絶唱光臨ウルトラマンシンフォギア   作:まくやま

48 / 62
EPISODE 23 【其の名は”破滅”】 -B-

 

 三つの大爆発が収まり、東京に静寂が戻る。

 その地には今、カラータイマーを赤く点滅させながらも六人の鎧を纏う光の巨人たちが堂々と立ち並んでいた。

 

「ヤプール、スペースビースト、反応完全消失ッ!」

「エタルガーはまだ健在ですが、このダメージ量なら……ッ!」

「勝った、か……ッ!!」

 

 藤尭とあおいの声を聞き、右の拳を左の掌に打ち付ける弦十郎。その顔はほころび、全ての元凶である者を打ち倒した勝利の感覚に包まれていた。その感覚は喜びとして周囲に伝播し、タスクフォース指令室からは小さく歓声が沸き上がる。

 これで終わったのだ、少女たちや世界を苦しめた者を全て打ち倒したのだから。

 

 

 

 戦場であった東京からは歓喜の空気は広がっており、各シェルターから歓声と安堵の声が響き渡っていた。そしてそれは報道を通じ、世界各国でも伝えられ喜び湧き上がっていた。ウルトラマンたちが勝利した、その事実に。

 そして並んで立つ当人たち六人もまた、勝利の感触に打ち震えていた。眼前には倒れこみ起き上がらないエタルガー。アーマードダークネスは全て破壊されたのか、黄金の肢体が剥き出しになっていた。

 

『……勝ったん、ですね』

『ビーストは私とクリス、先生が完全に消滅させた』

「『敵じゃあなかったさ。彼女が一緒だったからね』」

『「『ヤプールの方は私たちとゼロ、翼先輩でぶった切ってやった、デス』」』

「『いい加減しつこいが、今度こそヤツも終わりだ』」

 

 互いに報告し合う中、自然と目線は倒れ込んで動かない黄金の魔神へと注がれていた。

 

『……エタルガーも、もう立てやしないだろう』

「そうだな、私たちの全力を叩き込んだんだ。ああして倒れているのが、全ての証拠だろう」

「――ふざ、けるな……ッ! 俺は、まだ……」

 

 口惜しそうに地面を握り締め、なんとか顔を上げるエタルガー。睨め上げる先には光の巨人たち。息も絶え絶えといった感じで、ただ未練とも取れる怨嗟の言葉を吐いていった。

 

「クソッ……! 俺はまだ死んではいない……。力を蓄え、もう一度……!!」

「テメェに次なんざねぇよ、エタルガー」

 

 六人のウルトラマン其々が身に纏っていた絆の鎧を解除、光へと昇華させていく中で、エタルガーに語り掛けたのはゼロだった。其処に続くように、エースと80も話し出していく。

 

「奇跡的にも貴様は命がある。宇宙牢獄の中で永遠の時を過ごすんだな」

「ベリアルを投獄していた時よりも強化してある。お前が外に出ることは無いだろう」

「く、うッ……!!」

 

 M78星雲、光の国の管轄下にある宇宙で最も堅牢強固な幽閉施設、宇宙牢獄。其処へ転送させようとエース、80、ゼロの三人がエタルガーの周囲に起つ。互いに腕を伸ばし合い、光の力で転移空間を作ろうとしていった。

 その時にふと、ネクサスが空を見上げてみた。眼前に広がっているのは未だに黒……暗黒の空だ。エタルガーを送ればこの闇も晴れるのだろうかと思うマリアだったが、彼女の胸に何か強い威圧感が圧し掛かって来た。適能者(デュナミスト)としての本能が危険を察知したのだ。偶然にも暗黒の空を見上げていたが故に。

 

(みんな、其処から離れてッ!!)

 

 何かを察したマリアの言葉に全員が思わず飛び退く。瞬間、闇色の光がエタルガーを包み込みアーマードダークネスが再度その黄金の肉体に装着されていった。

 

(そんなッ! 全部吹き飛ばしたはずじゃ……ッ!)

『ンな馬鹿な話があっかよッ! ウルトラギア使って全力全開のフルパワーでだぞッ!?』

『だが、事実としてエタルガーの身には再度暗黒の鎧が纏われている……ッ!!』

「……ふ、ハハハハハ……! どうやら分は、私の方にあったようだなッ! 貴様らを滅ぼす、その時、が……――?」

 

 意気を高めて声を上げながら宙に浮くエタルガー……いや、エタルダークネス。だが、その異変はすぐに表れていた。力を解き放とうと、身体に力を込めるエタルガーだったが、その動きが為せない。鈍いとか重いとかではなく、完全に自由が奪われてしまっていたのだ。

 

「なんだ!? 何が、どうなっているッ!?」

『アイツ、動けないの……?』

『でもでも、さっきよりヤバい感じがビンビン出ているデスよ!』

(気を抜かないでッ! なにかが、おかしいッ!!)

 

 自由を奪われたエタルガー。その意思を無視するかのように両腕を大きく拡げ、己が存在を誇示するかのようにアーマードダークネスが動き出した。

 闇の空へ放たれるマイナスエネルギー。それは龍脈(レイライン)以上に速く世界へと伝播し、自らの”声”を解き放っていった。

 

 

 

『――……恐れろ……喜ぶな……――』

 

 

 

 声を聞いた瞬間、世界中の人間が戦慄と恐怖に包まれ、息を止めてしまった。まるで、心の臓を鷲掴みにされたかのような感覚と共に。ウルトラマンと共に在る者たちにその感覚は無かったが、発せられた言葉にただ戦慄したのは言うまでもない。そしてそれは、中空に浮かぶエタルガーも同じだった。

 

「き、貴様まさか、影法師ども……ッ!?」

 

 首だけを動かして周囲を見ながら声を出すエタルガー。その周囲には黒く揺らめく緩やかな風がエタルガーの黄金の頭部を撫で回すように集っていく。やがてエタルガーの背後に、巨大な漆黒の法師姿が顕現した。

 

『我らは”黒い影法師”と呼ばれしもの……。我らは”マイナスエネルギー”と言われしもの……。

 ――我らが名は”邪心王”……』

「邪心王……!? 影法師ども、今になって何をしようというんだッ!」

『我らの顕現……。それは、新たに作りし”万象黙示録”の完成を意味するもの……』

(万象黙示録って、キャロルちゃんのッ!?)

『貴様もこの世界を解剖しようと言うのかッ!!』

『……否。我が求めしは、光の巨人(ウルトラマン)が存在する総ての世界を滅亡へと導くこと……』

(世界を、滅亡へと……ッ!?)

 

 巨大な法師の影が渦巻き、まるでブラックホールのような黒い混沌の渦が発生した。

 その現象、状況をモニターする指令室。計測される数値は尋常ならざる数値を叩き出していた。

 

「これは……アリかよこんなのッ!」

「どうした藤尭ッ!」

「時空振動値が有り得ない数値にまで上昇しています! 超獣やビーストとはケタが三つ四つ違うどころじゃ済みませんよコレッ!」

「時空振動位置座標……計測不能!? ……いえ、コレは――地球全土ってことッ!?」

「なん、だとぉ……ッ!?」

 

 正面モニターに表示される現在の時空振動を示す数値。確かに今の其れは、藤尭が言ったように今までの計測よりも遥かに大きい、何万倍といった値になっていた。そしてあおいの言った通り、この高度の時空振動が発生している座標は地球全体に広がっていたのだ。

 それが何を示すかなど皆目見当も付かないまま、ただ心を奪われないように構えながら現場を見据える弦十郎。其処にブリッジの自動扉が開き、キャロルを抱いたままの慎次とエルフナインが入って来た。

 

「司令、戻りました!」

「緒川、エルフナインくん、無事だったかッ! ……彼女は、メディカルルームに連れて行かなくて良かったのか?」

 

 弦十郎の、そして全員の視線がキャロルに注がれる。薄く開かれた目から覗く青水晶のような瞳でその場に注がれた視線の全てに一瞥で返すキャロル。そこから何も言わずに抱きかかえる慎次の胸を押し、自らの細く小さな足でその場に立とうとした。

 が、思わずふらついてしまいすぐにエルフナインが彼女を支える。全く同じ容姿でありながら眼差しの強さが違う二人の少女の姿は、まるで姉妹か双子のようでもあった。

 

「やっぱり無茶だよキャロル! ちゃんと診てもらわないと……!」

「……うるさいやかましい。このオレを差し置いて万象黙示録の完成を告げられたのだぞ? 黙って床に臥せってなどいられるものか……!」

 

 減らず口を叩くものの、その肩はエルフナインに寄りかかりながらでまだ少しばかり呼吸が荒い。だがその眼差しは、メインモニターに映る黒い混沌の渦を強く睨み付けていた。

 

 

 

 混沌の渦は徐々に大きさを増していき、その先に在る世界を映し出していく。

 仄暗く、生気の存在しない世界。黒濁とした海と、無を連想する灰白色の岩礁。深淵へ続く無数の孔が開けられた山。ところどころに闇色の植物が茂り、粉塵へと朽ちた錆鉄色の砂漠が広がる光亡き世界。

 目にした誰もが、不気味と言う安直な言葉による恐々と畏怖を沁み込まれていくのを感じていた。誰もが心に刻み込まれていくのを感じていた。

 

 終焉の地――”異形の海”と言う、その位相世界の名を。

 

「異形の、海……!?」

「それが解剖の果ての世界……。万象黙示録の完成形……。あれが……ッ!」

 

 誰もが言葉を失う中で呟くキャロル。

 彼女自身はこうなるであろうことは理解していた。総てを解剖し、全と一を融和させた世界。彼女が心の底から望んでいたはずの光景。だというのに……。

 

「――あんな、忌まわしいモノを……ッ!」

 

 不思議とアレを称える気にはならなかった。むしろその嫌悪感に唾棄してしまうほどだ。

 そんな瞳をおもむろに動かしてみると、モニターの端に追いやられたレポートファイルが目に付く。眼を凝らしてその内容を読み進めていくキャロル。そこで何かに気付き、弦十郎の前に押し出てそのレポートファイルを最前面に表示させた。

 

「おい、こいつを書いたのは誰だ!?」

 

 おもむろに叫ぶキャロルに周囲は驚きながらも、そのレポートを記し遺した者がDr.ウェルだと返す。

 

「あの脳味噌しか能のないたくらんけが遺したものか。自分本位にして理解も共感も得難いエゴイスティックの塊のような文章の羅列……だが、ヤツなりに核心を得ていたという事か」

「どういう、ことだ……?」

「あの男は邪心王の存在を既に認識し、その魂胆を見抜いていたという事だ」

 

 言いながらキャロルがレポートの一部を拡大、彩色する事でその部分に注目を集めようとしていく。其処にはこう記されてあった。

 

 

【受肉したこの肉体は、この大天才”Dr.ウェル”でありながら”マイナスエネルギーの塊”であることも理解る。意識と記憶は間違いなく”Dr.ウェル”に書き換えられているものの、胸の奥底より”滅び”を為すよう命じる声が聞こえる。

 だが僕はあのちみっこ錬金術師とは違う。絶対たる自我を以てこの声を捻じ伏せ、絶対たる力(ダークルギエル)で世界救済を為し遂げるのだ。

 さもなくば、この世界はマイナスエネルギーによって滅亡(ほろび)を迎えるからである】

 

 

「魔王獣の記述よりも前の部分か……。流し読みしていたせいか気付かなかった……」

「雁首並び立ててもその程度か。まあいい」

 

 弦十郎らを罵りながらもレポートを次へ進めるキャロル。龍脈交錯点(レイポイント)に穿たれた五つの闇の楔、世界に出現する魔王獣、地球に溜め込まれたマイナスエネルギー。それらは全てエタルガーの計画でもあった。互いに利用し合う事で確実性を増す為だろうと、ウェルのレポートには記されていた。

 そしてキャロルが”核心”と言った部分は、この次の項に書かれていた。

 

 

【考察を続けるほどに疑問が浮かぶ。ヤプールとエタルガーの目的はハッキリしているというのに、黒い影法師――マイナスエネルギーの塊は何を目的としているのか皆目見当も付かない。この大天才の僕の頭脳を以てしてもだ。

 ウルトラマンどもを滅ぼすことか、地球を滅ぼすことか、宇宙の全てを滅ぼすことか。内なる声はただ『滅ぼせ』と呼びかけるだけでそれ以上を語ることは無い。そもそもこの内なる声の語る『滅び』とは何を意味するのか。宿敵の抹殺、人類の全滅、全生命の消失。その何れにしても付き纏うモノは、何故(・・)という至極単純な疑問に他ならない。

 だが”それ”こそがマイナスエネルギーというモノなのだろうかとも思考する。怒り、憎しみ、悲しみ、妬み……そんなチンケな感情が世界を滅ぼすに値するモノであるのか。結論からしてみればそれはYESである。

 世界は幾度も”愛”で傷付けられ、穢されて、そして救われてきた。正方向のエネルギーですら角度を返れば万象を砕く牙となるのであれば、負方向のエネルギーに万象を砕けぬはずがないのは自明の理であろう。マイナスエネルギーはただその性質上、エネルギーベクトルを破滅へと向けているにすぎないのだ。

 エネルギーそのものに全も悪も無く、ただ向けられているベクトルの違いに他ならないのは、LiNKERを頼りにしつつも愛を以て聖遺物との適合を果たしシンフォギアを身に纏った検体という前例からも証明されるものである】

 

「感情という不安定で不確定なもののエネルギーを論ずるか。まぁこの身にも覚えのあるものだ、肯定しておいてやろう」

「そしてDr.ウェルは自らの……ダークルギエルの力で世界を制止、マイナスエネルギーを制御支配することでこの世界を守護ろうとした……」

「だが結局その戦いで勝利したのはマリア・カデンツァヴナ・イヴ。光に属する者が勝利したと言える。そしてヤツ自身が闇の楔と化し、結果的にエタルガーの計画に加担してしまうことになってしまった訳か」

 

 エルフナインと共に淡々とウェルの遺したレポートの内容を把握しながら思ったことを述べていくキャロル。そこに隣に立つ弦十郎がやや威圧感を伴いながらキャロルに問い掛ける。

 

「……聞かせてもらおう。君の為そうとしていた万象黙示録……その結果にあるのがあの”異形の海”と言う世界であるならば、この後はどうなると言うのだ?」

 

 重く問うた弦十郎の言葉にも一切怯むこともなく、キャロルはただ小さく嗤いながら隣の巨躯に向けて顔を見上げながら答えを放った。

 

「決まっているだろう。異形の海は、あの位相世界はこの世界の位相と同化……融合することで完成する。生あるものには死すらも与えられず、ただ恐狂と畏怖と絶望だけが久遠に連環し支配する世界へと為り変わる。

 それこそが、黙示録の世界なのだからな」

「マイナスエネルギーによって齎せる世界の滅亡(ほろび)……それこそが核心――黙示録だというのか」

 

 強く奥歯を噛み締める弦十郎。真意が判明したところで、一体何をどうすれば良いのか全く見えない現状は、まるで眼前に映る闇の渦に囚われ飲まれ始めているような感覚に陥っていた。弦十郎だけでない。藤尭も、あおいも、他のブリッジクルーも、エルフナインも、未来も……誰もが言葉にして表せぬ思いと苦しみを胸の内に抱いていた。

 それもまた、畏怖と言うマイナスエネルギーであると理解ることもなく。

 

 

 

 世界から雪崩れ込む負の感情を一身に受け、宙に浮いたままのエタルガーが邪心王に……アーマードダークネスに向けて言葉を放っていく。

 

「貴様、この俺を利用したと言うのかッ!?」

『エタルガー……力在るが故に己を神を名乗りし愚者よ。貴様もまた呼び水に過ぎなかったのだ。

 異形の海を生み出し、真なる邪神を降臨させる為の……』

「真なる、邪神だと……ッ!?」

『神を名乗りし愚者よ……その魂を贄として、黙示録の最後の扉を開ける鍵となるがいい……』

「な――ぅぐあああああああッ!!!」

 

 エタルガーを包むアーマードダークネスから放たれる禍々しい瘴気。圧倒的な、これまで感じたことのない程の力に居合わせたウルトラマンと装者たちも押されていた。

 

『我が下に集え……。我と共に在れ……。地球(ほし)の邪心たちよ……』

 

 邪心王の言葉と共に、東京の龍脈交錯点(レイポイント)から噴出する漆黒のマイナスエネルギー。その全てがアーマードダークネスに、邪心王に集束されていく。それと共に邪心王はその姿を異形へと変えていき、全天を覆うほどの闇に膨らんでいった。その中心で、エタルガーが悶えるながら叫びを上げていた。

 

「俺を、喰うのか!? 止めろ……止めろぉッ!! この俺を、一体何だとおおおおおおおッッ!!!」

 

 叫びと共に闇に飲まれるエタルガー。それを吸収することで、邪心王はその姿を具現化させた。まるで漆黒の衣に身を包んだ法師のようではあるが、その大きさはこれまで相対してきた者とは規格外もいいところだ。

 まるで天にまで届かんとする黒衣の王。余りにも緩やかな動きでその腕を突き出すと、まるで暴風のような瘴気がウルトラマンたちに襲い掛かる。地面を巻き上げ、車や電柱を吹き飛ばし、ビルの窓を木っ端微塵にしながら、荒れ狂う瘴気が六人の巨人を吹き飛ばした。

 

『ぐうぅ……なんて、威力だ……ッ!』

「大地、みんな、大丈夫か……ッ!?」

「くっそ、トンでもねぇな……ッ!」

地球(ほし)のマイナスエネルギー……これほどとはッ!』

『ウルトラマンになっててコレだと、キャロルのフォニックゲインよりずっとずっとキツい気がするデス……ッ!』

『勝てるの……? 私たちは、こんなのに……』

「弱気になるなッ! 勝たなければ、この地球(ほし)に未来は無いッ!」

(エースの言う通り……私たちは、勝つしかないッ!)

 

 皆が一様にカラータイマーを赤く点滅させながらも奮起する中、巨大化した邪心王……【巨大暗黒卿】の威容を眺めていると、彼らの中で一人地に膝を突く者が出た。立花響が変身している、ウルトラマンガイアだった。

 

「響、大丈夫かッ!?」

『一体どうしたってんだよおいッ!』

(ゴメン、クリスちゃん……先生……。なんだか……胸の奥が、苦しくて……)

 

 胸のライフゲージが更に点滅を加速させる。体力が急激に失われていると言うことだ。状況を鑑みて導き出される答え。それに辿り着いたのは猛とマリアだった。

 

「地球のマイナスエネルギー……それが光と一体化した響に悪い作用を齎していると言うことか……!」

(響の力は分け与えられた地球そのものの生命の光……。その地球のマイナスエネルギーに覆われ、吸い取られ、尚もぶつけられるのは響の体力その物を奪われているのと同義……ッ!)

「変身を解け響ッ! そのままでは君自身が保たないぞッ!」

(は、はい……ッ!)

 

 エースの、星司の激に思わず頷くガイア。変身者である響の意思を以てその巨体を解除しようとする。が、それよりも速く地球のマイナスエネルギーは”ウルトラマンガイア”の肉体を蝕んでいた。

 

(ぁ――あ、あ……ぅあああああああッ!!!)

 

 ガイアの内より溢れ出す瘴気。それは響の胸の内からも暴れ回って解き放たれていく。まるでその身が融合症例であった頃に起きた、シンフォギアの暴走状態を思わせるものだ。だが今行われているこれは、内に抱き締めていた力を無理矢理に引き出されている状態に過ぎない。故にガイアは暴走するでもなく、ただ身悶えをしていた。

 やがてライフゲージの点滅は消え、眼からも光が失われる。そして地響きを上げて、地球の生んだ光の巨人が倒れ込んだ。

 

『立花ッ!! くうッ、往くぞ皆ッ!』

『うおおおおおおおおッ!!!』

 

 翼の掛け声と共に、巨大暗黒卿に目掛けてワイドゼロショット、メタリウム光線、サクシウム光線、オーバーレイ・シュトローム、ザナディウム光線が同時に発射される。一つに交わり巨大な光線と化した必殺の一撃だったが、溢れ出る瘴気はそれをいとも容易く吸い込み拡散させていってしまった。

 驚愕するウルトラマンたちやそれを見守る人々。そこから反撃とばかりに、巨大暗黒卿がその黒衣の中から暗黒の破壊光線や破壊光弾が連続で撃ち放たれ、ウルトラマンたち諸共に東京の地に大打撃を与えていく。高層ビルや街々が破壊されていく様は、絶望を叩き付けられているようだった。

 

「まだだ……ッ! まだ、負けちゃいねぇ……ッ!!」

「そうだ……。この生命、在る限り……ッ!」

「私たちは、何度でも起って戦う……ッ!」

「それが、ウルトラマンなのだから……ッ!!」

 

 尚も戦う姿勢を止めぬウルトラマンたち。諦めぬその姿を見て、邪心王は再度闇より声を放っていった。

 

『そうだ……其れこそが貴様たち、光の巨人(ウルトラマン)……。我らの脅威となる貴様らを、生かしておくわけにはいかぬ……』

 

 声と共に暗黒の触手が伸び、それぞれのウルトラマンを首に巻き付く形で捉えていく。思わず引き寄せられないように力を込めるが、体力の限界を迎えていたウルトラマンたちは余りにも軽々しく瘴気の渦へと引き寄せられていった。

 

「グゥゥ……くっそァ……ッ!」

『踏ん張れ、みんな……ッ!』

『でも、どんどん引き込まれて……!』

『諦めちゃ駄目デスッ! 諦めちゃ……!』

「だが、このままでは……!」

「全員が、闇に囚われてしまう……!」

『なんとか、なんねぇのかよ……ッ!』

(これほどまで、だとは……ッ!)

「エックス、もう一度ベータスパークアーマーを……ッ!」

『ああ、どこまで保つか分からないが、やってみよう……ッ!』

 

 なんとか再度ベータスパークアーマーを展開しようとするエックス。体内の大地がエクスベータカプセルとエクスパークレンスを結合して力を発動させるが、闇はまるで手のようにエックスを狙い二つのウルトラマンの力をもぎ取るように奪い取っていった。

 

「そんな、ベータスパークアーマーまで……ッ!」

『気を抜くな大地ッ! ぐ、ううううッ!』

 

 大地の手の中から消えたベータスパークソード。その一瞬の呆然が、エックスの身体を更に引き込ませてしまう。だがその時に映った視界の先で、今まさに吸い込まれようとしているウルトラマンの姿が眼に入った。ガイアだ。

 

『響ッ! どうした、しっかりするんだッ!!』

 

 最初に目にしたからか思わず彼女を叫び呼ぶエックス。だが応答は無い。光を失ったライフゲージを見ても、完全に意識を失ってしまったのだろうと言うことが理解る。

 

『立花ッ! 気を確かに持てッ!!』

『だんまりしてるなんざらしくねぇんだよッ! 起きろよ馬鹿ァッ!!』

『しっかりして、響さんッ!!』

『返事だけでもして欲しいデスよッ! 響センパァイッ!!』

 

「響さん! 起きてくださいッ!!」

「響ィ!! 響いいいいいいいッ!!!」

 

 翼やクリス、調と切歌も響を呼ぶ。指令室からも未来や弦十郎、エルフナインたちが声を上げるが、響からは一切返事がない。それに業を煮やし、飛び出したのはマリア――ネクサスだった。

 

『マリアッ!?』

(私が響を連れて帰るッ! みんなは少しでも進行を抑えてッ!)

 

 引き寄せる力に抗わず飛ぶことですぐにガイアの下へ辿り着くネクサス。すぐに彼女を抱え、今度は抗うように逆へと飛ぼうとするが、一度付いてしまった勢いは容易く殺せるものではなかった。それでもと全身に力を込めて抗いながら、胸の内に声をかけていく。

 

(ダイナ、コスモス、もう少しだけ力を貸して……ッ!!)

 

 祈るようなマリアの想いと共に、その身体を再度ジュネッスへと変えるネクサス。アームドネクサスに赤と青の光を滾らせ、その光を伝播させていく。コアゲージのみならずエナジーコアが深く脈動しているネクサスにとっても危険な行為だが、それでもネクサスは、マリアは響を助けるべく僅かに残ったエネルギーを分け与えていった。

 

(起きなさい、響……! 響……ッ!!)

 

 必死に声をかけるマリア。周囲からも響を呼ぶ声は大きく聞こえている。だが、肝心の彼女の声は未だ聞こえないままだった。苛立ちと焦りに心が揺さ振られながら、何度でも声をかけていく。必ず届くと信じて、彼女(立花 響)がずっとそうしてきたように。

 

 そうしてガイアと繋がっていたネクサス、その内に居るマリアの視界に在る姿が映り込んで来た。純白の布を荘厳に纏う、黄金の髪を持つ女の姿。振り向くことで彼女の黄金の瞳がマリアと交錯した瞬間、過去に得ていた知識と直感で其の存在を理解する。

 

(貴方は……)

 

 彼女こそが、”フィーネ”なのだと。

 

 

 

 

 ウルトラマンとそれと共に在る装者や変身者たちの危機を激しく知らせるレッドアラート。全員がそれぞれ彼女らのうちの誰かの名を叫びながらただ祈りを捧げている最中、キャロルはがなり立てる轟音を聞き流しながら独り表示されているDr.ウェルのレポートを最後まで読み切っていた。

 神妙な顔付きのまま巨大暗黒卿の圧倒的な姿をその目に焼き付ける。そしてウェルのレポート内容を思考の中で反芻しながら、あの存在がどういうものであるかを再度己が小さな心身で確かめていった。

 

(――なるほどな、確かにあの男の遺した言葉通り、という訳か。そしてそれが、遂に自らの手を下してきたと……)

 

 

【そして僕は、この身体を形成するマイナスエネルギーの塊、黒い影法師と呼ばれる存在に、この僕の身体自身が確信している結論を結び付けた。光を羨み、絆を憎み、清きを妬む。邪な心の塊となり、世界を破滅へと導かんとするこの存在は最早”概念”と言っても過言では無いものであると。

 ”破滅”と言う”概念”である故に、影法師へと輻輳したマイナスエネルギーはその根源的な本能として邪悪なる巨獣や異生物を呼び出し、世界を破滅へと導かんとする。例えそれが幾度斃されても、幾度でも呼び出してはただ破滅へと導いていくだけの存在。煽るわけでもなく、自らが手を下さすわけでもなく、まるで全てを見守る”神”のようでもある。

 そのように負方向のベクトルへ傾いた意志であり概念――マイナスエネルギー。その塊である影法師を僕はこう称することにする。

 

 『根源的破滅招来体』と。】

 

 

 

 

EPISODE23

【其の名は”破滅”】

 

 

 

 

EPISODE23 end…

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。