問題夫婦達の戦録 作:ボールペン
1話しか投稿してませんでしたが、今私が書いてる雰囲気でキチンと書き直しました。
前の1話を知っている人はすいません。けど内容は変えませんのでご安心を。いずれにしてもこの展開は不可避なので。
ではよろしくお願いします。
今日も朝の食卓で彼とたわいないいつもの会話がある。私がただただわがままを言っているのすぎ無いのだが、彼は面倒臭がらず相手をしてくれる。
「ええーーーーーーーー!! 」
「な、なんだよ、急にデカイ声出すなってなのは」
「昨日約束したじゃん! 絶対したもん! したの! したしたした! 」
彼との馴れ初めは私がまだ11、12歳の頃。私がとある任務で大怪我をし、病院で気落ちしていた時だ。もう歩けないかもしれない。もう魔法で飛ぶ事は出来ないかもしれない。そんな現実を叩きつけられ、すっかり放心状態だった頃、彼と出会った。
最初は偶然だった。たまたまいじっていた携帯電話。そこに送られてくる友達からのメールを見ていた時、誤ってベットから落としてしまったそれを彼が拾ってくれた事が始まりだ。何の用で病院に来ていたかはわからない。でも彼はいた。これも偶然だが、私の病室のドアが開いていた事も彼と出会うキッカケ。
最初の彼の印象は無口で少し怖い印象だった。乱暴な言葉遣いで私に携帯を放り投げるとお大事にとだけ言って私に背を向けた。だから私は精一杯の声をあげ、彼に携帯のお礼を告げる。そんな私に彼は立ち止まると頑張れ……などと言い残して行った。
その時、私はどう言うわけか勇気を貰った。彼から足りなかった何かが満たされるように、頑張ろうと思う勇気を貰ったのだ。そしてそれからだった。
私が彼の事を意識して頑張るようになったのは。
それ以来彼とは会っていなかった。正確にいえば会う事ができなかった。リハビリをやっていたのもそうだが、素性を知らない私は連絡を取る手段もない。だから想う事は出来てもそれ以上はなかった。
そんな彼と再会したのはそれから何年も経った後の事だ。再会と言うにはあまりにも劇的な物。もっとロマンチックに再会したかったものだが、また彼と出会わせてくれた天に感謝は惜しまない。
話を戻すが彼と再会したのはある年に起きた空港の大規模火災の時だ。たまたま近くにいた私や私の親友2人はその救援に出た。その時、避難した人の中に彼がいた。全てが終わった後、私は大きな胸の高鳴りとともに彼の前に立つ。そして……気づいた時には言葉にしてしまっていた。
何故こんな恥ずかしい事を何の躊躇見なく言えたのかは今でもわからない。きっと何年も想いだけが積もった結果なのだろうとは思うが、それでも大胆だとは思った。
『あなたのおかげでまた立っていられます。ずっと、ずっと会いたかった。……好きです。私はあなたの事が大好きです! 』
恥ずかしいより、よくやったと自分を褒め称えたい。おかげで私は彼をゲッとする事ができたのだから。それにその時の彼の返事は今でも一生忘れない私の大好きな言葉。
そこからは早かった。付き合い始めてプロポーズされ、結婚までは最短ルートだろう。彼が真面目だった事もあり、周りの反対はなかった。彼と2人だけの新居。二階建ての新築。
あれだけ想った想いが叶ったからこそ今の幸せがここにある。
「そんなに言わなくてもわかってるって、俺が約束したのは間違いない。でもさ、仕方ないだろ? 仕事なんだから。悪かったって」
「む〜! トモ君の嘘付き!! 」
私は今年で17歳になる。でも……立派にこの人の奥さんだ。私の故郷では許されないが、この世界。ミッドチルダでは15歳以下の結婚が許されている。故に今年で結婚生活2年目。まだまだラブラブ真っ盛りの夫婦だ。
一方私の旦那様は今年で26歳のサラリーマン。私も管理局と呼ばれる一応公務員なわけだが、そんな私よりも旦那様は給料がいい。だから家での主導権はいつも彼の物だ。
けど別にそれが気に入らないわけじゃない。ただ私が負けた気になっているだけで、私の旦那様は超がつくほど私を愛してくれる。炊事、洗濯、掃除は勿論。私のお昼の弁当。朝は私よりも早く起き、私が起きる頃には朝ごはんまで食卓に並べる。
つまり何が言いたいかといえば、彼は私にはもったいないくらいのできた夫だ。そのくせ、私を甘やかして私には一切の負担を与えてくれない。仕事で帰ってきても、私がやる事は無いに等しいのだ。しかし私の方が帰りが早いことがしばしば。ならばと夕飯を作ろうとすれば、すでに仕込みの済ませてある材料が冷蔵庫に並び、手がつけられない。
結論からいえば感謝している。仕事で疲れた私を気遣ってくれるその気持ちは何より嬉しいからだ。ただ、それは彼も同じ。私よりも帰りが遅いのにもかかわらず、全て私の為にやってくれている。エースオブエースなどと呼ばれ、管理局で少し有名でも家庭では主婦失格だ。
また私は彼に秘密がある。原因は彼が心配性だからだ。自分で言うのもなんだが、彼は私が好きで好きでたまらない。当然私も彼が好きで好きでたまらない。互いにそんな気持ちだからこその秘密だった。彼は管理局絡みのニュースやそれに関する記事を好んで見たり、読んだりしない。だがら私がそこそこの立場にいることを彼は知らないのだ。
心配をかけない為、そして時たま危ない場所へも行かなきゃいけない事情もあることから彼にはただの事務員と言うことで話をしている。魔法もそんなに使えない。魔力も弱い。そんな嘘をついているのだ。決してこの事に対する罪悪感がないわけでは無い。けど私は余計な事で彼に心配をかけたくはなかった。
「それじゃ行ってくる」
「あ、待ってよ!? はい、ん〜」
「毎日毎日飽きないよな」
「飽きるとか飽きないじゃないもん! もう〜は〜や〜く〜! ん〜ちゅっ!? 」
「ちゅっ……行ってきます。なのは」
「いってらっしゃい、あなた! 」
この日々は大好きだ。毎日彼の愛が実感できるのだから。しかし問題は彼との夜の時間。夜の営みだ。ここでは夜のプロレスとでも表現しておこう。何と言えばいいか、彼は忙しい。本当にブラック企業ではないと言うくらい忙しさが絶えないのだ。
故に…………
彼と夜のプロレスをする時間がない。いくら何でも疲れている彼にそこまでの強要ができない私は仕方なしに諦めて寝る。今日の朝もそれが原因のわがままだった。今日早く帰ると言って夜のプロレスを約束していたのにも関わらず、彼は急な仕事で遅くなるらしい。勿論仕方ないのは分かっているのだ。でもそれでも納得できないのが女心と言うもの。それにまだ私は若い。彼との時間を何より大事にしたいと思うのは当然だろう。
だが何故なのだろうか。あんなにも幸せだった。幸せだった筈なのに。今日という日を皮切りに……全てが無になった。考えられない事だ。彼がいない生活など、今の私には考えられない。
何かがおかしい。そんな事を思ったのは深夜になっても家に帰らず、明日もある私は彼を待たずして眠りについた今日。でもそんな夜中の事。いつの間にか帰ってきた彼は、寝ている私にキスをし、それにびっくりして起きた私に構う事なく普段では考えられないほど強引に夜のプロレスを開始し始めたのだ。
「ちゅっ、トモ君んっ!? ちゅっ、ちょっ、待っちゅっ!? んっ! あむっ!? 」
激しかった。何も喋らせてもらえず、ただただ私は求められた。けどそれは今までにないくらい気持ちよく、嬉しかった。繋がっている事がこんなにも愛おしく嬉しい。こんな気持ちになったのは久しぶりだしここまで激しいのは初めてだ。
「ぷはっ!? あっ、んっ。ト、トモ君好き! 愛してるの! 」
「ああ……俺もこの世の誰よりもお前を愛してる」
嬉しい。ただただ幸せ。これが最後だとも知らず、私はそれに浸っていた。どうしてこの時不思議に思わなかったのか。こんなにも強引に私を求めてくることなんて今までなかった事に。どうして彼の事をもっと理解してあげられなかったのか。そうすればもっといい道があったはずなのに。私は所詮私の幸せしか考えられないような子供だったのだ。
そして気がつけば早朝。私は寝不足にも関わらずフワフワとした気持ちで朝を迎えた。幸せで気持ちのいい余韻が抜けず。すでにベットからいなくなった彼の姿を探しながら自らもリビングに起き上がった。
しかし……そこで私を待っていたのは、おはようの言葉でもなく、いってきますの言葉でもない。
私を待っていたのは…………
「なのは……俺と別れてくれ」
「え…………」
残酷な言葉だった。
一瞬、何を言われたのか理解できなかった。昨夜あんなにも愛し合った後にこの言葉。理解できるわけもない。だが彼の目は本気だ。当然この手の冗談を好んでする人でない事は私がよくわかっている。
「なん……で? どうしてそんな事……言うの? 」
「そろそろ時間だ。仕事に」
「待って!? 行かないで!? なんで! なんでなの!? 私何か悪いことした? トモ君に嫌われるようなことした? それなら言ってよ! 直すから、謝るから! こんな何もわからないで別れるなんて嫌だよ!? 主婦の仕事をもっとやれって言うならするよ! 疲れてるなら私が全力で癒してあげる! だから、だから!? 」
私は彼にしがみつきながら必死に彼を説得した。でも無理だった。私がいくら泣き叫んだところで、彼の決意は固い。自分の何がいけなかったかもわからずに私達は破局を迎えようとしていた。しかしあまりにも聞きわけがなかった私を見かねてか、帰った後ちゃんと話すと約束し、取り敢えず仕事に出る事で朝はおさまった。
仕事中もしこのまま彼が帰ってこなかったらと不安が止まらなくなり、仕事など手につくわけがない。だから私は同じく結婚している親友のフェイトちゃんに相談を持ちかけた。彼女は快くそれを聞き入れ、今夜は一緒に帰ってくれると言ってくれた。1人じゃ不安だ。自分の夫との話し合いでも1人じゃ不安だったのだ。
なんとか思いとどまってくれないか。一体どうしてなのか教えてくれないか。私は不安定になる程精神的に追い込まれていた。悪く言えば、私はこれほどまでに彼に対して依存していたのだ。愛していた。誰よりも好きだった。いない事は考えられない。いる事が当たり前で、そこにいる事が当たり前。
だが、そんな当たり前の日々は……完全に終わりを迎えた。
「う……そ…………」
「な……なんでこんな……なのは? ちょっ!? なのはダメ!? 行ったらダメだ! 」
「い゛や゛!? 離して!? フェイトちゃんお願い!? 離してよ!? トモ君!? トモ君!? いや、嫌、い゛や゛!!! 」
何故なら、あんなにも幸せで当たり前の毎日をくれた私達の家は……見る影もなく真っ赤に燃え盛っていた。約束をしたなら彼は私より早く家にいたはずだ。そこまで考えたら私はそれ以上考えるより先に動き出していた。私を羽交い締めにして止めるフェイトちゃんをよそに、どうしてもそこへ行こうとする私は叫ばずにはいられない。
愛する人があそこにいるかもしれない。あの燃える家の中で死にそうになっているかもしれない。そんな状態で動かない妻がいるだろうか。いるわけないだろう。ひたすら行かせてくれ、離してくれ、そんな事を叫び続け、その間にも炎は大きくなっていく。
フェイトちゃんの言葉は聞けない。もうダメだなんて聞きたくない。諦めたくなんてない。
しかし次の瞬間、私の想いは粉々に消え去った。
再度大きな爆発が起こった時、窓ガラスを突き破り何かが私の前に転がってきた。それは私の希望も生きる意味も、全てを粉々にするトドメの一撃だった。
「や゛ぁ……ぁ……」
「な、なのは…………」
私は転がってきたそれを血と灰で汚れることも構わずに自分の両手と胸で抱き締め、必死で壊れ始めてる自分を押さえ込んだ。
「トモ……くん……ドも゛ぐん゛……いやだよぉ……」
「なのは……その……くっ……酷いどうしてこんな」
でも……そんな事は到底できるわけもない。私の中ではこの現実は受け入れるしかなかった。愛する人はもういない。この世で一番愛していた人はもうこの世にはいない。
もはや諦めるしかないのだ。何故なら……あの燃え盛る家から飛び出してきたのは、私と彼の夫婦の証。私達の何よりも強い絆であった物。
その結婚指輪はめた…………
「うっ、う゛っ……う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁっ、あ゛っはぁぁう゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁあああん!? うわぁぁぁあああああああっ、えぐっ、ひぐっ、うわぁぁぁああああああん、い゛っやぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!? 」
彼の左手だったのだから。
次回もよろしくお願いします。