問題夫婦達の戦録   作:ボールペン

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ども〜


ではよろしくお願いします。


第2話【穢された誕生日】

なのはの家が燃えてからまだ数時間しか経っていない。未だに私ですらその実感はない。だが行くあてがなくなった親友をこのままにしておくわけには行かず、取り敢えず私の家に連れて帰ることにした。

今は最愛の人を亡くした悲しみで塞ぎこみ、私がどう声をかけたらいいか分からず1人客室で休んでいる状況だ。

 

この件は実にところ、事故ではない。ハッキリ言ってこれを事故で片付けるにはおかしな点が多い。それはトモさんのなのはに対する態度の変わり方がおかしい事。さらに窓を突き破ってきたトモさんの左手は火災による爆発で生じた物ではないという事だ。それは左手の断面。肘から下の部分のそれは断面があまりにも綺麗すぎるのだ。まるで刃物で切られたかのように整った断面。それを私達がいなくなった後任せた同僚からの報告で受けている。

 

トモさんの行動と今日の火災。あまりにも出来すぎている。状況からして、トモさんが生きてる可能性はあまりにも薄い筈だ。これは私の想像ではある。しかしその可能性は拭えない。それはトモさんは何か知ってはいけない情報を知ってしまい、なのはを巻き込む可能性があった為になのはに離婚を切り出した。彼の人柄から言って何も説明せずに別れてくれなどと言う人ではない。

 

つまりトモさんは何者かに殺害されたと言った方がいい。親友を襲ったこの悲しい出来事はとてもじゃないが他人事ではない。何故ならなのはとはとても仲のいい幼馴染で親友だ。だから私の夫も含めて家族がらみで仲が良かったのだ。当然トモさんのことはよく知っている。なのはの事をとても大事にし、私達にも隔てなく優しい男の人。とってもいい人だったのだ。だからそんな人を殺したなどとても許せる事じゃなかった。必ず捕まえる。どんなにかかったって犯人を捕まえる。私はそう……心に決めている。

 

「フェイちゃん、そろそろ何があったのか話してくれないかな? なのちゃんの様子普通じゃないし、フェイちゃんも怖い顔してる。何があったのか僕に話して? 」

 

心配そうな顔をし、リビングで座っていた私の顔を覗き込んできたのは、赤い髪をし肩まで伸びた長髪の私の夫。

まだ彼には何も言っていない。説明しなければならないのはわかっているのだが、トモさんと特に仲が良かった彼にはとてもじゃないが言い出しにくかった。ただ、もう隠し通す事は出来ない。私は重い口を開き今日起きた事を彼に話すことにした。

 

最初どんな顔をするのだろうと思っていた私は悲しむ彼の顔を想像し、そんな顔は見たくないと思っていた。しかし彼は全く別の顔を見せる。その顔に私は少し違和感を覚えた。それは一瞬であったが、何かを悟って受け入れたかのようなそんな顔。気のせいだとも思ったがその顔はあまりにも印象的だった。

 

「ハルキ大丈夫? その……トモさんと仲よかったでしょ? 」

 

「そうだね……でも、僕なんかより心配しなきゃいけない人がいる。フェイちゃんはなのちゃんの事支えてあげて」

 

「そう……だね。なのは……強い人だけど。こればっかりは…………」

 

そう……こればっかりは不屈のエースオブエースと言えど立ち直れるか心配な事だ。彼女だって職務や魔法を除けば普通の女性。私が感じているこの悲しみとは比べ物にならない感情を抱いてる筈だ。なのはに限ってと言う考えは捨てるべきだろう。最悪、トモさんの後を追いかけるシナリオも頭に入れておかなければならない。勿論そんな事はさせない。そんな事をトモさんが望んでいるはずはないからだ。私は信じている。あの別れ話が必ずなのはの為であったという事を。

 

夫が眠りにつき、私は心配でなのはのいる客室へ行った。今彼女はどんな気持ちでどんな表情をしているのか。悲しみで歪んだ顔など私は見たくない。でも、彼女の想いを受け止めてあげるためにも、そこから目をそらす事は許されないのだ。だから私はゆっくりと部屋の襖を開ける。

 

だがそこに…………

 

 

 

なのはの姿はなかった。

 

 

「え……なの……は? 嘘……ダメだよなのは……まさか馬鹿な事考えてないよね……くっ、なのは!? 」

 

一体いつの間に家から出て行ったのかはわからない。私はすぐに自分の家を飛び出した。なのはの行きそうなところをしらみ潰しの辺り、自分ならと考えた時、あそこしかないと行き着いた。

少し考えればわかるはずだ。なのはが何よりも大事にしていた場所。辛い場所だとわかっていても。彼女なら心の整理を求めてそこへ向かう。

 

そして私の考えは……正しかった。

 

いつの間にか雨が降り、私も地面もびしょ濡れにしている中。彼女はいた。黒焦げ、燃え尽きてしまった無残な家。その前で、彼女はただただそれを眺めていた。勿論傘などさしていない。私はゆっくりとなのはの後ろへ近づいた。

彼女はまだ馬鹿な考えは起こしてない。何を思ってここに来たかは私にはわからないが、彼女は立ち尽くしたまま動かない。一体どうすれば彼女の辛い想いを和らげてあげることができるのか。一体どうすれば彼女はまた笑ってくれるのか。

 

でも……

 

 

 

私ではダメだ。

 

 

私では何をしても彼女の心は照らしてあげられない。彼女が失った物はそういう類のものだ。埋めるなどというふざけた考えなどするべきじゃない。代わりなど考える必要はない。何故なら彼女にとってなのはとって……トモさん以外に彼女を満たせる人間はいないのだから。

 

「にゃは……は……無くなっちゃった。大事なもの全部。家も、大事な人も。どうして……トモ君別れてなんて言ったのかなぁ……聞きたかった。トモ君の声で、言葉で……嫌われたんだとしても……ちゃんとぉ……ぎみ゛の口から゛…………」

 

「なのは……っ!? ……はは、やっぱり……そんな人じゃない。いい人すぎるよ」

 

なのはの後ろで、彼女の独り言のような言葉を聞いていた時、私はその足元で、ある物を見つけた。灰になり、何も残ってない中……それはしっかりと残っていた。金属の細長い箱に入った小さな箱。おそらくネックレスを入れる物だ。しかもブランドもかなり有名な物で原型をとどめていたのも材質がいいものだからだろう。

 

「トモさんなのはの事、嫌いになんてなってないと思うよ」

「っ!? ……フェ、フェイトちゃん……どうして…………」

 

「急にいなくなれば心配します! まぁ〜無事ならいいんだ。それより……これ、見て? 」

 

信じられない。そんな顔をしているなのはに、私は足元に落ちている箱を拾い、そのすすを払う。そしてそれをなのはに渡した。

 

このブランドは誕生日やお祝い事を専門に扱うメーカーで、それ以外の目的で買う事はまずない。箱が剥き出しなのも包装が燃えてしまった為だろう。だが中身は生きているはずであり、私の思う通りならばトモさんは手紙を入れている。なのはに宛てた気持ちのこもった贈り物を。

 

「あ……」

 

箱を開けたなのははそこに入っていた星の形をした虹色の飾りをつけたネックレス。それを確認し、間の抜けた声をあげた。さらに中に手紙もあり、私はやっぱりと納得する。

 

私がことに気づけたのも今日という日が特別だから。なのはにとって何事にも変えがたい色々なイベントが重なった日。

 

「……お誕生日……おめでとうなのは。それから2年目の結婚記念日だな。まだまだお前と゛ぉ……もっ……と、う゛っ……ひぐっ……うっ、幸ぜな゛……じがん゛……がぁぁ……」

「幸せな時間が過ごせると思うと俺は何より幸せな男だと思うよ。最後に、また帰ったら言うが、伝えない事は我慢できない。……愛してるよ、なのは。……こんな手紙書く人が朝急になのはの事、嫌いになると思う? 」

 

手紙を読み、途中で言葉を紡げなくなったなのは。それは当然で、彼女にとっては希望とも言える事。死んでなお、トモさんはなのはに生きていく希望を取り戻してくれたようだった。

 

「どう? これでも私の言ってること、信じられない? 」

 

「う゛う゛ん……信じる゛……しん゛じる゛よ゛ぉ…………」

「さぁなのは。帰ろう? 風邪引いちゃうから」

 

「う゛ん゛……う゛っ、う゛ん゛」

 

私は許さない。なのはの一年で一番大事な日を……トモさんの命日という形で穢した犯人を。何をしても、この日が変わる事はない。なのはにとっては一生消えない傷痕だ。肉体的ものよりずっと残酷で、治る事のない重い傷跡。

 

 

 

 

翌日、朝目覚めた私はハルキとなのはの朝ごはんを作るために夫より早く起きた。しかし夫の姿はすでにベットにはない。私よりも遅い時間に仕事に出る夫がもうベットにいない事に少し違和感を覚えながらも、私はリビングへと寝室から移動した。

 

「あれ……いない。ん? ハルキ……どっか行ったのかな? でも……まだ5:00だよ? 今日仕事休みじゃない筈だよ……ね? ん? 」

 

ハルキの普段取らないこの行動。私はハルキを信用している為深くは考えなかった。何か用があったのだろうと思ったからだ。ましてや、昨日はなのはの事でハルキと話す時間もなかった。だから私がハルキを変に勘ぐる意味もない。

それに実は私はハルキに秘密がある。私が管理局で働いてる事は知ってるが、執務官だとは言っていない。なのはもそうだったが、心配をかけられない為、ハルキには本当のことが言えなかった。事件の捜査など危ない事しかない。常に危険と隣り合わせの職務でハルキに心配をして欲しくないという私の身勝手なワガママだ。

また、ハルキの仕事はタクシー運転手で私も何度か乗せてもらったことがある。

 

ただ、こんな事を言うのは失礼だが、タクシードライバーの仕事で、現役執務官の私よりも給料がいいのはどう言う事なのかと少し疑問に思った事は少なくない。

 

「あ、おはようフェイトちゃん」

 

「なのは、おはよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フェイちゃんが僕の横で眠った後、僕はこっそり家を出た。気づかれるなんてヘマはしない。現役を離れたとは言え、そこまで僕の腕は鈍ってなどいないのだ。

そして僕はある場所へと向かった。ミッドチルダでも特に治安の悪い地区。そこへ用があったからだ。裏の路地を進み、一件の古く潰れてしまったバー。僕はそこにいる人間に会いに来た。

 

「んあ? なんだおめぇ随分久方振りじゃねーかよ。もうやめたって聞いてたが、何の用なんだ? 」

 

「情報屋、金はいくらでも積んでやる。だから教えろ。昨日、高町トモを殺ったのは誰だ」

 

「っ!? …………」

「どうした? 言えないのか」

 

このフードで顔も覆った男は僕が昔の仕事で使っていた情報屋。僕はこいつより優秀な情報屋を知らないし、こいつが知らない事はないと思っている。どんなに些細な事でもこいつにかかればわからない事はない。

だが僕の問いにこいつは言葉を渋った。こんな事は初めての事だ。例えどんな情報でもこいつは金さえあれば喋る。誰かに狙われようとそれ相応実力を持ち合わせているこいつは追っ手に怖がる事はない筈だ。

 

「何故おめぇがあんな一般の殺人事件に関わる? 関係ないだろう? 」

「あいつは僕の友人だ。関係なくはない」

 

「……ちっ、よりにもよってかよ。はぁ……おめぇ……死ぬぞ? 」

 

「何? お前僕が誰か知って言ってるのか? それとも忘れたのか? 」

「元ザ・シークレットファイブ……ふん、知らねー筈はねぇよ」

 

「だったら! 」

 

「これから言う情報に金はいらねぇ。昔馴染み、そして『元同僚』、お前へのせめてもの忠告だ。今から2時間前、ある暗殺組織が壊滅した。お前も俺もよく知る組織だ」

 

こいつは話を始めた。一体なんの話が始まるのかと思えば、どこかの雑魚組織が壊滅したと言う情報だった。僕は頭が痛くなるような感覚を我慢し、大人しく情報屋の話を聞いていた。勿論そんな話を聞きたくてここまで来たわけではない。

が、次の瞬間、僕は目を大きく見開きながら驚かずにはいられなかった。

 

「壊滅したのは……エデン。俺とお前が属していた暗殺組織だ」

 

「なん……ば、馬鹿な!? エデンは全次元世界最強の!? 」

「だから言ってるんだ……死ぬってな? 」

 

「っ!? 」

 

「俺とお前。そしてザ・シークレットファイブ最強の男……ナンバー1。まぁ〜男かどうかは俺でもわからないが、いつも仮面被ってたし。で、だ! とにかくこの3人が抜けたとは言え、全次元世界で随一の殺し屋しかいない組織がたった数時間で壊滅。それもたった1人の手でな。いかに元ナンバー2のお前でも関われば死ぬ」

 

「他の2人のシークレットファイブはどうした? あいつらは僕らと同格だった筈だぞ」

「殺されたよ。なんの抵抗もできずにな。ハッキリ言ってバケモンだ。こんな芸当ができる人間は俺が知る限りこの世にたった1人しかいない」

 

「ナンバー……1か…………」

 

現状今回起きた出来事は信じられない事ばかりだった。聞いた話も、全てが疑わしい。でもこいつの言葉に嘘はない。それはどんな奴よりもこいつを知っていて、信用しているからだ。しかし疑問が一つ。

 

決して拭えず、何故と思う疑問があった。

 

 

「ちょっと待て、それとトモちゃんが殺された事となんの関係がある!? 高町トモはただのサラリーマンだぞ!? 」

 

「はぁ……今回。エデンを壊滅させた男は右肩に槍の刺青がある。この世に同じものは2つとないだろう。そして……お前のダチを殺った男の右肩にも」

 

「まさか…………」

 

「そうだ、同じ刺青がある。お前のダチを殺ったのは間違いなく組織を壊滅させた男と同じ男だ」

 

 

 




次回もよろしくお願いします。
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