絶唱光臨ウルトラマンシンフォギア   作:まくやま

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EPISODE 02 【重なり合う光と歌】 -A-

 EPISODE02

【重なり合う光と歌】

 

 

「…ヤプール。これ以上、テメェらの好きにはさせねぇよ。

 この俺の…ウルトラマンゼロの前ではなぁッ!!!」

 

 右の人差し指を強く突き出し戦意を露わにする、ウルトラマンゼロと名乗った巨人。

 状況をモニターしていたタスクフォースのメンバーは勿論、眼前でそれを見ている翼自身でさえ此れが何なのか理解できていない。

 ただ、怪獣に相対する巨人のその姿は、決して悪しき者とは考え難かった。そう思っていると、突如光の巨人が振り向いて翼の前に近付くようしゃがみこんだ。流石に大きさが数十倍の差があるのだから、それでも大きな距離の開きがあるのは変わらなかったが。

 その巨体に威圧感を感じてしまい、思わず身体を固めてしまう翼。だがゼロから発せられた言葉は、予想外のモノだった。

 

「よォ、大丈夫かネーちゃん」

「――えっ、あ、あぁ……」

「聞こえたぜ。アンタの助けを求める声がな」

 

 ゼロの何気ない一言に思わず赤面してしまう。自分の最も弱く脆い零れ落ちた部分を、何処の者ともしれぬ者に聞かれてしまったという事実からだろうか。

 

「あとは俺に任せな。アンタとそっちのネーちゃんの代わりに、俺が全部守り切ってやる!」

 

 力強くそう断言し、デガンジャに向かい構えるゼロ。その姿に対し憤怒の声を上げたのは、ヤプールだった。

 

『ウルトラマンゼロ……!! ウルトラ戦士どもの抹殺は我らヤプールの悲願! 先ずは貴様から、ここで血祭りにあげてくれるッ!』

「テメェらが俺たちウルトラマンを怨むってんなら止めやしねぇ。いつだってその怨みを受け止めて、ブッ潰してやるさ。

  ……だがな、怨み晴らすってんなら正々堂々と来やがれッ!! そいつはテメェらが、他所の世界の平和を乱していい理由にはなんねぇんだよッ!!」

『黙れェッ!! やれ、デガンジャァッ!!!』

 

 咆哮と共に突進するデガンジャ。巨大な頭部での体当たりを、ゼロはその身で力強く受け止めた。

 

「ヘッ、中々やるじゃねぇか! だがなァッ!!」

 

 逆にデガンジャを押し返し、そのまま顔へ蹴りを叩き込む。後ずさり怯むデガンジャを追い、そのまま脳天へチョップ、からの流れで左拳がそのマズルへ深々とめり込み吹き飛ばした。

 単純なれど洗練された肉弾戦。ただ違うのは、そのスケールが人間の数十倍はあると言うことだ。

 

 

「一体、何が起こってるんだ……!?」

 

 タスクフォース本部指令室でも、その一同が息を呑み非現実的な現実を眺めていた。そんな時、モニターへ接続されっぱなしだったエルフナインの携帯通信端末に連絡が入る。何度目かも知れぬ【エックス】からのものだった。

 

「エックス、さん……?」

【遅くなってすまない。すまないついでに、少し場所を貸してもらうよ】

 

 簡潔に書かれた文章を確認した直後、その端末が、そして接続してある本部メインモニターが光り輝いた。

 

「こ、今度は何です!?」

 

 輝きは数秒で収まったが、メインモニター…としてエルフナインの端末に、青く輝くヒト型のバストアップが存在していた。思わずヒト型と形容したのは、瞬間的な視覚情報だけで目や口といった頭部を認識できたからだ。

 他の大きな特徴は人間と違い、どちらかと言うと外で戦っている巨人に似ているような気もする。そして最大の特徴は、胸部に大きなXの形が印されてある事だった。

 周囲が更なる混乱に包まれる中で、そのヒト型から声が発せられた。

 

『……突然の来訪、誠に申し訳ない。急で申し訳ないが、【アルケミースター】とはどちらの方だろうか?』

 

 あまりにも丁寧で落ち着いた物言いに、つい釣られてエルフナインが一歩前へ出る。

 

「あ、あの、ボクが、【アルケミースター】、です……」

『――……君がか!? あ、いや、すまない。私の予想を超える幼さだったもので……』

 

 しどろもどろと言い訳する謎の声。だが気を取り直したのか、咳払い一つで元のテンションに戻っていた。

 

『すまない、改めて自己紹介させてもらう。

 私はウルトラマンエックス。【アルケミースター】の彼女とは【エックス】と名乗り通信を繰り返させてもらっていた。別の次元より此方へ来た、ウルトラマンだ』

 

 ウルトラマン。さっきの……外で戦っている巨人もそう名乗っていた。一致する符号に気を揉みながら、その場の代表として弦十郎が声を上げた。

 

「国際連合直轄組織Squad of Nexus Guardians……S.O.N.G所属、超常災害対策機動部タスクフォース司令、風鳴弦十郎だ。

 我々の仲間の【アルケミースター】……いや、エルフナインくんを通じてそちらから多くの情報を頂いていた。まずはそこに感謝させてもらう。

 ……そして、至急回答を願いたい。君たちは何者であり、この世界に何が起こっているのか」

 

 弦十郎の顔は険しく固まっている。回答如何によってはこの本部指令室を物理的に破壊し、この存在を抹消すべきとも考えていた。

 だがその考えは、良い方向で裏切られる事となった。

 

『了解した、風鳴司令。私に答えられることであれば、なんでも聞いてくれ。

 ……っと、まずは我々の存在と、この世界に起きていることだな』

 

 二つ返事の了承に、思わず肩透かしを食らったかのように力を抜いてしまう。

 

『まず我々の存在についてだが……いま悠長にそれを語っている時間は無い。単純に言うならば、我々ウルトラマンは理不尽な侵略からその星に生きる者を護り、宇宙の調和を保つ使命を帯びた者。

 そうだな、端的に言うなれば……【正義の味方】と言うところだな。

 そして今この地球に起こっている事態だが……単刀直入に言うと、侵略者が君たちの世界を狙ってやってきた。それを追って、私達がこの世界へやって来たという事だ』

「あの、あのメールの内容が真実なら……いえ、きっと真実だと思いますが、だとしたらエックスさん達は……」

 

 エックスの回答の後、エルフナインが彼に尋ねた。メールの内容が正しければ、それはつまり……

 

『あぁ。なんとかこの世界へ侵入しないよう、今外で戦っているウルトラマンゼロが防いでくれていたんだ。だが防ぎ切れなかった。

 私も、身体のほとんどを本来の世界へ置いたままにしてしまっていたせいで加勢することも出来なかった……』

 

 表情は変わらなかったが、声だけでも大変悔やんでいるのは聞いてとれた。それだけで、このウルトラマンエックスと言う存在は人類にとって味方をしてくれる存在だと言う事は理解できた。

 それが、彼らにとって数少ない救いの一つになった。

 

 

 

 

 

 一方シドニー市内。巨獣と巨人が繰り広げる常軌を逸した戦いを前に、翼はまだどこか呆然としていた。そんな彼女の耳に、専属マネージャーである緒川慎次の声が聞こえてくる。語りかけた彼は、気を失い倒れていたマリアを既に抱え上げていた。

 

「翼さん! 大丈夫ですか!?」

「緒川、さん……?」

 

 見知った者の焦り顔に、ようやく現実を取り戻す翼。気付けば会話に支障はない程度には回復していた。

 

「――失礼しました。もう、大丈夫です」

「本当にそうですか? あれだけの質量攻撃……如何にシンフォギアを纏っていても、ただでは済まないと思いますが……」

 

 生真面目な、やや責めるような目で問いかける慎次。その目をされて、翼が勝てた試しはなかった。

 

「……すいません。正直、立っているのがやっとです。ですが、天羽々斬は私にまだ歌えると言ってきているようで……」

 

 傷付きながらも未だ解除されることのないギア。それは、翼自身の戦意が消え去っていないことを現していた。だがその状態は、危険以外何物でもない。それは彼女自身も分かっていることだった。

 

「ですが、その身体で継戦は困難でしょう。この場は離れて、身体を休めましょう」

「……いいえ」

 

 緒川の提案に、静かに首を横に振る翼。緒川に身体を預けているマリアの容態や自分の身体を考えても退くのが一番正しいに決まっている。だが、彼女の心はこの場を離れようとはしなかった。

 

「あの巨人が、私に言ったんです。『お前の代わりに、俺が全部守り切ってやる』と……」

 

 それは羨望か、もしくは憧憬だろうか。まだ幼く未熟だった時分、戦いに不慣れだった頃、奏にもそう言われたことを覚えている。……否、思い出した。

 だから、見届けたかった。あの圧倒的で理不尽な暴力を前に、それと違わぬ…いや、それ以上の力を持つであろう超人が、何を如何にして守護るというのかを。

 

「だから、見届けたい。……我儘ですね、これは」

「――そう、ですね。ですが、翼さんからそんな我儘を言われるなど思ってもみませんでした」

 

 緒川から返ってきた言葉には、不安の中に何処か小さな嬉しさも垣間見えていた。ほんの少しだけ、普段からは決して見ることのない年相応の少女らしさが見えたからだろうか。

 

「僕は万事に備え移動手段を調達しておきます。翼さんも、本当に危険だと思ったらすぐに逃げて下さいね?」

「緒川さん……分かりました。マリアを、お願いします」

「勿論です。翼さんの大事な友達の一人ですもの」

 

 柔和な笑顔でそう返し、瞬歩でその場を離れ動いた慎次。世間的には風鳴翼のマネージャーを務める彼もまた、人間の範疇では収まりきらぬ超身体能力を保有していた。だが、それでもあの怪獣には太刀打ちできないであろうと、翼は思考の隅で思うのだった。

 

 

 

「どおおっらあァッ!!」

 

 速度と体重を乗せたゼロの拳がデガンジャを襲う。数発連続で拳を浴びせるがデガンジャも負けてはおらず、その強靭な腕と爪でゼロへ襲い掛かった。

 それを片手で受け止め弾き飛ばし、巨大な顎へ向けての膝蹴り、ソバットと続け蹴り飛ばす。そして怯んだところへ、膝立ちの姿勢から額にエネルギーを集中。エネルギーランプからエメラルドカラーの光線を放った。

 ゼロが多用する技の一つであるエメリウムスラッシュ。それによりデガンジャの巨体が派手に倒れ込んだ。

 

「ハッ、そんなものかよ!」

『ぬううう……! デガンジャ! 竜巻で虫けら諸共八つ裂きにしろ!!』

 

 ヤプールの声に合わせ咆哮が轟き、周囲に竜巻が巻き起こる。避難が進んでいるとはいえ此処は市街地、どれ程の被害になるかは目に見えていた。

 

「そうかよ……だが、そいつはやらせねぇ! 守り切るって言ったからな!!」

 

 胸元で左腕に装備したブレスレット…ウルティメイトブレスレットを構えると、その中央の宝玉が青く輝いた。

 それはかつて訪れた別の地球での戦いで、ゼロが別のウルトラマン達から託された力の欠片の一つ。月のように優しき奇跡を齎す【守り抜く力】。

 

「――ルナミラクルゼロッ!!」

 

 身体が青と銀のみに変わり、より神秘的な輝きに包まれる。すぐに両手を頭に添え、その頭部に装備された二本の刃を左右へ発射した。

 

「その竜巻、相殺する! ミラクルゼロスラッガーッ!」

 

 超能力の宿った青き双刃、ミラクルゼロスラッガーが分裂しデガンジャの周囲を高速で風に逆らうよう回転する。無数に分かれた刃は光を纏いながら黒い竜巻を切り裂いていき、瞬く間に掻き消されていった。

 雲散霧消された竜巻を見届け、放たれたミラクルゼロスラッガーが二本に戻りゼロの頭部へ再度装着される。

 

「あんなことまで出来るのか……!」

 

 奇跡とも言える光景を目の当たりにし、思わず声を出す翼。殺意の風が止んだその場は、あまりにも優しい静寂だけが残っていた。

 攻撃を無効化されたことに激昂したのか、咆哮と共にデガンジャが突進してくる。だが青のゼロはその突進に合わせ掌を差し出し、そこに触れた瞬間衝撃波でデガンジャの巨体を街の外まで吹き飛ばした。

 

「発剄ッ!?」

「――レボリウムスマッシュ」

 

 まるで言葉の応酬のように、その技名を呟く青のゼロ。そしてすぐに、デガンジャを追って街の外まで高速で移動する。その最中、再度ウルティメイトブレスレットを構え力を込める。青い輝きを放つ宝玉が、今度は赤く輝きだした。

 その瞬間ゼロの身体がまたも変化する。ルナミラクルゼロと同じく、与えられたもう一つの力。太陽のように何よりも力強い【前に進む力】。

 

「ストロングコロナッ!! ゼロォッ!!!」

 

 爆熱と共にその体色は赤と銀が基調となり、見るからに猛々しい力で漲っていた。赤い輝きとなったゼロは吹き飛ばされ倒れているデガンジャにまで瞬時に追いつき、その身体を捕まえて持ち上げた。

 

「こいつで終わりにしてやるぜぇッ!! ウルトラハリケェェェンッ!!」

 

 身体を全力で回転させ、捻りを加えデガンジャの身体を天空へと放り投げる。その無防備な隙を狙い、ストロングコロナゼロの右腕が激しく燃え上がった。

 

「ガぁルネイトぉ……!! バスッタアアアアアアアッ!!!」

 

 最高潮までエネルギーを高めた拳を天へ突き上げ、光線として発射。ストロングコロナゼロの必殺技である、ガルネイトバスターだ。

 ウルトラハリケーンで無防備になったところへの直撃を受け、デガンジャは空中で爆発四散した。

 

「や……やった、のか……!?」

 

 戦況が気になり思わず近くまで来ていた翼が声を上げた。あれほどまでに凶悪な力を持った怪獣が、この巨人の手によっていとも容易く粉砕されたのだ。驚愕に落ちるのも無理はない。

 そんな彼女の傍に、体色を最初と同じく赤と青に戻したゼロが歩いてきた。

 

「あぁ、やってやったぜ」

 

 明るい声に巨大なサムズアップ。無機質な顔が歪むことは無かったが、声と行動だけでも彼の小気味好さが溢れだしているようだった。

 そんな彼に思わず笑顔をこぼす翼。何もかもが自分ら人間とは全く違う巨人だが、その心は何処か、親愛なる後輩達のそれと被せてしまっていた。

 

「…すまない、私の代わりに戦ってくれて。感謝している」

「なに、いいってことよ。それよりも……後はテメェだぜ、ヤプール!」

 

 暗天へ叫びつけるゼロ。だが、ヤプールから帰ってきた声はくぐもった笑い声だった。

 

『クックック…! いい気になるなよ、ウルトラマンゼロ!』

「ハッ、この期に及んで何が出来るってんだ!」

『今の我は怨念だけではない……。この世界に来て、この世界の者達が恐れる存在である【ノイズ】と出会った。その力も、今や我の力の一部となっているのだ。

 さぁ、雑音をがなり立て蘇るがいい! デガンジャよッ!!』

 

 渦巻く暗雲から降り注ぐ黒い閃光。それらが収束し、先ほどゼロが砕いたはずのデガンジャへと姿を変えていった。だが先程の個体より大きく違うところがある。

 体色は毒々しいまでに鮮やかな色彩へと変わり、その眼は複眼のようでもあり機械的な液晶ディスプレイのようとでも言うべきか。そして何処となく、デガンジャの身体の周囲は歪んでいた。

 

「チッ、うっとうしいヤツだぜ……!」

「だが、さっきとは様子が違う……」

 

 デガンジャの異様に翼が疑問を漏らす。それは何処か…自分が今まで切り捨ててきたそれと酷似した雰囲気を感じた故にだ。そんな彼女の直感と疑問は、本部指令室のエルフナインからの訴えで裏付けられた。

 

『翼さん、大丈夫ですか!?』

「エルフナインか? あぁ、十全とは言えぬが、なんとか動けるぐらいには無事だ」

『良かったです……。ではそのままで聞いてください。翼さんの目の前に居る怪獣……アレから、ノイズとアルカノイズ、二つの特徴に合致する反応が検出されました……ッ!』

「――なん、だと……!?」

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