アラクニドっぽい何か   作:タランチュラの末裔

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今回でオリジナルキャラ一人挟みます

アラクニドには清楚キャラがいないので、オリジナルキャラは清楚系を目指して書いてみました

あと文字数ちょっと増やしました


蜘蛛の遺言

「何それ」

 

女子生徒が一言発する

 

自分に向けられている物に対する第一声がそれだった

 

正直、女子生徒は今の状況を理解していなかった

 

つい数秒前まで私に虐められていたハズの有栖が、こうして自分を見下げている

 

つい数秒前まで一緒に有栖を虐めていたはずの友達が、有栖本人に倒され、気を失い横たわっている

 

いくつもの「自分にとっての非現実」が重なった状況を脳の中で整理しきれないでいた

 

 

 

「そ、そんなもの・・・学校に持ってきていいと思ってるわけ?」

 

怯える黒髪の生徒は銃を向ける有栖に向かって言葉を発する

 

 

 

「例えば、泣きながら命乞いとかされた時に決意が揺らいで集中が途切れちゃったりするのかどうか・・・知りたいんですよね」

 

生徒の言葉を無視して自分の都合を押し通す有栖

 

 

 

「な・・・何言ってんのよ・・・もうやめてよ・・・助けて」

 

生徒は泣きながら有栖を見る

 

その様子を見た有栖は一瞬、心臓の鼓動が高鳴った

 

 

 

「(別に・・・なんてことないな)」

 

しかし有栖にとって今見ている光景から来る憐れみや自責の念は想像の範囲内であった

 

初めての「殺し」で少し鼓動が早まってはいるが、銃の引き金を引く事に何の支障もないレベルである

 

 

 

「(でも本番ではどうなるか分からない・・・)」

 

有栖は目を瞑り集中した

 

今夜の「殺し」で考えられるあらゆる可能性を考え、頭の中で対処した

 

そして自らの心臓の鼓動を感じ、落ち着けた

 

 

 

「(やっぱり・・・殺すしか無い)」

 

目を開けて、銃の撃鉄を起こす

 

 

 

「ヒ・・・」

 

本気で自分を殺そうとしている有栖を恐怖に染まった目で見続ける女子生徒

 

 

 

「ご協力感謝です、さよなら」

 

そう告げた有栖はいたって普通の様子で銃の引き金を引いた

 

しかし弾丸は女子生徒の顔をギリギリ外し、代わりに後方のトイレの壁の一部を破壊する

 

 

 

「(アレ・・・おかしいな・・・ちゃんと狙ったハズなのに)」

 

何故射撃を外してしまったのか自分でも分からない有栖であった

 

すると次の瞬間、有栖の身体に異変が起こる

 

 

 

「ウゲェ・・・!!」

 

異変を感じた有栖が盛大に吐きだした

 

喉からあふれ出てくる物を堪えきれず、休むことなく吐き続ける

 

あまりの苦痛に有栖は思わず膝をつき、握っていた銃をその場に落としてしまう

 

 

 

「ヒィイ・・・!!」

 

銃を離してしまった有栖を見て、女子生徒はトイレから急いで逃げ出す

 

 

 

「・・・―――――!!」

 

その場から動かず、身を休める有栖

 

しかしそれでも苦しさは落ち着かず、その内呼吸するのも苦しくなってきた

 

 

 

「(な・・何コレ)」

 

有栖は咄嗟にスレッドを天井へと伸ばして集中する、これは「蜘蛛」から教わった心を落ち着ける蜘蛛ならではの術

 

蜘蛛という生物の中には糸に頼らず生きていける種類は存在しない

 

「自ら狩りに出かけるタイプ」だろうと「罠を張って待つタイプ」だろうと、すべての蜘蛛は必ず「枝折糸」と呼ばれる糸を出して歩く

 

「枝折糸」は蜘蛛の落下を防ぐ「命綱」であり、今どこにいるのかを示す「目印」でもある

 

蜘蛛は驚異的な能力で獲物を狩るハンターであるが、糸がなければ動くことすらままならないのである

 

 

 

「(だいぶ落ち着いてきた・・・もしかして今のは先天性集中力過剰の発作かも・・・)」

 

初めて体験した症状に対して、有栖は一番あり得る原因を考えた

 

 

 

「(でも・・蜘蛛糸(コレ)さえあれば大丈夫・・・「制御できる」、殺し屋さんもそう言ってた・・・だから、大丈夫)」

 

そう自分に言い聞かせた有栖は、ゆっくりとトイレから出て行った

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

時刻は夜

 

 

蜘蛛の作戦に取り入れられなかった足高蜘蛛は街の中を歩いていた

 

そして小さな喫茶店の前を通りかかると足を止め、店に向かって歩き出す

 

店の扉には「CLOSED」と書かれた看板が吊るされていた

 

 

 

「・・・『蛍』、俺だ」

 

店の前に立った足高蜘蛛がそう言うと、扉の鍵が開く音がした

 

足高蜘蛛は周囲に誰もいないことを確認すると店の中へ入った

 

 

 

「相変わらずいつも閉まってるな、この店は」

 

「開店時間が短いだけですよ」

 

足高蜘蛛はカウンター席の向こうに立つ少女に向かって言う、見た目から察するに少女は有栖と同じ年齢のようだ

 

短い髪に可憐な顔立ちをしている少女は足高蜘蛛の言葉に対し、笑顔で返す

 

 

 

「分かってるよ・・・週に三度、深夜の三時間だけ営業してるんだろ? だけど営業時間たった三時間じゃ短すぎる、利益がでるとは思えねえな」

 

「短くていいんです・・・ここは私、『蛍』の店ですから」

 

自分から蛍と名乗る少女はにっこりと笑みを浮かべながらそう言った

 

 

 

蛍とは初夏から晩夏に入る頃まで見られる発光することで知られる昆虫である

 

「蛍火」と呼ばれる蛍の発光は人間の目から見ても美しくて魅力的であるが、「蛍」自身の寿命は非常に短い

 

個体差や性別によって違いはあるが平均期間にして「5日」、これは短命で知られる「蝉」の寿命よりも短く、その儚さが「蛍火」の美しさをより一層引き立てているのかもしれない

 

 

 

「いくら蛍だからって開店時間まで短いのはちょっと・・・お前の淹れる紅茶、けっこう好きなんだけど」

 

「そう言ってもらえるのは嬉しいですけど・・・どんな物でも毎日だと『飽き』が来るじゃないですか」

 

蛍がそう言った後、足高蜘蛛の前に淹れたての紅茶が置かれる

 

 

 

「こういうのは「偶」に飲むから美味しいと思うんです」

 

「そうだな、いただきます」

 

足高蜘蛛は音を立てずに紅茶を一口飲んだ

 

 

 

「今日は蜘蛛さんと一緒じゃないんですね、珍しい」

 

「今日だけじゃない、恐らくもう蜘蛛さんがここに来る事はない・・・一生な」

 

カップを置き、足高蜘蛛が冷静に言った

 

すると食器を片づけていた蛍が手を止める

 

一瞬驚いた様子だったが、すぐに笑顔を作って足高蜘蛛に言う

 

 

 

「そうですか・・・じゃあ蜘蛛さん、ようやく望みが叶うんですね」

 

「あぁ・・・『資格がある人』が見つかったらしい」

 

「どんな人なんですか?」

 

「俺やお前と同い年の女の子だよ・・・見た目は普通だけど、蜘蛛さんの力をしっかり受け継いでた」

 

変わった様子なく淡々と話す足高蜘蛛に対し、蛍は仕事を続けながら話す

 

 

 

「それで・・・行かなくていいんですか?」

 

「なにが?」

 

皿とカップを棚に仕舞い終えた蛍が振り向いて言う

 

 

 

「お世話になった蜘蛛さんの最期を見届けなくていいんですか?」

 

「蜘蛛さんが「お前は来るな」って言ったんだ、行けねえよ」

 

「・・・私はそういうの関係ないと思います」

 

半ば諦めた様子の足高蜘蛛に蛍は真剣な表情で言った

 

 

 

「蜘蛛さんがどう言おうと行けばいいじゃないですか、お世話になった人の死に目に会えないなんて・・・悲しすぎませんか?」

 

「・・・蜘蛛さんの命令だから従うしかないだろ」

 

「だったら最後くらい、命令違反しちゃったらどうですか? 私は足高蜘蛛さんがこの先後悔しないためにも行った方がいいと思います・・・それがどんな結末であっても」

 

「後悔なんてしないさ・・・俺が自分で行かないって決めたんだ」

 

「・・・そうですか」

 

きっぱりと言ってのけた足高蜘蛛に対し、蛍がそれ以上口を開くことはなかった

 

その時、背後にある店のドアが開き一人の女性が中に入ってくる

 

 

 

「あっ・・・いらっしゃいませ!」

 

訪れた女性の正体を見た蛍が少し驚いた様子で迎える

 

 

 

「久しぶり蛍ちゃん、コーヒー一杯いただこうかしら」

 

店に入ってきた妙齢の女性は足高蜘蛛の隣に座ると笑顔でそう言った

 

 

 

「〝こんなトコ〟に来るなんて珍しいですね、兜蟲さん」

 

「あら、ここは私のお気に入りの店よ・・・飲み物〝だけ〟は美味しいもの」

 

「・・・二人ともひどい事言わないでください」

 

他愛もない会話をする足高蜘蛛と兜蟲

 

そんな二人の会話を聞いていた蛍が面白くなさそうに頬を膨らませる

 

 

 

「それで・・・何しに来たんですか? まさかただ一息つきに来たなんて事はないですよね?」

 

「蜘蛛の遺言を伝えに来たのよ」

 

そう言った兜蟲は目の前に置かれたコーヒーを口に含む

 

 

 

「蜘蛛さんの・・・?」

 

「ええ、〝後の事は全てお前に託した、有栖の事をよろしく頼む〟ってね」

 

「・・・そっか」

 

「・・・・・」

 

足高蜘蛛が暗い顔で頷くのを見た兜蟲がうっすら笑みを浮かべて言う

 

 

 

「あと、これは遺言とはまったく関係ない話だけど・・・蜘蛛(アイツ)はこうも言ってたわ」

 

そう言うと、兜蟲は以前の出来事を話す

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

『蜘蛛・・・仮にあんたが死んだとして、あんたの愛弟子はどうする気よ?』

 

蜘蛛と並んで歩く兜蟲が言う

 

 

『愛弟子? 足高蜘蛛の事か・・・』

 

『そうよ、あんたその藤井 有栖って娘の事ばかり気にかけてるけど、あの子の事はどうでもいいわけ?』

 

『足高蜘蛛なら大丈夫だ・・・あいつは強くなった、俺がいなくても十分一人でやっていける』

 

平然とした様子で答える蜘蛛

 

その言葉を聞いた兜蟲が不思議そうに言った

 

 

『あんた随分変わったわね蜘蛛』

 

『俺は事実を言ったまでだ・・・足高蜘蛛なら心配いらない、何故なら奴は―――』

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「 『奴は俺の誇りだ』・・・って、性に合わずね」

 

「・・・・・」

 

兜蟲の話を黙って聞いていた足高蜘蛛は紅茶を飲みほす

 

そしてゆっくり立ちあがると脳裏に蜘蛛の顔が浮かんだ

 

 

 

「(蜘蛛さん・・・俺だって・・・蜘蛛さんに言いたい事いっぱいあるのに・・・)」

 

拳を握りしめ、歯を食いしばる足高蜘蛛

 

自分に聞かされる事の無かった蜘蛛の心中を知り、悔しさが表情に滲み出ているようだった

 

 

 

「(自分だけ言いたい事言って逝くなんて・・・卑怯じゃねえかよ・・・!!)」

 

すると足高蜘蛛はテーブルに勢いよく硬貨を叩きつけて言った

 

 

 

「行ってくる」

 

その姿を見た兜蟲と蛍が笑って頷く

 

足高蜘蛛は思い切り地を蹴って廃工場まで走りだした

 

 

 

「やれやれ・・・世話がやけるわ」

 

店の中に残った兜蟲が呟く

 

 

 

「足高蜘蛛さん、間に合うといいですね」

 

蛍は足高蜘蛛が使ったカップを片つけながら言う

 

 

 

「それにしても兜蟲さん、よく蜘蛛さんの伝言を伝える気になりましたね・・・兜蟲さんって伝言とかお金になりそうにない事、引き受けないかと思ってました」

 

「蜘蛛が私に頼んだ最初で最後の頼みだもの・・・ま、同世代のよしみって奴よ」

 

「ふふっ・・・もしかして兜蟲さん、蜘蛛さんの事が好―――っ痛ぁ!!」

 

何かを言おうとした蛍の額に軽い凸ピンをかます兜蟲

 

静かな店内に蛍の小さな叫び声が響いた

 

 

 




何回も書き直すうちに展開が雑になってしまったかも・・・(汗)
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