アラクニドっぽい何か   作:タランチュラの末裔

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蜘蛛として生きる

 

 

「はあ・・・はあ・・・!」

 

足高蜘蛛が廃工場の中の階段を一気に駆け上がる

 

目指しているのは屋上

 

蜘蛛はどうなっているのだろうか、もう死んでいるのか、それとも生きているのか

 

そんな事を延々と考えながら足高蜘蛛は足を進ませていた

 

 

 

「(あれだ・・!)」

 

視線に映ったのは木の板で塞がれている屋上への入り口だった

 

しかし、下部分が何者かに壊されていて既に誰かが入り口から外に出たのが分かる

 

 

 

足高蜘蛛は木の板を思い切り殴って無理やり壊した

 

そして勢いよく屋上へと飛び出すと目に飛び込んできたのは自分の唯一の家族とも言える男が口から血を流し倒れている光景

 

 

 

 

「蜘蛛さん!!」

 

分かっていた事とはいえ、未だかつてない蜘蛛の姿に動揺を隠せない足高蜘蛛

 

 

 

「足高蜘蛛さん!?」

 

横から響くのは目に涙を溜めた有栖の叫び声

 

その手には拳銃が握られていて、その拳銃で蜘蛛を撃った事が窺えた

 

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・」

 

かろうじて意識が残っている蜘蛛が口を開く

 

そして足高蜘蛛の方を見て言う

 

 

 

「足高蜘蛛・・・何故・・・来た?」

 

苦しそうに、刻みながら言葉を発する蜘蛛

 

 

 

「何故って・・・俺も蜘蛛さんに言いたい事があるからですよ!! 勝手すぎますよ、自分だけ言いたい事言って死のうとするなんて!!」

 

死にかけの蜘蛛を見て、足高蜘蛛は自然と目頭が熱くなるのを感じた

 

 

 

「兜蟲に聞いたか・・・伝言は・・・明日伝えるように・・・言ったハズだが」

 

「蜘蛛さんはずるいですよ!! 肝心な時はいつも俺をのけ者にして・・・だから俺は蜘蛛さんの事、深く知ることが出来なくて・・・でも・・・蜘蛛さんは俺の事は全部分かってくれてて・・・!!」

 

涙を溜めて、普段は口にしないような事を叫ぶ足高蜘蛛

 

それを聞いている蜘蛛の口元は少し綻んでいた

 

 

 

「俺だって・・・蜘蛛さんの事、もっと深く知りたかったです!! もっと・・・もっと本当の家族みたいになりたかったです!!」

 

泣くまいと必死に歯を食いしばる足高蜘蛛だったが、その頬に一筋の涙が流れた

 

すると蜘蛛がゆっくりと腕を上に上げ、足高蜘蛛の涙を拭って言った

 

 

 

「お前が・・・そんな風に思っていたとは・・・すまなかった・・・だが、俺は・・・お前を本当の家族だと・・・思っていた」

 

そう言った蜘蛛の目にも少し涙が浮かんでいた

 

 

 

「のけ者に、していたわけじゃない・・・危険な仕事や・・・組織の重要な話には・・・お前を巻き込みたくなかったんだ・・・」

 

蜘蛛の手が足高蜘蛛の頬を撫でる

 

枯れそうな声で言う蜘蛛の姿を見ている足高蜘蛛は更に大粒の涙を流した

 

 

 

「足高蜘蛛、お前は・・・俺の大切な家族だ・・・俺が死んでも、それだけは変わらない・・・お前がいたから・・・俺は今日まで生きてこれた」

 

「蜘蛛さん・・・」

 

すると二人の会話を聞いていた有栖が涙を流して言った

 

 

 

「どうして・・・こんな・・・」

 

蜘蛛は有栖の方に視線を向け答えた

 

 

 

「以前お前に・・・始末して欲しい奴がいると言ったろ・・・あれは雀蜂の事を言ったんじゃない・・・俺のことなんだ」

 

蜘蛛の言葉に有栖が驚いて目を見開く

 

 

 

「俺はこの歪んだ社会に飲み込まれ、クズ同然の人生を送った・・・ずっと死にたかった、誰かに殺してほしかった・・・だが誰も誰もが俺と同じクズばかり、俺を殺す資格のある奴などいなかった」

 

「・・・・・」

 

有栖は絶句した

 

まさか蜘蛛がそんな事を考えていたとは思いもしなかったからである

 

 

 

「だが、お前はいい・・・俺が育てたお前に殺されるなら・・・最高だ」

 

「あなたが死んだら・・・私はどうやって生きれば・・・」

 

横になっていた蜘蛛は上体を起こし、入口の壁に背中を預けて有栖を見る

 

 

 

「アリス・・・お前は・・・何者にも名前を奪われるな・・・奪われれば自分が

自分で無くなり、他人の道具に成り下がる・・・この俺のようにな」

 

有栖に向かってそう言った蜘蛛は足高蜘蛛に視線を移して言う

 

 

 

「足高蜘蛛・・・お前は生きろ、お前ならまだ間に合う・・・組織に奪われた自分の名を取り戻し・・・アリスと共に自力で全てをからめとる『蜘蛛』として生きろ」

 

足高蜘蛛に返事の声をだす事は出来なかった

 

涙を流し、ただ首を上下に揺らしていた

 

それを見た蜘蛛は最後の力を振り絞り、壁に手をつけ立ちあがった

 

 

 

「動いちゃダメですよ、じっとして!」

 

有栖は何とか蜘蛛を救おうと体の安静を促すが、蜘蛛はそれを聞き入れない

 

それどころか棒立ちになって言った

 

 

 

「俺を撃て、アリス」

 

その言葉に有栖の表情が固まる

 

そして困った表情を浮かべて言う

 

 

 

「で・・できませんよ」

 

「致命傷だ・・・どうせこのままでも死ぬ」

 

「そんな・・・勝手ですよ・・・」

 

血を吐きながら言う蜘蛛に対し、再び涙が溢れてくる有栖

 

 

 

「頼む・・・俺が育てた自慢の娘に・・・お前に殺されるのが俺の悲願なんだ」

 

「・・・・・」

 

蜘蛛がそういった後、有栖は何かを決心した表情を浮かべる

 

 

 

「私、そんなに優しくないよ・・・お父さん」

 

「・・・・・!」

 

思いがけない有栖の返答に蜘蛛は驚いた様子だ

 

有栖は「さよなら」と一言告げて銃口を向ける

 

 

 

蜘蛛が足高蜘蛛の方を見ると、足高蜘蛛はもう涙を流していなかった

 

正確にいえば口元が震えて握りこぶしを作り、必死に涙をこらえていた

 

 

 

「ありがとうございました、蜘蛛さん」

 

足高蜘蛛が一言お礼を告げると、有栖の拳銃の引き金が引かれる

 

銃声が夜空に響き渡り、銃弾が蜘蛛の頭を撃ち抜いた

 

 

 

その後、しばらくの沈黙が訪れる

 

 

 

「うっ・・・うぅ・・・」

 

有栖は足高蜘蛛の肩に顔を埋め、静かに泣いていた

 

足高蜘蛛はただ黙って息の絶えた蜘蛛を眺める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「報告・・・『銀蜻蛉』から『雀蜂』へ」

 

数キロ先の建物の上で、スコープ越しに足高蜘蛛達を見る人間がいた

 

その者は銀蜻蛉と名乗り、ニット帽にゴーグルにマスクをしていて完全に顔を覆っていた

 

 

 

「たった今『蜘蛛』が死んだ、殺ったのは藤井 アリス」

 

すると通信機先から雀蜂の声がした

 

 

 

「ほう・・・そうか・・・結局、ボスの読み通りの結末だったな」

 

「今、足高蜘蛛も藤井 アリスの傍にいる・・・狙撃するか?」

 

「ああ・・・二人まとめて殺せ」

 

「了解」

 

引き金に手をかけ、淡々としゃべる銀蜻蛉

 

しかし次の瞬間、雀蜂から「待て」という命令が下った

 

 

 

「殺すな、新しい命令が届いた」

 

雀蜂はボスから届いたという命令を銀蜻蛉に伝える

 

 

 

「その娘を新たな『蜘蛛』とし、仲間に加えるそうだ」

 

「バカな、仲間になどなるハズが無い・・・元から「蟲」である足高蜘蛛はともかく、藤井 アリスは今 殺した方がいい」

 

銀蜻蛉が否定的な意見を述べる

 

すると雀蜂が野太い声で言う

 

 

 

「ボスに逆らうつもりか? 銀蜻蛉」

 

「・・・・・」

 

ボスの名を出した途端、銀蜻蛉が喋る事をやめた

 

 

 

「了解、監視を続ける」

 

そしてすぐさま考えを改め、雀蜂の指示に従った

 

 

 

 




キリのいいところを選んだので今回は文字数少ないです
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