Killzone Behind of Shadow 作:Whitepump
「これさ、訓練に使った奴とかなり違くない?」
郵便局の人から白い目で見られながらも、自分の半分はありそうな大きさの箱を家まで運び、認証登録した後に一つずつ装備を取り出していく。
「ハンドガンとか……こんなに軽いの初めてだよ。」
と言いつつ、ジェイスはそこそこ慣れた手癖で弾込めと装填をやってのける。
実はこの家の地下深くに、倉庫として使う空間がある。今更言うのもなんだが、この家は持ち主がちゃんといる。たまたま家を出たっきりで戻ってこなくなったと聞いたから今こうやって使わせてもらっている。初めての頃はろくに食材が取れず、この倉庫に大変お世話になった。次第に倉庫の空きスペースが多くなり、そこで筋トレとか射撃訓練をジェイスとやっていた。どっちかというとジェイスが志願して自ら参加した形だが……
「LS12リッパー……か。サイレンサーはなしか?」
「あ、なんかライト付いてる、」
黒と白、二つの純色で塗られ、とてもコンパクトなデザインでかつ、目立った装飾は見当たらない。
「偵察用なのか?」
「わかんないけど、これすごくリロードしやすいよ、ほら。」
指のほんのちょっとした動きで、マガジンがスムーズに下にずり落ちる。そこに新しいマガジンを入れればリロード完了。しかも撃つ時に少しずつスライドが動く仕組みで、その度に火薬が送り込まれるようだ。道理でマガジンを変えたあともあえてスライドを引かなくていいくらい。
「どれ……3点バーストと単発に切り替え可能、セミオート式の汎用装備?」
「なんか無理やり火力補うためにその機能つけたみたい。」
「俺もそう思うぜ……」
半強化プラスチック製の大箱の一段階目にはサブウェポンと予備のマガジン幾つ。それを退かして2段目を開ける。
「あ、これ……」
「なるほど、偵察用じゃなく突撃用の装備だな……逃走用だからか?」
「でもこのアサルトマシンガン、あの時ダナーが使ったのと似てる!」
「あのな、俺はスナイパーメインだ、」
「いや、でもあの研究所を抜ける時にはマシンガンだったでしょ?」
「ああ、確かに……」
ジェイスの言う通り、あの時使っていたStA-52アサルトライフルと酷似してる。おそらく後継タイプだろう。
「名前は……StA409、『カイザー』なのか……」
「これさ、よく似てるのをヘルガストの一般兵がよく使ってた……」
「お前あの歳でもう一般兵とか区別付いてたのかよ?」
驚きだ。ただ逃げるに必死だったと思ったが……
「いやだってさ、みんなガスマスク違ったでしょ?しかもスナイパーの人はマントも被ってたし……」
言われてみればそうだった気が……
「でもさすがに15年だぞ?武器がこんなに変わるのに防御服が変わらないわけないじゃん。」
「じゃあ、みんな顔変わったのかな……」
「多分な……」
続いてジェイスの箱の2段目を開けた。
「あれ?僕の……デイニルのと違う?」
「これはどっちかというと……あれだ、ISAの標準装備だったM82アサルトライフル。そいつにそっくりだ。」
「でも銃身がちょっと長くなった気がする」
「見たことあるのか?」
「いやでもうろ覚えだから本当はそうでもないかも」
「名前は……『M55、ランブラー』。」
銃身の色は以前より明るくなってる。他にも細かい変更点がありそうだ。
「性能はカイザーとあまり変わらないのかな?」
「どっちもアサルトライフルで、しかも後継タイプだ。間違いない。」
「えーと……あのさ、予備弾倉になんかとびっきり大きい弾があるけど?」
「……それね……グレネードだってさ。」
「グレネード?!」
付属についてるマニュアルに書いてあった。
「要は、ミサイルみたいなグレネードランチャーだな……ただし、弾はほんの数発。予備弾倉の3分の1の体積を占めるから、そう多く載せられないみたいだ。」
「絶対こっちにもフィードバック来るんじゃないの?」
「あーそうか、グレネードランチャーといった爆発系のサブウェポンの訓練はしてないよな?」
「してたらこの家とっくに消えてるでしょ。」
「だろうな……でもそれ以外はいかにも標準装備だ。あとは新型の手榴弾……そして……」
「保険がてらの防弾服。」
さらに箱の真下には馴染み深い端末があった。作戦指示や受領、稼ぎ金額とかシステム制御に使っていた腕につける小型タブレットだ。
「あ、これ!」
「そう、これは相変わらずみたいね。」
そして装備を全て取り出した箱の底には何かで切り刻んだ感じで文字が並べられてあった。
「……Goodluckだってさ?」
「あいつんとこのお得意様になっててよかったよ。」
「それじゃ……つけてみようか?」
「おう、時間もそうないし、急ごう。」
ちょっと足が心配な木製テーブルに装備を並べ、防弾服とベルトを初め、装備をつけていった。
「フードは被っておけ、深くだ。」
「うん、つまり簡単に特定できないように?」
「その通り。」
自分の中の戦争終結から8年。俺はこれからまた新しくなる、ちょっとばかりずっしりした相棒を手に取る。いつ晴れるかわからない、戦争という霧の中に入ろうとしていた。
* * *
装備の最終点検。箱に入ってたマニュアルに従って、パーソナルデータの登録、無線リンク、他諸々と……
「こう……だよな?」
「じゃあ、いくよ?」
「おう……あ、あ、マイクテスト、聴こえる?」
「……うん、バッチリ。」
「あとはブラックジャックとに通信だが……」
「あ、繋がった!」
「お?こっちも繋げてくれ。」
本当にジェイスは習得が早い。こっちが一新した端末に手間取ってる最中にも彼はあっという間に詳細設定までやりやがった。
『おー?もうできたのか。さすがは新兵だね!』
のびのびとして、それでもちゃんと聴き取れるミドルトーンの持ち主、ブラックジャックの声が聞こえた。
「お久しぶりです、ジャック。」
『おうおう、そっちもすっかり大きくなってたみてえだな?』
「もう8年ですから。」
『まあ、連中も停戦中とはいえかなり手強くなったよ。くれぐれも気をつけろよ?』
こうしていたら、何だかあの空中要塞みたいな研究所での最後の任務を思い出す。
自分を利用し、ウィルスを盗み出しその末に殺そうとしたクラーテック。自分を追ってきたISAのグレイ将官。全ての戦争をウィルスでめちゃくちゃにし、自分は引退しようとし、その果てに証拠抹消のために俺を殺そうとしたベノワ。
もし、あの時ブラックジャックからの取引の申し出が来なかったら、今頃どうなってたのか……
「定期報告はもらってたよ。それで、今向こうはどうなってんだ?」
『あー……実はな……』
「……?」
『予想以上に奴らの動きが早すぎる。おそらく今日配達に使ったあのデカい箱が目立ったんだろうな。』
「そもそもデザインからしてこんな村には珍しいからな……で、あいつらは今どこらへんだ?」
『それがな……脅迫されちまってね。』
「交渉の間違いじゃねえの?」
『いやいや、一体何をどうやったのかは知らないけど、お前らの拠点より先に俺の拠点を突き止めやがったんだよ。何十年も隠し通した俺の古巣を!』
オンラインでかつ、声以外は全てフェイクの情報に基づいて行う闇商売が本筋なブラックジャックにとっては、彼の存在の隠蔽性そのものに意味があった。だからこそ本人も慎み深く行動したに違いない。が、それがバレたとなると……商売停止どころじゃ済まない。
「で、話を戻そう。あいつらはどこ?」
『すでに両側とも1時間も前ににそっちの惑星に入った。以外と捜索隊の規模が大きい。あっという間にお前らがいるところまで来るだろうな?』
「人気者は大変だ。」
まあ、傭兵会社のトップをぶち殺したもんだしな。
『で、だ。少し早いが、お前らは早速その家を出て逃げてもらうぞ?』
「彼らは今どこらへんに?」
『詳しいデータは追って端末に送る。そこからおよそ11キロ離れた村で捜索を行なってる。』
「めっちゃ近いじゃんか、おい!」
この時代に11キロだと安心できない。ましてやドロップシップだったらすぐにでも……
『とゆうわけで、早速逃走ルートを作っておいた。武器の演習もできずに逃げさせてすまないが、事態は一刻を争う。できる限り荷物を少量にまとめてくれ!』
言われた途端にジェイスが小さなバック2つにに非常食料と水を詰める。
「あとは現地調達でいいよね?デイル。」
「上等だ。」
渡されたバックを肩斜めにかける。端末でブラックジャックからの情報をインストール。
『よし……じゃあ、準備はいいな?』
「お前こそずっと俺たちと通信してていいのかよ?」
『今日のブラックジャックは臨時休業だ、お得意様に死んでもらっちゃ困るからね?!』
「やれやれ、ほんとうになっててよかったよ。」
武器を入れてた箱の認証データを全て削除。他に追跡されそうなものは片っ端から壊す。
「ジャック、準備できたよ!」
『忘れ物はないな?もうここには戻れんぞ?』
「……うん、大丈夫。デイル?」
「こっちも大丈夫だ、行ける。」
『よっし、ではバタバタしてすまんが、8年前の指名手配のお二人様の脱走ミッション、開始だぜ!』
合図を伴い、家の裏のドアを開ける。昼間にはなかった雨が地面を濡らしていた。水溜りを踏みつけ、ジェイスと俺は8年前の逃走の続きを始める。
うーん、ジャックさんが原作よりノリノリになった感じですかねぇ?まぁ彼も歳ですかr……ゲフゲフ。
さてと、次回より本格的な逃亡戦の始まりです!誰か誰に取られるか、それとも逃げ切るか?
多少アップまで時間がかかりそうですが、お楽しみに待っていただければと思います!(^^)/~~~