Killzone Behind of Shadow 作:Whitepump
潜入というものは何度やっても飽きさせない魅力がある。
暗闇に身を隠し、敵が気付かず通り過ぎることに優越を感じ、仲間がいつの間にか死に、慌てる様を見おろす。滑稽でたまらない。
何年も使い込み、手に馴染んだサイレンサー付きのハンドガンの装填する。
「……ブラヴォー、状況報告。」
左耳の無線から電子音混じりに男の声が小さく聞こえる。
『こちらブラヴォー。奴ら、目の前の状況だけで手一杯だ。こっちの位置まではバレてない。』
「もう少し粘って。どうやらそっちに援軍を送ろうとしてるみたい。」
『……なるほど、あんたはその隙に頭を狙うと?』
「ターゲットはあくまでも司令官。引き続き陽動をお願い。」
『ラジャー、一度隊列を整える。グッドラック。』
「アルファー了解、カットオフ。」
無線を行う視線の先に、10人程のISA兵士が乗った軍用トラックが2台通り過ぎた。これで基地周辺の警備も手薄になってるはず。100メートルより先に司令塔が見える。吹雪で視界がだいぶ悪いが、むしろチャンスとも言えよう。
「……パパ、あたしこんなことしてるよ?……ごめんね。」
2時あたりで巡回していた兵士の頭を飛ばし、走り出した。
* * *
「ボス、報告です。」
暗い室内にワークデスクを4つくっつけた小さな部屋。パソコンと青緑の小さな照明だけで、人の顔を識別するだけで精一杯な光の中、2つのパソコンと格闘していた部下が口を開いた。
「クライアントCを含むその一行との連絡が途絶えました。」
「ただ無線を切ったんじゃなくて?」
仕事合間の珈琲が一層酸っぱく感じる。この豆もダメみたいだ。
「彼らが駐屯していた基地ですが、先ほど奇襲を受け、重要人物は全て始末された模様。巡回兵の4割も同様です。」
「……近くに戦闘があったと聞いたけど、そこに私たちが援軍で5人送ったはずよね?」
「我らがファントム兵は全員無事生還、依頼も達成はしましたが……」
「……依頼主がいなくちゃ交渉が続かないでしょ?!」
最悪だ。まだ中途半端で仕事が終わってしまった。思わずマグカップをデスクに叩きつけてしまい、カップが割れ、黒い中身が漏れる。
「……ごめん、続けて、」
「はっ、戦闘はISAの勝利。ですが基地は何者かに制圧され、司令官および視察に来ていた重要人物の計4人が暗殺されました。犯人は付近の戦闘が終わる前に当区域から離脱。ヘルガストの撤退に紛れ逃走した模様。捜索はいかに?」
「別に探さなくてみいいわよ。どうせあの子でしょ?」
途端に部屋に重い空気が流れる。多分、こいつらの頭の中は私と同じだ。
「彼女がこの紛争に私たちが加担するのを知ったのは、こっちの情報を盗み取れたからよ。そうでしょ?」
「……誠に申し訳ありませんでした中佐、情報面でのすべての責任は自分にあります。」
情報が漏れてしまった以上、取り戻したところでどうしようもない。せめて今後の流出を止めないと。
「本来なら今この場で撃ち抜いてやりたいけど、生憎私たちは圧倒的な人手不足よ。謝罪は聞きたくない、セキュリティを強化して。」
「はっ、直ちに!」
「コードを1週間ペースに更新すること。彼女たちが知らない暗号コードはまだたくさんあるわ。余すところなく活用しなさい。」
ここまできたらもうこっちとは対立すると立証して見せたものよ。こちらからも打って出ないと……
拭き終わったティッシュで割れたマグカップを包みこんだ。
「ところで、"彼"の捜索に進展は?」
「はっ!惑星までは突き止めましたが、開発があまり進んでない惑星です。外部からのコンタクトは厳しいものと思われます。」
私の後ろあたりにいた兵士が声を上げる。
「捜索隊を派遣する。ここだけは遅れをとるわけにはいかない。」
「はっ、ですが例の"彼"は……我々で対抗できるでしょうか?」
「倒せと言わない、捕獲して。まだ死んでもらうには早い。"彼"には私たち、新生ファントムタロン社のために散々働かせ、その後に殺すわ。さっさとかかりなさい!」
号令が部屋内に響き、数人の兵士が急いで部屋から出て行った。
「……」
依頼主は死亡、報酬なし、珈琲はすっぱい、捜索も中途半端。
「ほんとうまいこといかないわね、ここんところ……」
* * *
基地からおよそ5キロ離れた地点で味方と合流。彼らのハンヴィーに乗り込んだ。
「おっつかれー!」
全員の歓声があたしを迎えてくれた。
作戦は成功。今回はここ、生体化学兵器の大爆発で完全に廃墟地になった惑星ヘルガーンにての両面作戦だった。
生物が生きることさえ叶わないとされたヘルガーンではあったが、まだごく一部の地域では生体反応が幾つも見つかっている。例えば今回のエリア、南極の元スタール研究基地。こういった極限の環境ではまだ生き残りのヘルガストとそれを処理しようとISAが未だに小さな紛争をおこしている。
「ご苦労様でした、隊長。」
「お疲れさまです!」
「やったぜ、今回もあのファントム連中は事後処理で手一杯だろうな!」
そしてその一紛争を陽動に、私たちはある作戦を展開した。研究基地から約2キロ離れた地点で、基地の奪還作戦を試みたヘルガストと、それに応戦するISAの交戦。私たちはそのヘルガストの将軍からある依頼を受注した。
『基地にいるISA指揮官を始末してほしい』
とのこと。詳しい情報はこれから調べるんだが、どうもISAの中では現指揮官トップクラスに君臨していた人物らしい。その割にはあっさり死んでくれたけど。
「指揮官の人、全然弱かったなー」
「おそらく必死だったでしょう。この戦闘は彼にとっても負けられなかったようです。なにせ、あの基地にはまだ多くの謎が残っていますから。」
ヘルガストの随一武器商売人、および研究者である『ヨハン-スタール』の研究施設。そこにはまだ解明が進んでない装備あちこち転がってるとか。ただでさえ人員不足なヘルガストは喉から手が出るくらい欲しかったはず。それがどんなに危険なものであっても。
「それなら援軍を出したことにも納得がいくかも。かえって自分の命を差し出すことになったけどね。」
紛争に紛れ、私たちはその紛争に加担するチームと暗殺チームを組んだ。つまり前者がブラヴォー、後者がアルファーだった。戦いに夢中になっている間、ヘルガストより一足先に基地に潜入してターゲットを始末するという作戦。
そして見事に成功したあたしたちは、これから臨時拠点に帰還する。
「ところでさ、」
「はっ、なんでしょう?」
あたしの右腕兼、第一小隊を勤める『カレル-イクシナード』が応えた。ちなみにハンヴィーの運転も今彼がやってくれてる。
「例の"彼"の捜索は?」
「7時間前に、捜索隊から連絡がありました。惑星をつきとめたと。あとは彼らが直接惑星に入り、捜索を続行する予定です。」
ウェーブのかかった長い灰色の髪、ちょっと焼けた筋肉剥き出しの体は彼の四角い顔によく似合ってる。お顔通り、真面目で……うん、真面目すぎる彼だ。
「うん、よしよし。お姉ちゃんより遅れたらダメだもんね。ガンガン行かないと!」
「それより、此度の作戦は彼女に対しての敵対の意思を示すことになります。よろしかったのですか?」
「いいのいいの!お姉ちゃんとはどうも気が合わないしねー、新生ファントムタロン社?ダメダメ、それじゃあパパと同じ結末だもん。あたしそれは嫌だなー。」
「総司令は……悪い方ではなかったと思います。」
カレルの顔が急に暗くなった。仕方ない、実際彼はパパに拾われた孤児なもんだし……
「あたしも……そう思うよ。でもそれが理解されなかっただけ。周りからね。」
「……はい。」
「いいの、あたしたちはあたしたちのやり方で仕事をやる。パパは……ただ必死だっただけよ、あたしたちを育てるために……」
「隊長……」
「……ささ、急ごう!次の仕事に備えて準備を進めないと!"彼"……アラン-ダナーはきっと心強い味方になってくれるよ!いっくぞー"レッドスパイダー"ぁぁぁ!」
「「「おおおぉぉぉ!!!」」」
ハンヴィーがあたしたちの気合で溢れかえった。
ほとんどの方が初めましてだと思います!
以前ゴッドイーターの二次創作でお世話になりました!WhitePumpと申します!
前アカウントがメアド関係で凍結したので止むを得ず新しいアカウントで皆さんに作品をお届けする形になりました!
今回は珍しい原作の二次創作になり、銃劇戦の表現が難しい作品と予想されますが、少しでもいい出来をお届けできるよう参りたいとおもいます!
なお連載の期間は未定で不安定ですので新章ごとにお知らせをお伝えする予定です!主にtwitterで
#キルゾーン 二次創作
というタグでお知らせしていきますのでどうぞお付き合いいただけますよう、よろしくお願いします!