誰かが事務所の前で立ち話をしている。

――報道?…いや、違うな、プロデューサー?

よく見ると、話しているのはプロデューサーと知らない男性。

プロデューサーは何度も頭を下げているようだった。

街灯の灯は思ったより薄暗く、男性の顔は確認出来ない。

 

輝がボーッと様子を見ていると、会話は終わったらしく、2人は別れを告げていた。

男性がこちらに歩いてくる。

輝は何となく男性を目で追い続けた。

すれ違い様に2人の視線がぶつかる。

プロデューサーと話していたその男性は、輝を見てニコッと笑った。

身長は輝より高め。深い青い目。スラッとした痩せ形の体型。

綺麗な顔だ。芸能関係の人だろうか。

輝はほぼ反射的に男性に会釈を返すと、再び事務所に向かって歩き出した。

 

男性を見送っていたプロデューサーが、天道さん!?と驚きの声を上げる。

今の男性、プロデューサーの何なのだろうか。

こんな夜中に2人で会ったりして…。

 

「お疲れ様です」

「おぅ、お疲れさん」

 

プロデューサーは変わらない笑顔で輝に挨拶をした。

 

「今の人、プロデューサーの……友達?」

「いいえ、さっき電車内で知りあったばっかりなんです」

 

――電車?プロデューサーの移動手段って基本車じゃなかったか?

 

「プロデューサーって電車乗ってたっけ?」

「私も電車くらい乗りますよ」

 

フフと右手を口に当ててプロデューサーは笑った。

 

「今日は仕事の関係者と飲み会があったんです」

 

言われてみれば、プロデューサーからほんのりお酒の匂いがする。

なるほど、さっきの男性はプロデューサーを事務所まで送ってあげたのか。

 

「んじゃあ、今の人もプロデューサーの仕事仲間なんだな。

桜庭に負けず劣らずのイケメンだったから、芸能関係の人かと思ったぜ」

 

「あ…いや、彼は帰りの電車で知り合っただけなんです」

「え?」

 

――そういえば、最初にそんな事言ってたような。

電車で知り合ったってどんなシチュエーションだ?

たまたま隣に座って、話しかけられて、仲良くなって、ココまで送って貰った…って事か?

飲みの後、プロデューサーがわざわざ事務所に来た理由は分からないが、普通の女性ならば家に帰るだろう。

つまり、家の目の前まで付いて来たって事になる。

それ、普通に危険じゃないか?

 

「知り合った?」

「は、はい…」

 

プロデューサーは下を向き、続きを語ろうとはしなかった。

 

「…?」

 

何かあったのだろうか?

 

「天道さんは、事務所に用事ですか?」

 

再び顔を上げると、綺麗に話題をそらしてきた。

電車で何かあったのだろうか。気になる。

あの男性はプロデューサーとどうやって知り合ったんだ?

これっきりの関係なのか?

自分に言えないような事なのか?

 

聞きたい事がとめどなく輝の頭の中を巡っていたが、とりあえずプロデューサーの話題に乗ることにした。

 

「……そんなところだな。プロデューサーも?」

「はい。明日必要な書類を整理しようかと思いまして」

 

――相変わらず仕事熱心なこった。

 

「飲みの後に仕事ねぇ…。無理するなよ?」

「ありがとうございます。夜も遅いですし、ひとまず事務所に入りましょう」

 

おぅ、と天道はプロデューサーに続いて事務所へ向かった。

 

 

少し古い扉を開けて、2人は事務所に入った。

いつも騒がしい印象の事務所だが、さすがに夜中は静まり返っている。

プロデューサーは自分のデスクに直行し、パソコンを立ちあげながら、書類を広げ出した。

飲み会の後なのに、何故キビキビ動けるのだろう。

輝には理解出来なかった。

きっと、一生理解出来ないだろう。

 

「手伝える事あったら言うんだぞ」

「ありがとうございます。すぐに終わりますから、大丈夫ですよ」

 

なら良かったと、輝は置きっ放しにしていた自分のバッグを回収した。

――これこれ、レッスン着はさすがに洗濯しとかないとなぁ。

輝は何気なくプロデューサーを見た。

デスク上には予想以上の書類が広がっている。

どう見てもすぐに終わる雰囲気では無いのだが。

 

「プロデューサー…」

「あ、天道さん、先に帰っても大丈夫ですよ。今日は私がお酒を飲んでいるので、送れなくて申し訳ないです」

「プロデューサーがタクシーにちゃーんと乗るまで見送るぜ。こんな時間、女性1人じゃ危ないだろ?」

 

プロデューサーは書類を整理している手を止め、輝を見た。

 

「お気遣いありがとうございます」

 

ニコッと笑う姿に少しドキッとした。

――よく考えたら、これって結構まずい状況?

深夜に女性と男性が2人きり…。

何を考えてるんだと、輝は激しく首を横に振った。

 

「……? どうかしましたか?」

「いやいや、なんでもない!」

 

 

 

 

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