絶唱光臨ウルトラマンシンフォギア   作:まくやま

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EPISODE 26 【銀河に煌めく金色の華】 -B-

 コダラーの電撃、シラリーの火炎、ザイゴーグの光線が一斉に発射される。それを光の翼をはためかせたウルトラマンたちが一斉に己が標的を決め、この場から離れるように体当たりしていった。

 エースと80がコダラーを海へと押し込み、ゼロとネクサスがシラリーを空中へと高く連れて行き、ガイアとエックスがザイゴーグを山間部へと一気に突き進んだ。

 

 

 海では真っ先にエースがコダラーと組み合いをはじめ、その超剛力をその身で受け止めた。

 

『洒落になってない、このパワー……ッ!』

『こちとらエクスドライブのダブル合体だっていうデスのにッ!』

「破滅を名乗るは伊達じゃないって事か……ッ!」

 

 最大級にまで高められたエースの力ですらもコダラーは弾き飛ばし、強靭で兇悪な剛爪を振り被った。咄嗟にその腕にシュルシャガナの丸鋸を盾として展開するエース。コダラーの剛爪とぶつかり合い火花を散らしていく。

 其処に空中から迫って来たのは、アームドギアが巨大なアームドベースと化した80だった。

 

「兄さんッ! 調ッ! 切歌ッ!」

『一人じゃ無茶が過ぎんだろうがよッ!!』

 

 飛翔しながらホーミングレーザーのようにウルトラアローショットを一斉発射する80。赤い光の鏃はコダラーの背部に突き刺さり火花を散らす。だがまるでウミガメを思わせる強固な背部外殻にはその攻撃もまったく効き目を見せておらず、一瞬コダラーの注意を外したに過ぎない。

 その隙にコダラーの大きな腹部を蹴り飛ばし距離を取るエース。そしてそこへ、80が本命の一撃を既に用意していた。

 

「これでッ!」

『ブッ爆ぜやがれぇッ!!』

 

 大きく腕を円に回し、力を込めて巨大なミサイル状の光弾を放つMEGA DETH FUGAURA。通常なら一発が限度の破壊光弾ではあるが、エクスドライブの影響か一度に四発も連続で発射した。その全てがコダラーに直撃し、光の炎に包まれる……が、炎の全てがコダラーの腕に押さえ付けられる形で凝縮されていた。

 

『なぁ――ッ!』

「来るぞクリスッ!!」

 

 コダラーは、凝縮した炎の塊を80に向かって押し出すように投げ返す。四発分の熱量を無理矢理固めた代物だ、どれ程の破壊力になるのか想像に容易い。事実、回避行動をとったにも拘らず僅かに掠めたアームドベースが爆発を上げて吹き飛んだのだ。

 思わすアームドベースを小型化し、エースの隣に着地する80。相対するコダラーは甲高い鳴き声を上げながら、目から電撃を発射する。すぐさまそれを、エースがウルトラネオバリヤーで防御した。

 

「攻防一体、ということか……」

「だが、そんなことで負ける私たちではないッ!!」

『この手が繋がっている限り……ッ!』

『何度も、何度でも――』

『起ち上がって、戦うデスッ!』

 

 海底に足を付け力強く構えるエースと80。咆哮するコダラーに対し再度戦いを挑んでいった。

 

 

 

 空では巨大な翼をはためかせ、その巨体に似合わぬ超高速度で飛ぶシラリーを追って、ゼロとネクサスがエクスドライブウルトラギアより発現した光翼を羽撃かせて飛翔していた。

 

「図体の割に中々のスピードじゃねぇかッ!!」

『そうやって世界を炎に撒いてきたのか……ッ!』

『でも、もうこれ以上はやらせないッ!!』

 

 飛翔しながらボードレイ・フェザーを自分の周囲に配置し、腕を突き出す事で発射するネクサス。縦横無尽に跳び回る光の刃は更に加速するゼロに当たらぬよう交わしながらシラリーを狙い定めていた。それがシラリーに当たる直前、ゼロも大腿部からアームドギアを取り出し巨大な刃と化して蒼ノ一閃を振り抜き放つ。逃げ場のない光刃と巨大な雷迅がシラリーに直撃し、爆煙が巻き起こる。

 だが、一瞬の間を置いてゼロたちの眼に映ったのはエネルギーを全て吸収し無傷のシラリーだった。驚愕と同時にシラリーの腕から放たれる赤い光弾。一発一発が必殺の一撃とも思える破壊の光に直撃してしまい、ゼロとネクサスが墜ちるように地面に降りてしまった。

 

「ぐああぁぁッ!! くっそぉッ!!」

『エクスドライブを以てしてもこれ程とは……ッ!!』

『だが、それでもまだァッ!!』

 

 すぐに立ち上がったゼロとネクサスに向けて口から劫火を吐き出すシラリー。それをすぐに察したゼロがブレスレットを叩き付け、赤と青の盾状の剣である【ゲキリンゼロディフェンダー】を展開。直撃を遮断する。そのままゼロの背後から再度飛び立つネクサス。胸部から抜き出した長剣を構えシラリーへ突撃する。長剣は蛇腹剣と化し、大きく振り抜くとシラリーの身体に絡み付き引き抜くと同時に斬り付けた。

 だが数多のエネルギーを吸収するシラリーの体表は非常に硬く、ネクサスの一撃にもさほどダメージを見せなかった。其れに反撃するように長い首と鋭い嘴で、まるで槍のように突撃するシラリー。瞬間的に超高速へ到達する紅い竜が白銀の戦士へと吶喊し貫かんとしたところ、眼前に現れたゼロにその顔を捕まれた。

 

『翼ッ! ゼロッ!』

『させる、ものか……ッ!!』

「今度はテメェが……地面の味を味わいやがれェッ!!」

 

 力で無理矢理押し止め、身体を大きく捻りきりもみ状態で真下に投げ付ける……まるでドラゴンスクリューのような投げ技を放つゼロ。そのまま落下するシラリーだったが、その巨体に似合わず大きく捻り直し翼を大きく羽撃かせ地響きを立てながら着地した。

 甲高い咆哮を上げたと同時に、首を振りながら劫火を広域放射するシラリー。思わず腕を重ねて炎を防御するゼロとネクサスだったが、浴びせられた衝撃に再度地に足を付けて構え直した。

 

『やる……。だが、我らの翼は未だ折れてなどいない……ッ!』

「あぁそうだ……。俺たちはまだ、この空を飛べるッ!」

『みんなとの絆が繋がっている限り、輝きが耐える事はないッ!』

 

 更なる意気を高め、その手に刃を携えて駆け出すゼロとネクサス。シラリーはただ、嘲笑うかのように再度咆哮を上げて駆ける二人の巨人を迎え撃とうと構えていた。

 

 

 

 地上、山間部へと押し込まれたザイゴーグは忌々しそうに口から血のように赤い光線を吐き出し、光の戦装束を纏ったガイアと内より光を溢れさせる鎧を纏ったエクシードエックスを吹き飛ばした。

 それでもすぐに立ち上がり颯爽と駆けてザイゴーグと組み合うガイア。其処でザイゴーグの、自らをも圧倒する強大な力を直感し、組んだ腕を無理矢理弾き飛ばして両の拳で連続攻撃を浴びせていく。その僅かな隙を突きエクシードエックスが空中から赤い煌めきを迸らせながらのXクロスキックで強襲していった。

 

「イィィィッサァァァァッ!!」

 

 光の蹴撃がザイゴーグの顔面に当たり、その巨体を数歩後ろへと退がらせる。追撃にと走り出すガイアとエクシード。だがザイゴーグもすぐに体勢を立て直し、棍棒のように大きく肥大した右腕を振り抜き攻め立てようとした二人のウルトラマンを跳ね飛ばした。

 

「クッ……! 以前と変わらず……いや、以前戦ったザイゴーグよりも強力かッ!?」

『比べてる暇はありませんッ! 負けられない戦い……全力で、越えて往くだけですッ!!』

『響ちゃんの言う通りだな、エックスッ! みんなに力を貸してもらって此処まで来たんだ。負けるわけにはいかないッ!!』

 

 倒れ込みながらも決して折れたりはしない二人のウルトラマン。起ち上がると共に互いに顔を見合わせ頷き合う。意思の疎通はそれだけで十分だった。

 ザイゴーグの光線が吐き出され地面が爆裂する。上がる土煙を貫いて、右腕を撃槍の刀身に変形させたガイアが一直線に突進してきた。それを横から薙ぎ払い倒すように棍棒の右腕を奮うザイゴーグ。だが振り終えた先の隙に、既にエクシードエックスがザイゴーグの懐に潜り込み胸部に煌めきを込めた拳を連続で打ち付け、締めに輝く脚で蹴り飛ばした。サーガアーマーの能力である、瞬間移動にも追い付けるほどの超高速能力による接近戦だ。

 それに一瞬怯むものの、雄叫びを上げながら強靭な尾で激しくエクシードエックスを叩き付ける。吹き飛ばされながらもなんとか着地するエクシードエックス。その瞬間ザイゴーグの背後から腕を再度撃槍に変えたガイアが強襲する。だがそれも、ザイゴーグの背部に残されていた多くの棘を直接放たれて拳が届かぬままに撃ち落とされてしまった。

 

 

 

 それぞれの戦いを目にしつつ、人々は声援と祈りを捧げていた。その拠点であるタスクフォース移動本部でもそれは同じであり、近隣に浮遊静止するメフィラス星人もドビシを誘き寄せる超重力球の維持を行ないながら戦いの行く末を眺めていた。

 地球に生きる人間とシンフォギアを纏う少女たちが引き起こした可能な限りの奇跡の力を纏い戦うウルトラマンたちと、地球そのものが開放したマイナスエネルギーを喰らいながら世界に破滅を齎すべく蹂躙せんとする三大破滅魔獣と巨大暗黒卿。正と負……互いに優劣が決め切れぬ中、その異変は地球の人々に現れていた。

 祈りを捧げ心で歌ってはいるものの、皆の体力は時間を追うごとに大きく削られていく。異形の海が侵食しているからだろうか、足元から滲む瘴気が僅かな力をも蝕んでいったのだ。

 

「ユナイト係数低下ッ! フォニックゲイン総量も減少の一途を辿っていますッ!」

「70億の絶唱が、崩れ始めているのか……ッ!?」

「そんな、そんなことって……ッ!」

(響……みんな、お願い……ッ! 負けないで……ッ!!)

 

 その異変はフォニックゲイン総量の低下と言う形で確認するタスクフォース移動本部。そしてそれは、ウルトラマンと一体化している装者たちにも実感と言う形で理解させていった。

 

『そんな……みんなから貰った、力なのに……ッ!』

『みんなから狙われたら、どうしようもないデスよ……ッ!』

『狼狽えんなッ! まだ終わっちゃいねぇ……終わらせてなんか、やるものかよッ!』

「クリスの言う通りだッ! 気持ちで負けるな……! 俺たちは決して、負けられないんだッ!」

「そうですね、エース兄さん……ッ! 私たちは負けない……。この世界は、滅びたりはしないッ!」

 

 コダラーからの猛攻を受け、電撃を浴びせられて膝を付くエースと80。それでもなお起ち上がり力強く拳を握り構えていく。

 

「そうだ……。こんなピンチは何度も乗り越えて来た。どんなデケェ壁だって、ブッ壊してきたッ!」

『だから何度でも共に起ち上がろう……ッ! 何度でも共に、この剣を奮おう……ッ!!』

『もう誰一人として犠牲を出さない為に……。誰かがこんな理不尽で、涙を流さない為に……ッ!!』

 

 シラリーの腕から放たれる光弾を連続で受けて倒れ込むゼロとネクサス。追い打ちに劫火を浴びせられるものの、それを両腕で防御しながらなんとか起ち上がっていく。

 

「俺たちを受け入れてくれた世界を守護る為に……ッ!」

『私たちに力をくれた、数多の生命に報いる為に……ッ!』

『みんなと繋いだこの手で、みんな一緒に生きていく為にッ!!』

 

 ザイゴーグの荒々しい攻撃を受け続け、幾度となく跳ね飛ばされるガイアとエクシードエックス。だが幾度でも起ち上がり、大きく肩で息をしながらもその意思の光を絶やすことは無かった。

 皆の想いは一つに繋がっている。だから何度でも起ち上がれる。何度でも歌い、戦える。絶対に諦めないからこそ解き放てる言葉がある。

 

 そう――

 

『――本当の戦いは、此処からだァッ!!!』

 

 

 

 

「……そうだ、まだ此処からだ」

 

 独り呟く小さな姿。何かを確信している彼女は、一人その場を離れ巨大な戦場へと歩みを進めていく。

 

 

 

 

「二人とも、往くぞぉォッ!!」

『ハイッ!!』 『デェスッ!!』

 

 漆黒に染まった太平洋の真っ只中、エースを中心に大渦が巻き起こる。やがて浮遊した彼の足元には、調と切歌のアームドギアが巨大化と合体を為した、翠色の大顎のような刃を持った回転鋸式浮遊物体が其処に在った。

 同時に左手に長柄の三又鎌と、右手がそのまま巨大な鋸へと変形させるエース。光線技が増幅反射される以上、接近戦を仕掛けるのが常套としたのだろう。水上を滑るように移動しながら鎌を振り鋸を叩き付ける。だがコダラーの爪はそれを容易く遮り、腹部を狙う鋏を遠ざけていた。

 

『センセイッ!!』

「ああッ! シュワァッ!!」

 

 掛け声と共に再度空へ飛びアームドギアをアームドベースへと大型変形させる80。大きく旋回しながらコダラーの背後を取り、両腕部に握り締めた光粒子砲を一気に発射した。だがそれを即座に察知したコダラーが、エースを押し切り80の方へ向いて光粒子砲を受け止め跳ね返してしまう。

 寸でのところで回避したはいいが、これだけではまだ斃し切れるものではないと実感してしまっていた。

 

『チクショウめ、これじゃあ二の舞三の舞じゃねぇかッ!』

「ならば命を捨てる覚悟でやらねばならんか……。80、クリスッ! もう一度俺たちがヤツを抑えるから、その隙に全力を叩き込めッ!!」

『でもよ、それまで盗られちまったら――』

「取り返すまでだッ! ヤツの攻撃法が自分だけのものでない事を教えてやるッ!!」

「でも兄さん、それでは貴方の身体が……」

『大丈夫デスッ! おじさんにはアタシたちが傍に居るのデスッ!!』

『無茶ばかりするおじさんを支えるのは、私たちの役目ッ! だから先輩、先生、遠慮なくお願いしますッ! 私たち、信じてますからッ!!』

 

 それだけ言い残し、今一度コダラーへと突撃するエース。その場に残された80の出せる答えは、ただ一つしかなかった。

 

「……やろう、クリス。エース兄さんを、調と切歌を信じてッ!」

『だな……。後輩にそこまで言われて、手ェ抜くなんざカッコ悪い真似が出来っかよッ!!』

 

 空中に制止した状態で、両腕を回し左腕を上に右腕を水平に伸ばす。その動作と共にアームドベースが展開を開始、使えるだけの全ての力を溜め込んでいく。展開した部分が黄金に輝いていく間、今度はエースは途中で乗っていた回転鋸型飛行物体から降りて腕を交差すると共に腕部アーマーから白く輝く楔付きの鎖を射出、コダラーの身体を絡め取り拘束した。其処へ反撃するようにエースに向けて電撃を放つコダラー。力で引き合いながらの攻撃に、エースは耐えるだけで精一杯だった。

 だがそんなコダラーの背後から、先程までエースが乗っていた飛行物体が強襲する。大顎のような翠刃を広げ、コダラーの背部甲殻へと力強く咬み付いた。強固且つ弾力性にも富むコダラーの肉体だが、鋭い刃が食い込むことで流血と共に鳴き声を上げていく。そうしているうちに80はその腕を剛弓を弾くような体勢に変えており、アームドベースからは輝きと共に眼前へ赤い稲妻が迸っていた。

 

「これがクリスと私のッ!!」

『アタシとセンセイのッ!!』

『「フルパワーだぁぁぁぁぁッ!!!」』

 

 弓弾く構えから腕をL字に変える80。発射された光線は臨界まで溜め込まれたアームドベースの主砲と同時に強い輝きを以てコダラーへと一直線に向かって行った。拘束からの必殺の一撃。コレで倒れなければもう80に為す術は見当たらない、それほどの覚悟を以て放たれた光だった。

 だが鎖を引き千切ったコダラーはその覚悟の象徴すらも受け止め、確実に身体で溜め込んで反射させてしまった。驚愕に染まる80とクリス。だがエースはその可能性すら勝利への一手に変えていた。

 

「ヌゥゥゥンッ!!」

 

 両腕を天に仰ぐように広げ、コダラーが跳ね返した80とクリスが放った全力の光線を受け止める。それを両手で、増幅された調と切歌のフォニックゲインで押し止め、更にはエースの象徴の一つである頭部の鶏冠、其処に在るウルトラホールを介し受け止めた光線を更に高め上げていった。まるでそれは、他のウルトラマンたちから力を借りることで初めて使う事の出来るウルトラマンエース最強の技の一つ、【スペースQ】に酷似していた。

 

『クリス先輩の想いも――』

『矢的センセイの想いも――』

「そして俺たち三人の想いも全部込めて、貴様に返してやるッ!!!」

『「『喰ぅらえええぇぇぇぇぇぇッ!!!』」』

 

 巨大に膨らんだ光球を力強く投げ放つエース。其れすらも受け止めようとしたコダラーだったが、背後で噛み付いていた大顎の付いた丸鋸が更にコダラーの身体へと食い込み巨体を切り裂いていく。其処へ目掛けて放たれた光球は、コダラーを飲み込み爆散させていった。

 光が消え去ったところには塵一つ残らない。苦戦の果てに海の破滅魔獣を斃したエースと80、調と切歌とクリスは何方からともなく傍に寄り合い、その腕を強くぶつけ合った。

 

 

 

 

 一方世界の空を駆け巡りながら、やがてこの一連の戦いの始まりの地であるオーストラリアの地にゼロとネクサスが降り立った。

 

『如何なる因果か、其れとも定めか――』

『でも、だからこそ此処で斃す意味がある……ッ!』

「さあ、やってやろうじゃねぇかッ!!」

 

 咆哮するシラリーに合わせ、細かな砂塵を巻き上げ駆け出すゼロとネクサス。シラリーの火炎放射に対し、ネクサスは騎士剣のアームドギアを籠手に沿わせながら振り抜き大型のパーティクルフェザーを発射。空中に飛んだゼロは頭部のハバキリゼロスラッガーを射出する。

 水平に放たれた光の刃は劫火を切り裂き相殺し、その隙間から翼状の刃が回転しながら自在にシラリーを斬り付けていく。だが小さな傷はすぐに回復され、その傷跡を見えなくしていった。核爆発のエネルギーさえも吸収するシラリーに備わる、凶悪なまでの回復力だった。

 

「まだまだぁッ!」

『合わせろマリアッ!』

『ええッ!』

 

 剣を地面に突き立てたネクサスの背後にゼロが降り立ち、二人が同時に構えを作る。ネクサスは地に膝を立ててクロスレイ・シュトローム、ゼロは立ったままでエメリウムスラッシュを放った。

 

『シェアアァァァァッ!!』

「『デェェェッヤアァァァァッ!!』」

 

 ネクサスから放たれたクロスレイ・シュトロームにゼロのエメリウムスラッシュが螺旋を描くように周囲を走り、合体光線としてシラリー目掛けて放たれる。だがシラリーはすぐさま両腕の砲塔から破壊光線を高出力で発射した。

 空中でぶつかり合う三つの光線。火花を散らしながら押し合う閃光はやがて爆散し、ゼロとネクサスを吹き飛ばしてしまった。対するシラリーは脚の排気口から空気を噴出し、耐え切るように地面からその脚を離さずにいた。

 

『これでもまだ届かないと言うの……ッ!?』

『確かに強敵……。これまで以上に、恐ろしい程に……ッ!』

「知ったことかよ、今まで通りやりゃあいいんだッ! 俺たちやお前らがずっと前からそうしてきたように……この地球を、其処に生きる人間たちを、守護り抜くだけだッ!!」

 

 単純明快なゼロの激に心の炎を滾らせる翼とマリア。どれだけ倒れて土に塗れようと、羽撃く翼が折れかけようと……守護りたいものがあるから、負けられない理由があるから、何度だって起ち上がれる。沸き上がる愛しさこそが、永遠の力の源なのだから。

 両方の大腿部から日本刀型のアームドギアを射出し、両手で構えるゼロ。同時に頭部から放たれたハバキリゼロスラッガーが融合し、蒼い光を伴う身の丈ほどはある巨大な二刀の剣と化した。

 また隣ではネクサスがエナジーコアを輝かせながら、背部から真上に伸びた刃のような羽から同形状の小剣が何本も出現する。ネクサスが天に掲げた銀の左腕と共に、それらの小剣がマリアの意思を受けて動き出した。

 

『「『うおおおおおおおッ!!!』」』

 

 マリアの意思を受けて飛び交う小剣と共に、ゼロとネクサスが胸を合わせて吶喊する。ボードレイフェザーを連続で発射しながら、小剣からも光線を連続発射しシラリーに攻撃していく。だがその攻撃の数々を物ともせずに火炎放射で小剣を撃ち落とし、吶喊する二人に腕の破壊光線を発射した。それに対して刃を突き立て、回転を続けドリルの要領で破壊光線を弾き飛ばしていく。

 そして最接近と共にゼロが両手で握る刃を回転と共に生じる強い捻りを伴い大きくシラリーの胴体を斬り付け着地する。遂に二人は、ヤツの懐に入り込むことに成功したのだ。

 何故懐に入る必要があったのかなど、多くを語る必要はあるまい。真打を叩き込む――思考の中に其れ以外が入る余地など無いのだから。

 

「『――――ッッ!!!!』」

 

 即座に両腕を交差させ、霞斬りの如く擦れ違いながら腕を広げてシラリーの長い首に斬撃を放つゼロ。剣と共に伸ばしたその腕は、まるで鵬翼そのものだった。

 一瞬シラリーの動きが止まるが、それだけでは終わらない。同じく懐に居たネクサスが、シラリーから背を向けながら両腕のガントレットを力強く叩き付ける。光と共に両腕の間へ電流が流れ出し、持てる力を白銀の拳へと集中させていった。

 

「オオォォォ……ッシェアアァァァァァッ!!!」

 

 振り向きながら両腕を引き絞り、先程ゼロと翼が付けた胴体の傷、其処に目掛けてオーバーレイ・シュトロームと同等の分子破壊エネルギーを最大まで蓄えた両拳を叩き込んだ。

 激しく飛び散る火花と共にシラリーの身体が内部に注ぎ込まれた光がその身体を水のように青く透き通していく。そして波紋が広がっていくと共に、その長い首が二か所切り裂かれ胴体から分離した。それと同時に、シラリーの身体が分子へと完全分解、青い粒子となって消え去った。

 苦闘を制し天の破滅魔獣を葬ったゼロとネクサス……翼とマリア。何方からともなく片手を掲げ、力強くハイタッチを行なった。それはまるで、コンサートライブで互いの全力を称え合ういつもの二人であるかのように。

 

 

 

 そして東京より少し離れた山間部、ザイゴーグ向き合い相対するガイアとエクシードエックス。互いに距離を詰め合いながら、栓を切るように行動を開始した。

 脚部バンカーの超加速と噴き出す黄金の羽根で飛翔しながら拳を構え突撃するガイア。それを追うようにエクシードエックスも駆け出していく。敵を切り裂く光輪【サーガスラッシャー】を放ち、先を行くガイアの援護の為にザイゴーグの動きをより注意深く見据えながら走って行った。

 対するザイゴーグは叫び声を上げながら左腕でサーガスラッシャーを弾き飛ばし、右腕の棍棒をガイアに向かって強く振り下ろした。

 

『そう何度もォッ!!』

 

 ダメージ覚悟でザイゴーグの右腕を受け止めるように掴み取るガイア。そのまま振り返り、膂力を全開にしてザイゴーグの巨体を大きく背負い投げした。倒したすぐに尻尾を掴みまたも力尽くで振り回して放り投げるガイア。山に激突したザイゴーグはそのまま体勢を崩しながら鳴き声を上げていった。

 

「響、今だッ!」

『一緒に攻撃をッ!』

『ハイッ!!』

 

 両腕を広げると共に背部から黄金の羽根が炎のように噴き出すガイア。そのまま力を頭部へと溜め込み、大きく振り被る。またエクシードエックスも腕を天へ伸ばすと共に鎧全体から光が放たれ、額のエクスラッガーに力を集束させながら伸ばした手を添えていった。

 

「ハアアァァァ……デェェェッヤアァァァァッ!!!」

「『エクスラッガーショットォッ!!!』」

 

 エクスドライブの強化を受けたガイアのフォトンエッジとサーガアーマーの力を掛け合わせたエクスラッガーショットがザイゴーグに向けて放たれる。だが立ち直ったザイゴーグがその胸部を展開し、口から吐き出すよりも更に強力な破壊光線を解き放った。

 数多のマイナスエネルギーを吸い込んだ破壊光線と二人の必殺光線がぶつかり合い、その場で爆発相殺。それで発生した爆煙の中から、二本の触手がガイアとエクシードエックスを拘束した。

 

「これは――」

『ぐッ、ああああああッ!!』

『力が、盗られ……ぅあああああああッ!!』

 

 ザイゴーグの胸から伸びた触手が絡み付き、そこからエネルギーを直接吸い取られてしまうガイアとエクシードエックス。その身に帯びた光が奪い取られ、其れを糧にしたのかザイゴーグの口から放たれる破壊光線が更に二人を追い詰めていく。

 そして地面を血の海のように赤黒く染め上げていくザイゴーグ。移動手段としても使っていた地面の液状化能力だった。

 

『こいつ、何を……ッ!!』

「ザイゴーグの能力の一つだッ! ヤツはこうやって、世界を地獄に変えていくんだッ!」

『其処に俺たちを引き摺り込もうって言うのか……ッ!!』

『この世界を、地獄に……』

 

 エックスの言葉を聞いて、響の脳裏に多くの人の姿が浮かばれる。それは自分を照らす数多くの陽溜り……大切に思う全ての存在だった。そんなあったかい世界を、眼前の魔獣は地獄に変えようとしているのだと彼は言った。

 自分が大切に思っているみんなを、その”みんな”其々が大切に思っている”みんな”を、そんな数多の生命が息衝くこの世界を守護ること。それは響にとって今しなければならない、今までで一番大きな【人助け】だ。

 破滅を齎す暗黒卿は、そして眼前の閻魔獣と呼ばれし魔獣はその為に討たなければならない存在。決して、相容れることのない存在なのだ。それに……

 

(……それに、了子さんに頼まれたんだ。【あの子】を助けてあげてって……。

 【あの子】にも頼まれたんだ。この地球(ほし)に生きるみんなを、みんなの未来(あした)を守護ってって……。だからッ!!)

『――させないッ!! そんなことは、絶対にィィッ!!!』

「ああ、そうだともッ!! 大地、私たちもッ!!」

『そうだ、そんなことさせてたまるかァッ!!!』

 

 響の叫びが昂るフォニックゲインに変わり、ガイアの肉体を包む戦装束に輝きが増していく。隣のエクシードエックスもまた同様に、内包する七色の輝きをアーマーに宿らせていった。力を吸収していくザイゴーグに構うことなく光を高めていく。そして背部から翼を爆裂するように展開させてザイゴーグの触手を弾き飛ばす。

 またエクシードエックスも、サーガアーマーも左腕に装着されてあるブレスから光の刃【サーガカッター】を発生させて腕を封じる触手を切り裂き、そのままブレスが輝くと共にベータスパークソードを召喚。掴み取ると同時に身体を縛る触手の根元を断ち切った。

 叫び声を上げながら後退するザイゴーグ。だがすぐさまそれを追い、引き絞られたガイアのバンカーナックルとエクシードエックスのベータスパークソードの連続攻撃がザイゴーグを追い詰めていった。

 

『コレで終わらせるッ! 響ちゃんッ!!』

『はいッ! 大地さん、エックスさん、一緒にお願いしますッ!!』

「よぉし、行くぞッ!!」

 

 ガイアが天に拳を掲げると、アームドギアがパージされその拳へと集結する。そこにベータスパークソードが合体し、青と金の輝きを放つ撃槍が完成した。集束する光と共に左腕を前に突き出し右腕は内回りに一周、そして頂点に戻ったところで左右の腕で天を抱え込むようにもう一周仰ぎ回す。二つの腕は胸の前で構えられ、左手は右の撃槍に添えられていた。

 またエクシードエックスは左腕のブレスを胸の前で構え、光と共に斜め上へと伸ばす。そのまま大きく足を擦らせながら上体を捻り、胸元で溢れんばかりに蓄えられた輝きを包み込むように腕をX字に交差させる。その余波は地面を伝わり同じくX型に輝いていた。

 

『づぅあああああぁぁぁぁぁッッ!!!!』

「『サーガディウムプラズマァァァァァッ!!!!』」

 

 地面を蹴り神速でザイゴーグへ吶喊するガイアと、其れと同時に前を向いて両手で巨大な光弾を押し込み発射するエクシードエックス。ガイアの周りを螺旋(まわ)りながら向かってくる巨大な光弾に、ザイゴーグもまた持てる力の全てを鮮血の破滅光線として胸から発射。だがそれをも打ち消しながら、胸の発射口へと光弾と撃槍は叩き込まれていった。

 ザイゴーグの口から断末魔の咆哮ががなり立てられる。其処へ駄目押しとばかりにガイアの右腕の撃槍が杭打機の如く打ち込まれ、内部で光が爆裂する。爆ぜた光はザイゴーグの身体をX字に走り、ガイアが振り向くと同時にその巨躯を粉微塵へと爆発四散させた。

 右腕に集中したアームドギアが再度プロテクターとして装備し直されるガイア。其処へ歩み寄ったエクシードエックスと力強く握手し、一度握り直すと互いにその手を天へと掲げていく。激戦の末に地の破滅魔獣を討ち斃した二人のウルトラマンのその行動は、正に勝利の証だった。

 

 

 

 

 天、海、地。黙示録を体現せんとする三つの破滅魔獣を全て斃したシンフォギア装者らとウルトラマンたち。ガイアとエクシードエックスの佇む東京に、太平洋からはエースと80が、オーストラリア上空からはゼロとネクサスが飛来し、再度合流を果たした。

 

「やったか、みんなッ!」

『コダラー、シラリー、ザイゴーグ、各怪獣の反応、完全に消失しましたッ!!』

 

 弦十郎に届けられた藤尭の言葉は、通信機を経由してレイライン・ネットワークを繋ぐ世界配信機器にも通じていった。加えて東京に集合する六人のウルトラマン。それはそのまま、地球全体にウルトラマンたちの勝利の瞬間を届けていったのだ。

 それを見た世界中に、割れんばかりの歓声が巻き起こる。力を奪われながらも勝利に喜ぶ人々の歓喜と安堵の入り混じった声だった。

 

 

 

だがしかして、その”声”は再度世界に向けて重く轟き始めていった。

 

『……恐れろ……喜ぶな……』

「これは……ッ!」

「暗黒卿かッ!」

 

 戦いを終えたはずのウルトラマンたちの元に、聳え立つようにその姿を見せる巨大暗黒卿。全員がすぐに構えを作っていく。

 

「ヘッ、どうだこの野郎ッ! テメェの目論見は、コレで全部ご破算だぜッ!!」

『……終わらぬ……。終わらせぬ……。

 我はマイナスエネルギー……。破滅を司る邪心にして邪神たるもの……。我は……ワレ、ハ――』

 

 声が途切れた瞬間、巨大暗黒卿のローブの内から形容できぬ声らしき音が世界中に轟いた。真っ当な人の正気さを奪う、正しく破滅の歌のようにも思えた。

 

「――ッ! みんな、全力で一斉攻撃だッ!!!」

 

 その衝撃にやや後退しながらも、即座に指示を出したのはエース。その言葉に反応して、ウルトラギアを纏ったウルトラマンたちが装者の歌と聖遺物の特性を掛け合わせた最大の攻撃の準備をする。エクシードエックスもまた、先程のサーガディウムプラズマーを再度構え、暗黒卿に向けて六人の必殺攻撃が一斉に解き放たれた。

 だがその鳴き声の主……巨大暗黒卿のローブの中で蠢いていた邪神は、それらの攻撃を闇で掻き消し、ついにその姿を現した。そしてウルトラマンたちに、獄氷の驟雨を撒き散らすように降り注いだ。爆裂と共に地面が凍結し、闇が更に地球を傷付けていく。凍て付き行く地はさながら、神曲に綴られた氷結地獄(コキュートス)のようでもあった。

 

 其れは名伏せがたきもの。

 無限に渦巻く闇黒の中から、鮮血のような赤く輝く眼を漲らせ、渦に沿うようでありながらも無規則に飛び出た棘が牙を思わせる。その圧倒的な闇黒と破滅そのものの姿は――

 

「――闇黒魔超獣、デモンゾーア……ッ!?」

 

 驚愕の声を上げたのは奇しくもメフィラス星人だった。

 

『ご存じ、なのですかッ!?』

「……別の地球にて、超古代都市ルルイエを破滅に導いたとされる【大いなる闇】……邪神ガタノゾーア。地球を暗黒に染め上げつつ超古代から復活したそれは、その世界の光の巨人に斃されてしまう。しかしその憎悪と怨嗟、光の巨人に相対するように存在した闇の巨人を取り込むことで邪悪さを増して蘇った存在だ……。

 暗黒卿め……まさか自らに内包するマイナスエネルギーと、ヤプールやエタルガー、先程の破滅魔獣たち全てを贄にしてその身を邪神へと変えるまでに至ったのか……ッ!」

 

 デモンゾーアの畏容を見て、初めて感情的に言葉を放つメフィラス星人。歓喜か畏怖か、はたまたそれがない交ぜになった恐悦の域に達していたのかもしれない。ただ彼は今、曝け出した感情のままに言葉を放っていった。

 

「70億の絶唱でこの闇は払えぬとは言ったが、あそこまでマイナスエネルギーを内包しているとは……。やはりこの世界は、根源的に破滅を望んでいると言うのかねッ!」

 

 降り注ぐ獄氷に対し、力の全てでバリヤーを展開して自分の身と移動本部を守護るメフィラス星人。だが停泊する移動本部の周囲も全て凍て付き、逃げ場を失ってしまったとも言える状態に陥ってしまう。

 装者とウルトラマンたちも反撃すべく放った全ての光線技も打ち消され、デモンゾーアから繰り出される圧倒的な攻撃に晒されて遂にその膝を付いてしまう。

 またその一方で、無限に広がりを続けるデモンゾーアは世界の全てを更に深淵の闇黒である自分自身で覆い尽くそうとしていた。避難をしている人たちの眼にも、すぐ真上の空を見上げれば其処には邪神の禍々しい貌が浮き上がり叫び声を上げていた。

 其処から吐き出されるは獄氷の驟雨にのみならず、獄熱の劫火、獄迅の雷霆、獄血の泥濘。世界を氷結地獄の各界円へと変え破滅を齎す闇黒の輝きだった。

 

 誰もが恐怖で竦んだ。

 誰もが絶望に染まった。

 誰もがもう、世界の終焉(おわり)を確信した――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――はず、だった。

 発せられたのは何処からともなく飛び出した、矮小でありながら何よりも強大な”声”だった。

 

 

 

「おまえなんか、こわくないぞぉッ!!」

「ウルトラマンたちが、お前なんかに負けるもんかぁッ!!」

「がんばってッ! ウルトラマァーンッ!!」

 

 

 

 それは無垢なるものの叫びだった。

 無垢なるが故に正義の使者たる光の巨人の勝利を疑わない者たちの叫びだった。

 

 

 

「……そうだ、ウルトラマンはまだ負けてないッ!!」

「何度倒されても、傷付いても、何度でも起ち上がって来たッ!! 俺たちの為に帰って来てくれたッ!!」

「応援しましょうッ! 風鳴翼も言ってたもの。私たちの諦めない心が、ウルトラマンたちの力になるんだってッ!」

「子供たちが信じている彼らを、私たちも信じなきゃッ!!」

 

 

 

 無垢なるものらに心を動かされ、その叫びは伝播していく。広く、大きく、この世界に。

 

 

 

「Mr.グレイザー、此処は危険ですッ!中にッ!!」

「いや、此処で良い。ツバサの歌がまだ聴こえているのだ、アーティストとしての彼女の身を預かる私が、今を歌う彼女を励まさなくてどうする」

「で、ですが……」

「私の身を案じ行動する君は優秀だ。だが、君も心から信じてみたらどうかね。世界の歌姫マリアの、彼女の仲間たちの、……そして私たちの友であるツバサの、生命の歌を」

 

 

「――……為すべき事を為せ、翼。友と手を取り合い、この暗雲を越えて何処までも……」

 

 

 

 人は信じていく。微かにでも流れ続ける少女たちの歌を。

 

 

 

「響、頑張れ……ッ! 俺にはそれしか言えないけど、誰かの為に頑張る響は誰がなんと言おうと世界一の愛娘だッ!

 だから、あんなものなんかに負けるなぁぁぁぁッ!!」

 

 

「なにが邪神よッ!! そんなものなんかに、正義の味方が負けるわけないんだからッ!! いったれぇ響ィィィィッ!!!」

「私たちは応援するしか出来ませんけど……それが立花さんやみなさんの力になるのなら、精一杯応援しますッ! ずっと、していますからッ!!」

「みんなビッキーたちを信じてるからッ! だから怖くなんかないッ! 絶望なんて、してやるもんかぁぁぁッ!!」

 

 

「此処が正念場だッ!! 世界の命運、なんとしても掴み取れッ!! ――そして全員、死んでも生きて帰って来いッ!!!」

「翼さんなら、皆さんなら必ず勝ち取れますッ! だからその羽撃きを止めないでッ!!」

「みんなまだ、生きる望みを捨ててなんかいないからッ!!」

「どんなときでも、みんなはひとりなんかじゃないからッ!!」

 

 

「一人だと進めない時、動けない時は、一緒に明日を信じられる誰かと共に戦う事を、進むことを皆さんが教えてくれましたッ! 恐れる心を乗り越えて、みんなで一緒に明日をボクは歩いていきたいですッ! だからッ!!」

「響は……みんなは、ウルトラマンたちは諦めない。絶対に、絶対に……ッ!!

 だから私もみんなも、生きることを諦めないッ!! だから……頑張れぇぇぇぇぇッ!!!」

 

 

 

 人は抗っていく。其処に希望がある限り、絶望の暗雲にも立ち向かっていける。

 

 

 氷結地獄と化した世界だとしても、龍脈(レイライン)は再度輝きを放ち、人々は再度希望の欠片を歌にしてウルトラマンたちへと届けていく。その光を受けてウルトラマンたちは再度立ち上がり、光を撃ち放っていく。だがデモンゾーアは、未だ其れを尽く消し去っていく。

 【70億の絶唱】では払い切れない、邪神が齎す大きすぎる闇。

 

 

 少女は独り、その地球(ほし)に伝わるヒトの輝きの集まる場所に居た。

 

 

『みんなからこんなにも力を貰っているのに……ッ!』

『諦めちゃ駄目デスッ! アタシたちは絶対に、負けないのデスッ!!』

『ッたりめぇだッ!! こうなりゃとことんまでやってやろうじゃんかッ!!』

『そうだッ! 俺たちは、最後まで諦めたりはしないッ!!』

『皆の想いを、願いを無駄になどしない為に……ッ!!』

(世界中のみんなが、私たちに負けない力をくれる限り――ッ!!)

(何度だってこの胸の歌を、命を燃やして撃ち込んでいくまでよッ!!)

 

 決して諦めんとばかりに意気を高める装者たち。だが立ち向かう現実は今その手にある奇跡だけでは力不足であることも、何処かで理解ってしまっていた。

 まだ足りぬと。この命を燃やしても、果たして届くかどうかも理解らぬほどにこの邪神が齎す闇は何処までも深く果てしないのだと。それを知らしめるべく、デモンゾーアの口らしき場所から四つの真獄を表す破滅の光が吐き出される。思わず防御の姿勢を取るウルトラマンたち。だが突如、その破滅の光の横から黄金の渦が放たれ、掻き消していった。

 思わずその方へ向くウルトラマンたち。其処に居たのは、編み込んだ黄金の髪を靡かせる一人の小さな少女――キャロルだった。

 

(キャロルちゃん……どうして……ッ!)

「何を呆けているッ!! 彼の邪神、斃さぬ事には世界を守護れぬことは火を見るより明らかだろうがッ!!」

『だけど、お前のソレは――』

「言っただろう、使うべき時が来たらこの力を使う……ただのそれだけだとッ!!」

『それでもッ! 私たちはあなたを犠牲になんかしたくないッ!』

『せっかくみんなで繋いだ命だっていうデスのにッ!』

「――……そうだな。だが、守護るべきを守護れずに……パパの為にと足掻き続けてきたこのオレが何もせずにただ消えるなど、臍の下に虫唾が這い擦り回り止まらんのだよッ!!!」

 

 キャロルから更に放たれた”想い出”を償却させて生み出した、”70億の絶唱”をも凌駕するフォニックゲインが、龍脈(レイライン)を通じて溢れる世界中から放たれた”70億の絶唱”と共に、六人のウルトラマンを包み込む。

 

「なんて、エネルギーだ、コイツぁッ!! まるで、爆風じゃねぇかッ!!」

「この地球(ほし)に生きる全ての願いと、キャロルの燃やす”想い出”とがユナイトして……ッ!!」

「だがその償却されたマイナスエネルギーは、キャロルの生命その物……。苛烈でありながらこんなにも哀しい想いが、これ程までの力になるとは……ッ!」

「怖じるなッ!! あの子の一所懸命を、俺たちが受け止められんでどうするッ!!

 一緒に戦うんだッ! この地球(ほし)に生きる皆の想いも、キャロルの想いも共にして、勝利を掴む為にッ!!」

 

 デモンゾーアが放つ四種の闇の攻撃の全てを弾きながら、ウルトラマンたちも声を上げる。気を抜いたが最後、この巨人の身体ですら崩れ去らんとする程のエネルギーの奔流に晒されているのだ。制御の効かぬ今、ただ立っているのが精一杯だった。

 

「そうだ、勝てなくては意味はない……。たとえ、命を失ってもだッ!!

 ――……ならば、既に失われていたものの命が一番安いはずだろう?」

(そんな事ないッ! キャロルちゃんの命も、みんなと同じぐらい大切で、かけがえのないもので……そこに差なんてないんだよッ!? 私は、キャロルちゃんを――)

「オレを救うと言うのなら、オレの”想い出”を以てこの世界を守護り抜けッ!! パパが愛した世界を、オレのなけなしの勇気で守護らせろッ!!!

 誰かを傷付けるだけじゃないと吐かしたその拳でッ! 呪われし旋律をも書き換えたその歌でッ!! ぜんぶぜんぶ守護り切ってみせてよォッッ!!!」

 

 キャロルの咆哮に思わず涙する響。調や切歌、クリスも思わずその眼に涙を浮かべ、頬へと伝わらせていた。翼とマリアは涙を必死に堪えつつも、その奥歯は砕けんばかりに強く噛み締めていた。

 天羽奏のように、セレナ・カデンツァヴナ・イヴのように、ナスターシャ教授のように……キャロルもまた、世界を守護る礎となるべく遺された僅かな命を燃やし尽くす事を決めたのだ。そんな彼女の叫びで再度理解する。彼女を止める言葉など誰にも持ち得ないし、止まることなど有り得ない。

 だとすればもう、出来る事は唯一つしかない。

 

『――……歌うぞ、みんなッ!』

(私たちは……キャロルの覚悟に応えなければならない。マムやセレナたちと同じように、彼女が私たちに託した生命を無駄にしない為に……ッ!)

 

 翼とマリアの言葉を聞き、他の装者たちが小さく頷いた。眼尻には未だ涙が浮かんでいながらも、その瞳には強い輝きと共に闇黒の空へ――デモンゾーアへと、向けられていた。

 

 ――そして、少女たちの口から最後の歌が奏で紡がれる。

 

 

 

   Gatrandis babel ziggurat edenal.

   Emustolronzen fine el baral zizzl.

   Gatrandis babel ziggurat edenal.

   Emustolronzen fine el zizzl.

 

 

 

 シンフォギアに秘された最後の歌――絶唱。

 その歌はフォニックゲインを瞬間的にではあるが爆発的に増幅させ、各々が纏うギアの絶唱特性を最大限に引き出すことで其処にある真の力を解き放つ、彼女らに残された最後の手段である。

 【人類の全てから齎された70億の絶唱】、【償却した想い出が生む単騎にて70億を凌駕するフォニックゲイン】、そして【装者らが自ら解き放った胸の内の絶唱】……。この荒れ狂うフォニックゲインの中、彼女らが考えていたのは唯一つだった。

 両腕を掲げるガイアの背に、ネクサスがその左腕を強く触れていく。そして二人を囲むように、ゼロ、エース、80、エックスが自然とその手を繋ぎながらガイアとネクサスに向けていた。

 

(――S2CAッ!!! ウルティメイトバージョンッ!!!!)

 

 響の叫びと共にただの暴風だったフォニックゲインがガイアを中心に螺旋をはじめ、其の場で集束を始めていった。

 

(キャロルちゃんが……みんながくれたフォニックゲインッ!! その全てをガングニールで束ねッ!!!)

(アガートラームで制御と再配置ッ!! 今一度、奇跡を超克するッ!!!)

 

 七色の輝きとなったフォニックゲインの大嵐が、それぞれのウルトラマンへと降り注いでいく。

 だがまだ……その超絶的なフォニックゲインが齎すバックファイアは巨人たちが纏う装鉄鋼をも砕き光へと変えていく。いくらガングニールの集束とアガートラームによる制御を掛け合わせようとも処理しきれるものではなかったのだ。

 それでもまだみんなが耐えている。大地もまた、エックスの体内で初めて味わう超高密度のフォニックゲインをただひたすらに耐えていた。

 恐らくこのエネルギーをそのまま発射すればそれだけでも驚異的な力になるだろう。だがきっと、それでもあの邪神を斃すには至らないと言う不思議な確信が大地の中であった。これだけ集まったみんなの力を、”真に一つ”にするにはどうするべきか。異邦人であり装者でもなんでもない自分に、一体何が出来るのかと。

 それを思った瞬間、大地の脳裏に一人の男の姿が過った。黒い帽子に皮のジャンパー、やや不愛想ながらも正義感の強い、とある風来坊の青年が大地に向かって声をかけた。

 

『だったらお前に出来る事をすればいい。ワン・フォー・オール……お前がみんなの為を想うなら、この力も使えるはずだ。

 ――それがユナイトってヤツ、だろ?』

 

 幻覚か錯覚か、見開いた眼に映る姿は何もない。だがその眼前には一枚のサイバーカードが現れていた。今の状況と同じく、似て非なる異世界で出会ったとあるウルトラマンの力の片鱗が。

 大地は迷うことなくそのカードを掴み取る。そして心の底より、全員に向けて力強く声を上げた。

 

『みんな、俺の最後の切り札を使うッ! 最後まで一緒に戦おう……この全部の力を、一つに重ねてッ!!』

 

 共に戦う者たちがそれぞれ肯定の言葉を返していく。だが果たして、大地の言葉の意味に気付いた者は居なかっただろう。それでも抱く想いは同じだった。大地が『切り札を使う』と言ったのだ。それがどんなものであれ、信用と信頼に当たるものであると言う、強い確信が。

 

「大地、そのカードは――」

『ああ。……力をお借りします、ガイさんッ!!』

《ウルトラマンオーブ、ロードします》

 

 エクスデバイザーでリードした、大地の持っていた……否、与えられた最後のサイバーカード。その力が解放された時、周囲に吹き荒れるフォニックゲインの大嵐が彼らの周りを包み込む巨大な光の球体(オーブ)となって闇黒の天へと浮かんで行く。

 その光球の中で少女たちは、【奇跡を以て奇跡を殺戮し、更なる奇跡を誕生させる】などと言う異形の励句を吼え叫んだ。

 

 

『ジェネレイトォォォオオオッッ!!! エクスッッ!! ドラァァァァイブッッ!!!

 ウルティメイトオオォッッ!!! ユゥナイトオオオオオオォォォォッッ!!!!!』

 

 

 黄金の蕾から光が溢れだし、花が咲くように大きく開いていく。

 光は地球の全てへと広がり、花弁のように邪神の闇を遮る膜となっていた。

 その中央から出で来るは、オーロラの如き虹色の気を放ちながら黄金に光り輝く一人の巨人――闇黒魔超獣と同等の巨躯を持つ、カタチを持った光そのもの。

 人と光と歌の完全融合……その極致が今、邪神の前に顕現した。其の名は――

 

 

『ウルトラマァァアアアアンッッ!!! シィンッッ!! フォォオオオギィアアアアアアアアアアッッッ!!!!!』

 

 

 輝きは闇を独奏(つらぬ)き、風の音は調べ歌となり世界へと響き渡る。

 人々はただその奇跡の象徴に、闇を否定する福音の虹に、ある者は声を張り上げ、またある者は敬虔に祈りを捧げ続けていた。

 

「――……そっか。アレが、”奇跡”っていうものなんだね……パパ……」

 

 龍脈(レイライン)の終着点、光が溢れるその中で、キャロルは手を伸ばしながら黄金に輝く彼の者の姿を力無く眺めていた。その半身は既に償却され、自身の存在そのものに限界が訪れているのは自分でも理解出来ていた。

 そんな彼女の耳に届く声があった。自分自身と似通った、だが既に自分自身とは全く別の存在と化した”もう一人の自分”……エルフナインの声だった。

 

『キャロルッ! 返事してキャロルゥッ!!』

「……エルフ、ナイン、か……」

『すぐに迎えに行くからッ! だから少しだけ待っててッ!』

「……可笑しな、話だ。総ての想い出を炉に焚べて、この身諸共全てを消え去ろうとしたと言うのに……オレはまだ、此処に――」

『それはきっと、キャロルが此処に居ても良いって事なんだよッ! だから……』

 

 おぼろげな眼で光を見つめるキャロルは、首を横に振ることもなく否定の言葉を紡いでいった。

 

「いいや……きっとほんの少し……【赦し】を請い、償う為の一時を与えてくれたんだ……。お前らに繋がれ、パパの望んだ真理へと少しでも近づくために……」

『【赦し】……。ボクが提示した、命題の解答……』

「――ああ……いつかのある日……パパと語り合ったっけ……。この世に生きることの喜び……そして、悲しみのことを……」

『キャロ、ル……?』

「その時パパが言ったんだ……。どんなに辛く悲しい事があっても……決して、泣くんじゃないよと……。そんなこと、出来やしなかったのにね……」

 

 キャロルの頬を伝う涙。呼び起こされるは炎の記憶。何よりも忌まわしく呪わしく、それでいてほんの一握りの愛しさが遺る想い出。それすら焼き尽くしても世界の解剖は為せなかったと言うのに、今はそれが僅かな命の糧となっていた。繋がれた掌に残った温もりが、僅かな命を繋ぎ止めていた。

 そんな滑稽な我が身を小さく嗤うキャロル。自分の名をひた叫ぶエルフナインにゆっくりと言葉を語り聞かせていく。かつて受け取ったものを、未来へ継ぐかのように。

 

「……キミも”私”だから、辛くて悲しい時に泣かないなんて事は出来ないよね……。だから、せめて……拳を固めて胸を張り、空を見上げて立っていよう……。

 太陽が微笑み、そよ風が吹く空を……鮮やかな緑が栄え広がる丘から……。

 ――そして、世界、を……」

『キャロルッ!! キャロルゥゥゥゥゥッ!!!』

 

 ……かくして、キャロル・マールス・ディーンハイムの”人格と意識と記憶”を植え付けられたマイナスエネルギーの欠片は、ヒトの持つ光に抱かれながら自身の肉体をも光へと転化させ、70億の絶唱の一つとして消滅していった。

 包まれたその光の中で、彼女の意識が最後に何を見たのかを……知る者は、居ない。

 

 

 

 ブリッジでは、自らとほぼ同じ存在であったキャロルの償滅を全身で感じ取ったエルフナインが大粒の涙を零しながら、堪えきれぬと理解っていても必死に堪えながら俯いていた。

 

「エルフナインちゃん……」

 

 其処へ優しく肩を抱くように手を添える未来。彼女のその温もりを感じながらもエルフナインは其処へ甘え逃げ込むこともなく、止め処なく溢れる涙を強く拭い取り、前を向いていった。

 

「……ありがとうございます、未来さん。ボクは……今、大丈夫じゃないかも、しれません。

 でも……キャロルに言われました。拳を固め、胸を張って……空を見上げて、立っていろ、と。

 ……泣くのは皆さんが帰って来てから、その時にいっぱい泣かせてもらいますから」

 

 その儚くも健気な笑顔に思わず抱きしめたくなる。だがそれは今すべき事ではない。未来もそれを理解っていた。ならばせめてと、そっとエルフナインの手を握りしめていった。一番の親友にいつもやるように、優しく包み込むように。

 その温もりを感じたエルフナインと目が合うが、未来は何も言わずに微笑んでいた。胸にある想いはただ一つ、愛する者たちをただ【信じる】ということだった。

 

 全ての人が、皆等しく――。

 

 

 

 

 闇そのものであるデモンゾーアに対し、光そのものとなったウルトラマンシンフォギア。最後の戦いはデモンゾーアの異形の咆哮が戦鍾となり開始された。

 闇から伸びる無数の触手、其れに対して最早光の塊と言わんばかりの拳から光を放ちながら薙ぎ払う。其処にあったのは無限の軌道と回転を為す光の鏖鋸と魂を刈り取る光の獄鎌が融合したモノだ。

 

『ムゥゥゥンッ!! トォアアアァァッ!!!』

 

 両手にその巨大な光輪を作り出し、外に向かって発射する。超光速回転をしながら地球全体を覆う闇を切り刻んでいく。光輪が走り闇を削ったところからは陽光が差し込み始めていた。

 その攻撃を目の当たりにし、デモンゾーアが更に獄氷の楔を打ち込んでいく。しかしウルトラマンシンフォギアはその両腕を前に突き出すと共に、掌から獄氷の楔を撃ち落とすべく光の魔弓より七色に輝く嚆矢が放たれた。

 

『シュワァァァッ!!!』

 

 獄氷を全て撃ち落とした虹の嚆矢はそのまま闇を撃ち貫き、更に光を齎していく。デモンゾーアはその叫び声と共に触手を収束させ、雷霆伴う巨大な爪と化し光を引き裂こうと振り下ろす。

 だがそれも即座に食い止められた。ウルトラマンシンフォギアがその手に握っていたのは、鵬翼にも似た巨大な日本刀――光の絶刀だった。

 

『ズェエェェェリャァッ!!!』

 

 力強く闇黒の猛爪を弾き飛ばし、そのまま其れを叩き斬る。そして返す手で、虹色の稲妻を伴う剣閃を放ち振り抜いた。弧を描く雷虹は闇を断破せしめ、天の光を更に呼び込んだ。

 だがデモンゾーアの攻撃は止まらない。残された闇を収束し、自らの同位分体を左右に作り出し、劫火と鮮血をその口から一気に吐き出していく。しかしそれを遮ったのは、左腕に纏われた光の銀腕と右腕に携えられた光の撃槍。両の腕から虹の輝きを噴出させて、デモンゾーアの同位分体に手刀を放っていく。

 

『イイィィッサァァァッ!!!』

 

 X字に斬り付けられたデモンゾーアは明確に怯みを見せ、闇を再度一ヵ所に集中させる。だが其処へ、銀腕と撃槍を打ち付けたウルトラマンシンフォギアがその両腕の間に虹色の光を連環させながら大きく身体を屈めていく。

 そして後ろへ振り被ると共にその反動で上半身を前に突き出し頭部と両腕を交錯させて極限まで力を高めた光刃を発射した。

 

「オオオォォォ……デェェェッヤアァァァァッッ!!!!」

 

 デモンゾーアの貌と思しき部分に直撃する光の刃。光は闇を爆散させ、其処からは太陽の光が一瞬だが間違いなく差し込んだ。

 だがデモンゾーアも、またも闇を其の場に集め降り注ぐ光を遮り、自らの肉体を作り上げては貌を覗かせる。しかし、この深く果てしないはずの闇もその底が見え始めていたのも事実だった。

 一瞬の膠着、そして邪神から発せられたのはヒトの言葉だった。

 

『……何故、恐れぬ……。……何故、抗える……。所詮は70億の欠片と、ヒト一人の燃やした想い出……。なのに何故、この地球(ほし)のマイナスエネルギーが……』

「決まっているさッ! 俺たちは今、この地球(ほし)の全てとユナイトしているんだッ!!」

「皆が見上げるこの果て無き未来(そら)が――ッ!!」

「みんなが信じて抱き進む未来(ゆめ)が――ッ!!」

「みんなが心から交わし合える、」

「みんなで仲良くし合うための、」 「「未来(えがお)が――ッ!!」」

「みんなが生を諦めないと望み輝く未来(きずな)が――ッ!!」

「みんなと手を繋いで紡いでいく未来(あした)が――ッ!!」

 

『私たちみんなの手に、握られているんだッ!!!』

 

 一層の輝きを見せるウルトラマンシンフォギア。七色の輝きが両腕に集中し、光そのものである彼の肉体が鎧われていく。命の歌が更なる光を生み出し放ち、限界を超えた連環を生み出していた。

 その自らを飲み込むほどの輝きに、デモンゾーアは形容できぬ鳴き声を叫び上げる。だがまるでそれは、理解出来ぬものに対してただ吼え立てることで拒絶するかのようでもあった。

 咆哮と共に解き放たれる闇の極大光線。だが虹色の掌がそれを受け止め、抱き締めるように胸元へと寄せていく。闇黒はその手の中で光へと変わっていった。

 

地球(ほし)のマイナスエネルギー……それは自らが傷付けられ続けていた痛み、悲しみ、恐れ、憎しみ……。誰だって感じる、暗い気持ち。

 ――そう、私たちと同じ想いを抱いていたんだ。だから理解った……理解ることが出来た。

 地球(ほし)は破滅なんか望んじゃいないッ!! ただ【生きたい】と、誰よりも必死で叫んでいたんだッ!!!』

 

 光へと転化した地球(ほし)のマイナスエネルギーが両腕の籠手に吸収され、展開と共に光を噴出させていく。

 

『私たちはみんなを守護るッ!! 人も、命も、世界も、地球(ほし)も――全てをッ!!!』

 

 巨大な光が動きを始める。

 胸の下で虹色の両腕をぶつけ合い、胸の前で光の無限連環を作り出す。円運動と共に左腕を上に、右腕を水平に。そして両手を天へ向けて重ね合わせる。

 光が動く間にも闇は破滅の閃光を放ち続ける。だが世界からの残響を重ねる奇跡は、地球(ほし)と共鳴を続ける魂は、破滅の光を尽く飲み込んでいった。

 右腕を腰溜めに構え、左腕を一度胸元へ構えた後に水平に伸ばし、そのまま全身で大きく身体を捻っていく。足底からも溢れ出す光は七色の葉を持つ金色の華のように広がっていった。

 

『……恐れろ……滅びろ……なにも、かも……』

『これが人とッ!!!』

『光とッ!!!』

『歌とのッ!!!』

 

 

 

  『きぃずなだあああああああああああああぁぁぁぁッッッ!!!!!』

 

 

 

 光の巨人がその腕をL字に組み上げる。瞬間、両腕全体から虹色を内包する黄金の光線――【UNLIMITED UNITE BEAT】がデモンゾーアに向けて発射された。

 闇に向けて放たれた光の中に、カタチを為した人間たちの姿が在った。

 回転鋸が変形した機械人形を繰り操る、緋色の鏖鋸(シュルシャガナ)を持つ少女。

 飛竜の爪が如く大型化した三又の鎌を奮う、翠色の獄鎌(イガリマ)を持つ少女。

 巨大な超機動武装砲台で吶喊する、紅蓮の魔弓(イチイバル)を持つ少女。

 右手に携え廻した両刃の剣に炎を纏わせ翔る、蒼穹の絶刀(天羽々斬)を持つ少女。

 左腕に巨刃を伸ばして輝きと共に独奏(つらぬ)き進む、純白の銀腕(アガートラーム)を持つ少女。

 そして正義を信じ握り締めた拳に機械仕掛けの籠手を纏わせ、その身を槍として最速で最短で真っ直ぐに一直線に突進する、黄金の撃槍(ガングニール)を持つ少女。

 皆がそれぞれデモンゾーアへと向かい、想いの全てを乗せた攻撃を光線と合わさったままに撃ち放つ。闇はそれを喰らおうと受け止めるが、やがてデモンゾーアの肉体である闇は光に変わっていった。

 

『……ぐ、お、おおお……。

 ……だが……マイナスエネルギーが、ある限り……我は幾度でも……世界を、破滅に、導こう……。……すべてを、静寂なる闇黒に……』

『無駄だぁッ!! どんなになろうとも……人の心から光が消え去ることは無いッ!!!

 胸の歌が途絶えることは、無いんだああああああああッ!!!』

 

 虹を内包する黄金の光はデモンゾーアの総てを包み込み、天空でその残滓すら遺らぬほどに輝き爆ぜて散った。闇の消え去った天には陽光が地と海を照らし、世界に光を取り戻したのだった。

 

 

 ウルトラマンシンフォギアは、その両手を天に伸ばし輝きを世界へと還していく。光を取り戻した世界は、氷結地獄の全てを消滅させ破滅位相――異形の海の存在も消し去って行った。

 やがて全ての光を地球に還した後、完全融合が解除され日が傾き始めた東京の地にウルトラマンエース、ウルトラマン80、ウルトラマンガイア、ウルトラマンネクサス、ウルトラマンゼロ、ウルトラマンエックスの、六人のウルトラマンが佇んでいた。

 人々の大歓声を、その巨大な身に浴びながら……。

 

 

 

 

 

 戦いが終わり、光の巨人に選ばれた者たちは皆、移動本部付近の埠頭に居た。

 途中で破滅閻魔虫との激しい攻防を行なっていた弦十郎と慎次の二人とも合流し、未来やエルフナイン、藤尭やあおいが出迎える移動本部に戻って来た。その頃にはもう、陽は赤く染まり水平線の先へ行こうとしていた。

 

 みんな笑顔で迎えてくれたはずなのに、突如エルフナインが泣き出したのには誰もが驚きを隠せなかった。思わずマリアが抱き締めながら、慰めるようにその仔細を尋ねていく。彼女の口から泣き声と共に出て来たのは、キャロルの顛末についてだった。

 誰もがキャロルの迎えた終焉(おわり)に対し、気落ちしてしまう。アレだけみんなを守護ると豪語してきたのに、守護れなかったのだから。だが、其れに対して最初に言葉を発したのは星司だった。

 

「……兄さんが言っていた。『我々ウルトラマンは、決して神ではない。どんなに頑張ろうとも救えない命もあれば、届かない思いもある。大切なのは、最後まで諦めない事だ』、と……」

「みんなは最後まで諦めなかった。そしてキャロルも……最後まで自分の命と向き合い、悔いのない……諦めない為の選択をしたんだと思う」

『マイナスエネルギーとしてただ消えるよりも、そんな運命に抗い抜いて消えた……か』

『あのゴモラもな……。我々は皆、失った生命を背負ってこれからを生きて行かなければならない』

「そうだね……。きっとそれも、”共に生きる”って事なんだろうな」

 

 大地の言葉に、全員が何処か納得したかのように首肯する。

 彼女らもみんな何かを失って来た。失った何かを背負って、今此処に立っている。決して消えない心の傷痕と、其処に遺されたもの……。それを決して忘失れることなく抱き続け歩んでいくことこそが、大地の言う”共に生きる”と言うことなのだろう。

 皆の言葉を聞いているうちにエルフナインは涙を止め、自然と一歩引き下がった。涙の痕で目が赤いが、その表情は落ち着いた笑顔になっていた。

 

「皆さん、ありがとうございます。キャロルをそこまで想ってくれて……キャロルの想いを、理解しようとしてくれて」

「そんな大層なことじゃないよ、エルフナインちゃん。……確かにキャロルちゃんが手を貸してくれなきゃ、みんなを守護り切るなんて出来なかったかもしれない。だけど、キャロルちゃんも一緒に守護れる方法が、きっと何処かに在ったんじゃないかって……。

 どうしても、そんな風に考えちゃうんだ。せっかく大地さんや皆さんが、良いコト言ってくれてたのにね! アハハ……」

 

 小さく肩を落とす響に、誰も声をかけることが出来なかった。

 彼女は欲深い。こと”人助け”に関しては、普通の人の何倍にも。だからこそ、未練や後悔に心を痛めてしまう。それは、この場の誰もが味わったことのある気持ちだった。

 そんな響の手を、未来がそっと握り締めた。優しく、包み込むように。

 

「未来……?」

「響、今度はちゃんと、キャロルちゃんの手を握れた?」

「……うん」

「私を止めてくれた時と同じように……キャロルちゃんの為にも、この手を握ることが出来た?」

「……うん」

「だったらその気持ちは、絶対キャロルちゃんにも伝わってた。伝わったからみんなに、響に力を貸してくれたんだよ」

「そう、なのかな……」

「うん。きっと……必ず」

 

 未来の言葉に次ぐように、他の装者たちも響の周りに集まってくる。そして誰もが思い思いに手をかけ合い、言葉を重ねていった。

 

「立花、私も幾度となく、如何にすれば奏を死なせずに済んだのかと考えた事があった。だが、その想いに縛られすぎて立花に迷惑をかけたこともあったな。

 しかし、その歪みを解く切っ掛けをくれたのは、他ならぬ立花……お前だった。そんなお前が独りで散った者の死という重荷を背負おうというのなら、私にもその重荷を分けてくれ」

「ったく、おめーはいつも独りで抱えすぎなんだよ。そのクセこっちの重荷まで背負い込もうとしやがるくせに、自分は渡さねーと来たもんだ。そーゆーの、卑怯って言うんだぞ」

「翼さん……クリスちゃん……」

「響さんたちが月からマムを連れて帰ってくれたから、私たちはマムともう一度会うことが出来た。マムの死を、背負うことが出来たんです」

「それはセンパイたちが諦めないでくれたおかげ……。みんながマムを背負ってくれたから、マムは守護りたかった場所へ帰ってくることが出来たんデスよ」

「キャロルの命を利用したのは、私たち全員の咎。ならばその咎は、私たち全員で背負わなければならない。……だから、独りで抱え込むのは止めなさい。少しずつで、良いから」

「調ちゃん……切歌ちゃん……マリアさん……」

 

 皆の言葉に思わず目頭が熱くなり、涙が溢れそうになってしまう。其れを慌てて裾で拭い、持ち上がった響の顔はいつもの明るい笑顔に変わっていた。

 

「ありがとう、みんな……。みんなに一緒に背負ってくれたからか、少し楽になった気がする! うんッ!」

 

 響の元気な声を聞き、周囲にはまた笑顔が咲く。其処に多少の偽りがあったとしても、その優しき偽りを諌め咎めるものは誰も居なかった。

 そんな彼女らの元に拍手をしながら近付いてくる一つの黒い姿が在った。メフィラス星人だ。

 

「お揃いのようだね、諸君」

「メフィラスさん……。あの、ありがとうございます。本部のみんなを、守護ってくれて」

「なに、気にする事は無い。私はただ面白全部で彼女の提案に乗っただけなのだからな」

 

 言いながら未来の方へ顔を向けるメフィラス星人。対する未来も、変わらず優しい微笑みを続けていた。

 

「……ねぇ未来、メフィラスさんと、一体何を……」

「えっと、うーん……なんて言えば良いのかな……」

「言葉を取り繕う必要もあるまい。君から提案してきたのではないか。【本当に大切なもの】とはなんであるか……その切っ掛けを知る為に先ず、立花響のように【人助け】をしてみてはどうか、と」

 

 臆面もなく語るメフィラス星人に、真っ先に驚きを見せたのは星司と猛だった。

 

「メフィラス星人に、人助けを提案だとぉ!?」

「これは……中々思い切ったことをしたね、小日向さん」

「え、えっと……そ、そんなに大変なこと、だったんですか……?」

『正にまさかの、だな。メフィラス星人は宇宙に悪名轟かせるあの悪質宇宙人。生半な相手ではない』

『ソイツを口説き落とすたぁ並大抵じゃねぇよ。お前、中々結構やるじゃねぇかッ!』

「当然ですッ! だって未来は、私の一番の親友なんですからッ!」

「ハッハッハ、私は種の中でも特別穏健な方だ。自身に利となる提案なら、喜んで受けるとも」

「えっ、えぇー……」

 

 自分の行いが如何に大それたことかを知り、思わず焦って顔を覆ってしまう未来。そんな姿を見て、また周囲に笑顔が咲く。そして今度は、響からメフィラス星人に尋ねていった。

 

「本当にありがとうございました。でも、メフィラスさんはその、【本当に大切なもの】を見つけられたんですか……?」

「さて、ね。だが、闇を討ち払った君たちの姿を見て、思うところぐらいはあった。それが切っ掛けになるやも知れんし、そうでないかも知れん。

 しかし、私は私の行動に満足感を覚えている。私にとって珍しい感情だ」

「きっとそれは、貴方に守護られ救われた命が貴方に感謝しているから。それを、貴方が知らず受け取っているから……だと思います」

「私に守護られ、救われた命……」

 

 未来の言葉を受け、自らの漆黒の掌を眺め見るメフィラス星人。そして眼前に居る、自らが監察対象としていた二人の少女……立花響と小日向未来。そしてその先には、他のシンフォギア装者たちやタスクフォース関係者、そして自らと敵対しているはずのウルトラマンたち。

 メフィラス星人の青い目には、それら全員の優しい微笑みが映し出されていた。彼らの表情から読み取れる。この者たちは、私に『感謝』しているのだと。この胸に去来する感情は、その感謝を受けたからなのだと。正に、小日向未来の言った通りに。

 そう自らの感情を整理している最中、彼の漆黒の大きな掌を突如誰かに握り締められた。眼を向けると其処には、満面の笑みを浮かべた立花響の姿が在った。

 

「メフィラスさん、やっぱり私には、誰かにこの地球(ほし)を渡すなんてことは出来ません。そんな権限なんて持っていないし、私自身、此処はみんなが生きる大切な世界だってよく理解ったから余計に渡せなくなっちゃいました」

「ふむ、理解っていたよ。例え何度君に尋ねようとも、君がそう解答すると言うことは――」

「ええ。でも、こうして手を繋いだら、繋がってくれるなら……私たちはもう知らぬ仲じゃありませんッ!

 侵略というのなら戦ってでも止めますが、友達としてこの地球(ほし)を訪ねて来てくれるのでしたら、私は歓迎します。そうやって少しずつでも仲良くなれれば、それは何よりも幸せなことだと私は知っています。

 ――それを、信じていますから」

 

 響の笑顔がメフィラス星人の視界に広がる。彼の顔は特に変わりはしない。だがその心は何処か意外そうに揺らめいていた。そして直感する。それこそが、【本当に大切なもの】に繋がる切っ掛けなのであると。

 その確信を抱きつつ、響に握られた彼の黒く大きな手は、優しく彼女の手を握り返していった。

 

 手を、繋げたのだ。

 

 メフィラス星人に握られた手から感じられる温もりに喜び破顔する響。そんな彼女に対し、彼にとっては珍しく思考をせずに言葉を放っていった。

 

「――エルヴィス」

「ふえ?」

「私の個体名称だ。メフィラス星人エルヴィス。

 この世界では種族名ではなく個体名で呼び合うのだろう? 私を『友達』と認定して接するというのであれば、必要なものであるはずだ」

「――……ハイッ! よろしくお願いします、エルヴィスさんッ!!」

 

 

 

 失くしたものがある。だがそれと同時に、その手に掴んだものがある。

 繋いだ手だけが紡ぐもの……それは時に哀しみを生み、時に喜びを引き寄せる。

 ヒトも、宇宙人も……今此処に隔たりは無く、繋いだ手の温もりに嘘は無かった。

 

 

 

「しかし、本当に良かったのかね? 此度の事変……いや、私を友と呼び迎え入れるというただその選択だけでもこの世界は変化を見せるだろう。

 それでも君は、君たちは、自らの想い願う未来(みらい)を握っていられるかね?」

「大丈夫ですッ! だって、光が見守ってくれてるこの世界には、歌があるんですからッ!!」

 

 

 赤く照らされる夕日の中、皆で微笑み合う彼女らを赤い靴の少女が嬉しそうに笑顔で見つめていた。

 

 遥か広がる空には、一番星が輝いていた――。

 

 

 

 

EPISODE26 end…

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