第一章:荒野の襲撃、そして気づかぬ再会
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凶暴な吸血鬼が滅んでから約2年と5ヶ月。人類はある一人の研究家の手によって滅びようとしていた。
その研究家の名は窪田利瑞という。彼は一つの病原菌を研究していた。人々を苦しい病から救いたいと誰よりも強く願った利瑞は、その病原菌を良質の細菌に戻しワクチンにする事が一つの目標だった。この実験に対する情熱は同じ研究科の仲間以上に熱かった。一週間以上ほぼ何も食べずに研究室で倒れ病院沙汰になる程だった。
そして利瑞の研究は、その後順調に進んでいった・・・。
『こちら、NPPO本部。そちらの状況は?』
「こちら0。目標確認。敵影2、以上」
『了解』
ざざ、という音と共にインカムのスイッチを右手で押す。再び視線をスコープの向こう側にむけ、指定された位置へと向きを変える。スコープの照点が、家のドアノブに重なっている。それから短く深呼吸して、指示を待つ。
あたりは日が暮れて薄暗い。遠くの水平線に隠れていく夕日がこちらを眺めているようだ。
二人のスナイパーは息を殺し、少し低めの崖と覆い茂った草木を利用して身を潜めている。そして、そのスナイパーの背後には三人近接戦闘組の仲間が腰を低くした体制で、銃や装備の点検を手早く済ませている。時折、カチャカチャ、という音で気が散り、眉間にしわがよる事もあるが、それはもう日常茶飯事。
不意に通信が入り、部隊の副隊長である自分が応答する。
『突撃準備』
「了解」
冷たく澄んだ声で最後の一言を告げ、仲間たちに視線で合図を送ると、すぐさま一列に並び突撃体制をとった。
突撃に合図は隊長と副隊長の私、一丿瀬真琴に任されている。
この部隊の隊長は自分より二つ上の男性だ。そして今日の任務では、スナイパーを頼まれた。普段は最前線で、近接戦闘がほとんどだったのだが、銃の扱いはそれなりに得意で特に断る理由も無かったので、素直に了承した。
そしてライフルの中でも、自分が気に入っているL96・AWSと四年前からの相棒、グロック34を装備し日本刀を腰に下げ、今日死地へと出向いたのだった。
通信が入り隊長の声が耳元に響く。
『突撃準備!321、GO!GO!』
インカムの向こうで隊長の叫ぶ声が聞こえる。
『一丿瀬。最初の初撃は俺が指示を出す。いいか?』
「了解」
『よし。いくぞ、321撃て!』
―バン!
重たい銃身から黒光りした一つの弾丸が発射される。ぶつっ、という嫌な音がしたと思うと、ドアの真正面にばたんと一人の人間、いや、吸血鬼の死体が倒れこんだ。
(吸血鬼・・・)
ドアからは、ここからちょうど死角になっているので玄関から先の状況が分からない。
なので、隊長が指示を出してくれた。
最初から覚悟していたのに、いざとなるとすぐに怯んでしまう。
吸血鬼に。
その瞬間に鼓動が速くなり、過去の記憶の浅い部分だけが脳裏でフラッシュバックしていく。呼吸がだんだんと荒くなり、その都度無理矢理落ち着かせている。
『大丈夫か?』
インカム越しに、隊長の心配そうな声が聞こえる。
「は、はい・・・」
『そうか・・・。だが今は目の前の状況に集中しろ。本気でやばい時は、俺に言え。』
「りょ、了解」
今回の任務は吸血鬼に捕らわれている人質二人を救出し、吸血鬼の身体、死体ごと回収というなんとも言えない任務だった。しかし、この情報は信用出来ない。ある事情によって、元の情報はあまり信用できるものではないからだ。もし情報が間違っていて他にも敵が大勢いた時はその時だ。スナイパーの二人も接近戦へ移り、前衛組と応戦する予定だ。吸血鬼は人間より6倍程の身体能力を持っているため大人数を相手にしたら、間違いなく血を抜かれて、肉の塊と化すだろう。
隊長が、前衛組に今の状況の確認をした。
「そちらの状況は?」
『こちら暁人。人質発見、吸血鬼が・・・!?』
「どうした!」
『やはり先ほどの情報は間違っています!7人確認しました。』
「何!?7だと・・・。・・・・・・。よし、グレネードだ。」
『了解。グレネード準備・・・くそっ!!こっちに気づかれた!』
銃撃の始まった目の前の光景に、そして敵の多さに一瞬放心状態になりながらライフルのトリガーから指を離す。
「撤退!逃げろ!!」
ドンッ、と家の中で大きな爆発が起こった。不意に、一軒家の裏口から煙を吐きながら逃げようとする吸血鬼のシルエットを飲み込んだ。自分はそのシルエット、吸血鬼を逃すまいと三メートル程西側に移動し、ライフルの二脚を広げ、乾いた土の上にうつ伏せになった。スコープを覗く時間は無く、ほぼ手探りで狙いをつける。
黒いトリガーに冷たく冷えた指添え、撃つ。
(っ・・・!)
からんからん、と空薬莢が気持ちの良い音を立てたのち、小石の上を飛び跳ねながら、止まる。L96の反動と肩にくる衝撃を耐え、スコープの倍率を下げた。
「くそっ!」
そこには、何もなかった。弾は吸血鬼には当たらず地面に小さな窪みを残していた。玄関の外には数人の仲間が倒れていた。家の壁に吸血鬼を押し付けている水月の姿も視界に入った。そして、ここ数年愛用していたL96を捨て、崖から数メートル先に飛んだ。足下を見るとだんだんと地面が近くなり、着地体制をとる。
地面につま先、土ふまず、かかと、膝を順々の曲げていき、身体にかかる衝撃を分散させながら着地した。その弾みで立ち上がろうと、足と足の間から地面に右手で手をつき、もう片方の手で腰の日本刀を抜く。刀身を外側に突き出すように構え、水月の援護に向かう。
が、しかし―
「ぐっ!?」
背後から何かに掴まれた感覚がする。刀を後ろに横薙ぎにしながらはらいよけ、一メートル後ろに飛び退く。
「やぁ」
「気安く話かけないで」
「えぇ、ひどいな~。話をしにきたのに話かけられないんじゃちょっと困るな~」
「・・・・・・!」
思い切り地面を蹴り、右腕を前に出し目の前の白髪で清楚な格好をした吸血鬼に左手の刀を思いっきり斬りつける。しかし、吸血鬼は目で追えない程の速度で自分の視界の外へと移動する―瞬間移動と言った方が正しい表現かもしれない―
背後から気配を感じて咄嗟にふり向くが、抱きつかれた形のまま動けない。
不意に耳元でつぶやかれて、全身が凍りつく。
「ねぇ、君も無理しないでこっちに戻ってきたら?」
そう言うと自分の首に吸血鬼が噛み付いた。
「うっ・・・ぁ・・・」
身体に回された腕を解こうと必死になるが首筋に刺さった牙から、命のようなものが吸われていかれる感覚に襲われて身体が震える。全身の力が抜け、砂利の地面に膝をつく。
顎をくいっと持ち上げられ、よりいっそう牙の感触が伝わってくる。
「君は元々こっちの者なんだよ」
「っ・・・・・・」
吸血鬼に掴まれた腕を解こうと掴んでいた右手がとうとう重力に従ってだらんとぶら下がる。
「あれ?もうおしまい?そういえば・・・」
ちらっと視線だけを向け吸血鬼は、真琴の身体から腕を一瞬で振りほどき、まるで瞬間移動のようなスピードで横に退く。そして、もう一人吸血鬼が現れたかと思うと、力無く地面に倒れむ寸前の真琴の身体を抱く。
「大丈夫か!真琴!」
「・・・・・・」
顔面蒼白している真琴を何故か心配する吸血鬼が、怒りに満ちた表情を白髪の吸血鬼に向ける。
「お前、約束と違うじゃないか!」
「えぇ~、別に良いじゃん。殺ってないからいいでしょ~?」
「良くねぇよ!!ルキ!」
真琴を抱えた黒髪の吸血鬼が、真っ赤な瞳に怒りを灯し、叫んだ。そしてその黒髪の男は、腰の脇に下げていた長く真っ黒な長剣を、じゃりん、と音を立てながら抜いた。
「おっと、この僕に剣を向けるのかい?」
「っ・・・・・・くそっ・・・」
短く悪態をつくと、左手に握った長剣を、白い鞘に刀身を触れさせながら、しまい込む。最後に、カチン、と高い金属音を立ててきっちり鞘に収める。左手に抱えていた真琴の身体を、両手で抱え直し一歩後ずさる。
「いつか、殺す」
「うんうん、待ってるよ~。次会う時までには僕を殺せるといいね」
「・・・・・・」
ルキと呼ばれる男はいつまでも、気味の悪い笑みを浮かべている。
そのルキを睨みつけながら、踵を返し俺はその場を立ち去った。
一ノ瀬真琴:主人公
桔梗悠理 :吸血鬼。主人公を助けた。
ルキルクローリア:吸血鬼の第8位始祖。側近を三人連れて、とある目的のために真琴を襲った。
初めまして、秋津です。
そして、ごめんなさい。
あらすじを、手抜きだとか思わないでくださいな(笑)
今回は、吸血鬼の襲撃場面を書きました。
あ、もうネタバレですが真琴には、実はお兄さんがいたんです。
(ネタバレ早い・・・。)
はい!
次回を楽しみにしていてください・・・・・・!
(^^;)ムリヤリ・・・