絶唱光臨ウルトラマンシンフォギア   作:まくやま

21 / 62
EPISODE 10 【正義の歌、束ね紡ぎ纏いて】 -B-

 天ノ逆鱗のように巨大な刃を生み出し変形させたウルトラゼロディフェンダーを自らのブレスレットに戻しながら、ガイアとネクサスの前に降り立つは風鳴翼と一体化したウルトラマンであるゼロ。

 それに次いで雪音クリスと一体化しているウルトラマン80と、月読調及び暁切歌と共に一体化するウルトラマンエースの二人も降りてきた。

 

『…そんな、馬鹿な…。貴様らはゴルゴダ星の爆発と共に、異次元のチリと――』

「勝手に決めつけてんじゃねぇよタコ!」

「…確かに俺たちは、全ての力を使ってゴルゴダ星を脱出した。そこで力尽きても、可笑しくは無かった」

「しかし、私達を想う呼び声に救われたのだ。私達を待つ人々の…かけがえのない、仲間達の声が。

 貴様は知らなかったようだなヤプール。かつて私が、どのようにしてバム星人の四次元空間を破ったのかを!」

 

 そう、かつてバム星人に囚われたウルトラマン80こと矢的猛が四次元空間を破るきっかけとなったものこそ、教師であった自身の受け持っていた生徒達からの呼び声だったのだ。

 

『だが…!それでもだ!四次元空間を破ったところで、その残り少ないエネルギーでどうやってここまで…』

「忘れんじゃねぇよ!この地球には、此処に立っている以外にもう一人ウルトラマンが居るってことをなッ!」

 

 ゼロのその一言に、ヤプールは何かを思い出したように呻いた。完全に失念していた…否、歯牙にもかけなかったのだ。身体も持たぬ木偶のような者に、何が出来るものかと…。

 

 

『――ップハァ!まったく、無理難題ばかり押し付けて来るなアイツは!』

「ですが、間に合いました…!」

「エックスくん、エルフナインくん!今まで一体…」

『あぁ、聞いてくれ風鳴司令。ゼロのヤツ、こっちの呼びかけに反応したと思ったらすぐに此方の次元の座標を出せと言って来たんだ。

 【地球近海で、何物にも邪魔されずに太陽の光を浴びることが出来る場所】なんて無茶なことを…!身体無しで演算処理と座標固定とマーキングまで行うのは中々に骨が折れたぞ!ったく…』

「国連だけじゃなく各国家の衛星を全機ハッキングしてのレーザー一点照射によるマーキング…出来て良かったです」

「そんなことを…」

 

 達成感の溢れる笑顔を向けるエルフナインに、思わず己が手で自らの額を抑える弦十郎。その小さな少女と身体すら持たない意志の存在が、普通では考えられぬとんでもないことをやらかしていたのだ。

 そうして繋いだウルトラマンと装者たちの帰還。驚愕と感心に、顔を綻ばせながら笑みを溢してしまっていた。

 

「あっ、司令さん…申し訳ありません、勝手なことをして…」

「良いってことさ。そんなのは、俺が頭下げれば済む程度の話だ。…よくやってくれた。ありがとう、エルフナインくん。そして、エックスくん」

 

 弦十郎の言葉。そして振り返り彼女たちに笑顔を向ける藤尭やあおいたちブリッジクルー。仲間として…力の無さを嘆いた二人にとって、本当の意味で結果を残せた瞬間だった。

 

『…さぁ、反撃だみんなッ!!』

 

 

 

 廃墟のように様相を変えた市街地で、膝立ちのガイアとネクサスの方へ振り向いたエース、80、ゼロ。

 力強く立つ三人の姿に、喜びの声を上げたのは響だった。

 

(…よかった…!みんな、無事だったんだね…!)

『その声…そうか、そっちは立花か』

『だったらそっちの赤と青は…』

(…ご明察、と言えば良いのかしらね)

『マリア!マリアもウルトラマンになったんデスね!』

(調、切歌…私からしたら、貴方たちがそうやってエースと一緒に居るのが驚きだわ)

『大丈夫だよマリア。これは、私達が選んだことだから』

 

 言いながらエース、80、ゼロの三人が三角形になるように並びを変え、その中心に膝を付くガイアとネクサスを置く。

 三人から放たれる輝きが中央の二人を照らし、傷だらけの身体を癒していく。エースがゼロと80に行ったことと同じように、エネルギーを分け与えているのだ。

 その中でゼロが、ネクサスから…その変身者であるマリアからあるモノを感じ取っていた。

 

「…フッ、なんだよ。お前らそこに居たのか」

『ゼロ?お前ら、とは…』

(…ダイナとコスモス。ゼロが失ったと言っていた、二人のウルトラマンの力の事ね)

 

 マリアはその意識の中で、他の二つの力が共にある事は分かっていた。ウルトラマンとしてのこの肉体は、ウルティメイトイージス…別宇宙に存在する惑星エスメラルダの伝説に存在するバラージの盾を母体とし、そこにダイナとコスモスの力が合わさる事で初めて完成する、ある種不完全な肉体であると言うことも。

 それでもこの力は、その身に纏うアガートラームと同じく彼女へと継がれ輝く光でもあった。

 

(何処までも私には、借り物の力が舞い込んでしまうのね…)

「安心しろよ。認めてねぇヤツに力を貸すほど、そいつらは馬鹿じゃねぇ。アンタならその力を正しく使えると、信じてくれてんのさ」

(…そう。ならば、応えるしかないわね…!)

(守護りましょう。みんなで、一緒にッ!)

 

 ライフゲージとエナジーコアの点滅が消え、体力を十分に回復した二人がゆっくり立ち上がる。

 そして五人のウルトラマンが、Uキラーザウルスに向かって横一列に立ち並んだ。

 エース、ネクサス、ガイア、ゼロ、80。

 その勇姿を、避難者が…

 

  「お母さん、ウルトラマンさんだよ!ウルトラマンさんが、五人も!!」

  「そうね…。きっと、私達の応援が届いたのね」

  「うんっ!!」

 

 その場に居ない者達が…

 

  「ゼロ様キタァァァァァァッ!!!」

  「あらあら、興奮しすぎですわよ、板場さん」

  「まぁでも、この展開は確かにテンション上がっちゃうよね。ね、ヒナ?」

  「うん…うんっ!」

  (頑張れ響…!頑張れ、みんな…!!)

 

 世界が…

 

  「…ヒュー、なんとまぁ…スゲェもんを見せてくれやがる…!」

  「みてみておばあちゃん!おかあさん!」

  「私達を助けてくれた、あのウルトラマンもいる!」

  「……あれは、神様なのかしらねぇ……」

 

 全てが目にしていた。

 悪逆に対し、非道に対し、それに抗う想いの全てが…

 全ての声が、たった一つに重なった。

 

 

  ―― 頑張れッ!! ウルトラマンッ!!! ――

 

 

 

『…馬鹿な…馬鹿な、馬鹿なぁぁぁぁッ!!こうなったら、この怒りを…憎しみを、更なる力に変えて貴様らを滅ぼしてくれるわぁぁぁッ!!!』

 

 Uキラーザウルスの中から湧き出ずるノイズ。体表を覆い、身体をさらに巨大に作り替え固めていく。

 身体は一回り大きくなり、脚部は身体以上に巨大な節足動物のような四足に変わる。そして背部から伸びていた触手は更に本数を増やし、縦横無尽にうねっている。

 先程の3倍以上の大きさと化した、更なる驚異たるその姿…憤怒と憎悪を燃やしたヤプールの、最後の力でもあった。

 

『究極巨大超獣Uキラーザウルス・ネオッ!!ウルトラマンも!シンフォギア装者どもも!この力の前には滅びあるのみだァァァァッ!!!』

「…滅ぶのは貴様だ、ヤプール!みんな…必ず此処で、あの悪魔を斃すぞッ!!」

 

 エースの声にその場の全員が力強く肯定の言葉を吼える。

 体力と戦意を全開にして、五人のウルトラマンがUキラーザウルス・ネオとの戦いに飛び出した。

 

 

 咆哮と共に、迸る電流と共に数多の触手を伸ばしていくUキラーザウルス・ネオ。それに対して空中を自在に舞いながら攻め込んでいったのはエースとゼロとネクサスだ。

 ゼロはゼロスラッガーで、ネクサスはシュトロームソードで、エースは二色のフラッシュハンドで其々襲い来る触手を捌いていく。

 

『ごちゃごちゃと、厄介…!』

「調!君の力を使うぞッ!」

『ハイッ!』

 

 エースの言葉に反応し、自らのフォニックゲインを彼の左腕に宿す。そこに溜め込まれた赤いエネルギーは、掌の上で光速回転する大鋸となる。そのまま腕ごと振り抜かれた光の鋸が放たれ、調の特性を生かした切断技【星A式・八裂輪】となり分身しながら襲い来る触手を伐り裂いていった。

 

『間隙ッ!』

「もぉらうぜぇぇぇッ!!」

 

 伐り裂かれ往く触手の合間を縫って、ゼロが高速で突進する。そのまま空中で回転して向きを変え、そのまま全力の必殺、ウルトラゼロキックで蹴り込んだ。

 重たい音と共にその分厚い甲殻を響かせる一撃。だがそれを貫くまでには至らず、やや凹ませるまでだった。

 

「クソ、固ぇッ!」

(まだだ!其処に続くッ!!)

 

 ゼロの後に続いて飛ぶはネクサス。右手のシュトロームソードを構え、加速と共に最接近する。光の剣を更に高め、ゼロがその場から飛び上がった直後にその刃ごと拳を叩き付けた。

 

(だああああああッ!!)

 

 そのまま力尽くで右腕を振り抜くが、斬り裂くことも無く光の刃が折れて消え去る。貫いたはずの傷口もすぐに修繕され、元に戻ってしまった。

 

(まだ、これでも…ッ!)

『無駄だ無駄だァッ!!』

 

 叫ぶヤプールと共に蘇った触手がネクサスを弾き飛ばす。体勢を崩しながらも無事に着地するも、更なる触手の追撃を察知してすぐに飛び上がった。

 そのまま高速飛行を行い、回転と共に両手で三日月型の光刃―【ボードレイ・フェザー】―を連続で発射。斬り落としながら脱出した。

 

 一方、その逆方向ではガイアと80が共に奮闘していた。

 80の放つウルトラダブルアローで触手の動きを抑え、ガイアがゼロ同様に下半身へ接近し全力で拳を打ち付ける。だがゼロの必殺技でも貫けなかった甲殻は、響の力を乗せたガイアの拳でも打ち破ることは敵わなかった。

 

(硬い…!もっと、力を込めなきゃ!)

『あの馬鹿の攻撃でも無理だってのかよ…!』

「怯むなクリス!一度で駄目でも、」

『…数撃ちゃ潰せる、だな!』

 

 厳密には違うと一瞬指摘を入れそうになった80だったが、クリスの気を折ることも無いと口を噤む。

 そして襲い来る触手をアクロバティックな動きで踏みつけてはいなし、地面に着地したと同時に両手を上から外から円回転させてそのまま両手を天へ掲げた。

 同時に80の身体がクリスのフォニックゲインである真紅に光り輝き、エネルギーを溜める。そしてそのエネルギーを巨大なミサイル状に形を変えて放った。

 MEGA DETH FUGAとウルトラオーラの融合技、【MEGA DETH FUGAURA】。光の中に膨大な熱エネルギーを内包した一撃は着弾と共に爆発を起こし、その衝撃はUキラーザウルス・ネオの全身を大きく揺らした。

 80のこの一撃で甲殻に大きなヒビが入ったのは見て取れた。だがそれもすぐに復元、硬化してしまう。

 

『だあぁ、まだ駄目かよ!』

 

 腹立たしいと言わんばかりの声を上げるクリスだったが、そこに目掛けて此方側の触手が襲い掛かって来た。

 

『センパイ!センセイ!』

「切歌、君の力でッ!」

『ハイデェスッ!』

 

 すぐにそれを察したエースが飛来し、両の手を下で重ね合わせる。右手に宿る切歌のフォニックゲインを高め、下から上へ跳ね上げるように右腕を振るった。緑色に輝く光が大きな刃となり、縦に発射される切歌の特徴を持つ切断技【鋭迅(えいじん)刃aaぁ血狩Rゥ(バーチカル)】が、80に迫る触手を尽く真っ直ぐに切り裂き落としていった。

 

「助かりました、兄さん!」

「気を抜くな!…しかし、此処まで強くなっているとは…!」

「親父から話は聞いていたが、それ以上の手応えだな…!」

 

 一度全員が一ヵ所に集合する。そこで思ったことを言葉に出すエース。彼にとってこのUキラーザウルス・ネオは、別の世界の…彼が元居た宇宙の中に存在する地球で戦ったことのある相手でもあった。

 その時はエース以外にもウルトラマン、ウルトラセブン、ウルトラマンジャック、ウルトラマンタロウ、ゾフィー、そしてウルトラマンメビウスの総勢七人のウルトラマンが居り、その力を結集して遂に斃した強敵なのだ。

 それほどの相手が、今はノイズを基とする超回復能力まで備えるようになってしまった。苦戦も止む無しと言ったところである。

 

『理解ったか!貴様らに勝ち目など、有りはしないのだァァッ!!』

 

 咆哮と共に生体ミサイルを全て発射するUキラーザウルス・ネオ。すぐさまそれらを撃ち落とすべく、各々が光線を発射した。

 ガイアはリキデイター、ネクサスはクロスレイ・シュトローム、ゼロはエメリウムスラッシュ、エースはパンチレーザー、80はウルトラダブルアロー。其々の光線技がミサイルを砕き、暗い空を爆炎で染め上げる。だがそれだけでは落としきれなかった分が、炎を貫き襲い掛かった。

 

『弾丸の数で負けてたまっかよッ!センセイッ!!』

「ああッ!!」

 

 胸の前で両手を水平に向かい合わせすぐさま右手を掲げる。クリスのフォニックゲインと合わさったエネルギーが槍のように長く伸び、襲い来るミサイルの群れへ向かって投げ放った。

 

『「散れェッ!!」』

 

 重なる二人の声と共に光の槍が分解、大量の子弾に分かれていく。そしてその小さな子弾の全てを一斉に操作し、飛び交うミサイルへ一つ残らず突き刺さり爆発せしめた。

 光の槍状クラスター弾…なんとも常識を疑いたくなるような、それでいてクリスと80の長所を兼ね合わせた融合技、【ZEPPELIN RAYLANCE】である。

 この攻撃で全て破壊したと思っていた一同だったが、爆発による炎と煙が晴れた其処には、既に弾丸の補充まで完了して不敵に嗤うUキラーザウルス・ネオの姿があった。

 

『そんなぁ!これじゃあ潰しても潰してもキリがないデスよぉ!』

『撃っても切っても湧いてくる…そんなの、どうやって…!』

(狼狽えちゃダメよッ!無尽蔵の回復力…必ず何か、機功が備わっているはず…!)

 

 互いにその気を落ち着かせようとする中で、響は何かを思案していた。その記憶を掘り起こすかのように。

 

(……翼さん、クリスちゃん。この状況…どっかで覚えがなかった…?)

『何言いだしてんだ馬鹿!無限にノイズを生み出して回復してくるようなヤツと、なんざ…――』

『――…いや、あった。ルナアタックの時…黙示録の、赤き竜…!』

『…ネフシュタンとソロモンを併せ融合した、フィーネのアレか…!』

 

 響が思い出したのは正しくそれだった。響、翼、クリスの三人が戦った、己が妄執により暴走した永遠の巫女フィーネとの最終決戦。その身を蝕み再生する完全聖遺物であるネフシュタンの鎧と、バビロニアの宝物庫に存在するノイズを思うが侭に召喚、使役するソロモンの杖…。

 その二つを用いることで、フィーネは世界を破滅へと導く存在へと変化。限定解除された奇跡を纏った装者たちとの決戦に挑んだのだ。

 

『それで、そんなのをどうやってやっつけたんデスか!?』

『あン時は確か…』

『無尽の再生力を宿すネフシュタンの鎧と、無限の出力を生み出すデュランダル…。二つの相反する完全聖遺物を衝突させる事で対消滅を引き起こし、赤き竜を滅ぼしたのだったな…』

「なんだ、こっちの地球にもとんでもねぇモンがあるんだな…」

 

 ゼロの言葉通り、フォニックゲインで励起した神代の遺産の完全形である完全聖遺物は、それ一つで国家のパワーバランスを変え得る可能性を秘めた存在なのだ。

 事実、無限のエネルギーを生み出すとされるデュランダル、現存していれば如何なる争いの火種となっても可笑しくは無い代物である。

 

『でも、対消滅ってことは…もう…』

『あぁ…この世界にはもうデュランダルは遺っちゃいねぇ。もしか使えてりゃ、状況の一つや二つ打開出来たかも知れねぇがな』

(ゴメン…。やっぱりなんにもならないよね、こんな事思い出しても…)

 

 クリスの回答に思わず響が謝罪する。だが一拍の間をおいて、マリアが言葉を続けた。

 

(…それは、ネフシュタンとデュランダルの顛末なのよね?操り纏ったノイズの根源…制御装置であるソロモンの杖はその時にフィーネの手から離れていたはず。それを今の状況と置き替えると…)

「Uキラーザウルスのノイズ制御部分を破壊すれば、もうノイズによる再生はない…。そういうことだね」

「ヤプールの事だ、技術の出所がなんであれ超獣と同様の製造機が存在しているはずだ。そしてあの回復速度、この場で決着を付けようとする姿勢…。恐らくその製造機は、ヤツの体内に…!」

『何時までもゴチャゴチャとぉッ!!』

 

 80とエースの声を遮るように、Uキラーザウルス・ネオが攻撃を再開する。触手の先、爪部分から放たれる電撃と青い目から放たれる怪光線が五人の周囲を更に爆発させていった。

 

「私と兄さんでその在処を探り、援護する!」

「三人のうち誰かが、製造機を叩き潰すんだ!往くぞッ!!」

 

 そう言ってその場から飛び立つ80とエース。襲い来る触手を相手取りながら、その眼を輝かせてUキラーザウルス・ネオの巨大な身体を見据えていった。

 そして残った三人も、すぐに己が役割を決めていく。

 

(場所が分かったところで、機功を破壊するならばあの甲殻を撃ち抜けるだけの瞬間的な力が必要になる。…私じゃそれは、務まりそうにないわね)

『適性を考えれば自ずと役割は決まってくるな。瞬間的に最大級の一撃を叩き込める者…それならば、立花以外に適任となる者はいないだろう。…やれるな?』

(……やります。みんなを守護る為に…この力を託してくれた、地球の為に!)

「よく言ったぜ!露払いは俺たちに任せときな!」

(ハイ!お願いしますッ!)

 

 ゼロの言葉に対し威勢よく返事をする響。役割が決まったと同時に、ガイア、ネクサス、ゼロの三人も同時に飛び出していく。エースと80を援護するためだ。

 再度襲い来る触手の群れを弾き飛ばし斬り付けながらいなしていく。その中でエースと80の目が、ついにノイズ製造機の在処を映し出した。

 

『見えたデス!』

『あれは…お腹の中!』

『一等頑丈なところか!だろうな!』

 

 情報を一瞬で五人に共有させ、狙うべき位置を確認させる。すぐにそこを狙える位置へガイアが立ち、そして他の四人がそれを狙う攻撃を引き受けた。

 火球を弾き、光線を遮り、電撃を受け止め…。その攻撃の中で、ガイアが自らの持てるエネルギーの有りっ丈を頭部に込めていく。そして大きく上体を反り、腹部に繋がる発光部を目掛けてフォトンエッジを撃ち放った。

 

「デェェェヤアァァァァァァッ!!!」

『ぬぅ!?コイツッ!!』

 

 腹部の発光体がフォトンエッジによって爆発を起こし、甲殻ごと肉体が幾らか抉られる。だがすぐにノイズによる回復が再開され、ものの数秒でダメージが回復してしまった。

 一瞬愕然としてしまったのか、膝を付いてしまうガイア。ライフゲージは再度赤く点滅し、エネルギーの残量も少なくなっていることを示していた。

 

『…フ…フハハハハハッ!無駄だと言っているだろう!!』

(まだ駄目だと言うのッ!?)

「俺たち全員の光線を合わせれば諸共に斃すことが出来るかもしれん…。だが、今のUキラーザウルスを相手にそれを出来るほどの隙が――」

(…やります。なんとしても私がノイズ製造機を破壊して、その隙を作ります。みんなが作ってくれたチャンス、今度こそ逃しはしません…ッ!)

 

 傍に寄ったエースの言葉に、奮起するように断言する響。一度駄目だからと言って諦めるほど、彼女は素直に出来てはいないのだ。

 

「だが…」

『大丈夫だよ、北斗さん。響さんなら、やってくれる』

『いつもそうやって、アタシたちの前を切り開いてくれたんデス』

「……分かった。調と切歌がそこまで信じているんだ、俺が信じないわけにはいかないからな。…任せたぞ、響」

(…ハイッ!)

 

 差し伸ばされたエースの手を握り、引いて貰ってガイアが再度立ち上がった。

 次の一撃が最後になる。失敗すればこの地球はヤプールによって蹂躙され滅びを迎えるのだろう。

 誰もがそれを、心の何処かで感じていた。感じながら、その最大の一撃をウルトラマンガイアに…立花響に託していった。

 

『遺言でも残していたか?そんなものはこの地球と共に消え去る定めだがな!』

「っせぇ!いい加減消え去るのはテメェだぜ、ヤプールッ!!」

『まだ吼えるか!ならば、これで死ねぇッ!!』

 

 Uキラーザウルス・ネオの巨大な咆哮が響き渡り、無数に配置されていた生体ミサイルが発射体勢になる。そしてミサイルが点火しようとした、その瞬間。

 

「そう来ると、思っていたぞッ!」

『撃って来るってんなら、撃たれる前にブッ潰してやりゃあ良いんだよッ!!』

 

 上空、Uキラーザウルス・ネオの頭部よりも高く飛行していた80がその手に光の槍を作り出し真下に放り投げる。そしてすぐに光の槍が分解。誘導型クラスター弾として生体ミサイルに突き刺さり電流が走った。弾丸の性質を操作して、ミサイルの発射をスタンされる弾丸として撃ち放ったのだ。

 

『先輩と先生に!』『続くデェスッ!!』

「あぁ!ウルトラギロチンッ!!」

 

 ウルトラホールで自らの力と二人のフォニックゲインを重ね合わせ、左手で輝く光の大鋸を発射するエース。分身したそれはUキラーザウルス・ネオの頸部と腕部に入り込み、光速回転で更に動きを封じていった。

 

『おのれ、貴様らぁぁぁッ!!』

「遅えんだよッ!!」

『何度再生して来ようともッ!』

(何度だって、切り裂くのみよッ!)

 

 叫びと共に触手を一斉に動かし襲うヤプールだったが、ゼロツインソードを携えたゼロとアームドネクサスの外方にシュトロームソードを伸ばしたネクサスによって全て切断されていく。

 

(道を拓くわよ!翼ッ!!ゼロッ!!)

「『応ッ!!!』」

 

 声と共にネクサスはその左腕、アームドネクサスを胸のエナジーコアの前にかざし意識を集中させる。そしてエナジーコアと同じ形の弓状の光が左のアームドネクサスに装着、共にアームドネクサスの突起部分を伸ばすように最大出力のシュトロームソードを発生させた。

 同時にゼロはゼロツインソードを構えた後、それを回転させながら赤と青の炎を猛り上げさせていく。

 何方からともなくUキラーザウルス・ネオに突進。群がる触手を祓いながら、ただ一ヵ所…ガイアのフォトンエッジが狙った、腹部の結晶体部分へと加速していった。

 

(こぉれでええええええッ!!!)

「『どぉッだあああああああッ!!!』」

 

 ゼロが放った燃ゆる双刃の連撃である風輪火斬・零太刀と、ネクサスが放った超加速した光剣の一閃である【OVERRAY†SERENADE】が、腹部の左右にある鋏もろとも破壊し、結晶体部分にエックス字の大きな傷を斬り付けた。

 そして地上では、ガイアが深く沈みこんだままただ一ヵ所…今この時にゼロとネクサスが切り裂いたその部分を狙い澄ましていた。

 

(…あの技よりも、もっと強い力を…!ただの光線じゃ駄目なんだ…。私の出来る最大の一撃を…私がずっと信じている、胸の歌を込めてッ!!)

 

 ガイアの身体から響の歌と共に黄色の光が溢れていく。やがて光と歌はガイアの身体に纏わりつくように、形作るようにフォニックゲインが溢れだす。

 

 

「これは…!」

 

 その様子を見ていた指令室で、ガイアに起きている事態にエルフナインが声を上げた。すぐにモニターで確認したそれは、装者とウルトラマンのユナイト数値だ。

 

「どうした、エルフナインくん!?」

「響さんとウルトラマンガイアのユナイト数値が急激に上昇しています!120…130…150を越えましたッ!!」

「どうなると言うんだッ!?」

『通常以上の数字を叩き出す高レベルのユナイト…。光と歌がより強固に混ざり合い、更なる力を生み出そうとしているッ!』

 

 エックスの驚愕の声が響く。これほどの高いユナイト数値…それは彼の中で思い当たる事項があった。

 それは彼自身が体験していた事。彼とユナイトしていた青年が、虹の先で手にした輝きと合体した時に感じた、”更なる力<ユナイト>”に他ならなかった。

 

 

 ウルトラマンガイアの身体から溢れ出す、ガングニールから解き放たれる立花響のフォニックゲインの奔流。脚に纏わり、拳を貫く槍のように幾重にも重ね上げ、首から流れ出るものは二股のマフラーが如く。

 その姿を知る者は、誰もが思考を揃えて呟いた。

 

「――ウルトラマンが、シンフォギアを――」

 

 

 

 ガイアの目が強く輝く。その闇を照らし空に太陽<こがね>を齎す光に、ヤプールはついに戦慄した。

 エックス字の裂傷を持った腹部の発光部分に力を溜め込み、その身が崩れるのも厭わずガイアに狙いを定めて最大火力での破壊光線を発射した。

 

『ぐ、ううぅぉぉおおおおおッ!!滅べええええええッ!!!』

(滅んで、たまるかァッ!!この手で!歌で!全部守護り切ってやるんだッ!!

 だから高鳴れ、ガングニールッ!!!轟け、ガイアァッ!!!限界なんかブチ貫いて!つぅらぬけえええええええェェェッッ!!!!)

 

 発射の直後、破壊光線に向かって驀進するガイア。拳を振りかぶったその姿は、無謀とも言える特攻を仕掛けるその姿は、紛うことなく”立花響”の其れだった。

 破壊の光を浴びながら…否、切り開きながら突き進む。そして伸ばし撃ち付けられた拳は、破壊光線を発射している発光部分に届いていた。

 コンマ数秒の間をおいて壊れ行く発光部分。ほんの少し、強固な外殻を貫いた感触を得た瞬間、全身を固形化せずに流れ纏っていたエネルギーの全てが右手を介しUキラーザウルス・ネオの腹部を一瞬で撃ち貫く撃槍と化し放たれた。

 結晶体部分から真っ直ぐに撃ち貫かれた身体は巨大な孔が開き、見据え狙ったノイズ製造機を諸共に吹き飛ばしたのだ。

 その一撃と共に動きを止められていた生体ミサイルは誘爆。束縛していたウルトラギロチンも外殻ごと肉を伐り刻み使い物にならなくした。

 

『ぬぐぅあぁぁぁああああ!!ば、馬鹿な!自己再生が…!!』

「今だ!みんなぁッ!!」

 

 エースの声と共に、ガイアを中心にして再度立ち並ぶウルトラマン達。

 その狙いは唯一つ。ノイズ製造機を消し飛ばされて悶える、Uキラーザウルス・ネオの上半身を形成する本体部分だ。

 エースが両腕を真っ直ぐ水平に伸ばして身体を左に捻り、

 80は両腕の回転運動から左を上、右を水平に伸ばし構え、

 ガイアは縦に握り固めた左手に伸ばした右腕を打ち付けて、

 ネクサスはアームドネクサスをぶつけ合い双方を流れるエネルギーを高め、

 ゼロは右手を腰溜めに据えて左手を外へ伸ばして、

 五人のウルトラマンが其々同じ…腕をL字に構え、その右腕から残された全力を込めた五つの光線を発射した。

 メタリウム光線、サクシウム光線、クァンタムストリーム、オーバーレイ・シュトローム、ワイドゼロショット。五つの輝きが一つに混ざり、Uキラーザウルス・ネオの肉体部分に直撃。その巨体を複雑に輝かせていった。

 

『ぐううおおおおおおおおッ!!!』

「消えろ!ヤプールッ!!!」

『我が…破れると言うのか…!?おのれウルトラ戦士…!おのれ地球の歌巫女ども…!!

 …だが忘れるな…。我が怨念は、決して消えることは無い!…否、これは”呼び水”なのだ!!我らの憤怒と怨嗟が、この地球を絶望の歌で覆い尽す為のなァッ!!

 フフフ…ハァーッハッハッハッハッハァッ!!!!』

 

 断末魔にも聞こえるヤプールの高笑いと共に、Uキラーザウルス・ネオは五人のウルトラマンが放った合体光線でその巨体に内包されたエネルギーが大爆発を起こす。そしてその肉体は、原子レベルにまで分解され一切の破片も残さずに消し飛ばされていった。

 

 

 

 

 

 

 ヤプールが生み出した暗雲は消え去り、光が舞い戻って来た。

 西へ沈もうとする黄昏時の太陽に照らされた五人のウルトラマン。その姿を見て、誰からともなく歓声が沸き上がった。

 勝利と言う名の、大歓声が。

 周囲に目をやると、シェルターの出入り口から続々と人の流れが溢れ出て来る。そして誰もがウルトラマン達を目にし、歓喜の声と共に手を振って、『ありがとう』と声を上げていく。その中に、あの少女も混じっていた。

 

「ウルトラマンさぁーん!!あーりーがーとぉーー!!」

 

 偶然か必然か、彼女の姿を捉え目が合ったウルトラマンガイアこと立花響。彼女に対して思い切り手を振りたくなったが、隣に立つネクサスに優しく制された。

 

(マリアさん…?)

(気持ちは分かるわ…。だけど…私達は今、ウルトラマンだから。シンフォギア装者である事と同じで、貴方たちが世に個を知らしめるべきではないと思う。私ならともかく、ね)

(……そう、ですね)

 

 ほんの少し項垂れそうになる響の肩を、逆隣の80が優しく叩いた。

 

「胸を張るんだ、響。君が…私たち全員が今見ているものこそ、私たちが守護りたかったもの。私たちが、守護れたものなのだから」

 

 言われて再度顔を上げる。そこに見えた眩いもの…これが、みんなで守護りぬいたものなのだ。

 その喜ぶべき光に打ち震えながら、ウルトラマン達は顔を見合わせ首肯する。そして”正義の味方”の本能でもあるかのように、掛け声とともに空へと飛び去って行った。

 

 

 

 やがて巨人の姿は光と共に消えた。

 そして市街地の外れ…緊急離脱して着陸した移動本部に向かって、夕陽の逆光を浴びながら六人の少女と二人の大人が歩いてきた。

 その八人の勇姿を、凱旋を、風鳴弦十郎、緒川慎次、エルフナイン、エックス、藤尭朔也、友里あおい…タスクフォース指令室の面々が、笑顔で迎え入れた。

 

 正義が勝ち取った、勝利と共に――。

 

 

 

 

 

「…そうだ、よくやったぞヤプール。あとはこの俺が、貴様の分までこの世界を絶望に包み込んでやろうではないか…。

 クハハハハ…!憎きウルトラマンよ…それに絆され与する人間よ…!今は束の間の平和を甘受しているがいい…。ハハハハハ…!!」

 

 

 EPISODE10 end...

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。